弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人高井重憲,同荒木和男の上告趣意のうち,憲法11条,13条,24条,
31条,36条違反をいう点は,死刑制度が憲法のこれらの規定に違反するもので
ないことは当裁判所の判例(最高裁昭和22年(れ)第119号同23年3月12
日大法廷判決・刑集2巻3号191頁,最高裁昭和32年(あ)第2247号同3
6年7月19日大法廷判決・刑集15巻7号1106頁)及びその趣旨に照らして
明らかであるから,理由がない。同上告趣意のその余は,事実誤認,量刑不当の主
張であり,被告人本人の上告趣意は,事実誤認,量刑不当の主張であって,いずれ
も刑訴法405条の上告理由に当たらない。
なお,所論に鑑み記録を調査しても,刑訴法411条を適用すべきものとは認め
られない。
付言すると,本件は,(1)JR東京駅地下3階を焼損しようとして放火した
が,建物に燃え移る前に消火されて未遂に終わったという現住建造物等放火未遂,
(2)従業員の給料用の現金を強取しようと企てて警備会社事務所に侵入し,従業
員にけん銃を突き付けて脅迫したが,現金を発見できず未遂に終わったという建造
物侵入,強盗未遂,(3)横浜中華街の中華料理店経営者(当時77歳)から売上
金等を強取しようと企て,その自宅敷地内において,同経営者を同けん銃で射殺
し,現金43万円余り等を強取したという強盗殺人,(4)地下鉄渋谷駅の駅員が
運ぶ同駅の売上金を強取しようと企て,朝の通勤時間帯の同駅構内において,通り
掛かった駅員(当時32歳)が持つ手提げ紙袋の中に同売上金が入っているものと
思い込み,同駅員に対し,殺意をもって同けん銃を発射し,重傷を負わせるととも
に,同紙袋等を強取し,その際,同けん銃1丁を適合実包5発と共に携帯して所持
したという強盗殺人未遂,けん銃発射,けん銃加重所持の各犯行からなる事案であ
る。被告人は,僅か1か月半余りのうちに相次いでこれらの各犯行に及んでいる。
上記各犯行の中でも取り分け悪質である(3)及び(4)の各犯行について見ると,被
告人は,かつて事業に成功した時期を忘れられず,新規事業のための大金を得たい
との考えから,これらの各犯行に及んだのであって,利欲的で身勝手な動機に酌量
の余地はなく,その人命軽視の態度は強い非難に値する。いずれも下見を繰り返す
などして行った計画性の高い犯行である上,(3)の犯行は,けん銃の銃口を被害者
の右頬に押し付けたまま発射してその頭部を撃ち抜いたものであり,(4)の犯行
も,至近距離からけん銃を発射して被害者の右腹部に弾丸を撃ち込んだものであっ
て,確定的殺意に基づく冷酷で残忍な犯行態様である。(4)の犯行が公共の場であ
る地下鉄駅構内において敢行されたものであることも軽視できない。被害者の貴重
な生命を奪った(3)の犯行の結果は極めて重大であり,(4)の犯行においても,被害
者は,全治まで約3か月間を要する胃損傷等のほか,脊椎損傷等の重篤な傷害を負
い,右足の完全麻痺等による両下肢機能障害の後遺障害に一生苦しむこととなった
のであって,その結果は誠に重大である。被害者らには何ら落ち度はなく,(3)の
遺族や(4)の被害者の処罰感情は非常に厳しい。これらの連続的に敢行されたけん
銃使用による強盗殺人事件及び強盗殺人未遂事件が社会に与えた不安や衝撃も大き
い。
また,(1)の犯行は,多数の乗客が利用する駅の地下において,積み上げた段ボ
ール紙等に灯油をまいて放火したというものであり,(2)の犯行も,実包の装塡さ
れたけん銃を突き付けたというものであって,いずれも危険性が高く悪質である。
被告人は,窃盗等の服役前科のほか,昭和54年に強盗致傷,銃砲刀剣類所持等
取締法違反により懲役5年に処せられ,平成8年に強盗致傷により懲役6年に処せ
られた各前科を有する上,服役中,かねてから保有していた上記けん銃を使用して
JR東京駅構内にある物品販売会社事務所から多額の売上金を強奪する計画を抱き
続け,平成16年4月に釈放されるや,1か月も経たないうちに同計画を実行しよ
うとしたが,同事務所の所在を発見できなかったためその腹いせ等から(1)の犯行
に及び,続いて(2)以下の各犯行に及んでいるのであって,被告人には根深い犯罪
傾向が認められる。
以上の事情に照らすと,(1)の犯行,(2)の強盗の犯行及び(4)の殺人の点はいず
れも未遂に終わったこと,被告人は,自己顕示のためとはいえ上記けん銃等を携帯
して自ら警視庁本部に出頭して(4)の犯行について自首し,その後,(1)及び(2)の
各犯行についても自首したこと,本件各事実を認めて反省の情を示し,(3)の遺族
や(4)の被害者らに謝罪の手紙を送付したこと,被告人の生育歴や生育環境には不
遇な面があり,これが本件各犯行の背景にある被告人の偏った性格等の形成に影響
していること等被告人のために酌むべき事情を十分考慮しても,被告人の刑事責任
は極めて重大であり,原判決の死刑の科刑は,当裁判所もこれを是認せざるを得な
い。
よって,刑訴法414条,396条,181条1項ただし書により,裁判官全員
一致の意見で,主文のとおり判決する。
検察官小川新二公判出席
(裁判長裁判官田原睦夫裁判官那須弘平裁判官岡部喜代子裁判官
大谷剛彦)

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