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平成23年6月9日判決言渡同日原本交付裁判所書記官
平成19年(ワ)第5015号特許権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日平成23年3月8日
判決
原告ニシハツ産業株式会社
(以下「原告ニシハツ産業」という。)
原告ニッカ電測株式会社
(以下「原告ニッカ電測」という。)
原告ら訴訟代理人弁護士生沼寿彦
同飯島歩
同敷地健康
同訴訟復代理人弁護士橋本道成
同中村小裕
原告ら補佐人弁理士横井知理
被告株式会社川島製作所
(以下「被告川島製作所」という。)
被告有限会社カワシマ産業
(以下「被告カワシマ産業」という。)
被告ら訴訟代理人弁護士原誠
同佐々木健二
同井上順之
被告ら補佐人弁理士合志元延
主文
1被告らは,連帯して,原告ニシハツ産業及び原告ニッカ電測に対し,それ
ぞれ5941万7554円及びうち5821万6402円に対する平成1
9年5月15日から,うち19万5524円に対する平成19年7月1日か
ら,うち100万5628円に対する平成20年7月1日からそれぞれ支払
済みまで年5%の割合による金員を支払え。
2原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
3訴訟費用は,これを5分し,その3を原告らの,その余は被告らの負担と
する。
4この判決は,原告ら勝訴部分に限り,仮に執行することができる。ただし,
被告らが,各原告に対し,それぞれ4200万円の共同担保を供するときは,
その仮執行をそれぞれ免れることができる。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1原告ら
(1)被告らは,連帯して,原告ニシハツ産業及び原告ニッカ電測に対し,そ
れぞれ1億6371万7500円及びこれに対する平成19年5月15日
から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
(2)訴訟費用は,被告らの負担とする。
(3)仮執行宣言
2被告ら
(1)原告らの請求をいずれも棄却する。
(2)訴訟費用は,原告らの負担とする。
(3)仮執行免脱の宣言
第2事案の概要
1前提事実(証拠等の掲記のない事実は当事者間に争いがない。)
(1)当事者
原告ニシハツ産業は,海苔製造機械の製造,販売を業とする株式会社で
ある。
原告ニッカ電測は,計測機器の製造・販売並びに輸出入等を業とする株
式会社である。
被告川島製作所は,海苔機械の製造,修理及び販売を業とする株式会社
である。
被告カワシマ産業は,海苔機械の販売を業とする有限会社である。
(2)原告らの特許権
ア原告らは,次の特許権(以下「本件特許権」といい,同特許権に係る
特許を「本件特許」という。本件特許の請求の範囲【請求項1】の発明
を「本件特許発明1」,同【請求項2】の発明を「本件特許発明2」とい
い,併せて「本件各特許発明」という。また,本件特許出願の願書に添
付した明細書及び図面を併せて「本件明細書」という。)につき,それぞ
れ2分の1の持分を有している。
特許番号2036486号
発明の名称乾海苔の夾雑物検出装置
出願年月日平成元年3月27日
公告年月日平成7年7月19日
登録年月日平成8年3月28日
特許請求の範囲
【請求項1】乾海苔の搬送方向に所定の間隔を隔てて設けられた2つの
海苔搬送用ベルトコンベアと,これらの海苔搬送用ベルトコンベア
の間隙を照射するように海苔搬送面の一方に配置された光源と,前
記搬送面に対し前記光源と同じ方向に設けられ前記光源より照射さ
れた光の反射光を受光するラインイメージセンサと,前記ラインイ
メージセンサに入光する光量の変化を検出する手段と,該光量が設
定値以上になったときに夾雑物混入信号を,夾雑物除去を行う選別
手段に出力する手段とを備えたことを特徴とする乾海苔の夾雑物検
出装置。
【請求項2】ラインイメージセンサを検出位置より60°±30°に設置し,
光源を前記ラインイメージセンサと同じ方向の45°±30°に光軸
が位置するように設置したことを特徴とする請求項1記載の乾海苔
の夾雑物検出装置。
イ構成要件の分説
(ア)本件特許発明1を構成要件に分説すると,次のとおりとなる。
1−A乾海苔の搬送方向に所定の間隔を隔てて設けられた2つの海
苔搬送用ベルトコンベアと,
1−Bこれらの海苔搬送用ベルトコンベアの間隙を照射するように
海苔搬送面の一方に配置された光源と,
1−C前記搬送面に対し前記光源と同じ方向に設けられ前記光源よ
り照射された光の反射光を受光するラインイメージセンサと,
1−D前記ラインイメージセンサに入光する光量の変化を検出する
手段と,
1−E該光量が設定値以上になったときに夾雑物混入信号を,夾雑
物除去を行う選別手段に出力する手段とを備えたこと
1−Fを特徴とする乾海苔の夾雑物検出装置。
(イ)本件特許発明2を構成要件に分説すると,次のとおりとなる。
2−Gラインイメージセンサを検出位置より60°±30°に設置し,
2−H光源を前記ラインイメージセンサと同じ方向の45°±30°
に光軸が位置するように設置したこと
2−Iを特徴とする請求項1記載の乾海苔の夾雑物検出装置。
(3)被告らの行為
被告らは,業として,平成8年3月以降,平成20年6月末日までの間,
別紙被告物件目録記載1,2の各製品(以下「被告物件1」,「被告物件2」
といい,併せて「被告各物件」という。)を製造・販売した。
(4)被告各物件の構造
被告物件1(FE型)及び被告物件2(E型)の構造は,別紙被告物件
説明書記載のとおりである(なお,便宜上,当事者の合意の範囲内と思わ
れる限度で,原告第3準備書面添付の説明書の記載を変えている。)。
(5)損害賠償請求権に関する合意(甲74)
原告らは,平成19年2月1日,本件訴訟の提起に先立ち,本件訴訟に
よって得られるべき損害賠償請求権について,本件特許権の共有持分の割
合に応じて帰属させることを合意した。
2原告らの請求
原告らは,被告各物件が本件各特許発明の技術的範囲に属し,被告各物件
の製造・譲渡が本件特許権を侵害するとして,被告らに対し,それぞれ,連
帯して1億6371万7500円の損害賠償及びこれに対する平成19年5
月15日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5%の割合による遅延
損害金を支払うよう求めている。
3争点
(1)被告各物件が本件特許発明1の技術的範囲に属するか
(2)被告各物件が本件特許発明2の技術的範囲に属するか
(3)損害
(4)消滅時効の成否
第3争点に関する当事者の主張
1被告各物件が本件特許発明1の技術的範囲に属するか
【原告らの主張】
(1)被告各物件の構成
被告各物件の構成は,別紙被告物件説明書記載のとおりである(前提事
実(4))。
(2)対比
次のとおり,別紙被告物件説明書記載の構成(以下「被告構成a」など
という。)は,本件特許発明1の構成要件(以下「構成要件1−A」などと
いう。)を充足する。
ア構成要件1−A
被告構成aにおいて,2つの海苔搬送用ベルトコンベアが,約20㎝
という所定の間隔を隔てて設置されているので,被告構成aは,構成要
件1−Aを充足する。
(後記被告らの主張(1)アに対する反論)
2つのベルトコンベア同士の間に駆動ローラーコンベアといった他
の機構が付加されたとしても,構成要件の充足性の場面においては単に
余分な構成が付加されたに過ぎないと評価できる。
イ構成要件1−B
被告構成bにおいて,ベルトコンベアとベルトコンベアの間隙を照射
する光源が存在し,海苔の搬送面の一方である裏面に設置されているの
で,被告構成bは,構成要件1−Bを充足する。
(後記被告らの主張(1)イに対する反論)
本件特許発明1の特徴的事項のひとつは,ベルトコンベアとベルトコ
ンベアの間を照射することで,海苔以外からの反射ノイズが低減できる
というところにある。よって,間隔や間隙という用語は,光源と反対方
向の側にベルトコンベア等の乱反射を引き起こすようなものが無いこ
とを意味しているのであって,それが広いか,狭いかという定性的なこ
とは本件特許発明1の技術的特徴とは関係がない。
ウ構成要件1−C
被告構成cにおいて,光源と同方向である乾海苔の裏面にイメージセ
ンサが配置され,光源から発せられた光の反射光を受光するので,被告
構成cは,構成要件1−Cを充足する。
(後記被告らの主張(1)ウに対する反論)
本件特許発明1は,光源から発せられた光が海苔表面で反射してライ
ンイメージセンサで受光するものである。反射である以上,光源とセン
サが全く同じ角度にあることは,光が重なってしまうため,原理的にあ
りえない。他方,光源とラインイメージセンサとは,海苔からの反射光
が検出できる位置関係であればよいのであるから,その角度は原理的に
は反射という機構を採用した以上に殊更に限定されるものではない。
エ構成要件1−Dないし1−F
被告構成dないしfは,構成要件1−Dないし1−Fを充足する。
(3)作用効果について
被告らは,被告各物件が本件特許発明1の作用効果を有しないと主張す
るが,次のとおり,同主張は理由がない。
ア後記被告らの主張(2)イについて
被告らは,被告各物件は,いずれも「乾海苔の裏面(下面)に付着し
た夾雑物を,異物として検出する」ものであるため,乾海苔(海苔搬送
面)の上側は,本件特許発明1の作用効果とは関係なく,最初から空間
が存在すると主張する。
しかし,被告各物件のように裏異物検出用であったとしても,乾海苔
の検出位置が間隙(物と物との間)であることには変わりがない。
乾海苔の裏異物の場合,間隙の下から光を照射するのであるから,乾
海苔の下側に障害物がないことは当然のことであり,乾海苔の背後,す
なわち測定箇所の直上に無用な乱反射の要因が存在しないことが,ここ
でいう間隙の意味である。
そこで,被告各物件をみると,裏異物検出位置の直上にはそういった
攪乱因子となる物体は存しない。そうすると,本件特許発明1における,
