弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 弁護人土田光保の上告趣意第一点について。
 憲法二八条の保障するいわゆる勤労者の団結権乃至団体行動権なるものは企業者
対勤労者すなわち使用者対被使用者というような関係に立つものの間において、経
済上の弱者である被使用者である勤労者が使用者である企業者に対し対等の立場に
おいてその利益を主張しこれを貫徹して適正な労働条件の維持改善を計りその地位
の向上に資するため認められたものである。従つて勤労者と雖もこの範囲内におい
てのみ所謂団結権乃至団体行動権を有するのであつて、憲法二八条はそれ以外の目
的を有する団体又は個人の単なる集合に過ぎないものに対してまでかかる権利を保
障したものではないと解すべきである。この見解は既に当裁判所大法廷の判例の判
示したところである(昭和二二年(れ)第三一九号同二四年五月一八日大法廷判決
判例集三巻六号七七二頁以下参照)。本件において原審の認定した事実によれば被
告人等はいずれも昭和二二年度所得税更正決定に不正があると主張し納税民主化同
盟及びその友誼団体に属する大衆を指導してその威力によりその主張を貫徹しよう
と企て、判示第一及び第二の如き行動に出でたというにあるから、その団体行動が
憲法二八条の保障する団体行動権に基ずくものに該当しないこと多言を要しないと
ころである。
 尤も原判決には被告人等の行動が憲法の保障する団体行動なることを肯定したか
の如く思わしめる判示がないではない。しかし原審がかかる見解をとつたものとし
てもそれは唯その見解そのものが誤謬たるに止まり既に被告人等の行動が憲法の保
障する団体行動に該当しないこと前説示の如くである以上、原審が判示被告人等の
所為を処罰したからとて、原判決に所論の如き憲法二八条の違反ありといい得ない
ことは明白である。論旨は理由がない。
 同第二点について。
 本件公判請求書の記載によれば本件公訴事実の要旨は、被告人等が共謀して、昭
和二三年四月一七日岐阜税務署長に対しまた同月一九日関税務署長に対しそれぞれ
多衆の威力を示して面談を求め税法違反等の要求事項の承認方を迫り暴言を吐き怒
号する等その要求に応じなければ同人等の身体に危害を加えかねまじき気勢を示す
挙動に出でて脅迫し以てその要求全部を承認させ前者に対しては協定書また後者に
対しては要求書と称する書面に署名捺印せしめたというのである。従つて本件公訴
事実と原審認定の判示事実とは社会上の出来事として同一性あること勿論であると
いわなければならない。尤も検察官は本件公訴事実につき暴力行為等処罰ニ関スル
法律違反罪及び強要罪(刑法二三三条一項)の罪名を附し、第一審裁判所はその事
実を認定しながら刑法二二三条を適用し、更に原審は同一事実を認定して同法九五
条二項を適用していることは所論の通りである。しかし、それは唯同一事実に対す
る法律構成上の見解を異にした結果に外ならないものであつて、それがために、原
判決に所論のような違法があるとはいい得ない。論旨は採用の限りでない。
 同第三点について。
 原判決は、被告人等は、孰れも昭和二二年度所得税更正決定に不正があると主張
し、納税民主化同盟及びその友誼団体に属する大衆を指導して、その威力により、
その主張を貫徹しようと企て共謀の上判示税務署長等に対し判示のごとき暴言、気
勢等を以て、判示内容の要求を全部承認させた上判示書面に押印させた事実認定し、
これに対し、刑法九五条二項を適用したものである。そして右条項前段にいわゆる
「公務員をして或処分を為さしめ若しくは為さざらしむる為め」とある「公務員の
処分」とは、当該公務員の職務に関係ある処分であれば足り、その職務権限内の処
分であるとその職務権限外の処分であるとを問わないものと解すべきである。けだ
し、同条項前段と後段並びに同条一項を比較対照すれば、同条二項は、公務員の正
当な職務の執行を保護するばかりでなく、広くその職務上の地位の安全をも保護し
やうとするものであること明白だからである。従つて、判示要求承認の内容が判示
税務署長等の職務権限外の事項であつても、すべて同税務署長の職務上の処分であ
ると判示して、前記条項を適用した原判決の擬律は正当であるといわなければなら
ない。それ故所論は、その理由がない。
 同第四点について。
 しかし、原判決挙示の証拠及びその証拠によつて肯認し得る原審認定の判示事実
とを綜合すれば、被告人等が犯行の現場において、判示の要求を貫徹するため互に、
各自の行動を支援しつつ暴言怒号その他によつて危害を加えかねまじき気勢を示め
し判示税務署長等を畏怖せしむるにつき意思の連絡あつたものたることを肯定する
に難くないのである。所論は畢竟事実誤認の主張に帰し採用の限りでない。
 同第五点について。
 しかし、原審の事実認定は原判決挙示の証拠にてらしこれを肯認するに難くない
のである。そして原判決の判示事実にすれば被告人等が税務署長等を脅迫したもの
といい得ること勿論であり、所論は結局事実審たる原審がその裁量権の範囲で適法
になした事実認定を非難するに帰し上告適法の理由とならない。
 同第六点について。
 所論は畢竟事実審たる原審の裁量権に属する刑の量定を非難するものであり上告
適法の理由とならない。
 被告人本人Aの上告趣意について。
 原審の事実認定は原判決挙示の証拠に照らしこれを肯認するに難くない。所論は
単なる事実誤認の主張をなす外徒らに原判決を非謗するだけで実質上は何等具体的
に法令違背を主張するものではない。それ故上告適法の理由となすに足りない。
 被告本人Bの上告趣意について。
 所論は事実審である原審がその裁量権の範囲内で適法になした事実認定を非難す
るものに外ならないのであつて上告適法の理由とならない。
 よつて、旧刑訴四四六条に従い、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
 検察官 松本武裕関与
  昭和二八年一月二二日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    斎   藤   悠   輔
 裁判官沢田竹治郎は退官につき、署名捺印することができない。
         裁判長裁判官    岩   松   三   郎

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