弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主         文
   1 原告の請求をいずれも棄却する。
   2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 旅費関係
 原告が平成12年3月31日にした宮城県情報公開条例に基づく「宮城県警察本
部総務課職員の出
張に関する一切の資料(平成6,7年度),旅費受領代理人普通預金通帳(平成
5,6,7年度)」
の開示請求につき,被告が平成12年5月15日にした処分のうち,別紙文書目録
②の非開示部分を
取り消す。
2 食糧費関係
 原告が平成8年10月15日にした情報公開条例に基づく「宮城県警察本部総務
室の食糧費支出に
関する一切の資料(平成7年度)」の開示請求につき,被告が平成12年5月15
日にした処分のう
ち,別紙文書目録①の非開示部分を取り消す。
第2 事案の概要
1 本件は,原告(仙台市民オンブズマン)が,被告(宮城県知事)に対し,「宮
城県警察本部総務
課職員の出張に関する一切の資料(平成6,7年度),旅費受領代理人普通預金通
帳(平成5,6,
7年度)」並びに「宮城県警察本部総務室の食糧費支出に関する一切の資料(平成
7年度)」につい
て,行政文書の開示請求をしたところ,被告が非開示又は部分開示とする処分をし
たため,原告が非
開示部分の取消しを求めた事案である。
2 前提となる事実
(証拠を掲げた部分以外は,当事者間に争いのない事実である。)
 (1) 当事者
  ア 原告は,地方行財政の不正を監視,是正すること等を目的として結成され
た権利能力なき社
団である。
  イ 被告は,宮城県情報公開条例(平成11年宮城県条例第10号。平成12
年宮城県条例第1
31号による改正後のもの。以下「県条例」という。)2条1項の実施機関たる知
事である。
 (2) 県条例のうち,本件に関係する規定は,次のとおりである。
第1条(目的)
 この条例は,地方自治の本旨にのっとり,県民の知る権利を尊重し,行政文書の
開示を請求する権
利及び県の保有する情報の公開の総合的な推進に関して必要な事項を定めることに
より,県政運営の
透明性の一層の向上を図り,もって県の有するその諸活動を説明する責務が全うさ
れるようにすると
ともに,県民による県政の監視と参加の充実を推進し,及び県政に対する県民の理
解と信頼を確保し,
公正で開かれた県政の発展に寄与することを目的とする。
第2条(省略)
第3条(責務)
1 実施機関は,この条例に定められた義務を遂行するほか,県の保有する情報を
積極的に公開する
よう努めなければならない。この場合において,実施機関は,個人に関する情報が
十分保護されるよ
う最大限の配慮をしなければならない。
2 行政文書の開示を請求しようとするものは,この条例により保障された権利を
正当に行使し,情
報の公開の円滑な推進に努めなればならない。
第4条(開示請求権)
 何人も,この条例の定めるところにより,実施機関に対し,行政文書の開示を請
求することができ
る。
第5条ないし第7条(省略)
第8条(行政文書の開示義務)
 実施機関は,開示請求があったときは,開示請求に係る行政文書に次の各号に掲
げる情報(以下「
非開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き,開示請求者に対
し,当該行政文書
を開示しなければならない。
 (1) (省略)
 (2) 個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であ
って,特定の個人
が識別され,若しくは識別され得るもの又は特定の個人を識別することはできない
が,公開すること
により,なお個人の権利利益が害されるおそれのあるもの。ただし,次に掲げる情
報を除く。
  イ 法令の規定により又は慣行として公開され,又は公開することが予定され
ている情報
  ロ 当該個人が公務員(国家公務員法(昭和22年法律第120号)第2条第
1項に規定する国
家公務員及び地方公務員法(昭和25年法律第261号)第2条に規定する地方公
務員をいう。)で
ある場合において,当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは,当該情報
のうち,当該公務
員の職,氏名及び当該職務遂行の内容に係る部分
(以下,この規定又は非開示理由を単に「2号」という。)
 (3) (省略)
 (4) 公開することにより,犯罪の予防又は捜査,人の生命,身体又は財産の保護
その他の公共の安
全と秩序の維持に支障が生ずるおそれのある情報
(以下,この規定又は非開示理由を単に「4号」という。)
 (5) 県又は国等(国又は地方公共団体その他の公共団体をいう。以下同じ。)の
事務事業に係る意
思形成過程において行われる県の機関内部若しくは機関相互又は県の機関と国等の
機関との間におけ
る審議,検討,調査,研究等に関する情報であって,公開することにより,当該事
務事業又は将来の
同種の事務事業に係る意思形成に支障が生ずると明らかに認められるもの
(以下,この規定又は非開示理由を単に「5号」という。)
 (6) (省略)
第9条以下(省略)
 (3) 本件訴訟に至る経緯
  ア 旅費関係
   (ア) 原告は,被告に対し,平成8年6月24日,情報公開条例(平成2年
宮城県条例第18
号。以下「旧条例」という。)に基づき,「宮城県警察本部総務課職員の出張に関
する一切の資料(
平成6,7年度),旅費受領代理人普通預金通帳(平成5,6,7年度)」につい
て,行政文書の開
示請求をした。
   (イ) 被告は,平成8年7月5日,上記開示請求につき不受理決定をした。
   (ウ) 仙台高等裁判所は,平成12年3月17日,上記不受理決定を取り消
す旨の判決をし(
平成10年(行コ)第12号),同判決は確定した。
 (エ) そのため,被告は,平成12年3月31日,原告の上記開示請求を受
理し(なお,県条
例附則4により,県条例の施行の際現に実施機関に対してされている旧条例の規定
による開示請求は,
県条例の規定による開示請求とみなされる。),上記開示請求に対応する行政文書
として,
平成6,7年度宮城県警察本部総務室総務課職員の出張に係る
① 支出負担行為兼支出命令決議書,
② 旅行命令(依頼)票,
③ 旅費計算内訳書(旅行命令(依頼)票(特例計算用)),