光源により照射された光が乾海苔以外のベルト等によって反射されるこ
とがないため夾雑物の検出を高精度に行うことができるという作用効果
は,被告各物件についてもあてはまる。
イ後記被告らの主張(2)ウについて
被告らは,被告各物件と本件特許発明1では,夾雑物の検出方法が異
なると主張する。
しかし,被告各物件において,偏光フィルタは海苔から反射光のセン
サへの入光量を全体として減らすことはできても,全ての光を遮断する
ことはできないため,正常な海苔に照射した光の反射光は,ラインイメー
ジセンサに一部は受光されることとなる。そうすると,これらの入光を
前提にした選別が行われなければ海苔の選別を行うことはできず,結局
は,被告各物件においても海苔からの反射を検知して判別する必要があ
り,受光した反射光のS/N比で海苔の表面を観察して海苔と異物の判
別を行っている。したがって,被告各物件と本件特許発明1の検出機構
は本質的に同じであり,本件特許発明1と検出方法が異なるとの被告の
主張は認められない。
ウ後記被告らの主張(2)エについて
被告らは,被告各物件では,押さえローラーの反射光(ノイズ)があ
ると主張する。
しかし,被告各物件の押さえローラー(6)は乙第41号証の写真3,
4からも明らかなように選別位置の直上に設置されているわけではなく,
しかも押さえローラー(6)はごく一部にリング状に配置されているに
すぎず,筒状に全面にわたって配されているわけではない。したがって
通過する海苔の上方を全て覆うわけでもなく,押さえローラーからライ
ンイメージセンサへの反射光が発生しにくい構造・配置となっており,
押さえローラーが選別動作を不良にするようなことはない。
(4)まとめ
被告各物件は,本件特許発明1の技術的範囲に属する。
【被告らの主張】
(1)対比
ア構成要件1−A
被告構成aにおいて,前段駆動ベルトコンベア,中段駆動ベルトコン
ベア,駆動ローラーコンベア,後段の駆動ベルトコンベアが,上記記載
順に配設されている。したがって,被告構成aに「所定間隔を隔てて設
けられた駆動ローラーコンベアとベルトコンベア」は存在するが,「所定
間隔を隔てて設けられた2つのベルトコンベア」は存在しない。
そして,上記駆動ローラーコンベアがなければ(これを取り外すと),
乾海苔は搬送中に落下してしまうため,駆動ローラーコンベアは,単に
余分な構成を付加したものではなく,乾海苔搬送の根幹をなすもので
あって,駆動力,搬送力のない,単なるガイド板(本件明細書に記載さ
れている。)などと同レベルで評価することはできない。
したがって,被告各物件は,構成要件1−Aを充足しない。
イ構成要件1−B
前記アのとおり,被告構成aに「所定間隔を隔てて設けられた駆動ロー
ラーコンベアと駆動ベルトコンベア」は存在するが,「所定間隔を隔てて
設けられた2つの駆動(海苔搬送用)ベルトコンベア」は存在しないの
で,被告構成bに「これらの海苔搬送用ベルトコンベアの間隙」は存在
しない。
また,構成要件1−Bの「間隙」は「狭いスリット,すきま」を意味
するが,被告構成bにおいて,光源から照射される「2つの海苔搬送用
ベルトコンベアの間隙」は存在せず,発受光空間たる「間隔」が存在す
る。
したがって,被告構成bにおいて,光源は,「駆動ローラーコンベアと
駆動ベルトコンベアの間隔等」を照射するものであり,「駆動ベルトコン
ベアと駆動ベルトコンベアの間隙」を照射しないので,被告各物件は,
構成要件1−Bを充足しない。
ウ構成要件1−C
被告各物件において,光源とラインイメージセンサ間の角度は,被告
物件1の前期型では40°,被告物件1の後期型では50°もしくは6
0°,被告物件2では40°であるが,このような角度があるにもかか
わらず,「同じ方向」とは認められない。
すなわち,「同じ方向」とは一般的に「同一角度」のことであるが,光
源とラインイメージセンサとが発受光関係にあることから,「厳密な完全
同一角度ではないが,同一性の範囲内で若干ずれている角度」を意味す
る。本件明細書第1図における,光源とラインイメージセンサの角度(約
11°)はこれに当たるとしても,被告各物件における光源とラインイ
メージセンサの角度は,「若干ずれている角度」とはいえない。
したがって,被告各物件は,構成要件1−C(光源と同じ方向に設け
られ〔た〕ラインイメージセンサ)を充足しない。
エ構成要件1−Dないし1−F
被告各物件が,構成要件1−D,1−Eを充足する乾海苔の夾雑物検
出装置(1−F)であることについては争わない。
(2)作用効果の不一致
ア本件特許発明1の作用効果は,「乾海苔の検出位置を,2つの海苔搬送
ベルトコンベアの間隙としたことにより,光源により照射された光は乾
海苔以外のベルト等によって反射されることがないため,ラインイメー
ジセンサで観察した映像にはノイズが乗らず,夾雑物の検出を高精度に
行うことができること」(本件明細書の「発明の効果」欄)にある。
イこれに対し被告各物件は,いずれも「乾海苔の裏面(下面)に付着し
た夾雑物を,異物として検出する」ものであるため,検査光(光源から
発光し,反射された光をラインイメージセンサで受光する。)を通すため
の「発受光空間」は乾海苔(海苔搬送面)の下側に位置し,その反対側
(乾海苔の上側)に,ベルト等が配設されることはない。すなわち,乾
海苔(海苔搬送面)の上側は,本件特許発明1の作用効果と関係なく,
最初から空間が存在する。
ウまた,被告各物件と本件特許発明1は,異物(夾雑物)検出の方式が
根本的に相違している。
すなわち,本件特許発明1は,受光した乾海苔の拡散反射光と夾雑物
(異物)の拡散反射光とを,光量の程度比較,多少比較で峻別するが,
このような方法による峻別は容易ではない。しかし,被告各物件では,
ラインイメージセンサには,偏光フィルタによって,乾海苔の正反射光
や,光量の少ない乾海苔の拡散反射光は受光されず,光量の多い,夾雑
物の拡散反射光のみが受光可能であり,夾雑物の拡散反射光の有無のみ
によって認識できる。
エさらに,被告各物件では,裏異物用光源からの照射光は,乾海苔に穴
や破れ等がある場合は,穴や破れを介し,そのまま直進し,押さえロー
ラー(6)によって反射された後,ノイズとしてラインイメージセンサに
受光される。
オ以上のとおり,被告各物件は,本件特許発明1の作用効果を奏しない。
2被告各物件が本件特許発明2の技術的範囲に属するか
【原告らの主張】
(1)被告各物件の構成
被告各物件の構成は,別紙被告物件説明書記載のとおりである(前提事
実(4))。
(2)対比
ア構成要件2−Gについて
被告各物件は,ラインイメージセンサとして設けられたCCDカメラ
が,検出位置である搬送面の斜め下方30°のところに設置されており,
構成要件2−G(ラインイメージセンサを検出位置より60°±30°
に設置し)を充足する。
イ構成要件2−Hについて
被告物件1の前期型と被告物件2は,裏異物用光源からの照射角度は,
光軸である搬送面に対して,約70°であり,「光源を前記ラインイメー
ジセンサと同じ方向の45°±30°に光軸が位置するように設置」し
ており,構成要件2−H(光源を前記ラインイメージセンサと同じ方向
の45°±30°に光軸が位置するように設置したこと)を充足する。
(3)作用効果
被告らの作用効果についての主張は争う。
【被告らの主張】
(1)対比
アはじめに
本件特許の請求項2は,同請求項1の従属項であり,前記1のとおり,
被告各物件が本件特許発明1の技術的範囲に属さない以上,本件特許発
明2の技術的範囲にも属さない。
イ構成要件2−G
構成要件2−Gでは,「ラインイメージセンサが検出位置より60°−
30°」とあり,何に対する角度なのか基準が不明であり,被告各物件
は,構成要件2−Gを充足しない。
ウ構成要件2−H
構成要件2−Hの「同じ方向」は,前記1【被告らの主張】(1)ウのと
おり,「厳密な完全同一角度ではないが,同一性の範囲内で若干ずれてい
る角度」を意味する。
被告各物件の裏異物用光源(10)とラインイメージセンサ(13)
間の角度は,被告物件1の前期型と被告物件2で40°,被告物件1の
後期型で50°もしくは60°である。
上記角度は,「同じ方向」であるとはいえず,被告各物件は,構成要件
2−Hを充足しない。
(2)作用効果の不奏功
本件特許発明2の作用効果は,本件特許発明1の「受光光量へのノイズ
回避」に加え,「乾海苔と夾雑物との峻別S/N比向上」にある(甲2)。
これに対し被告各物件は,これらの作用効果を奏さない。
3損害
【原告らの主張】
(1)販売台数
被告らは,平成8年3月28日以降,平成20年6月末日までの間,被
告物件1を301台,被告物件2を383台,製造,販売した。
なお,被告物件1の前期型から後期型に移行したのは,平成15年4月
以降である。
(2)特許法102条1項による算定(主位的主張)
ア被告物件1に相当する原告製品1台あたりの原告の利益
被告物件1に相当する原告の製品はGSA型(以下「原告製品1」と
いう。)であるが,原告製品1の1台当たりの平均販売価格は284万6
020円である。
これに対し,原告製品1の1台あたりの製造経費のうち1台当たりの
平均変動経費は次のとおりであり,1台当たりの平均限界利益は145
万5090円である。
材料費100万5500円
労務費11万5432円
販売手数料24万2817円
運送費2万7181円
イ被告物件2に相当する原告製品1台あたりの原告の利益
被告物件2に相当する原告の製品はNAS−5型(以下「原告製品2」
という。)であるが,原告製品2の1台当たりの平均販売価格は155万
5011円である。
これに対し,原告製品2の1台あたりの製造経費のうち1台当たりの
平均変動経費は次のとおりであり,1台当たりの平均限界利益は66万
3048円である。
材料費62万7178円
労務費6万8676円
販売手数料18万0984円
運送費1万5125円
ウ控除すべきでない経費
(ア)据付費用
販売手数料を支払っている場合は,据付費用は販売手数料でまかな
われており,これを支払わない場合は,原告ニシハツの従業員が据付
