弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
被告人を懲役1年6月に処する。
この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,北海道茅部郡a町長であったものであるが,同町が平成17年9月2
8日に執行した「消防防災センター建設工事(建築主体工事(以下「本件工事」)」
という)の指名競争入札に際し,A株式会社(以下「A」という)及びB株式。。
会社(以下「B」という)の出資に係る特定建設工事共同企業体に本件工事を落。
札させようと企て,公正な価格を害する目的で,同町建設課長であったC,Ab支
店副支店長であったD,同支店営業部長であったE,同支店建築部長であったF,
同支店c出張所長であったG,本件工事の指名競争入札に関して,前記Dらから,
Aが有利に受注できるように受注工作を依頼されていたH及びI,B代表取締役で
あったK,同専務取締役であったL,M株式会社(以下「M」という)代表取締。
役であったN並びにO特定建設工事共同企業体等4企業体の各入札担当者であった
M専務Pらと共謀の上,同月27日ころ,北海道茅部郡a町字d町e番地所在のM
事務所外3か所において,順次,A及びBの出資に係る特定建設工事共同企業体を
落札予定業者とし,他の入札参加者が同企業体の指定する入札価格以上の価格で入
札することにより同企業体に落札させる旨協定し,もって,談合したものである。
(法令の適用)
被告人の判示所為は刑法60条,96条の3第2項に該当するところ,所定刑中
懲役刑を選択し,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役1年6月に処し,情状によ
り同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予
することとする。
(量刑の事情)
1本件は,北海道茅部郡a町長であった被告人が,同町が平成17年に執行した
消防防災センター建設工事(本件工事)にかかる指名競争入札に際し,建設業者
や仲介役のコンサルタント業者らと共謀の上,特定の共同企業体(以下「JV」
という)に本件工事を落札させるべく,談合した事案である。。
2(1)本件に至る経緯及び犯行態様は以下のとおりである。
a町においては,従前から,指名競争入札にあたり,a町建設協会を中
心とした談合が行われており,被告人は,これを黙認していたところ,本
件工事においても,地元業者の談合の結果,平成17年7月ころには,同
協会会長であったKが代表取締役を務めるBをメインとし,地元の中小規
模業者をサブとするJVが落札する予定となっていた。
コンサルタント業を営むIは,Aから本件工事の受注工作を依頼されて現
金を受領し,被告人に付け届けをするなどして,Aが本件工事を落札でき
るように依頼していたが,本件工事の入札直前の同年9月中旬に至って,
AはB以外の会社とJVを組まされて落札の見込みがないことを知らさ
れ,被告人の自宅を訪れて,AとBとでJVを組ませるよう要求した。
被告人は,同月20日ころ,部下の建設課長であるCに対し,BがAと
JVを組む方向でKと話をするよう暗に指示し,これを受けて,Cは,K
,。,の自宅を訪れて被告人の意向を伝えKもこれを承諾したこれによって
JVの組み合わせが変更され,BとAとがJV(出資比率はB6対A4)
を組むこととなった。
その後も,Iは,Aの意向を受けて,被告人に対し,JVのメインをA
に変更することを要求し,被告人は,同月22日ころ,Cに対し,JVの
メインとサブの入れ替えを示唆し,Cからメインとサブの入れ替えの話を
聞いて町長室を訪れたKに対しても「Aメインで頼む」などと述べて,。
メインの入れ替えを依頼し,これを承諾させた。
さらに,Iは,被告人に対し,JVの出資比率をA7対B3の割合に変
更することを要求した。これを受けて,被告人は,同月25日,C及びK
を自宅に呼んで出資比率の変更を示唆し,Kにこれを承諾させた。その結
果,JVの出資比率は,A7対B3となった。
その後,A及びBの各担当者が必要書類を準備するなどし,同月27日
ころ,いわゆる当て馬業者に対し,入札価格を指示する書類を交付して最
。,,終的に談合の協定をした同月28日本件工事の指名競争入札が行われ
談合のとおり,A・BJVが本件工事を落札した。
(2)なお,弁護人らは,関係者の供述の一部につき信用性を争うが,各関係
者の供述の信用性に疑いを差し挟むような事情はなく,関係各証拠によれ
ば,上記の各事実が認定できる。
また,弁護人らは,被告人が本件に関わった内容は,AとBの間の状況
,,,を問い合わせ話し合いを勧めたということに尽きる旨主張し被告人も
当公判廷において,本件談合に関して建設課長や建設業者に指示をしたこ
とはない旨供述する。しかしながら,上記の事実経過に照らせば,被告人
がIの要求を受けてCやKに働き掛け,C及びKは,30年以上もの間a
町長の職にあった被告人の意向に沿うように行動せざるをえなかったこと
は明らかであるから,弁護人らの主張及び被告人の供述は,いずれも採用
できない。
3このように,被告人は,Iの要求に応じて本件に協力したもので,率先して犯
行を主導したとはいえず,また,a町においては談合が半ば慣行となっていたこ
とに照らすと,仮に被告人の関与がなかったとしても,本件工事については何ら
かの形で談合が成立していた可能性が高いと考えられる。しかしながら,本件の
背景には,被告人が長年にわたりa町における談合の慣行を黙認してきたという
事情があり,また,被告人は,Iとの間で日常的に金品等を受領する不明朗な関
係を続けてきたため,Iの要求を断り難い状況となり,本件に至ったことが認め
られ,犯行に至る経緯及び犯行動機について,被告人に有利にしん酌すべき事情
があるとはいえない。
被告人は,本件談合にかかる共謀成立過程の要所において,町長の地位と影響
力を利用して,被告人に逆らい難い部下や地元業者に対し,JVの組み合わせや
出資比率の変更を指示するなどし,本件において重要な役割を果たしたものと評
価できる。
本件談合の結果,入札の公正が害され,本件工事は入札書比較価格の約98パ
ーセントという高率で落札されたものであるところ,各業者による事後的な見積
の結果に照らしても,不当に高額な税金が支出された可能性が高いことが認めら
れる。
以上のとおり,被告人は,町の最高権力者として談合に関する指示を行い,本
件における重要な役割を果たしたもので,強い非難は免れない上,当公判廷にお
いて,その責任を部下らに転嫁するかのような発言にも及ぶなど,本件を真摯に
反省しているとは言い難く,その責任は重いというべきである。
4他方において,被告人は,長年a町長として町の行政に尽力し,町村会の要職
等を歴任してきたが,本件で逮捕されたことにより,不名誉な形で町長職を辞職
し,退職金の受領も辞退していること,当公判廷において,町民その他の関係者
に対する謝罪の意を表していること,再犯のおそれはないといえること,被告人
,,の実弟が当公判廷に出廷し被告人の今後の生活を支えていく旨述べていること
被告人の年齢及び体調など被告人のために酌むべき事情も認められる。
5そこで,これらの諸事情を総合考慮の上,被告人に対しては,その刑の執行を
猶予するのが相当であると判断した。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑懲役1年6月)
平成21年2月24日
函館地方裁判所刑事部
裁判長裁判官柴山智
岡田龍太郎裁判官
裁判官板橋愛子

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