④ 出張報告書(復命書),
⑤ 旅費受領代理人普通預金通帳(平成5,6,7年度),
⑥ 返納決議書,
⑦ 赴任旅行命令票(特例計算用)
を特定し(以下「本件旅費関係文書」という。),同年5月15日,県条例に基づ
き,一部を開示し,
その余を非開示とする処分をした(以下「本件処分(旅費関係)」という。)。
 (オ) 原告は,平成12年7月28日,被告を相手方として,本件処分(旅
費関係)のうち非
開示部分の取消しを求める本件訴訟を提起した。
 イ 食糧費関係
 (ア) 原告は,被告に対し,平成8年10月15日,旧条例に基づき,「宮
城県警察本部総務
室の食糧費支出に関する一切の資料(平成7年度)」について,行政文書の開示請
求をした。
 (イ) 被告は,開示請求に対応する公文書として,警察本部総務室の食糧費
に係る支出命令決
議書及び支出負担行為兼支出命令決議書(平成7年度)を特定し,平成8年10月
29日,そのすべ
てを非開示とする処分をした。
 (ウ) 仙台地方裁判所は,平成12年4月25日,①支出命令決議書及び支
出負担行為兼支出
命令決議書以外の文書も県条例で開示の対象となる公文書に該当する,②受取人情
報を開示しなかっ
た部分は適法であるが,その余の情報を一律に開示しなかったのは違法であるとし
て,上記非開示処
分の一部を取り消す旨の判決をした(平成8年(行ウ)第30号)。
 (エ) 被告は,上記開示請求に対応する行政文書として,
平成7年度宮城県警察本部総務室の食糧費に係る
① 支出命令決議書,
② 支出負担行為兼支出命令決議書,
③ 請求書,
④ 施行伺,
⑤ 施行確認書
を特定し(以下「本件食糧費関係文書」という。),平成12年5月15日,県条
例に基づき,一部
を開示し,その余を非開示とする処分(以下「本件処分(食糧費関係)」とい
う。)をした。
 (オ) 原告は,平成12年7月28日,被告を相手方として,本件処分(食
糧費関係)のうち
非開示部分の取消しを求める本件訴訟を提起した。
 (4) 本件訴訟提起後の開示状況
 ア 旅費関係
 (ア) 被告は,原告が平成12年6月27日にした行政不服審査法に基づく
異議申立て(ただ
し,職員の扶養親族の氏名等に関する部分については,原告が,審査会の意見陳述
等において争わな
い旨の意思表示をしたため,審査会の判断がされなかった。)につき,平成14年
5月24日,本件
旅費関係文書のうち次の①から④を除いた部分を開示し,その余を棄却する旨の異
議決定をした(以
下「本件処分の変更決定(旅費関係)」という。)。
① 旅行者(本件処分(旅費関係)の時点までに宮城県職員録又は新聞の人事異動
記事により氏名が
公表された者を除く。)の氏名及び印影,
② 文書集配用務に係る旅行の行先情報及び時期情報のうち,旅行期間,
③ 旅費受領代理人の預金口座情報のうち,預金口座番号及びお客様番号,
④ 旅行者(氏名が開示されない者を除く。)の職務の級
 (イ) 原告は,上記①ないし④以外の部分(職員の扶養親族の氏名等に関す
る部分を含む。)
につき,訴えを取り下げた。
 イ 食糧費関係
 (ア) 仙台高等裁判所は,平成13年6月28日,上記(3)イ(ウ)の控訴審と
して,受取人情報
を非開示とする部分を取り消す旨の判決をし(平成12年(行コ)第7号),同判
決は確定した。
 (イ) 被告は,原告が平成12年6月27日にした行政不服審査法に基づく
異議申立てにつき,
平成14年5月24日,本件食糧費関係文書のうち次の①及び②を除いた部分を開
示し,その余を棄
却する旨の異議決定をした(以下「本件処分の変更決定(食糧費関係)」とい
う。)。
① 部隊給食の金額情報のうち,「所要経費の内訳」及び「給食支給数」,請求書
の内訳欄の「種別」
,「数量」,「単価」及び「金額」並びに給食調書の表題部を除く部分,
② 警察職員に関する情報のうち,宮城県警察職員にあっては,本件処分(食糧費
関係)の時点まで
に宮城県職員録又は新聞の人事異動記事により氏名が公表されていない者の「氏
名」及び「印影」,
宮城県警察職員以外の警察職員にあっては,本件処分(食糧費関係)の時点までに
所属機関の職員録
又は新聞の人事異動記事で氏名が公表されていない者の「氏名」
 (ウ) 原告は,上記(ア)及び(イ)により開示された部分につき,訴えを取り
下げた。
 (5) 本件訴訟の対象となっている情報
  ア 旅費関係
 本件口頭弁論終結時点で,本件取消請求の対象となっている旅費関係の情報は,
別紙文書目録②の
とおりである(別紙「総務課の旅費及び旅費受領代理人普通預金通帳に係る非開示
情報一覧表」参照)

  イ 食糧費関係
 本件口頭弁論終結時点で,本件取消請求の対象となっている食糧費関係の情報
は,別紙①のとおり
である(別紙「総務室の食糧費に係る非開示情報一覧表」参照)。
  ウ 非開示情報と各文書との関係についての必要な説明は,便宜上,後記「第
4 争点について
の当事者の主張」の中で行う。
第3 争点
1 争点1(職務の級情報の2号該当性)
 本件旅費関係文書に記載された警察職員(ただし,本件処分の変更決定(旅費関
係)において,氏
名を開示した職員に限る。)の「職務の級」が,2号に該当するか。
2 争点2(職員情報の4号該当性)
 本件旅費関係文書及び本件食糧費関係文書に記載された次の職員情報が,4号に
該当するか。
① 宮城県警察職員のうち,本件処分(旅費関係)及び本件処分(食糧費関係)ま
でに,宮城県職員
録又は新聞の人事異動記事により氏名が公表されていない者(警部補(同相当職を
含む。)以下)の
氏名及び印影,
② 宮城県警察職員以外の警察職員のうち,本件処分(旅費関係)及び本件処分
(食糧費関係)まで
に,所属機関の職員録又は新聞の人事異動記事で氏名が公表されていない者の氏名
3 争点3(部隊給食の金額情報の4号該当性)
 部隊給食の金額情報(①施行伺の所要経費の内訳,②施行確認書の給食支給数,
③請求書の内訳欄
中,種別,数量,単価及び金額)が4号に該当するか。
4 争点4(部隊編成情報の4号該当性)
 部隊給食の部隊編成情報(部隊名,部隊数及び給食支給数)が4号に該当する
か。
5 争点5(文書集配業務情報の4号該当性)
 文書集配業務情報(「旅行期間」及び「目的地」)が4号に該当するか。
6 争点6(預金口座番号情報の4号該当性)
 旅費受領代理人普通預金通帳の預金口座番号及びお客様番号が4号に該当する
か。
第4 争点についての当事者の主張
1 争点1(職務の級情報の2号該当性)