を行っているが,その費用は僅かである。
(イ)減価償却費,広告宣伝費
減価償却費,広告宣伝費は,原告製品1,2の1台当たりの利益を
算定するにあたり,控除すべき変動経費に当たらない。
(ウ)原告ニッカ電測の経費
原告製品1,2の1台当たりの利益を算定するにあたって,原告ニッ
カ電測の利益は算定していないので,その経費を控除する必要もない。
エ利益率
利益率に関する被告らの主張は争う。
オ寄与率
寄与率に関する被告らの主張は争う。
(ア)裏異物選別機能の重要性
異物が混入している海苔は,等級検査場で厳しくチェックされた上,
等級がつかず,生産者に箱ごとそのまま返品されるという運用がなさ
れている。このような厳しい運用がなされる背景には,コンビニエン
スストアなどでおにぎりが主力商品として扱われるようになってきた
ためである。主要な顧客の要求水準に合わせ,卸売業者が求める海苔
の水準も上がり,海苔に異物が混入しないようにするということは,
もはや海苔生産業者にとっては死活問題である。
そして,裏異物選別機能の追加は,海苔の異物混入を全ての方向か
ら一回の検査で確認できうるようにしたものであって,海苔生産業者
にとって従来の狭い作業場スペースでもそのまま設置できる点で極め
て実効性のある製品であり,従前あった表異物選別機能及び中異物選
別機能よりもその重要性は高い。
原告ニシハツ産業でも,裏異物選別機能を有する製品を開発してか
らは,顧客が,表異物と中異物の検出・選別のみを行う機械を購入し
ないようになったことから,表異物と中異物の2つだけを検出・選別
する機能を有する異物選別機の販売は行っていない。
なお,海苔を裏返すことにより,表異物選別機能を有する機械で裏
異物選別を行うことは,可能であるとしても,選別に倍の時間を要す
ることになり,平均的な海苔生産農家の生産枚数は,1軒あたり年間
およそ180万ないし210万枚であり,1時間当たり6000枚の
処理能力を前提とすると,繁忙期に,倍の時間を要することは無視で
きない。
したがって,被告各物件における裏異物選別機能の寄与率は大きい。
(イ)コスト面及びスペース面での優位性
被告らが裏異物検出に用いた本件各特許発明の技術はこれまでの異
物検出の技術よりも精度が高く選別可能であるだけでなく,シンプル
な構成ゆえに低コストで実現でき,かつ狭い作業場に従来のスペース
のまま設置できる点で利点を有している。
(ウ)以上のとおり,現在,裏異物選別機能がなければ海苔異物選別機と
しての商品価値がなく,また,他に簡易な代替手段がないのであるか
ら,裏異物検出のために必要な本件各特許発明の寄与率は極めて高く,
他の機能が付加されていることを理由に,裏異物選別機能のみを分断
して評価すべきではない。
カ原告製品1(GSA型)の販売時期
原告ニシハツ産業は,GSA型の発売開始前にも,平成7年からGS
O型(GSA型は,このGSO型の後継機という関係にある。)を異物選
別機として発売を行っていた。
キまとめ
特許法102条1項によると,被告らが,平成8年3月28日以降,
被告各物件を販売したことによる原告らの損害は,6億9192万94
74円である。
〔計算式〕1,455,090×301+663,048×383=691,929,474
(3)特許法102条2項による算定(予備的主張その1)
ア被告物件1の1台あたりの被告らの利益
被告物件1の販売価格は,275万5156円である。
被告らの主張を前提にすると,被告物件1の1台あたりの材料費は1
99万7473円,運送費は2万円であるが,以上が,被告物件1の製
造,販売に要した変動経費とみるべきである。
したがって,被告物件1の1台あたりの被告らの利益は73万768
3円である。
イ被告物件2の1台あたりの被告の利益
被告物件2の販売価格は,169万9107円である。
被告らの主張を前提にすると,被告物件2の1台あたりの材料費は1
34万5617円,運送費は2万円であるが,以上が,被告物件2の製
造,販売に要した変動経費とみるべきである。
したがって,被告物件2の1台あたりの被告らの利益は33万349
0円である。
ウまとめ
特許法102条2項によると,被告らが,平成8年3月28日以降,
被告各物件を販売したことによる原告らの損害は,3億4976万92
53円である。
〔計算式〕737,683×301+333,490×383=349,769,253
(4)特許法102条3項による算定(予備的主張その2)
ア被告各物件の売上
前記(1),(3)アによると,被告物件1の平成8年3月28日以降の売上
は,8億2930万1956円である。
前記(1),(3)イによると,被告物件2の平成8年3月28日以降の売上
は,6億5075万7981円である。
イ実施料率
本件各特許発明は,前記(2)オでも述べたとおり,非常に重要な発明で
あるから,その実施料相当額は,少なく見積もっても5%を下らない。
ウまとめ
特許法102条3項によると,被告らが,平成8年3月28日以降,
被告各物件を販売したことによる原告らの損害は,7400万2996
円である。
〔計算式〕(829,301,956+650,757,981)×0.05=74,002,996
(5)弁護士費用
原告らは,被告らの不法行為のため,本訴提起を余儀なくされたが,そ
のための弁護士費用は2976万円が相当である。
(6)損害賠償請求権に関する合意
前提事実(5)のとおり,原告らは,平成19年2月1日,本件訴訟によっ
て得られるべき損害賠償請求権について,本件特許権の共有持分の割合に
応じて帰属させることを合意した。
【被告らの主張】
(1)販売台数
被告物件1の販売台数が,平成8年3月28日以降,301台であるこ
とは認める。
被告物件2の販売台数は,平成8年3月28日以降,平成18年11月
20日までの間の227台のみである。
なお,被告物件1の前期型から後期型に移行したのは,平成12年であ
る。
(2)特許法102条1項による算定について
ア控除すべき経費について
原告らが主張する経費の金額については争うとともに,次の点を付加
して主張する。
(ア)材料費
原告らが主張する材料費(原告製品1:100万5500円,原告
製品2:62万7178円)に,全ての材料費が計上されていない可
能性がある。
(イ)労務費
原告らが主張する労務費は,パートタイマー労働者を利用すること
を前提としているが,原告製品1,2の製造にパートタイマー労働者
だけで対応することは不可能である。
(ウ)据付費用
据付費用は,販売手数料とは別個の変動経費として控除されるべき
である。
(エ)減価償却費,広告費
減価償却費,広告費についても控除されるべきである。
(オ)原告ニッカ電測の経費
原告らは,原告ニッカ電測において発生した経費を計上すべきであ
るのに,これをしていない。
(カ)平成11年度以前の経費について
平成11年度以前の経費については,資料が存していない。また,
原告製品1,2の旧型には原告製品1,2より価格の高い部品を使用
していた。
イ利益率について
なお,原告らの主張によると,原告製品1の利益率は平均51%,原
告製品2の利益率は平均43%となる。しかし,原告らは,訴状におけ
る主張で,被告らの利益率を15%として計算していることからすると,
上記利益率は不合理な数値というべきである。
ウ寄与率
(ア)被告各物件の機能
被告物件2は,入口から海苔を入れて,表,中,裏の異物をそれぞ
れ検査し,表と裏の異物不良をバケット1へ,中異物不良をバケット
2へ収納することを主機能とし,補助機能として自動停止,入光量表
示の機能を有する。
また,被告物件1は,上記主機能・補助機能に加えて,主機能とし
て,破れ・穴あき等の形状不良品をバケット3へ収納する形状検査機
能と,良品を10枚カウントし下へ出す10枚カウント機能を,補助
機能として,良品枚数表示,トラブルモニターの各機能を有する。
(イ)機能面からみた寄与率
被告物件1における諸機能のうち,主機能の割合は90%であり,
異物検査機能の割合は,主機能のうち50%である。さらに,上記異
物検査機能のうち,本件各特許発明に関する機能は,裏異物検出に関
するものであり,他の表・中異物検査機能と比較すると,その割合は,
3分の1未満である。
また,被告物件2における諸機能のうち,主機能は異物検査機能の
みである。
したがって,機能面だけをみると,本件各特許発明の寄与率は,被
告物件1では12ないし13%程度であり,被告物件2では25%程
度である。
〔計算式〕
被告物件1:0.9×0.5÷3>0.12∼0.13
被告物件2:0.9÷3>0.25
(ウ)その他の要素
原告らが,被告各物件とともに侵害品であると主張していたES型
に関する請求について,訴えを取り下げたことからも分かるように,
本件各特許発明は実質的に奏功しておらず,また,不可欠性も認めら
れず,その重要性は低い。
また,顧客が,本件各特許発明の機能に着目して被告各物件を購入
したわけではない。
したがって,前記(イ)で求めた寄与率をさらに4分の1程度に下げ
るべきである。
(エ)まとめ
以上によると,本件各特許発明の寄与率は,被告物件1で3%,被
告物件2で6%である。
エ原告製品1(GSA型)の販売時期
原告らが原告製品1の製造を始めたのは,平成9年10月からであり,
平成8年3月28日からそれまでの間,原告らには実施の能力がなかっ
たことになる。
オ被告物件2の販売台数
前記(1)のとおり,被告物件2の販売台数は227台であって,これを
基礎として算定すべきである。
(3)特許法102条2項による算定について
ア被告各物件の1台あたりの利益を算出するに際し,考慮すべき経費
被告各物件の製造,販売にかかる経費として次のものがある。
(ア)被告物件1(いずれも1台あたり)
材料費199万7473円
メンテナンス費
出張経費7万0366円
出張手当4万5705円
人件費43万0862円
(イ)被告物件2(いずれも1台あたり)
材料費134万5617円
メンテナンス費
出張経費4万3979円
出張手当2万8566円
人件費26万9289円
(ウ)被告各物件共通(いずれも1台あたり)
