弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役六月及び罰金二千円に処する。
     右罰金を完納することができないときは金百円を一日に換算した期間被
告人を労役場に留置する。
     右罰金についてはその仮納付を命ずる。
     原審(移送前)における訴訟費用は全部被告人の負担とする。
         理    由
 弁護人中山信一郎の控訴趣意は別紙記載の通りである。
 先づ第一点第七項において、弁護人は、本件は賍物故買の事件であるが、その訴
因において、被告人が買ひ受けた物品が如何なる犯罪によつて得たる賍物であるか
を明らかにしていないと攻撃するのである。よつて原審第二回(昭和二十四年十一
月二十五日)公判調書を見ると検察官の陳述した本件賍物故買罪の訴因は、
 被告人は、
 (イ) 昭和二十三年三月中空知郡a町A株式会社工場内においてBより同工場
の製品である含蝋油ドラム罐入二本を、その贓物たるの情を知りながら代価金一万
三千円で買い受け、
 (ロ) 同年五月初頃前同様同工場においてBからパラフイン一函を、その贓物
たるの情を知りながら代価金二千円で買い受けたものである。
 というのであつて、弁護人の主張の通り何罪による贓物であるかの点は明示され
ていないのである。
 <要旨>しかしながら訴因は公訴事実を具体的に示して被告人にその防禦の範囲を
明らかにする目的を有するものであつて、贓物故買罪においては目的物件が
犯罪によつて不正に領得せられた物であり且その情を知つて買ひ受くるときは、そ
れが如何なる犯罪によつて得たものであらうとも、又具体的に何人の如何なる犯罪
によつて得たものであるかを知らなくても、故買罪は成立するものであるから、右
に掲げた訴因で充分公訴事実が明示されて居るといはなければならない。従って弁
護人の右攻撃は理由がない。
 ところで控訴趣意の同項には、原判決中に、本件の物件が如何なる犯罪によつて
取得されたかを判示されていないと論ずるのであるが、原判決に認定した二個の事
実のうち(イ)の事実については「……含蝋油ドラム罐入二本をBが窃取したるの
情を知りながら代金一万二千円で買受け」と判示しているので、明らかに物件はB
が窃取による物であることが示されている。故にこの部分については弁護人の右主
張は理由がない。次に(ロ)の事実についても、「右Bより前同様の事と知りなが
ら代金二千円で買受け」と判示されているので、これも窃取にかかるものである趣
旨が窺へるのであるから、この点も、この理由では弁護人の主張は採用できない。
 次に第一点第十項には原審において弁護人の弁護権を不法に制限したと攻撃する
のである。よつてこの点について調査するに、原審において弁護人中山信一郎が私
選弁護人となつていたこと、同弁護人が昭和二十五年七月十五日附を以て同月二十
五日の公判期日の変更申請をしたこと、原審は右申請を却下し、同年七月二十五日
に弁護士高橋要を国選弁護人に選任したこと、同日の公判期日には右高橋弁護人の
出席の下に開廷され、弁論の終結を見たことは一件記録により明らかなところであ
る。被告人に私選弁護人がある場合には、できるだけその弁護人による弁護の利益
を被告人に受けさせるべきは勿論であるけれども、一方において公判期日は一旦指
定せられたものはできる丈変更しないとするのが訴訟法規の精神であつて、その弁
護人に、長期にわたつて公判期日に出席し得ないような事由のある場合には、審理
の迅速を図る理想の上からその弁護人の希望の日に開廷できないことも亦已むを得
ないことである。かかる場合にはその弁護人の公判期日変更申請を却下し、他に被
告人が弁護人を選任しないときは国選弁護人を附して開廷することは、弁護人の弁
護権を不法に制限したことにはならないのである。今本件に見るに原審私選弁護人
は七月二十五日の公判期日の変更を申請し、公判期日としては九月を希望している
のである。そもそも本件は昭和二十四年三月四日の起訴にかかり、途中で訴因の変
更、移送等のことがあつたため異常に審理の遅延している場合であつて、原審が本
件審理について更に約四十日近くの延長を見るような右変更申請を許可しなかつた
のは無理もないところと思はれるのである。
 従って右のような事実は弁護人の弁護権を不法に制限したことにはならないと判
断する。
 第一点のその余の各項目は原判決には事実の誤認があるといひ、一件記録及び証
拠に現はれた事実を採用するのである。よってこの点を調査するに一件記録によれ
ば原判決認定の(イ)の事実は弁護人の主張にも拘はらず充分これを認めることが
できるのであつて、この点については事実誤認があるとは信じられない。
 しかしながら職権を以て案ずるに原判決に罪となるべき事実の(ロ)として記載
したところは、
 (ロ) 被告人は昭和二十三年五月初頃a町A株式会社C事務所の工場内におい
てBより同人が窃取した事の情を知りながら代金二千円で買受同所から搬出した。
 という趣旨であつて、被告人がBから買ひ受けた物品が何であるかが判示されて
いないのである。これは即ち贓物罪の目的物を明らかにしないのであつて、罪とな
るべき事実の記載として不備である。従つてこれは刑事訴訟法第三百七十八条第四
号に規定するところの判決に理由を附せざるに当るのであつて、同法第三百九十七
条により原判決は破棄を免れないものといはなければならない。
 よつて控訴趣意第二点の量刑不当の点については茲に判断をせず、刑事訴訟法第
四百条但書により直に次の通り判決する。
 罪となるべき事実。
 被告人は、
 (イ) 昭和二十三年三月中北海道空知郡a町A株式会社工場内で、Bが同会社
から窃取した含蝋油ドラム罐入二本を、その贓物であることを知りながら同人から
代金一万二千円で買ひ受け、
 (ロ) 同年五月中前同所で、Bが同会社から窃取したピラフイン二十瓩入一函
を、その贓物であることを知りながら同人から代金二千円で買ひ受け、
 以て贓物故買をしたものである。
 証拠の標目。(省略)
 法令の適用。
 被告人の判示所為は各刑法第二百五十六条第二項に当るところ、犯行後罰金等臨
時措置法の施行により罰金額の変更があったので刑法第六条第十条により軽い従前
の刑に従ひ、刑法第四十五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法第四
十七条本文第十条により重いと認める判示(イ)の罪の懲役刑に併合罪の加重をな
し、その刑期範囲内において、又罰金刑については同法第四十八条第二項により法
定罰金額の合算額の範囲内において、被告人を懲役六月及び罰金二千円に処し、右
罰金を完納することができないときは刑法第十八条により金百円を一日に換算した
期間被告人を労役場に留置することとし、尚刑事訴訟法第三百四十八条により右罰
金の仮納付を命じ、原審移送前の訴訟費用は刑事訴訟法第百八十一条により全部被
告人の負担とするものとする。
 よつて主文の通り判決する。
 (裁判長判事 竹村義徹 判事 西田賢次郎 判事 河野力)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