 (1) 文書との関係の説明
 職務の級情報の理由で非開示とされた文書は,次のとおりである。
  ア 旅行命令(依頼)票(特例計算用)のうち,「旅行者氏名」欄の職務の級
(ただし,警部(
同相当職)以上の職員のもの),
  イ 赴任旅行命令票(特例計算用)のうち,「級」欄の職務の級(ただし,警
部(同相当職を含
む。)以上の職員のもの)
  ウ 旅行命令(依頼)票のうち,「級」欄の職務の級(ただし,警部(同相当
職)以上の職員の
もの)
 (2) 被告の主張
  ア 旅行者の職務の級は,2号に該当する。
  イ(ア) 職員の職務の級は,おおよそ勤務経歴,勤続年数等によって,個々の
職員につき定めら
れたものであるところ,職員の給与等級は「職員の給与に関する条例」で公開され
ているため,既に
氏名を開示した警察職員の職務の級を開示した場合,当該職員の給与額及び所得の
状況が推測される
ことになる。
   (イ) 旅行者の職務の級は,非開示の例外とされる「法令の規定により又は
慣行として公開さ
れ,又は公開することが予定されている情報(2号ただし書イ)」「公務員の職務
の遂行に係る情報
(2号ただし書ロ)」のいずれにも該当しない。
 (3) 原告の主張
  ア 旅行者の職務の級は,2号に該当しない。
  イ 「職務の級」は,公金から支払われる公務員の給与に関する情報であり,
職員個人の収入に
関わる情報であるとしても,その妥当性について国民による議論の対象となり得る
から,純粋に私事
に関わる情報とはいえず,したがって,2号に該当しない。
2 争点2(職員情報の4号該当性)
 (1) 文書との関係の説明
 職員情報の理由で非開示とされた文書は,次のとおりである。
  ア 宮城県警察職員関係
 旅費関係では,旅行命令(依頼)票,旅行命令(依頼)票(特例計算用),赴任
旅行命令票(特例
計算用)及び復命書における旅行者(旅費受領者)のうち,食糧費関係では,施行
伺の起案者及び決
裁者,請求書の検収者,施行確認書の施行確認者,時間外勤務夜食関係文書の受給
者,警察音楽隊演
奏会関係文書の出席者,警察施設用地取得関係機関会議に伴う懇談会関係文書の出
席者,地域住民と
の広聴会関係文書の出席者,出納監査事務検討会・事務指導に伴う懇談会関係文書
の出席者のうち,
本件処分の変更決定(旅費関係)及び本件処分の変更決定(食糧費関係)の時点ま
でに宮城県職員録
又は新聞の人事異動記事により氏名が公表されていない者の「氏名」,「印影」及
び「サイン」(た
だし,予算執行に係る警察職員情報は開示されている。)
  イ 宮城県警察職員以外の警察職員関係
 出納監査事務検討会・事務指導に伴う懇談会の施行伺の出席者名簿の本件処分の
変更決定(食糧費
関係)の時点までに所属機関の職員録又は新聞の人事異動記事で氏名が公表されて
いない者の「氏名」
 (2) 被告の主張
  ア 当該職員情報は,4号に該当する。
  イ(ア) 4号の解釈
 4号は,公共の安全と秩序の維持に支障が生ずる「おそれ」をもって非開示の理
由とするのみで,
その顕著性を要件としていないのであるから,直接的あるいは間接的に公共の安全
と秩序の維持に支
障が生ずるおそれがある情報を非開示としたものと解すべきであり,「おそれ」の
内容については,
必要な程度に具体的に特定しておれば,概括的な主張で足りると解すべきである。
   (イ) 4号のおそれの具体的内容
    a. 警察は,犯罪捜査の面では,第一次捜査権を有し,犯罪現場において
直接に被疑者らと
対峙し,警察規制の面では,警察規制を物理的かつ強制的に実現するものであるか
ら,相手方からの
反発,反感を招きやすい。よって,警察組織は,他の国家機関と比べ,攻撃の対象
とされるおそれが
高いものである。
  b.(a) 宮城県警察本部総務室が所掌している各課(総務課,会計課,広
報課及び情報管理
課)は,警察官及び一般職員(事務吏員・技術吏員)を擁し,捜査活動を直接に又
は側面から支援す
るなど犯罪捜査と直結する警察業務を担当している。また,総務室と捜査部門等と
の間では,活発な
人事交流が行われている。
    (b) 警察職員の氏名を開示した場合,当該警察職員の特定が可能となる
のはもちろん,
公表されている総務室各課の所掌事務や既に開示された起案者の所属課,役職等の
情報から,当該警
察職員の担当職務等の特定が可能となる。総務室の業務が,上記のとおり,捜査活
動に密接に関連し
ていることからすると,直接の捜査部門等ではないからといって,総務室の警察職
員が襲撃,工作等
の標的にならないとはいえず,当該警察職員の氏名又は印影が公開されることによ
り,当該警察職員
及びその家族が特定され,そのプライバシーが侵害されるとともに,攻撃や懐柔等
が行われるおそれ
がある。
    c.(a) 平成7年の警察庁長官狙撃事件等にみられるように,警察官ある
いは警察施設が攻
撃された事例が全国的に多発しており,宮城県においても,警察職員及び家族に対
する嫌がらせが,
現に生じており(証人X(乙16を含む。以下,同じ。以下「証人X」とい
う。)),警察に怨みを
持つ人物が,新聞に掲載された警視(同相当職を含む。)以上の警察職員の氏名を
見て,勤務先に脅
迫内容の葉書を送りつけてきたという実例が存在する(乙17)。
     (b) このように,警察職員の氏名を非開示としている現状において
も,現に嫌がらせ等
が発生しているのであるから,職員情報が開示された場合,これまで以上に攻撃や
嫌がらせを受ける
ことは必至である。
 (3) 原告の主張
  ア 職員情報は4号に該当しない。
  イ(ア) 4号の解釈
 4号のおそれを単なる危惧感や極めて抽象的なもので足りると解することは,公
共安全情報も情報
公開の対象であるとした上で,例外的に非開示事由を規定する県条例の趣旨及び構
造に明らかに反す
ることになる。したがって,4号のおそれについては,支障が生ずる蓋然性をその
要件と解すべきで
ある。
   (イ) そもそも警察業務のみが相手方の反発等を招きやすいわけではない。
公権力に関わる機
関,例えば,裁判所,検察庁,国税局であれば,相手方の反発を招きやすいといえ
るのであり,警察
のみが職員の氏名を非開示にしなければならないほど,常に反発や抵抗にさらされ
ているものではな
い。
   (ウ) 被告が主張する警察関係者及び警察施設に対する攻撃と,警察職員の
氏名等の開示との
間には,因果関係がない。すなわち,