運送料等2万0000円
広告宣伝費6570円
その他
通信交通費8662円
接待交際費2万0695円
雑費3万8226円
通信費360円
(エ)被告各物件共通(開発費)
被告らは,被告各物件の開発費に3000万円を支出したので,同
開発費も経費として控除すべきである。
イ利益率
前記アの経費を,被告各物件の売上からバランスよく控除することに
より,被告各物件の利益率を算出すると,それぞれ平均4%とすべきで
ある。
ウ被告物件2の販売台数
前記(1)のとおり,被告物件2の販売台数は227台であって,これを
基礎として算定すべきである。
(4)3項による算定について
ア実施料率
原告らの主張する実施料率は高率に過ぎる。
本件各特許発明は,被告各物件全体に関する発明ではなく,あくまで
も裏異物検出という一部に関する発明に過ぎない。
イ被告物件2の販売台数
前記(1)のとおり,被告物件2の販売台数は227台であって,これを
基礎として算定すべきである。
(5)弁護士費用
争う。
4消滅時効の成否
【被告らの主張】
(1)本件では,原告らは当業者である上に,本件各特許発明の構造も単純な
ものに過ぎないから,被告各物件が販売された直後には,すでに原告らは
損害及び加害者を知っていたものと推定できる。
よって,本訴提起までの3年分のものより前に発生したと主張されてい
る損害については,すでに民法724条所定の時効期間が経過している。
(2)被告らは,原告らに対し,本件第13回弁論準備手続期日において,上
記消滅時効を援用するとの意思表示をした。
【原告らの主張】
(1)原告らが被告各物件の内部の異物検出装置の構造を看取することは被
告各物件の構造上不可能である。
原告らは,平成18年4月,兵庫県の販売店から偶然,FE型の中古
品(甲64。製造番号:FE−0075)を入手する機会を得て,分解
した結果,同年6月ないし7月ころ,被告物件1が,本件特許権を侵害
していることに気づき,同年8月25日に警告書を被告らに発送し,同
19年4月27日に訴訟を提起した。
(2)なお,被告川島製作所は,乾海苔の検査装置について特許第3121
593号の特許権を取得していたため,原告らは被告らが本件各特許発
明の実施を行っているとは考えず,被告ら保有の特許権に係る発明のみ
を実施しているものと考えていた。
また,被告各物件はいずれも高価な機械であるため,これを研究のた
めに取得することも容易ではなかった。
(3)したがって,原告らの被告らに対する損害賠償請求権の消滅時効は,
本訴提起までに完成していない。
第4当裁判所の判断
1被告各物件が本件特許発明1の技術的範囲に属するか
(1)構成要件1−A充足性
ア被告構成aにおいては,乾海苔(幅19㎝×長さ21㎝規格の長方形)
の水平搬送手段として,直径4㎜のヒモベルト8本からなる中段の駆動
ベルトコンベア(2)と,直径5㎜のヒモベルト4本からなる後段の駆動
ベルトコンベア(4)が,間隔(被告物件1では21.5㎝,被告物件2で
は20.9㎝)を存して設置されている(前提事実(4))。
したがって,上記2つのベルトコンベアは,「乾海苔の搬送方向に所
定の間隔を隔てて設けられた2つの海苔搬送用ベルトコンベア」に相当
し,被告各物件は構成要件1−Aを充足する。
イ被告らは,被告構成aにおいては,中段の駆動ベルトコンベア(2)と
後段の駆動ベルトコンベア(4)の間に,駆動ローラーコンベア(3)が介在
していることから,被告各物件は,構成要件1−Aを充足しないと主張
する。
しかし,駆動ローラーコンベア(3)が2つのベルトコンベアの間に介
在するからといって,本件特許発明1の作用効果が失われるわけではな
く,被告各物件の構成要件1−Aの充足性が否定されることにはならな
い。
また,被告らは,駆動ローラーコンベア(3)を取り除くと,乾海苔を
安定搬送できないため,上記ローラーコンベアは必要不可欠であると主
張し,実験の結果を提出する(乙40∼45)。
しかし,被告各物件では,3種類の異物検出を実施するため,3つの
ベルトコンベアと1つのローラーコンベアを被告構成aの順に配設した
わけであるが,被告各物件では,複数の検出装置を並列させたことによ
り,ベルトコンベアの間隔が広くなったため,ローラーコンベアを介在
させたに過ぎず,2つのベルトコンベアの搬送手段と,この2つのベル
トコンベアの間に,光源からの光を照射する間隙を設けるための間隔が
設けられていれば,構成要件1−Aを充足するというべきである。
しかも,原告らによる実験結果(甲15)によると,仮に,被告各物
件からローラーコンベア(3)を抜いて作動させても,乾海苔が搬送され
ることが窺える。
よって,被告らの主張は理由がない。
(2)構成要件1−B充足性
ア被告構成bにおいては,海苔搬送面(25)に対して下側に裏異物用光
源(10)として高周波蛍光灯ユニットが設けられており,斜め上方の間
隙の検出位置に向けて照射可能となっている(前提事実(4))。
また,上記間隙は,ガイド板(5)とガイド板(5)との間に形成されてお
り,上記ガイド板はいずれも搬送手段たる駆動ベルトコンベア(2),(4)
の間に配設されているので(前提事実(4)),上記間隙は,上記駆動ベル
トコンベア(2),(4)の間隙に相当する。
したがって,上記高周波蛍光灯ユニットからなる裏異物用光源(10)
は,「これらの海苔搬送用ベルトコンベアの間隙を照射するように海苔
搬送面の一方に配置された光源」に相当し,被告各物件は構成要件1−
Bを充足する。
イ被告らは,①被告構成aに「所定間隔を隔てて設けられた2つの駆動
ベルトコンベア」は存在しないので,被告構成bに「2つの海苔搬送用
ベルトコンベアの間隙」は存在しない,また,②構成要件1−Bの「間
隙」は「狭いスリット,すきま」を意味するが,被告構成bにおいて,
光源から照射される「2つの海苔搬送用ベルトコンベアの間隙」は存在
せず,「間隔」が存するので,被告各物件は構成要件1−Bを充足しない
と主張する。
(ア)まず,上記①の主張について検討する。
被告構成aが構成要件1−Aを充足することは,前記(1)に述べた
とおりである。そして,前記アで述べたとおり,被告構成bには,2
つのガイド板(5)によって形成された間隙が存するが(争いがない。),
上記間隙は,所定間隔を隔てて設けられた2つの海苔搬送用ベルトコ
ンベアで形成された間に形成されているので(別紙被告物件説明書添
付図面参照),被告構成bには,「2つの海苔搬送用ベルトコンベアの
間隙」が存するということができる。
また,別紙被告物件説明書記載図面2,4,6のとおり,被告構成
bにおける上記間隙は,照射位置にベルト等の光散乱物が存在しない
ので,光源から照射された光が乾海苔以外のベルト等によって反射さ
れることはないと考えられる。
(イ)次に,上記②の主張について検討する。
本件明細書には次の記載がある(甲2)。
「〔発明の効果〕
(略)
乾海苔の検出位置を,2つの海苔搬送ベルトコンベアの間隙とした
ことにより,光源により照射された光は乾海苔以外のベルト等に
よって反射されることがないため,ラインイメージセンサで観察し
た映像にはノイズが乗らず,夾雑物の検出を高精度に行うことがで
きる。」
上記記載によると,構成要件1−Bの「間隙」とは,2つの海苔搬
送用(駆動)ベルトコンベアの間(間隔)にあって,その開き方の程
度は,光源により照射された光が乾海苔以外のベルト等によって反射
されることがない程度をいうと解する(一般には,「間隙」は狭い意味
を有するが,間隔にはそのような限定はない。そして,本件特許発明
1の構成要件1−Aと1−Bとの関係からすると,構成要件1−Bの
「間隙」は,構成要件1−Aの「間隔」と同じ,もしくは,それより
狭いことが想定されていると考えられるが,上記「間隙」について,
それ以上に狭い幅を有するものとして解釈する必要はなく,前述した
本件明細書の記載から理解される意義に照らすと,むしろ,一定程度
の幅を必要とするといえる。)。
そうすると,被告構成bの2つのガイド板(5)の間に形成された間
隙を「2つの駆動ベルトコンベア(2),(4)の間隙」に相当するものと
解することに妨げはないというべきである。
(ウ)以上のとおり,被告らの主張は理由がない。
(3)構成要件1−C充足性
ア被告構成cにおいては,海苔搬送面(25)の下側に設置された光源(1
0)が照射した光の反射光を受光するラインイメージセンサ(13)は,海
苔搬送面(25)の斜め下方30°のところに設置されている(前提事実
(4))。
したがって,同センサは,「海苔搬送面に対し光源と同じ方向に設けら
れ,前記光源より照射された光の反射光を受光するラインイメージセン
サ」に相当し,被告各物件は,構成要件1−Cを充足する。
イ被告らは,「同じ方向」とは一般的に「同一角度」のことをいい,構成
要件1−Cにいう「同じ方向」は「厳密な完全同一角度ではないが,同
一性の範囲内で若干ずれている角度」を意味するので,被告各物件は,
構成要件1−Cを充足しないと主張する。
しかし,構成要件1−B,1−Cの記載からも明らかなように,ライ
ンイメージセンサは,光源から海苔搬送用ベルトコンベアの間隙(海苔
搬送面にある。)に照射された光の反射光(透過光ではない。)を受光す
ることが予定されているため,構成要件1−Cの「同じ方向」とは,光
源が海苔搬送面の上側にある場合は,ラインイメージセンサも上側に,
光源が海苔搬送面の下側にある場合は,ラインイメージセンサも下側に
あることを意味するのであって,本件明細書を見ても,「同じ方向」につ
いて,被告らの主張するような限定解釈を根拠付ける記載は見あたらな
い。
そもそも,本件特許発明2は,光源とラインイメージセンサの角度に
ついて数値限定をした発明であるが,その特許請求の範囲によると,最
大75°(構成要件2−Gの角度を60°+30°,構成要件2−Hの
角度を45°−30°とした場合)開いた場合をクレームしているので
あって,そのような数値限定のない本件特許発明1における構成要件1
−Cの解釈としては,本件特許発明2の数値限定より広い角度を含むこ
とが想定されており,少なくとも,構成要件1−Cの「同じ方向」の意
