弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
本件各上告を棄却する。
理由
1被告人両名の弁護人落合洋司の上告趣意のうち,福島県青少年健全育成条例
(以下「本条例」という。)21条1項,34条2項(平成19年3月20日福島
県条例第16号による改正前のもの。以下同じ。),35条の各規定及びその適用
の憲法21条1項,22条1項,31条違反をいう点について
(1)本条例は,18歳未満の者(婚姻により成年に達したものとみなされる者
を除く。)を「青少年」と定義した上で(14条1号),「青少年の健全な育成を
阻害する行為を規制し,もって青少年の健全な育成を図る」ことを目的とし(1
条),その内容が著しく青少年の性的感情を刺激しその健全な育成を阻害するおそ
れのあるものと知事が指定した図書等の本条例所定の「有害図書類」を青少年に販
売すること等を規制している。本条例では,「自動販売機等」を「販売又は貸付け
の業務に従事する者と客とが直接対面する方法によらずに販売又は貸付けを行うこ
とができる設備を有する機器」と定義し(16条1項),図書類の販売等を業とす
る者は,その設置する自動販売機等に,有害図書類を販売又は貸付けの目的で収納
してはならないとし(21条1項),その違反者は6月以下の懲役又は30万円以
下の罰金に処するなどと定め(34条2項,35条),また,自動販売機等を設置
する場合には,設置場所,販売する図書の種類等を知事に届け出なければならない
としている(20条の3)。
(2)原判決及びその是認する第1審判決の認定並びに記録によれば,本件の事
実関係は,次のとおりである。
ア被告人Aが取締役としてその業務全般を統括していた被告会社は,平成16
年11月8日,福島県二本松市内の土地に,DVD等の販売機(以下「本件機器」
という。)を設置したが,本条例に定める届出を行わず,平成17年1月28日,
本件機器に本条例が定める有害図書類であるDVD1枚を販売目的で収納した。
イ本件機器は,上記の土地に設置された無人小屋に他の3台の図書類の販売機
と並べて設置されており,小屋には扉もなく自由に出入りできる上,外壁には「無
人24H」及びピンク色のハート型と「空間」という表示や,「最強超映像DX
雑誌ビデオグッズ」と記載された看板が掲示されていた。
ウ小屋内にはセンサーがあり,客を感知すると,小屋内の壁3か所に設置され
た監視カメラが作動し,客の画像が,被告会社の委託を受けた株式会社Bの東京都
練馬区内にある監視センターに設置されたモニターに送信される。監視センターに
は24台のモニターがあり,5名から10名の監視員が交代で,全国約300か所
に設置された同様の無人小屋の監視に当たっていた。
エ監視員が遵守すべきマニュアル等によれば,監視員は,モニター上の客の容
ぼう等を見て,明らかに18歳以上の者であると判断すれば,販売機の電源を入れ
て販売可能な状態に置き,また,年齢に疑問がある場合には,運転免許証などの身
分証明書を呈示するよう求める音声を流し,呈示された身分証明書の画像を確認し
て客との同一性及び18歳未満の者ではないことを確認できた場合には,同様に販
売可能な状態に置くこととされていた。
オしかし,監視センターのモニター画面では,必ずしも客の容ぼう等を正確に
判定できるとはいえない状態にあった上,客が立て込んだ時などには18歳未満か
どうか判定が困難な場合でも購入可能なように操作することがあった。
(3)原判決は,本件機器は本条例にいう「自動販売機」に当たり,これに有害
図書類であるDVDを収納した行為は,本条例21条1項,34条2項,35条に
当たるとした。
(4)所論は,本件機器は,対面販売の実質を有しているので,本条例にいう
「自動販売機」に当たらない旨主張する。しかしながら,上記の事実関係によれ
ば,本件機器が対面販売の実質を有しているということはできず,本件機器が客と
対面する方法によらずに販売を行うことができる設備を有する機器である以上,
「自動販売機」に該当することは明らかである。
(5)所論は,監視センターにおける操作などにより,客が18歳未満でないこ
とを監視して確認できる機器まで規制するのは,憲法21条1項,22条1項,3
1条に違反する旨主張する。
本条例の定めるような有害図書類が,一般に思慮分別の未熟な青少年の性に関す
る価値観に悪い影響を及ぼすなどして,青少年の健全な育成に有害であることは社
会共通の認識であり,これを青少年に販売することには弊害があるということがで
きる。自動販売機によってこのような有害図書類を販売することは,売手と対面し
ないため心理的に購入が容易であること,昼夜を問わず販売が行われて購入が可能
となる上,どこにでも容易に設置でき,本件のように周囲の人目に付かない場所に
設置されることによって,一層心理的規制が働きにくくなると認められることなど
の点において,書店等における対面販売よりもその弊害が大きいといわざるを得な
い。本件のような監視機能を備えた販売機であっても,その監視及び販売の態勢等
からすれば,監視のための機器の操作者において外部の目にさらされていないため
に18歳未満の者に販売しないという動機付けが働きにくいといった問題があるな
ど,青少年に有害図書類が販売されないことが担保されているとはいえない。以上
の点からすれば,本件機器を含めて自動販売機に有害図書類を収納することを禁止
する必要性が高いということができる。その結果,青少年以外の者に対する関係に
おいても,有害図書類の流通を幾分制約することにはなるが,それらの者に対して
は,書店等における販売等が自由にできることからすれば,有害図書類の「自動販
売機」への収納を禁止し,その違反に対し刑罰を科すことは,青少年の健全な育成
を阻害する有害な環境を浄化するための必要やむを得ないものであって,憲法21
条1項,22条1項,31条に違反するものではない。このように解することがで
きることは,当裁判所の判例(昭和28年(あ)第1713号同32年3月13日
大法廷判決・刑集11巻3号997頁,昭和39年(あ)第305号同44年10
月15日大法廷判決・刑集23巻10号1239頁,昭和45年(あ)第23号同
47年11月22日大法廷判決・刑集26巻9号586頁,昭和43年(行ツ)第
120号同50年4月30日大法廷判決・民集29巻4号572頁,昭和57年
(あ)第621号同60年10月23日大法廷判決・刑集39巻6号413頁)の
趣旨に徴し明らかである(最高裁昭和62年(あ)第1462号平成元年9月19
日第三小法廷判決・刑集43巻8号785頁参照)。なお,上記のとおり,本件機
器は「自動販売機」に該当するのであるから,本件機器に上記規制を適用しても憲
法の上記各条項に違反しないことは明らかというべきである。
(6)以上のとおりであり,原判決に所論の憲法違反はなく,論旨は採用するこ
とができない。
2弁護人のその余の上告趣意のうち,憲法14条違反をいう点は,上記の規制
は,人種,信条,性別,社会的身分又は門地などにより被告人らを不当に差別する
ものではないから,前提を欠き,その余は,単なる法令違反の主張であって,刑訴
法405条の上告理由に当たらない。
3よって,刑訴法408条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判
決する。
(裁判長裁判官竹崎博允裁判官今井功裁判官中川了滋裁判官
古田佑紀裁判官竹内行夫)

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