    a. 4号のおそれを理由に警部補以下の警察職員の氏名等を非開示にした
ところで,警察職
員は名札を付けて一般市民と対応し,あるいは所属及び氏名を名乗って職務を遂行
しているのである
から,その氏名や所属は容易に判明する。
    b.(a) 真に被告が主張する危惧が存在するのであれば,警部(同相当職
を含む。)以上か
どうかにかかわりなく,警察職員の人事異動に関する情報については一切これを新
聞で公表し得ない
はずであるのに,実際には公表されているということが,4号のおそれが存在して
いないことを示し
ている。被告が新聞紙上での公表を警部(同相当職を含む。)以上の職員に限定し
ているのは,紙面
のスペース上の制約が存するためにほかならない。
     (b) 通常,警部(同相当職を含む。)以上の警察職員の方が,警部補
(同相当職を含む。
)以下の職員よりも攻撃,懐柔,嫌がらせ等が受けるおそれが高いと思われるとこ
ろ,警部(同相当
職を含む。)以上の警察職員の氏名を公表することによって,警部(同相当職を含
む。)以上が攻撃
対象になりがちであるといった状況にはない。
    c. 証人Xが証言する警察官等が攻撃された事例は,数の上でも少ないし
(年間十数件程度
),職員情報の開示非開示とは無関係に,単に警察が襲撃された事件を挙げただけ
である。しかも,
情報公開制度において職員情報等が開示されていない段階における事案であるか
ら,警察職員の氏名
等の開示と上記事例の発生との間に因果関係はない。
3 争点3(部隊給食に係る金額情報の4号該当性)
 (1) 文書との関係の説明
 部隊給食に係る金額情報の理由で非開示とされた文書は,次のとおりである。
  ア 施行伺における所要経費の内訳(種別,単価,数量,金額)
  イ 請求書におけるアと同様の記載
  ウ 施行確認書における給食支給数の記載
 (2) 被告の主張
  ア 部隊給食に係る金額情報は,4号に該当する。
  イ 給食支給数又はそれをうかがわせる計算を開示した場合,食糧費の執行に
係る警察活動の人
員の概要が割り出され,実際に投入した警察力が明らかとなり,宮城県警察の動員
力が推測され得る
から,何らかの犯罪を企図する人物等にとって,警察活動に対する対抗措置を執る
ことが容易となり,
今後の警察活動に支障が生ずるおそれがある。
 (3) 原告の主張
  ア 部隊給食に係る金額情報は,4号に該当しない。
  イ 仮に,給食支給数等を開示することにより,警察力が判明したとしても,
そのことと,判明
した警察力を基に犯罪がされることとの因果関係について,被告は何ら具体的な主
張立証をしていな
いから,そのような情報を公開しても,警察活動に対する対抗措置が容易となると
はいえない。
4 争点4(部隊編成情報の4号該当性)
 (1) 文書との関係の説明
 部隊編成情報の理由で非開示とされた文書は,施行伺の別添「給食調書」(表題
部以外)に記載さ
れた部隊名,隊員数及び給食数である。
 (2) 被告の主張
  ア 部隊編成情報は,4号に該当する。
  イ(ア)a. 警察部隊は,犯罪阻止等の目的別特殊任務部隊が編成されており,
部隊名から各部隊
の担当任務を容易に推察でき(個別部隊名そのものが担当任務を端的に表す場合も
ある。),その結
果,当該部隊の役割分担及び人員数が明らかになり,将来の部隊活動の中身を推測
し得ることになる。
    b. したがって,同種事案を企図する人物等が,部隊編成に関する情報収
集を蓄積すること
により,容易に対抗手段を講ずることが可能となり,警察活動の推進に支障が生ず
るおそれがある。
   (イ) 重要な式典等について警察官の動員数を公表する場合でも,一般的広
報及び一般予防の
観点から,その概数を公表しているにすぎず,部隊編成の詳細を公表しているもの
ではないから,部
隊編成に関する情報が秘密性を有しないことにはならない。
 (3) 原告の主張
  ア 当該部隊編成情報は,4号に該当しない。
  イ(ア) 警察は,重要な国際会議,式典,警備活動に当たって動員された警察
官数を報道機関に
公表しているのであるから,そもそも投入した警察官数は秘匿すべき情報には当た
らない。
   (イ) 部隊編成情報を開示した結果警察力が判明したとしても,そのことと
警察活動に対する
対抗措置が執られることとの因果関係について,被告は具体的な主張立証をしてい
ない。
5 争点5(文書集配業務情報の4号該当性)
 (1) 文書との関係の説明
 文書集配業務情報の理由で非開示とされた情報は,旅行命令(依頼)票に記載さ
れた「旅行期間」
欄(旅行の始期及び終期。なお,旅行日数は開示されている。)及び「目的地」欄
である。
 (2) 被告の主張
  ア 当該文書集配業務情報は,4号に該当する。
  イ(ア) 4号のおそれの具体的内容
    a. 総務課の担当する文書集配業務は,秘密文書及び捜査記録等の警察文
書並びに重要装備
品等を集配する業務であり,集配日程のパターン及びルートを頻繁に変更すること
は困難であるから,
旅行期間及び目的地を開示した場合,現在の集配日程やルートを推測することが可
能となり,警察活
動を妨害しようとする人物等によって,集配日程が把握され,襲撃等を受けるなど
の支障が生ずるお
それがある。
    b. 被告は,本件処分の変更決定(旅費関係)において,文書集配業務に
係る交通手段情報
を既に開示したところであり,新たに旅行期間及び目的地を開示すれば,文書集配
業務全体を把握す
ることが可能となるだけでなく,警察職員の旅行先が特定されることにより,捜査
活動や特殊業務の
概要が推測されることになる。
   (イ) 原告は,一般文書の集配に係る情報についてまで一律に非開示にする
必要はない旨主張
するが,集配物には,秘密文書,捜査情報に関する資料,重要装備品等の直接的に
警察活動に影響を
及ぼすものと,一般文書及び一般装備品とが混在しており,一般文書等の集配のみ
を開示できるとい
うものではない。
 (3) 原告の主張
  ア 当該文書集配業務情報は,4号に該当しない。
  イ(ア) 秘密文書及び重要装備品等の集配についてはともかく,一般文書の集
配に係る情報につ
いてまで,一律に非開示にする必要はない。
   (イ)a. 目的地の具体的内容は,警察組織内の限られた行先(各警察署)で
あろうと推測され
るところ,それが開示されたからといって,集配日程が把握され,襲撃を受ける等
の支障が生ずるお
それが生ずるとは思えない。