味について,被告らの主張するような限定解釈(「厳密な完全同一角度で
はないが,同一性の範囲内で若干ずれている角度」と解釈)をすること
はできない。
よって,被告らの主張は理由がない。
(4)構成要件1−Dないし1−F充足性
これらの構成要件への充足性については,当事者間に争いがない。
(5)作用効果
被告らは,被告各物件が,本件特許発明1の作用効果を有していないと
主張するので,以下,検討する。
ア被告らは,被告各物件において,「発受光空間」は乾海苔(海苔搬送面)
の下側に位置するため,その反対側(乾海苔の上側)に,ベルト等が配
設されることはなく,本件特許発明1の作用効果を奏しないと主張する。
被告らの上記主張の論理は必ずしも明らかとはいえないが,被告各物
件において,裏異物の検出のために,海苔搬送面の下方から光源を照射
することとする以上,本件特許発明1の構成をとることは必然であり,
そうであるから,本件各特許発明の課題を解決するために同構成をとる
ことの必要性があったわけでなく,本件特許発明1の作用効果を奏して
いないという主張に理解することが可能である。
ところで,被告各物件は,乾海苔の表異物,中異物,裏異物を,1回
の搬送において,検出するよう設計されており,そのため,裏異物につ
いての検出は,海苔搬送面の下方に設置した光源から光を照射し,その
反射光をラインイメージセンサにより受光する構成となっている。この
ため,乾海苔の裏面に光を照射する以上,海苔搬送面の下には,ベルト
コンベアなどの搬送手段を置くことはできず(そうでないと海苔の裏面
に光を照射できない。),また,海苔搬送面の上に搬送手段を設置する必
要もなく,必然的に,下方の光源から照射される海苔搬送面に間隙が生
じる構成となったといえなくもない。
しかし,そのことと,上記被告各物件が本件特許発明1の作用効果を
奏しているか否かとは別問題であり,下方からの照射であっても,海苔
搬送面における,2つの駆動ベルトコンベアの間隙に光源を照射した際
に,ベルト等の光散乱物がない以上,本件特許発明1の作用効果を奏し
ているというべきである。
イ被告らは,被告各物件と本件特許発明1は,異物(夾雑物)検出の方
式が根本的に相違していると主張する。
しかし,本件明細書に記載された実施例の光源及び検出器の配置から
すると,本件特許発明1では,乾海苔の散乱光強度よりも,夾雑物の散
乱光強度が多くなることを利用して,検出を行っていると認めることが
でき,上記検出方法は,被告らの主張する被告各物件における検出方法
と基本的に共通するものを有しているといえる。仮に,被告らが主張す
る,被告各物件における検出方法が,偏光フィルタを使用することによ
り,乾海苔からの反射光と夾雑物からの反射光を峻別しやすいという,
本件特許発明1の作用効果にはない効果を別途有していたとしても(乙
47∼50),被告各物件が本件特許発明1の作用効果を奏していないと
いうことはできない。
ウ被告らは,被告各物件において,裏異物用光源からの照射光は,乾海
苔に穴や破れ等がある場合は,穴や破れを介し,そのまま直進し,押さ
えローラー(6)によって反射された後,ラインイメージセンサに受光さ
れると主張する。
たしかに,被告らが主張したような機序で,押さえローラー(6)まで
照射光が届き,その反射光をラインイメージセンサが受光する可能性を
否定することはできない。
しかし,乾海苔の穴や破れからの照射光が,上記の機序でラインイメー
ジセンサによって受光される可能性が高いとは思えず,仮に,押さえロー
ラーが存しない場合に比べ,作用効果の程度において,一定程度劣るこ
とがあるとしても,押さえローラーが海苔搬送面(照射位置)の真後ろ
にあるわけではなく,前記(1)ないし(4)で検討したとおり,被告各物件が,
本件特許発明1の構成要件を全て充足している以上,押さえローラー
(6)が存在するため,本件特許発明1の作用効果を奏していないと認め
ることはできない。また,そもそも,上記作用効果の点で劣っているこ
と自体を認めるに足りる証拠もない。
エ以上によると,被告各物件が本件特許発明1の作用効果を奏していな
いと認めることはできない。
(6)まとめ
以上によると,被告各物件は,いずれも,本件特許発明1の技術的範囲
に属するということができる。
2被告各物件が本件特許発明2の技術的範囲に属するか
(1)構成要件充足性
ア構成要件2−G
被告各物件は,ラインイメージセンサとして設けられたCCDカメラ
が,検出位置である搬送面の斜め下方30°のところに設置されており
(前提事実(4)),これによると,被告各物件は,構成要件2−Gを充足
する。
被告らは,構成要件2−Gの「ラインイメージセンサが検出位置より
60°−30°」とあるのが,何に対する角度なのか基準が不明である
というが,本件明細書の記載からすると,海苔搬送面に対する角度であ
ることは明らかである。
イ構成要件2−H
被告物件1の前期型及び被告物件2における,裏異物用光源からの照
射角度は,光軸である搬送面に対して,70°であることについて争い
はなく,これらの物件は,構成要件2−Hを充足する(被告物件1の後
期型については,充足しない。)。
被告らは,構成要件2−Hの充足性についても,「同じ方向」について
「厳密な完全同一角度ではないが,同一性の範囲内で若干ずれている角
度」を意味すると主張するが,前記1(3)に述べたのと同様の理由により,
「同じ方向」について,被告らの主張するような限定解釈を根拠付ける
記載は見あたらない。
(2)作用効果
被告らは,本件特許発明2の作用効果は,本件特許発明1の「受光光量
へのノイズ回避」に加え,「乾海苔と夾雑物との峻別S/N比向上」にある
ところ(甲2),被告各物件は,これらの作用効果を奏さないと主張する。
しかし,被告各物件が,本件特許発明1の作用効果を有することは,前
記1(5)で述べたとおりである。そして,「乾海苔と夾雑物との峻別S/N
比向上」の作用効果を有しないことの具体的理由について,被告らは主張
立証をしない。よって,被告らの主張は理由がない。
(3)まとめ
以上によると,被告各物件のうち,被告物件1の前期型と被告物件2は,
本件特許発明2の技術的範囲に属するということができる。
3損害
(1)はじめに
ア原告らは,当初,特許法102条2項による算定に基づき,被告らに
対して損害賠償を請求していたが,その後,被告らの開示した経費の金
額を争うことをせず,同条1項による算定に基づく損害を主位的に主張
し,同条2項による算定と,同条3項による算定を予備的に主張するこ
ととなった(同条2項と3項の算定は選択的主張と解される。)。
イ原告らは,特許法102条1項による算定にあたっては,便宜上,原
告ニシハツ産業において生じる利益のみを算定の根拠としている。
また,原告らは,本件特許登録日以降の侵害による損害について,損
害賠償を請求している。
ウ原告らは,本件訴訟の提起に先立ち,本件訴訟によって得られるべき
損害賠償請求権について,本件特許権の共有持分の割合に応じて帰属さ
せる合意をし(前提事実(5)),原告らは,上記合意に基づき,同額の損
害賠償を請求している。
一方,被告らは,被告各物件の製造,販売が本件特許権の侵害に当た
る場合,被告らが共同不法行為責任を負うことについて争っていない。
エこれらを前提として,以下,原告らの損害を算定することとする。
(2)被告各物件の販売台数等
ア被告各物件の販売台数
被告らが,平成8年3月28日以降,被告物件1を301台,製造,
販売したことは当事者間に争いがない。
原告らは,被告らが,平成8年3月28日以降,被告物件2を383
台,製造,販売したと主張し,被告らは,227台(平成18年11月
20日まで)であると反論する。
ところで,原告らは,上記383台の地域別における内訳も主張する
ものの(原告ら第10準備書面16頁),これを裏付けるに足りる証拠の
提出をしない(これらの数字の出所が明らかでないため,重複計算の可
能性や,他の機種との取り違えの可能性などの検証もできない。)。
そうすると,原告らの主張の論拠は,被告らが平成20年6月に「K
E−0444」という製造番号を付した被告物件2を販売したことを確
認しており(甲41),被告らが被告物件2の製造,販売を始めた平成5
年9月以降,平成20年6月までの間に,少なくとも444台を販売し
たことを前提とし,平成8年3月28日以降の販売台数を推定するに過
ぎないものかと思われる。
一方,原告らは当初,被告各物件の販売台数を,被告物件1について
は,少なくとも125台,被告物件2については,少なくとも350台
と主張していたところ,被告らは,被告物件1について301台,被告
物件2について227台との開示をし,その根拠として証拠(乙72,
73)を提出している。上記証拠によると,被告らは,平成4年度から,
既に被告物件2の販売を開始し,平成7年までの間に,226台を販売
していることが窺えるのであり,上記「KE−0444」の意味が44
4台目の機械を意味するものであったとしても,平成8年3月28日以
降の販売台数が227台であることと矛盾はしない。
以上によると,平成8年3月28日以降の被告物件2の販売数は,2
27台であると認めるのが相当であり(なお,上記「KE−0444」
は,その後,被告らが回収していることが窺われる〔乙75〕。),以下,
この販売台数を前提に算定をする。
イ被告物件1の前期型から後期型への移行について
原告らは,後期型への移行は平成15年4月以降であると主張するが,
その根拠は,被告物件1に関するCADデータ(乙18∼26,30∼
32)の提供を受けたところ,平成12年度以降の改訂がされているこ
と,CADソフトも平成14年にリリースされたものであること,乙第
26号証のデータには,「2003.04.17」に「切窓Dの形状を変更」とい
う記載があったことによる。
しかし,一旦,設計変更が実施された後,設計データが改訂されたり,
その改訂作業が,設計変更後に市販されたソフトで行われたりすること
は,特に不自然なこととはいえない。
