弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人Aを懲役一〇年に、同Bを懲役五年に各処する。
     被告人等の第一審における未決勾留日数中各九〇日をそれぞれ右本刑に
算入する。
     押収に係る七首四本(東京高等検察庁昭和二二年押第九四四号の一)懐
中電燈一個(同押号証の四)はこれを没収する。
     被告人等の本件各上告を棄却する。
         理    由
 東京高等検察庁検事長代理検事岡琢郎、並に被告人A、弁護人吉田栄三郎、同B
弁護人別府祐六の各上告趣意は末尾に添附した別紙記載の通りである。
 東京高等検察庁検事長代理岡琢郎上告趣意について。
 記録に徴するに第一審においては被告人Aに対し懲役一〇年に被告人Bに対し懲
役五年に処する未決勾留日数中九〇日を各本刑に算入するとの判決を言渡したが原
審においては右Aに対し懲役一〇年右Bに対し懲役五年の刑を言渡し何れも未決勾
留日数を本刑に算入しないことは所論の通りである。本件は被告人が控訴した事件
であるから原審においては旧刑訴四〇三条により第一審の判決より重い刑を言渡す
ことはできないものであるに拘らず第一審判決が算入した未決勾留日数を算入しな
かつた原判決は第一審判決より重い刑を言渡したものといわなければならない、従
つて原判決は旧刑訴四〇三条違反の違法があると主張する論旨は理由があり、破棄
をまぬかれないものである。
 被告人Aの弁護人吉田栄三郎上告趣意第一点について。
 原判決は被告人はC外数名と共謀の上本件犯行を為したものであつて共同正犯で
あると認定していることは記録上明白であり、其認定について何等法則に反すると
ころは認められない、論旨は独自の見解によつて原審の事実認定を非難することに
帰し採用することを得ない。
 同第二点について。
 原審公判調書(八一七丁表)によれば裁判長は被告人に対し証拠品を示し意見の
有無を問うた旨の記載があり、原判決挙示の証拠について適法の証拠調がなされた
ことを認め得る。従つて論旨は理由がない。
 同第三点について。
 原審の量刑不当を非難するものであるから上告適法の理由とならない。
 被告人Bの弁護人別府祐六上告趣意第一点について。
 第一点の論旨は前記被告人Aの弁護人吉田栄三郎上告趣意第二点と同一趣旨であ
り、その理由なきものであることはすでに説明した通りであるから、ここでは其説
明を省略する。
 同第二点について。
 昭和二二年法律第一二四号附則第四項によれは同法施行前の行為については、刑
法五五条の改正規定にかかわらずなお従前の例による旨が規定されておる、そして
被告人の本犯行は右改正法律施行日である昭和二二年二月一五日以前の行為である
ことは記録上明白であるから原判決が刑法五五条を適用したことは正当であつて何
等違法はない、なお犯意継続の点は原判決判示の如く被告人が判示短期間に同種行
為を繰返し行つたことにより充分認定し得るから所論の如き違法はなく論旨は理由
がない。
 同第三点について。
 原審の量刑不当を主張するものであつて上告適法の理由とならない。
 よつて被告人等の本件各上告は旧刑事訴訟法四四六条により棄却すべきものとす
るが、検察官の上告は理由があるから同法四四七条四四八条により当裁判所におい
て更に判決することにし、原判決の認定した事実に法律を適用するに、被告人等の
判示所為中住居侵入の点は刑法一三〇条六〇条五五条に強盗の点は同法二三六条一
項、六〇条五五条に該当するところ右は手段結果の関係にあるから同法五四条一項
後段一〇条により重い強盗罪の刑に従いその所定刑期範囲内で被告人Aを懲役一〇
年に、被告人Bを懲役五年に処し、同法二一条を適用して被告人等の第一審におけ
る未決勾留日数中各九〇日をそれぞれ右本刑に算入すべきものとし、なお押収にか
かる七首四本(東京高等検察庁昭和二二年押第九四四号の一)は判示第一乃至第三
の犯行に、懐中電燈一個(同押号の四)は判示第二の犯行にそれぞれ供したもので
被告人以外の者に属しないから同法一九条一項二号二項を適用していずれもこれを
没収することにし、主文のように判決する。
 右は裁判官全員一致の意見である。
 検察官 長部謹吾関与
  昭和二七年一月二二日
     最高裁判所第三小法廷
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
 裁判長裁判官長谷川太一郎は退職につき署名捺印することができない。
            裁判官    井   上       登

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