    b. 目的地情報の開示と,集配日程が把握され襲撃等を受けるなどの支障
が生ずることとの
因果関係が不明である。
   (ウ) 仮に,目的地名を非開示にする場合であっても,旅行期間から集配日
程が把握されるこ
とはないから,旅行期間までを非開示にする必要はない。
6 争点6(預金口座情報)
 (1) 預金口座情報関係で非開示とされた情報は,旅費受領代理人の普通預金口座
の口座番号及び
お客様番号である。
 (2) 被告の主張
  ア 口座番号等の情報は,4号に該当する。
  イ(ア) 口座番号等が公開すれば,警察業務を妨害しようとする人物等が,預
金残高,入出金状
況の割出し及び不正引出し等を行う客観的な危険が存在する。
   (イ)a. 旅費受領代理人の預金口座は,旅費の出納事務上,1円の誤差も許
されない出納が要
求されるところ,架空の入金等があればその性質等を調査する必要が生ずるから,
架空入金によって
出納事務を混乱に陥れることが可能となる。
    b. 現実にも,大学名義の銀行口座等に正体不明の会社から振込みが繰り
返された実例が存
在する(乙14)。
 (3) 原告の主張
  ア 口座番号等の情報は,4号に該当しない。
  イ(ア) 口座番号等の公開により,預金残高,入出金状況の割り出し及び不正
引出し等が行われ
る危険が存在することの具体的理由,根拠は,何ら明らかにされていない。
   (イ) 仮に架空入金があったとして,何故にそれが警察活動に対する妨害と
なるのか疑問であ
るし,そもそも架空入金を行おうとする者などいるはずもないから,被告が主張す
るようなおそれは,
およそあり得ない。
第5 当裁判所の判断
1 争点1(職務の級情報の2号該当性)について
 (1)ア 弁論の全趣旨によれば,宮城県職員の職務の級とは,おおよそ勤務経歴,
勤続年数等によ
って,個々の職員につき定められたものであるところ,宮城県職員の給与等級は
「職員の給与に関す
る条例」で公開されているため,既に氏名を開示した警察職員の職務の級を開示し
た場合,当該職員
の給与額がある程度推測される事態となることが認められる(ただし,号俸までは
開示されないから,
給与額はある程度の幅として推測されるものである。)。したがって,氏名が開示
されている警部(
同相当職を含む。)以上の職員の職務の級は,2号本文に規定する個人に関する情
報であって,特定
の個人が識別されるものに該当すると認められる。
  イ そして,上記職務の級が同号ただし書イ(公開が予定されている情報)に
該当しないことは
明らかである。
  ウ また,同号ただし書ロは,開示すべき情報として,「当該個人が公務
員・・・である場合に
おいて,当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは,当該情報のうち,当
該公務員の職,氏
名及び当該職務遂行の内容に係る部分」と規定しているところ,同号ただし書ロの
「職」に職務の級
が含まれると解することはできないから,職務の級は同号ただし書ロの規定する開
示すべき情報にも
該当しない。
  エ これに反する原告の主張は採用することができない。
 (2) 以上によれば,職務の級に関する部分について2号該当をいう被告の主張は
は,理由がある。
2 争点2(職員情報の4号該当性)について
 (1) 各項に掲げた証拠等によれば,以下の事実が認められる。
  ア 県警総務室の構成及び業務内容
   (ア) 宮城県警察本部総務室は,総務課,会計課,広報課及び情報管理課の
合計4課の事務を
所掌しており,各課に警察官及び一般職員(事務吏員,技術吏員)が配置されてい
る。
(乙8,証人X,弁論の全趣旨)
   (イ) 総務課の所掌事務は,宮城県警察組織規則上,①機密に関すること,
②県議会との連絡
に関すること,③警察職員の応援要請及び派遣に関すること及び④公安委員会補佐
室の運営に関する
こととされているが,具体的には,警察本部長及び公安委員会に係る事務であり,
公安委員会事務に
ついては,他県に対する又は他県による援助要請の窓口となっており,必然的に捜
査機密情報が集約
される。
(乙8,証人X)
   (ウ) 会計課の所掌事務は,宮城県警察組織規則上,①予算・決算及び会計
に関すること,②
財産及び物品の管理及びこれらの処分に関すること,③会計の監査に関すること,
④庁舎の営繕に関
すること,⑤遺失物に関すること及び⑥会計調査室の運営に関することとされてい
る。
 具体的には,犯罪捜査を始めとする警察業務全般にわたる予算的な業務等であ
り,その中には,装
備品機材等の機密品の購入業務も含まれる。
(乙8,証人X)
   (エ) 広報課の所掌事務は,宮城県警察組織規則上,①広報,広聴に関する
こと及び②音楽隊
の運営に関することとされている。
 具体的には,犯罪捜査を始めとした警察情報に対する報道対応業務等であり,広
報課には,最新の
機密情報が集約されることになる。
(乙8,証人X)
   (オ) 情報管理課の所掌事務は,宮城県警察組織規則上,①情報の管理に関
する企画及び技術
的研究並びに電子計算組織の運用に関すること,②犯罪統計を除く警察統計に関す
ること,③事務能
率の増進に関すること及び④照会センター及びハイテク犯罪技術対策室の運営に関
することとされて
いる。
 具体的には,電子計算機等の構築及び運用業務等であり,その中には,犯罪経歴
等の個人情報の管
理,現場警察官からの照会に対する回答業務及びコンピュータ犯罪捜査への従事
(データ解析)が含
まれる。
(乙8,証人X)
   (カ) 総務室勤務の警察職員は,警察官,一般職員を問わず,頻繁な人事交
流により,捜査部
門,警備部門等に勤務したことがあり,将来もそれらの部門に勤務することが予定
されている。
(証人X)
  イ 階級別の特色
   (ア) 警視以上
 宮城県警において,警視(同相当職を含む。)以上の警察職員は,一般職員を含
む全警察職員(約
3400人)の約3パーセントを占めている。
 警視(同相当職を含む。)以上の警察職員は,指導的,管理的な業務を担当して
いる。
(証人X)
   (イ) 警部
 宮城県警において,警部(同相当職を含む。)である警察職員は,一般職員を含
む全警察職員(約
3400人)の約7パーセントを占めている。
 警部(同相当職を含む。)である警察職員は,管理的立場にある警視に近い警部
から,警部補に近
い警部まで存在する。
(証人X)
   (ウ) 警部補以下