むしろ,上記データの他の記載からすると,被告らが主張するとおり,
2000年(平成12年)以降は,後期型に変更されたと認めるべきで
ある。
(3)特許法102条1項による算定にあたって
アはじめに
原告らは,主位的に,特許法102条1項による算定を主張している。
本件においては,被告各物件の販売数量(同条項ただし書の適用の有
無については後記(5)のとおり。)に,被告各物件の販売がなければ,原
告らが販売できた原告製品1,2の単位数量当たりの利益の額を乗じた
ものを原告らの損害とするものであり,上記単位数量当たりの利益を算
定するに当たっては,原告らの売上額から,原材料費など,原告らが侵
害数量分を追加的に販売するために必要となった経費(変動経費)のみ
を控除すべきこととなる(後述するとおり,本件においては,材料費,
労務費,運賃,販売手数料のみを控除する。)。
イ原告製品1,2の製造,販売
証拠(甲77,80),弁論の全趣旨によると,原告らは,本件各特許
発明の実施品として,遅くとも平成8年3月以降,被告物件1に相当す
る製品として,GSO型及びその後継機種であるGSA型(原告製品1),
NCS型(GSA型とほぼ同じであるが,平成8年度に販売したもの)
を製造・販売し,被告物件2に相当する製品として,遅くとも平成8年
3月以降,NAS−3型及びその後継機種であるNAS−5型(原告製
品2)を製造・販売していることが認められる。
もっとも,平成11年度以前については,帳簿類等の資料が残ってお
らず,いつころまで,GSO型,NAS−3型を販売し,いつころから,
後継機種である原告製品1,2を製造,販売したかについての詳しい事
実は不明である(甲77には一応の数字が計上されているが,甲80に
よると,甲77は,担当者の机の中にあった資料に基づく数字が記載さ
れたというもので,その数字が全てを表すものであるかは不明である。)。
また,平成11年度以前におけるGSO型やNAS−3型,その後継機
種である原告製品1,2の販売価格や経費の正確な数字は不明であり,
特に,後継機種とそれ以前の機種とでは,これらの数値が相当異なるこ
とが窺われる(甲80)。
そうすると,平成11年度以前の侵害について,特許法102条1項
を適用して算定することは相当でないというべきである。
(4)原告製品1,2の単位数量当たりの利益
ア販売価格
証拠(甲75,76,計算鑑定の結果)によると,平成12年度から
平成19年度までの間における,原告製品1,2の1台あたりの販売価
格は,別紙計算書の販売価格欄記載のとおりであると認められる。
なお,原告らは,各年度の販売価格を集計した上,その平均値を出し
ている。また,経費についても同様のことを行っている。しかしながら,
年度により,原告製品1,2の単位数量当たりの利益が変動する可能性
のあることを考えると,年度毎で算定する方がより正確であると考えら
れるので,以下の計算においては,改めて平均値を出すことをせず,年
度毎に経費,利益を算定することとする。
イ材料費について
(ア)証拠(甲35,36,43∼52,58,61,62〔枝番を含む。〕,
計算鑑定の結果)及び弁論の全趣旨によると,原告製品1,2の製造の
ために要した1台あたりの材料費は,別紙計算書の材料費欄記載のとお
りであると認められる。
(イ)制御盤の価格
被告らは,当初,甲35,37,43ないし52,58,61,6
2(枝番を含む。)に計上された制御盤の価格は,コントロールボック
スのみであり,メインボード,パネルボード,ROMボード(プログ
ラム書き込み済),リレーボード,パワーサプライ等電源装置などが含
まれていないと主張し,その後,メインボードにCPUが計上されて
いないと主張し,次に,CPUにプログラム代金が計上されていない
と主張する。
しかし,証拠(甲60,甲61の1∼6,甲62の1∼6,甲65
の1・2,甲71∼73)によると,上記制御盤には,コントロール
ボックスだけでなく,メインボードなどの部品が含まれており,また,
メインボードには,プログラムの記載されたCPUが含まれており,
これら一体として代金が支払われた上,制御盤の代金として計上され
ていることが認められる。
(ウ)また,被告らは,甲35,37,43ないし52,61,62(枝
番を含む。)に計上された部品には,定電圧供給器,表光源用高周波発
信器,裏光源用高周波発信器,リレー・ソケット,端子台,スイッチ,
ノイズフィルター,ヒューズボックス,ヒューズ,予備の蛍光ランプ
が漏れていると主張する。
しかし,証拠(甲60)によると,これらの部品に対応する部品が,
いずれも,被告らが主張する帳簿において計上されていることが認め
られ,上記被告らの主張は理由がない。
ウ労務費(組立費)について
(ア)証拠(甲69,88.89,甲91の1∼3,甲92の1・2,甲
93,計算鑑定の結果)及び弁論の全趣旨によると,平成12年度か
ら平成19年度までの間における,原告製品1,2の製造のために要
した1台あたりの労務費は,別紙計算書の労務費欄記載のとおりであ
ると認められる。
(イ)ところで,証拠(甲69,89)によると,原告製品1,2を製造
するために,原告製品1は47時間(平成14年度以降)ないし48
時間(平成13年度まで),原告製品2は28時間を要することが認
められる。
原告らは,原告らが,被告各物件の販売台数を余分に製造する場合,
パートタイマーを利用することでまかなえるとして,パートタイマー
の賃金(時給1000円)に基づく労務費を主張する。
しかし,原告製品1,2の製造をパートタイマーだけで行うことが
可能であるとは考えにくい。また,特許法102条1項の趣旨からも,
特許権者である原告らが,実際に得た売上から,実際に要した変動経
費を控除して得られる利益をもって算定の根拠とすることが相当と
いうべきである。なお,これまで,原告らにおいて,原告製品1,2
の製造にパートタイマーを使用することがあったとしても,原告製品
1,2の製造にどの程度携わったのかどうかは不明である。
(ウ)そこで,計算鑑定書の記載のとおり,実際に要した労務費を基準と
して,控除すべき労務費を求めるべきであると考えるが,算定方法と
して,前記(イ)で述べた原告製品1,2の製造時間に原告ニシハツ産
業の従業員の一時間当たりの平均賃金を乗じて算出する方法と,原告
ニシハツ産業の工場における全労務費に原告ニシハツ産業の売上に
おける原告製品1,2の売上の割合を乗じて算出する方法の2通りが
考えられる。
前者については,手待ち時間などが十分に考慮されない可能性のあ
ること,後者については,高い労務費を要しない売上が相当数ある可
能性のあることが考慮されなければならない。
そして,前記(3)アで述べたとおり,特許法102条1項における単
位数量当たりの利益を算定するに当たっては,原告らの売上額から,
原材料費など,原告らが侵害数量分を追加的に販売するために必要と
なった経費(変動経費)のみを控除すべきであるところ,本件におい
ては,前者の算定方法を採用することが,より上記控除の趣旨に沿う
ものと考えられるが,必ずしも容易に労働力を確保することができる
わけでないこと,手待ち時間が一定程度あると考えられること,後記
カのとおり,原告ニシハツ産業の従業員が据付の作業を行う場合があ
ることが窺われることを併せ考慮し,前者の算定方法によって得られ
る労務費の1.25倍の金額をもって,控除すべき労務費とすることが
相当である。
エ運送費
証拠(甲33,34,計算鑑定の結果)及び弁論の全趣旨によると,
平成12年度から平成19年度までの間における,原告製品1,2の販
売のために要した1台あたりの運送費は,別紙計算書の運送費欄記載の
とおりであると認められる。
オ販売手数料
証拠(甲66∼68,計算鑑定の結果)及び弁論の全趣旨によると,
平成12年度から平成19年度までの間における,原告製品1,2の1
台あたりの販売手数料は,別紙計算書の販売手数料欄記載のとおりであ
ると認められる。
カ据付費用
被告らは,原告製品1,2の据付費用を控除すべきであると主張する。
しかし,少なくとも,原告らにおいて,原告製品1,2を商社や販売
店を通じて販売した場合は,販売手数料を支払うものの,原告らの従業
員が据付工事を行っているわけではないことが窺われる(弁論の全趣旨)。
そして,原告らの従業員が据付工事を行う場合については,前述した
労務費を算定するに際し考慮した調整により,まかなえているものと考
える。
キ減価償却費,広告宣伝費
被告らは,減価償却費,広告宣伝費についても変動経費として控除す
べきであると主張する。
しかし,特許権者が侵害数量分を追加的に販売するために必要となっ
た経費(変動経費)の中に,減価償却費を含めることはできない。
また,広告宣伝費についても同様のことがいえる。原告製品1,2の
売上と相関関係を認めることのできる広告宣伝費があった場合は,変動
経費と見ることも可能であるが,そのような事情を認めるに足りる証拠
はない。
したがって,これらの経費を,原告製品1,2の製造,販売にかかる
変動経費として計上することはしない。
ク原告ニッカ電測の経費について
被告らは,原告ニッカ電測に発生しているはずの経費を控除すべきで
あると主張する。
しかし,原告らは,少なくとも,平成12年度以降については,原告
製品1,2の単位数量当たりの利益として,原告ニシハツ産業の利益の
みを計上しているのであるから,上記利益を算定するにあたり,原告ニッ
カ電測に発生した経費があったとしても,これを控除する必要はないと
いうべきである(なお,原告ニシハツ産業にだけ多くの利益を生じさせ,
原告ニッカ電測には赤字を発生させるようなことが行われたような形跡
は窺えない。また,平成11年度以前の販売については,特許法102
条1項を適用すべきでないことについては,前記(3)イで述べたとおりで
ある。)。
(5)寄与率
ア特許法102条1項ただし書は,「(侵害者による)譲渡数量の全部又
は一部に相当する数量を特許権者又は専用実施権者が販売することがで
きないとする事情があるときは,当該事情に相当する数量に応じた額を