 宮城県警において,警部補(同相当職を含む。)以下の警察職員は,一般職員を
含む全警察職員(
約3400人)の約90パーセントを占めている。
 警部補以下の警察職員は,捜査業務等の実働を担当している。
(証人X,弁論の全趣旨)
  ウ 警察業務の特殊性
 警察業務は,「警察は,個人の生命,身体及び財産の保護に任じ,犯罪の予防,
鎮圧及び捜査,被
疑者の逮捕,交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもってその責
務とする。」(警
察法2条)とあるとおり,犯罪捜査及び警察規制を目的としている。そして,「検
察官は,必要と認
めるときは,自ら犯罪を捜査することができる。」(刑事訴訟法191条1項)と
規定されていると
おり,犯罪捜査権は,主として警察官によって行使されることが予定されている。
したがって,警察
官は,犯行現場や警察規制の現場で,直接被疑者や被規制者と対峙し,逮捕や規制
の結果を直接かつ
強制的に実現するものであるから,その職務は,その相手方個人や過激派,暴力団
等の組織からの反
発,反感を招きやすいものである。実際,全国的には,成田関係の警備に当たる機
動隊員が過激派学
生に襲撃されて殺害されたり,交番が襲撃されたり,警察署が金属弾を打ち込まれ
たり,警察官の自
宅に猫の首が投げ込まれる事件が発生している。宮城県においても,被疑者や交通
違反で呼出しを受
けた者が担当警察職員に対し,警察職員及びその家族に仕返しをすることを明言し
たり,ほのめかし
て脅迫する例等が数多く発生しており,その発生頻度は,裁判官,検察官,税務署
員らに対するそれ
を超えるものである。
 また,警察職員の配置を含む警察業務に関する情報は,一般市民にとっては些細
な情報であっても,
犯罪の実行や仕返しを目論む組織や個人にとっては,貴重な情報となることがあ
り,犯罪捜査及び警
察規制を業務とする警察は,そのような情報が犯罪組織等に入手されることを防止
する必要がある。
実際,過激派組織が警察無線を傍受したり,公安担当の警察官について家族構成を
含めた情報を収集
しデータベース化した例や,出所した者が地方自治体に自己の事件を担当した警察
官の転勤先を執よ
うに尋ねる例があった。
(乙4,17,証人X,弁論の全趣旨)
 (2)ア 以上の認定事実によれば,警察の業務は,相手方からの反発,反感を招き
やすく,警察職
員が攻撃や懐柔の対象とされるおそれが高いものであるところ,総務室勤務の警察
職員は,捜査部門
等の警察職員と組織的に一体となって犯罪捜査及び警察規制の業務に従事している
ものであるから,
外部からは総務室勤務の警察職員も警察組織の一員とみなされ,攻撃や懐柔の対象
とされるおそれが
高いものと認められる。したがって,氏名等の職員情報は,宮城県警察職員か,宮
城県警察職員以外
の警察職員かを問わず,4号に該当すると認めるべきである。
  イ 原告は,警察業務のみが相手方の反発等を招きやすいわけではない旨主張
するが,前記認定
の逮捕や規制の結果を直接かつ強制的に実現するという警察の業務の特殊性を考慮
すると,原告が指
摘する裁判所,検察庁,国税局との比較においても,反発の程度や頻度において差
があるものと認め
ざるを得ず,この点の原告の主張は採用することができない。
  ウ 原告は,警察職員や警察施設への攻撃等と警察職員の氏名等の開示との間
には因果関係がな
い旨主張する。
 確かに,警察署や交番の所在は隠しようがないから,警察署への金属弾攻撃や交
番の襲撃について
は,警察職員の氏名等の開示との間に因果関係はないと考えられる。
 しかし,暴力団事件の内偵や公安関係の捜査及び情報収集は,必ずしも警察官が
名札を付けて行う
ものではないと認められるところ,警察内部における配置をうかがわせる情報が開
示されれば,暴力
団事件の内偵や公安関係の捜査及び情報収集を行っている警察官の特定が容易にな
り,暴力団や過激
派組織による攻撃及び懐柔のおそれが増すものと認められる。さらに,執念深い犯
罪者を念頭におけ
ば,総務室関係の文書開示により,過去に自分の事件を担当した警察官の転勤先を
知ることができる
場合があるから,このような犯罪者による仕返しに手を貸すことになる。
 よって,原告のこの点の主張は採用することができない。
  エ 原告は,被告が主張する危惧が存在するのであれば,被告が新聞紙上で警
部以上の警察職員
の人事異動を公表していることの説明が付かない旨主張する。
 この点については,前記認定のとおり,警部補以下の警察職員(一般職員を含
む。)は全宮城県警
察職員の約90パーセントを占め,捜査業務等の実働を担当しているところ,現場
で直接被疑者等と
接触する警部補以下の警察職員は,それだけ脅迫や仕返しを受けやすいと考えられ
る。そして,弁論
の全趣旨によれば,警部(同相当職を含む。)以上の者については,指導的,管理
的職務を遂行する
ための氏名開示の必要性と,攻撃や懐柔を受けるおそれがあるため氏名を非開示と
する必要性とを衡
量した結果,異動の際,新聞紙上で氏名が公表されているものと認められる。
 よって,警部補以上の氏名を公表していることから立論する原告の上記主張は採
用することができ
ない。
 (3) 以上によれば,職員情報に関する部分につき4号該当をいう被告の主張は,
理由がある。
3 争点3(部隊給食に係る金額情報の4号該当性)及び争点4(部隊編成情報の
4号該当性)につ
いて
 (1) 部隊給食に係る金額情報を開示すれば,ある警察活動に従事した部隊数,人
員数が判明し,
いかなる事案にどの程度の警察力が投入されたかが判明することになる。
 その結果,過激派等の組織が犯罪行動を起こす場合に,警察の対応を予測して計
画を立てることが
容易となることが認められるから,部隊給食に係る金額情報は,4号に該当すると
認めるべきである。
 (2) 部隊編成情報のうち,隊員数及び給食数が4号に該当することについては,
上記(1)で述べた
理由と同一である。
 弁論の全趣旨によれば,部隊名として,担当任務を表す部隊名が採用されている
ことが多いことが
認められ,部隊名が開示されれば,ある事案にどのような部隊が投入されたかが判
明することになる。
この部隊名の情報は,投入された人員数と相まって,過激派等の組織が犯罪行動を
起こす場合に,警
察の対応を予測して計画を立てることを容易にするものと認められるから,部隊名
も,4号に該当す
ると認めるべきである。