控除するものとする。」と規定されているところ,競合品や代替品の存在,
販売力などに関する事情も上記ただし書における事情として考慮するこ
とができ,被告らが主張する寄与率もその1つの事情として考慮するこ
とができると考える。
イ被告らは,被告各物件の有する機能のうち,本件各特許発明が使用さ
れた機能は一部であるから寄与率に応じた減額をすべきであると主張す
る。
たしかに,被告物件2は,乾海苔の表,中,裏の異物検出を行う機能
を有しており,本件各特許発明は,裏面の検出機能に使用されている。
さらに,被告物件1は,上記3つの機能に加え,破れ・穴あき等の形状
検査機能と10枚ずつカウントする機能を有している(弁論の全趣旨)。
しかし,上記裏異物の検出機能に本件各特許発明を使用しており,こ
れが特許により独占的実施を保証されており,上記機能が被告各物件の
売上に寄与している場合は,他の機能が付加されているからといって,
本件各特許発明の寄与率を上記機能が機能全体に占める量的割合に限定
させる必要はない。
ウそこで,被告各物件における本件各特許発明が売上に与えた寄与率を
検討する。
(ア)裏異物検出機能の意義
証拠(甲26,57)及び弁論の全趣旨によると,次の事実を認め
ることができる。
近時,コンビニエンスストアなどでおにぎりが多く売れるようにな
り,海苔の需要が高まるとともに,厳しい品質管理が求められるよう
になった。
海苔の場合は,異物の混入の有無が品質にも大きく影響し,その検
出が重要な課題となっており,また,そのための装置が開発されてき
た。
そして,原告製品1,2及び被告各物件は,いずれも,乾海苔を一
度くぐらせるだけで,その表面,中,裏面の異物を検出することがで
きる機能を有しており,これが同時にできないと,同じ作業を繰り返
す必要があり,検出作業に要する手間や時間が増える(仮に,1台の
機械をもって検出作業をするのであれば,2倍近い時間がかかる。2
台〔2種類〕の機械を同時に使用する場合は,同様の時間を要するこ
とはないが,検出機の購入代金が割高になることが予想されることの
ほか,2台分の設置場所や,検出機から排出された乾海苔を,改めて
別の検出機にセットする手間を要する。)。
したがって,表面や中だけでなく,裏面の異物検出機能を有し,1
回の搬送で検出を終えることのできる機能は,海苔異物検出機の販売
に際し,大きな貢献を果たしているというべきである。
(イ)本件各特許発明と代替技術
本件明細書によると,本件各特許発明の出願以前の海苔の異物検出
に関する従来技術として,目視に頼るか,上下のローラーで挟んでそ
の厚みにより異物を検出する方法が記載されている。
しかし,その一方で,次に述べるとおり,海苔の異物を検出する機
能を有した装置自体は,開発がすすみ,普及していったことが窺われ
る。
被告各物件においても,裏面検出機能のほか,表面検出機能と中検
出機能を具備しているところ,中検出は検出対象物が違うものの,少
なくとも表面検出機能については,その機能において違いがあるわけ
ではない(前述したとおり,裏返しした上での検出が議論されている
が,そもそも,そのような検出方法が不可能であることを前提とした
議論はされていない。)。
また,証拠(乙49)によると,本件各特許発明の出願後の文献で
あるが,平成7年当時,光学的システムにより,乾海苔の表裏に付着
した異物の検出方法が開示されている(ここに紹介された技術は,本
件特許発明1のようなベルトコンベア間の間隙を要するものではなく,
本件特許発明1の技術的範囲に属する技術ではない。)。
さらに,原告らは,被告各物件とともに侵害品であるとして主張し
ていたES型に関する請求について,訴えを取り下げている(記録上
明らかな事実)。その理由については,ES型についても,裏面異物検
出機能にかかる装置が付加されていたが,原告らは,同装置が,本件
各特許発明の技術的範囲に属さないと判断したものと推測される(乙
30∼32によると,光源の照射する海苔搬送面の裏側に接する形で
ローラーがあるため,本件各特許発明の効果を発揮しているとは考え
にくい。)。
このように,被告各物件の表面検出機能や,ES型の表面,裏面検
出機能にかかる装置は,いずれも本件各特許発明の技術的範囲に属し
ておらず,平成8年3月28日以降,被告各物件が販売されていた時
点で,既に,本件各特許発明の代替技術が存していたことが認められ
る。
(ウ)原告らも長期間にわたり,被告らによる本件各特許発明の使用を気
付かなかったこと
実際,原告らは,被告らの被告各物件の製造,販売を知りながら,
本件特許発明1の使用に気付かなかったわけであるが(後記4),この
ことからも,被告各物件の販売において,本件各特許発明を使用して
いることが,被告各物件の販売へ大きな影響を与えたとはいえない(裏
面検出機能の具備と本件特許発明1の使用とは同義ではない。)。
また,被告各物件や原告製品1,2の広告用パンフレット(甲3,
90)を見ても,本件各特許発明の機能や効果に関する言及は見あた
らない。
(エ)本件特許発明2の寄与率
なお,被告物件1の前期型及び被告物件2は,本件特許発明2の技
術的範囲に属し,被告物件1の後期型については,本件特許発明2の
技術的範囲に属していないが(前記2),本件特許発明2の使用の有無
によって,実際にどの程度,検出効果が異なるかは不明であるし,被
告各物件の販売に際し,この点についての違いの分かる販売方法を
とってはいない。
したがって,本件特許発明2の使用の有無については,売上に対す
る寄与率に,ほとんど差を認めることはできない。
エその他の事情
原告製品1の販売台数は,平成12年度以降,440台である(甲3
0。別紙計算書「GSA販売台数」欄参照)。また,それ以前の販売台数
については,平成8年3月28日以降に限ると,少なくとも201台で
あり,その従来機種であるGSO型については,131台であり,類似
機種であるNCS型については31台(合計803台)である(甲77,
78。なお,甲77については,記載された台数が全てであるかどうか
についての信用性を認めることはできないが,少なくとも,記載された
台数の販売があったことは認定してよいと考える。)。
これと同様,原告製品2の販売台数は,平成12年度以降,238台
であり(甲30。別紙計算書「NAS−5販売台数」欄参照),それ以前
の販売台数については,平成8年3月28日以降に限ると,少なくとも
87台あり,その従来機であるNAS−3型については60台(合計3
85台)であったことが認められる(甲77)。
一方,平成8年3月28日以降の,被告各物件の販売台数は,前記(2)
のとおり,被告物件1が301台,被告物件2が227台であると認め
ることができる(別紙計算書「FE販売台数」「E販売台数」欄参照)。
原告ニシハツ産業と被告らは,いずれも海苔選別機械メーカーであり,
原告ニシハツ産業の方がシェアは大きいことが窺われるものの(乙65),
ライバル企業であり,これまでにも立場を変えて訴訟で争うなど(乙6
9),鎬を削る争いをしてきたことが容易に推測される(弁論の全趣旨)。
ところで,前述した販売台数の推移を見ても,被告らの被告各物件の
販売により,原告らの販売台数に影響があったことを推論することは困
難であり,販売単価もあまり変わらず(別紙計算書「販売価格」欄参照),
しかも,比較的高額の機械であることや,協同組合などを通じた販売が
想定されるような場合では,顧客の流動性は低いと推定され,これらの
事情を総合考慮すると,被告各物件の販売台数を原告らが販売すること
については,相当程度の困難が予想される。
オ以上を総合すると,被告物件1の後期型の販売における寄与率は2
0%,被告物件2の販売における寄与率は25%と認めるのが相当であ
る。
(6)特許法102条1項に基づく算定結果(平成12年度∼平成19年度)
以上によると,平成12年度(始期:平成12年7月1日)から平成1
9年度(終期:平成20年6月末日)までの間,被告らが被告各物件を販
売したことによる,原告らの損害は,別紙計算書記載「GSA・H12/7∼
H20/6・1項合計」欄(7272万7486円)及び「NSA−5・H12/7
∼H20/6・1項合計」欄(2500万6493円)のとおりであり,合計
9773万3979円であると認められる。
なお,この金額は,原告らの主張する特許法102条2項による計算(被
告各物件の販売台数及び寄与率については,前記(2),(5)で認定した数値を
採用する。),原告らの主張する同条3項による計算と比べ,多額である(別
紙計算書参照)。
(7)平成8年3月28日から平成11年度(終期:平成12年6月末日)ま
での販売期間における損害の算定
ア前記(3)イで述べたとおり,上記期間について,特許法102条1項に
基づき損害を算定することはできないので,同条2項もしくは同条3項
により算定をすることとする。
イ特許法102条2項に基づく算定結果
上記期間において,被告らが被告各物件を販売したことによる損害を,
特許法102条2項に基づき算定した場合,原告らの主張する数値をそ
のまま採用しても(被告各物件の販売台数及び寄与率については,前記
(2),(5)で認定した数値を採用する。),別紙計算書記載「GSA・H8∼
H11・2項合計」欄(693万4218円)及び「NSA−5・H8∼H11・
2項合計」欄(650万3055円)のとおり,合計1343万727
3円となる。
しかし,原告ら主張に基づく上記計算は,被告各物件の製造にかかる
労務費が控除されておらず,直ちに採用することは困難である。そして,
仮に,原告製品1,2と同様の労務費が必要であると考えると(GSA
型で約11万円余,NAS−5型で約6万円余),後述する特許法102
条3項に基づく算定結果より低額になると考えられる。
ウ特許法102条3項に基づく算定結果
上記期間において,被告らが被告各物件を販売したことによる損害の
特許法102条3項に基づく算定は,被告各物件の上記期間における売
上に実施料率を乗じることによって行う。
証拠(甲28)及び弁論の全趣旨によると,本件各特許発明の実施料