 (3)ア 原告は,部隊給食に係る金額情報等を開示した結果警察力が判明すること
と,警察活動に
対する対抗措置が執られることとの間の因果関係について,具体的な立証はない旨
主張するが,4号
の規定する「おそれ」があることは,前記認定の事実から容易に認められるところ
であり(「宮城県
の情報公開事務の手引」(乙1)も,4号の非開示情報の例として,「犯罪の捜査
等の手段,方法等
に関する情報」及び「警備の状況等に関する情報」を想定している(20
頁)。),この点の原告の
主張は採用することができない。
  イ 原告は,警察は,重要な式典等に当たって動員された警察官数を公表して
いるから,投入し
た警察官数は秘匿すべき情報には当たらない旨主張する。
 しかしながら,弁論の全趣旨によれば,重要な式典等について警察官の動員数を
公表する場合でも,
一般的広報及び一般予防の観点から,その概数を公表しているにすぎず,部隊編成
の詳細を公表して
いるものではないことが認められるから,そのような発表がされていることをもっ
て,部隊給食に係
る金額情報等が秘密性を有しないことにはならず,この点の原告の主張は採用する
ことができない。
 (4) 以上によれば,部隊給食に係る金額情報及び部隊編成情報につき4号該当を
いう被告の主張
は,理由がある。
4 争点5(文書集配業務情報の4号該当性)について
 (1) 弁論の全趣旨によれば,文書集配業務は,一般文書及び一般装備品,並びに
秘密文書,捜査
記録等の警察文書及び重要装備品等を警察署を始めとする各施設との間で集配する
業務であること,
集配日程のパターン及びルートを頻繁に変更することは困難であること,目的地を
開示すれば,行き
先は明らかとなり,旅行期間を開示すれば,おおよその集配日程及びルートを推測
することが可能と
なるものと認められる。
 このような文書集配業務情報の性質からすると,これらの情報が開示されれば,
過激派等の組織が,
文書集配業務を妨害し,装備品等を奪取することが容易となるものであり,文書集
配業務情報は4号
に該当するものと認めるべきである。
(2)ア 原告は,一般文書の集配に係る情報についてまで一律に非開示にする必要
はない旨主張す
るが,前記認定のとおり,実際の文書集配業務は,一般の文書等と秘密文書等とを
一緒に集配するも
のであるから,この点の原告の主張は,前提を欠き,採用することができない。
イ 原告は,目的地情報の開示と,集配日程が把握され襲撃等を受けるなどの
支障が生ずること
との間の因果関係が不明であるなどと主張するが,4号の規定する「おそれ」があ
ることは,前記認
定の事実から容易に認められるところであり,この点の原告の主張は採用すること
ができない。
  ウ 原告は,目的地名を非開示にする場合であっても,旅行期間から集配日程
が把握されること
はないから,旅行期間までを非開示にする必要はない旨主張する。
 しかしながら,前記認定のとおり,旅行期間には出発日と帰着日が記載されてい
るものであるから,
旅行期間から集配日程が把握されるおそれがあると認めざるを得ないものであり,
この点の原告の主
張は採用することができない。
 (3) 以上によれば,文書集配業務情報に関する部分につき4号該当をいう被告の
主張は,理由が
ある。
5 争点6(預金口座情報)について
 (1) 証拠(乙14,15)及び弁論の全趣旨によれば,ある者の銀行預金の口座
番号及びそれと
同一番号であるお客様番号を公開した場合,預金残高及び入出金状況を割り出し,
不正引出しを行う
ことが技術的に可能であり,預金残高の調査等を売り物にしている調査会社,探偵
社が数多く存在す
ることが認められる。
 前記のとおり,警察の業務は,逮捕や規制の結果を直接かつ強制的に実現するも
のであり,警察業
務に関する情報は,犯罪の実行や仕返しを目論む個人や組織にとって貴重な情報と
なることがあるか
ら,口座番号等が公開されれば,警察業務を妨害しようとする個人や組織が,預金
残高,入出金状況
の割り出し及び不正引出し等を行うおそれがあると認められ,したがって,預金口
座情報は,4号に
該当するものと認めるべきである。
 (2) 原告は,預金口座番号等の公開により,預金残高の割り出し,不正引出し等
が行われる危険
が存在することの具体的理由,根拠は,何ら明らかにされていない旨主張するが,
4号の規定する「
おそれ」があることは,前記認定の事実から容易に認められるところであり,この
点の原告の主張は
採用することができない。
 (3) なお,正体不明の振込みが行われる可能性がある点から,4号の非開示事由
があると認める
ことはできない。
 (4) 以上によれば,預金口座情報に関する部分につき4号該当をいう被告の主張
は理由がある。
6 結論
 以上によれば,原告の請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することと
し,訴訟費用の負
担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決す
る。
  仙台地方裁判所第3民事部
           裁判長裁判官市川正巳
              裁判官工藤哲郎
 裁判官千々和博志は,退官のため,署名押印することができない。
           裁判長裁判官市川正巳
(別 紙)
文書目録①
 平成7年度宮城県警察本部総務室の食糧費に係わる一切の資料中の下記の部分

 (1)部隊給食の金額情報のうち,
① 所要経費の内訳
② 給食支給数
③ 請求書の内訳欄の「種別」,「数量」,「単価」及び「金額」
④ 給食調書の表題部分を除く部分
 (2)職員に関する情報のうち,
① 宮城県警察職員にあっては,平成12年5月15日付け本件部分開示決
定変更決定時点ま
でに宮城県職員録又は新聞の人事異動記事により氏名が公表されていない者の「氏
名」及び「印影」
② 宮城県警察職員以外の警察職員にあっては,上記変更決定までに所属機
関の職員録又は新
聞の人事異動記事により氏名が公表されていない者の「氏名」
文書目録②
 宮城県警察本部総務課職員の出張に関する一切の資料(平成6年,7年)及び旅
費受領者代理人普
通預金通帳(平成5,6,7年度)中の下記の部分

 (1)旅行者(平成12年5月15日付け本件部分開示決定変更決定時点までに
宮城県職員録又は
新聞の人事異動記事により氏名が公表された者を除く。)の「氏名」及び「印影」
 (2)文書集配用務に係わる旅行の「行先情報」及び時期情報のうち,「旅行期
間」
 (3)旅費受領代理人の預金口座情報のうち,「預金口座番号」及び「お客様番
号」
 (4)旅行者(氏名が開示されない者を除く。)の「職務の級」
別紙1
区        分当初決定答申後
非開示開 示
非開示開 示
非開示非開示
非開示開 示
行先情報非開示非開示
非開示開 示
非開示開 示
非開示開 示
非開示開 示
非開示開 示
非開示開 示
非開示開 示
非開示開 示
非開示開 示
非開示開 示
非開示開 示
非開示開 示
金額情報非開示開 示
行先情報非開示開 示
非開示開 示
用務情報非開示開 示
警部(相当職)非開示開 示
警部補(相当職)以下非開示非開示
警部(相当職)非開示開 示
警部補(相当職)以下非開示開 示
警部(相当職)非開示非開示
警部補(相当職)以下非開示開 示
警部(相当職)非開示開 示
警部補(相当職)以下非開示非開示
警部(相当職)非開示開 示
旅行命令(依頼)票の決裁欄印影警部(相当職)非開示開 示
非開示開 示
非開示開 示
非開示開 示
非開示開 示
非開示非開示
非開示開 示
非開示非開示
非開示開 示
非開示開 示
非開示開 示
非開示開 示
非開示開 示
非開示開 示
総務課の旅費及び旅費受領代理人普通預金通
帳に係る非開示情報一覧表
警察職員に関する情

支店電話番号
店コード
支店名
預金口座情報旅費受領代理人の預
金口座に関する情報
お預り金額
差引残高
銀行員の印影
印影
旅行者(旅費受領
者)
受領月日
時期情報
旅行命令日
旅行期間
時期情報
目的地
旅行内容
取引年月日
取引種別
お支払金額
氏名
旅費氏名コード
職務の級
旅費受領代理人氏名
預金口座番号
口座名義人
預金種別
お客様番号
当 初 の 非 開 示 情 報
交通手段
旅費額
支払日
精算確認年月日
受領月日
泊数
復命書年月日
支払希望日
捜査関係用務に係る
旅行に関する情報
文書集配用務に係る
旅行に関する情報
支払希望日
支払日
旅行期間
目的地
交通手段
支出命令確認日(空欄)
支出負担行為日(空欄)
支出命令日
総務室の食糧費に係る非開示情報一覧表
別紙2
区    分当初決定高裁判決答申後
非開示非開示開 示
非開示非開示開 示
非開示非開示開 示
非開示非開示開 示
非開示非開示開 示
非開示非開示開 示
非開示非開示開 示
非開示非開示開 示
非開示非開示開 示
非開示非開示開 示
非開示非開示開 示
非開示非開示開 示
非開示非開示開 示
非開示非開示開 示
非開示非開示非開示
非開示非開示非開示
種別非開示非開示非開示
規格、品質(空欄)非開示非開示開 示
単位(空欄)非開示非開示開 示
数量非開示非開示非開示
単価非開示非開示非開示
金額非開示非開示非開示
非開示非開示開 示
非開示非開示非開示
非開示開 示
非開示開 示
非開示開 示
非開示開 示
非開示開 示
非開示開 示
非開示開 示
非開示開 示
非開示開 示
非開示開 示
非開示開 示
非開示開 示
警部(相当職)非開示非開示開 示
警部補(相当職)以下非開示非開示非開示
警部(相当職)非開示非開示開 示
警部補(相当職)以下非開示非開示非開示
警部(相当職)非開示非開示開 示
警部補(相当職)以下非開示非開示開 示
警部(相当職)非開示非開示開 示
警部補(相当職)以下非開示非開示非開示
警部(相当職)非開示非開示開 示
警部補(相当職)以下非開示非開示非開示
警部(相当職)非開示非開示開 示
警部補(相当職)以下非開示非開示非開示
印影警部(相当職)非開示非開示開 示
警部(相当職)非開示非開示開 示
警部補(相当職)以下非開示非開示非開示
警部(相当職)非開示非開示開 示
警部補(相当職)以下非開示非開示非開示
警部(相当職)非開示非開示開 示
警部補(相当職)以下非開示非開示非開示
支払方法欄
支払い方法
非開示非開示警部(相当職)
氏名
印影
検収者
開 示
氏名
施行伺決裁欄印影
時間外勤務夜食受給者の氏名
警察音楽隊演奏会出席者の氏名
文教警察委員会県内・県外調査に
伴う懇談会の出席者氏名
施行確認者
受取人情報
氏名
印影
内線番号
起案者
預金種別
預金口座番号
口座名義人
受取人欄
代表者印影
電話番号
銀行名・支店名
店コード
郵便番号
所在地
社名(屋号)
代表者氏名
当 初 の 非 開 示 情 報
所属

氏名
施行確認年月日のうち月日
用務情報(件名)
施行理由
金額情報
請求書の内訳欄
施行年月日のうち月日
検収年月日のうち月日
捜査に係る懇
談会に関する
情報
相手方情報(警察
OB有識者)
相手方情報(関係
機関の職員)
所属

氏名
施行理由
警察職員に関
する情報
部隊給食に関
する情報
所要経費の内訳
給食支給数
給食調書(表題部)
給食調書(表題部以外)
時期情報
施行場所
起案年月日のうち月日
警部(相当職)非開示非開示開 示
警部補(相当職)以下非開示非開示非開示
印影警部(相当職)非開示非開示開 示
警部(相当職)非開示非開示開 示
警部補(相当職)以下非開示非開示非開示
警部(相当職)非開示非開示開 示
警部補(相当職)以下非開示非開示非開示
警部(相当職)非開示非開示開 示
警部補(相当職)以下非開示非開示非開示
警部(相当職)非開示非開示開 示
警部補(相当職)以下非開示非開示非開示
報道機関との懇談会の出席者氏名警部(相当職)非開示非開示開 示
警部(相当職)非開示非開示開 示
警部補(相当職)以下非開示非開示非開示
警部(相当職)非開示非開示開 示
警部補(相当職)以下非開示非開示非開示
氏名が公表されている者非開示非開示開 示
氏名が公表されていない者非開示非開示非開示
非開示非開示警部(相当職)
警察施設用地取得関係機関会議に
伴う懇談会の出席者氏名
地域住民との広聴会の出席者氏名
出納監査事務検
討会・事務指導に
伴う懇談会の出
席者氏名
宮城県警察職員
宮城県警察職員
以外
開 示
氏名
施行伺決裁欄印影
時間外勤務夜食受給者の氏名
警察音楽隊演奏会出席者の氏名
文教警察委員会県内・県外調査に
伴う懇談会の出席者氏名
施行確認者
警察職員に関
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採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
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