率は5%と認めることが相当である。
そうすると,上記期間における損害を特許法102条3項により算定
すると,別紙計算書記載「GSA・H8∼H11・3項合計」欄(647万
4614円)及び「NSA−5・H8∼H11・3項合計」欄(662万6
516円)のとおり,合計1310万1130円となる(なお,この期
間における損害についても,本来,原告ニシハツ産業と原告ニッカ電測
の損害を個別に算定すべきであるが,前提事実(5)のとおり,損害賠償請
求権に関する合意がされていることを考えると,本件特許権の共有者で
ある原告らの損害を算定することで足りると解する。)。
(8)弁護士費用
本件事案の内容,訴訟の経緯,認容額等の諸般の事情を考慮すると,本
件特許権侵害と相当因果関係のある損害としての弁護士費用は,原告それ
ぞれ400万円が相当であると認める。
(9)まとめ
以上によると,被告らが被告各物件を販売したことにより,原告らが被っ
た損害は,合計1億1883万5109円であると認めることができる。
したがって,被告らは,原告らに対し,それぞれ損害賠償として594
1万7554円及びこれに対する年5%の割合による遅延損害金を支払う
義務がある。
4消滅時効の成否
(1)被告らは,被告各物件が販売された直後には,原告らは損害及び加害者
を知っていたと主張し,消滅時効を援用する。
しかし,証拠(甲64の1∼3)及び弁論の全趣旨によると,原告らは,
平成18年4月ころ,被告物件2が本件各特許発明の技術的範囲に属する
ことを知ったと認めることができるが,それ以前に,原告らがこれらの事
実を知ったと認めるに足りる証拠はない。
(2)被告らは,原告ニッカ電測が,平成7年11月15日,被告川島製作所
に対し,異議申立書(乙76の1)を送付したことをもって,被告各物件
による本件特許権の侵害を知っていたはずであると主張する。
しかし,上記書面は,送付案内(乙76の2)においては,異議申立書
という文書名となっているが,書面自体には表題はなく,その内容は,原
告ニッカ電測が海苔異物の検出方法について,特許公告を受けていること
を通知するとともに,海苔異物検出機を製造,販売する被告川島製作所に
対し,「上記特許公告との関係におきまして,権利上の問題が生じないよ
うくれぐれもご留意下さいますようお願い申し上げます。」というのみで
あり(乙76の1),上記書面の送付をもって,原告らが,送付の時点で,
被告各物件の製造,販売が本件特許権を侵害していることを知っていたと
認めることはできない。
(3)また,被告らは,原告ニシハツ産業の製品と被告らの製品が同じ会社で
購入され,使用されている例がある(乙78)と主張するが,上記事実が
認められたからといって,原告製品1,2のメンテナンスをした原告側の
担当者が,被告各物件の内部を調査するとは限らない(むしろ,そのよう
なことは考えにくい。)。したがって,このような事実をもって,原告らが,
被告各物件の製造,販売による本件特許権侵害を,前記(1)の時期より早期
に発見していたと認めることはできない。
第5結論
以上によると,原告らの請求は,いずれも,被告らに対し,連帯して,そ
れぞれ5941万7554円及びうち5821万6402円(平成8年度か
ら平成18年度における販売行為に基づく損害であり,平成18年度分につ
いては,平成19年4月分までの10か月分を月割合によって算定したもの)
に対する平成19年5月15日(本件訴状送達の日の翌日)から,うち19
万5524円(平成18年度における販売行為に基づく損害のうち,平成1
9年5月分と6月分について,2か月分を月割合によって算定したもの)に
対する平成19年7月1日(平成18年度が経過した翌日)から,うち10
0万5628円(平成19年度における販売行為に基づく損害)に対する平
成20年7月1日(平成19年度が経過した翌日)からそれぞれ支払済みま
で年5%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれ
を認容し,その余は失当であるから棄却し,訴訟費用の負担につき民事訴訟
法61条,65条1項を,仮執行の宣言につき同法259条1項を,仮執行
宣言の免脱につき同法259条3項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決
する。
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官山田陽三
裁判官達野ゆき
裁判官北岡裕章は,転補のため署名押印することができない。
裁判長裁判官山田陽三
被告物件目録
1「FE型」一郎(形状・異物選別機「カウント一体型」)
2「E型」三郎(異物専用選別機)
被告物件説明書
被告各物件は,乾海苔用の夾雑物検出装置を備えた異物選別機構(被告各物
件に投入された乾海苔の表面〔上面〕,中〔内部〕または裏面〔下面〕に付着
した夾雑物を,表異物,中異物,裏異物としてそれぞれに検出して選別手段へ
伝達し,当該乾海苔とそれ以外とを選別可能とする装置)を有する。この異物
選別機構中,「裏異物」についての夾雑物検出装置は,次の構成を有する。
なお,被告物件2は,上記異物検出・海苔選別の専用機であり,被告物件1
は,上記異物選別に加えて,形状判別の機能を備えている。
a乾海苔(幅19㎝×長さ21㎝規格の長方形)の水平搬送手段として,幅
18㎝の平ベルトからなる前段の駆動ベルトコンベア(1)と,直径4㎜のヒ
モベルト8本からなる中段の駆動ベルトコンベア(2)と,一本の駆動ロー
ラーコンベア(3)と,直径5㎜のヒモベルト4本からなる後段の駆動ベルト
コンベア(4)が,それぞれ間隔を存しつつ,順に配設されて海苔搬送面(25)
が形成されている。なお,中段の駆動ベルトコンベア(2)と後段の駆動ベル
トコンベア(4)の間隔は,被告物件1で21.5㎝,被告物件2で20.9㎝で
ある。
b搬送手段たる駆動ベルトコンベア(2),(4)の間には,1本の駆動ローラー
コンベア(3)と,海苔搬送面(25)に沿ってその下方に海苔搬送用のガイド板
(5)とガイド板(5)とが順次配設されているところ,離間して設けられた該ガ
イド板(5)とガイド板(5)の間には,間隙(24)が搬送面を横断するようにし
て形成されている。
ガイド板(5)とガイド板(5)の間の間隙(24)の直下には,海苔搬送面(2
5)に対して下側に裏異物用光源(10)として高周波蛍光灯ユニットが設け
られており,斜め上方の該間隙の検出位置に向けて照射可能となっている。
なお,裏異物用光源(10)からの照射角度は,搬送面(25)に対して,被告物
件1の前期型と被告物件2については約70°であり,被告物件1の後期型
については80°と90°に可変である。
c該裏異物用光源(10)が該間隙に向けて照射した光の反射光(搬送されて
いく乾海苔下面からの反射光)を受光可能なラインイメージセンサ(13)と
してCCDカメラ(オムロン社製:3X2CA−ZLF−N等)が該搬送面(2
5)の斜め下方30°のところに約40㎝の距離をおいて設けられている。
d搬送されていく海苔下面からの検出位置における反射光は該CCDカメラ
のレンズで順次集光され,直線的に配置された受光素子によって順次光電変
換され,順次電気信号として異物選別機の制御盤(21)の内部に収納された
回路基板(22)へと送信されていくことで,該回路基板(22)内にて光量の変
化を検出しうる仕組みとなっている。
e該制御盤(21)の表面のスイッチや表示の具体的な配置は,被告各物件そ
れぞれに異なるものの,異物選別機本体を始動する運転スイッチ(14),選
別用の各光源(8),(9),(10)を点灯させる選別動作スイッチ(15),表異
物,中異物,裏異物のそれぞれの箇所の選別の有無を個別に指示する動作ス
イッチ(16),乾海苔の表,中,裏に付着した各異物の検出感度を調節する
ための感度スイッチ(17),通過した乾海苔の光量を表異物,中異物,裏異
物のいずれかの入光量をデジタル方式で数値表示する入光量表示(19)と,
該入光量表示で表示させる異物の種類を切り換えるための入光量表示切り換
えスイッチ(18)が備わっている。
f前記感度スイッチ(17)によって入力された裏異物の検出感度の設定値に
基づき,前記回路基板において検出されている光量を設定値と対照して設定
値以上になったときには,選別手段のシャッター(20)を作動せしめるべく
夾雑物混入信号を出力することで夾雑物混入の乾海苔を選別可能とした。
a∼fの構成からなる乾海苔の夾雑物検出装置である。
そして,上記のa∼fの構成からなる夾雑物検出装置からの信号出力に基づ
き,選別手段のシャッター(20)を動作させ,ベルトコンベア(2),間隙(24)
及び前記ベルトコンベア(4)上を通過して搬送されてきた乾海苔は,夾雑物の
混入の有無によって夾雑物混入海苔収納用のバケット(23)へと乾海苔を振り
分けることが可能となっている。
被告各物件は,本体機構部とその上部に制御盤が組み合わされてなるが,本
体部側面は鉄製の外装パネルに覆われており,外観からは上記の裏異物選別機
構を看取することはできない構造となっている。
図面の説明
図1被告物件2の寸法図
図2被告物件2の本体内部機構概略図
図3被告物件2の制御盤のパネル表示部
図4被告物件1前期型の本体内部機構概略図
図5被告物件1後期型の寸法図
図6被告物件1後期型の本体内部機構概略図
符号の説明
1駆動ベルトコンベア
2駆動ベルトコンベア
3駆動ローラーコンベア
4駆動ベルトコンベア
5ガイド板
6押さえローラー
7吸引ローラー
8表異物用光源
9中異物用光源
10裏異物用光源
11表異物用ラインイメージセンサ
12中異物用ラインイメージセンサ
13裏異物用ラインイメージセンサ
14運転スイッチ
15選別動作スイッチ
16動作スイッチ
17感度スイッチ
18入光量表示切り換えスイッチ
19入光量表示
20シャッター(選別手段)
21制御盤
22回路基板
23バケット
24間隙
25搬送面

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