弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1原告らの請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用及び参加費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1請求
被告は,Aに対し,69万3740円及びこれに対する平成26年2月3日
から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。
第2事案の概要
本件は,大阪市の住民である原告らが,大阪市長であった被告補助参加人A
(以下「参加人」という。)がいわゆる従軍慰安婦問題に関する不適切な発言
をしたことが原因で,同市が計画していた参加人らのアメリカ合衆国(以下「米
国」という。)への出張(以下「本件出張」という。)が中止となり,これに
より,同市にキャンセル料相当額の損害が生じたにもかかわらず,同市の執行
機関である被告が,参加人に対する民法415条ないし同法709条に基づく
損害賠償請求権の行使を違法に怠っていると主張して,地方自治法242条の
2第1項4号に基づき,被告を相手に,参加人に対して損害賠償金69万37
40円及びこれに対する訴状送達の日である平成26年2月3日から支払済み
まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求することを求める
住民訴訟の事案である。
1前提となる事実
以下の事実は,当事者間に争いがないか,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によ
り容易に認めることができる。
(1)当事者等
ア原告らは,いずれも大阪市の住民である。
イ被告は,大阪市の執行機関たる市長である。
ウ参加人は,平成25年当時,大阪市長の職にあるとともに,国政政党で
ある「Bの会」の共同代表の職にあった。
エ大阪市は,昭和32年,米国カリフォルニア州サンフランシスコ市(以
下「サンフランシスコ市」という。)との間で姉妹都市提携をし,これ以
降50年以上にわたって同市との都市間交流を継続している。(甲41,
42)
(2)本件出張の計画
大阪市は,平成25年4月12日,参加人及び同市職員6名からなる訪問
団を,同年6月10日から同月16日までの期間,サンフランシスコ市及び
米国ニューヨーク州ニューヨーク市(以下「ニューヨーク市」という。)に
出張させることを決定した(本件出張)。また,大阪市は,同年5月9日,
本件出張の事前調整を目的として,同市職員2名を,同月30日から同年6
月2日までの期間,ニューヨーク市に出張させることを決定した(以下「本
件下見」という。)。(甲2,乙5,証人C)
(3)本件発言
参加人は,同年5月13日,大阪市役所に登庁した際及び退庁する際にそ
れぞれ実施された「ぶら下がり取材」(マスメディアの記者が取材対象者を
取り囲んで行う形式の取材のこと。)において,別紙2発言目録記載の発言
をした(以下「本件発言」という。)。(丙1の1・2)
(4)本件発言に対するマスメディアの反応
日本の新聞各紙は,同日の夕刊を皮切りに,本件発言に関する批判的な内
容の記事を翌14日,15日と連日紙面に掲載した。(甲4~13,丙2~
8)
(5)本件発言に対する米国内の反応
ア米国国務省D報道官は,同月16日に実施された記者会見において,本
件発言を強く批判した。(甲15,17)
イ「SanFrancisco-OsakaSisterCityA
ssociation(サンフランシスコ大阪姉妹都市協会)」(以下「姉
妹都市協会」という。)は,同日,「大阪市長A氏の最近の発言について」
と題する声明を発表し,本件発言に否定的な立場を表明した。(甲33,
34)
(6)サンフランシスコ市幹部からの電子メール
大阪市経済戦略局総務部都市間交流担当課長として本件出張に関する調整
業務に当たっていたCは,同月21日,サンフランシスコ市幹部に電子メー
ルを送信し,参加人の同市訪問の可否等について意見を求めた。(乙5,証
人C)
同月22日に同市幹部から返信されてきた電子メール(以下「本件メール」
という。)には,個人の見解である旨の留保が付された上で,①サンフラン
シスコ市民は現在参加人の訪問を歓迎していない,②訪問を決行すれば大阪
市のイメージダウンは避け難い,③抗議行動に対する警備の面と大阪の経済
発展の見地から,今回の訪問が延期されることを希望する旨が記載されてい
た。(乙1の1・2)
本件メールの要旨について報告を受けた参加人は,同日,本件下見を中止
する旨の指示を出し,同月24日,本件下見の中止が確定した。(甲2,乙
2,5,証人C)
(7)E党大阪市会議員団による申入れ
E党大阪市会議員団は,同月23日,参加人に対し,本件発言に抗議が相
次いでいる現状に鑑み,本件出張を中止するよう申し入れた。(乙3)
(8)本件出張の中止
参加人は,同月28日,本件出張を中止する旨の指示を出し,同月30日
及び同年6月7日に所定の決裁を経て,本件出張の中止が確定した。(甲2,
乙5,証人C)
(9)キャンセル料の支出
大阪市は,本件出張及び本件下見(以下,併せて「本件出張等」という。)
を中止したことに伴い,同年7月31日,職員の旅費に関する条例3条2項,
同条例施行規則6条に基づき,以下の内訳のキャンセル料合計69万374
0円(以下「本件キャンセル料」という。)を支出した。(甲2)
ア本件出張の中止に伴うキャンセル料
宿泊費関係25万6840円
航空券関係36万5100円
イ本件下見の中止に伴うキャンセル料
航空券関係7万1800円
(10)住民監査請求
ア原告らは,同年10月22日,大阪市の監査委員に対し,参加人の違法
不当な本件発言が原因で本件出張等が中止となり,大阪市に本件キャンセ
ル料相当額の損害が生じたにもかかわらず,大阪市の執行機関である被告
が,参加人に対する不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を違法に怠っ
ていると主張して,住民監査請求をした。(甲1,2)
イ大阪市の監査委員は,本件発言時において本件出張等の中止という結果
を予見することができない以上,参加人に過失は認められず,また,本件
発言は不適切ではあるものの,違法とまではいうことができないから,原
告らの請求には理由がないと判断し,同年12月16日頃,その旨を原告
らに通知した。(甲2)
(11)本件訴訟の提起
原告らは,平成26年1月14日,本件訴訟を提起した。(顕著な事実)
2争点及び当事者の主張
本件の争点は,大阪市が参加人に対して民法415条ないし同法709条に
基づく本件キャンセル料相当額(69万3740円)の損害賠償請求権を有し
ているか,具体的には,①本件発言が大阪市に対する債務不履行ないし注意義
務違反に当たるか(争点1),②本件発言と本件出張の中止との間に相当因果
関係があるか(争点2)及び③本件発言が政治的意見の表明に当たるとして債
務不履行及び不法行為の違法性を欠くか(争点3)の3点であり,これらの点
についての当事者等の主張は以下のとおりである。
(1)争点1(債務不履行ないし注意義務違反の有無)について
(原告らの主張)
ア参加人が負っていた債務ないし注意義務の内容
(ア)参加人の地位と職責
参加人は,平成25年当時,大阪市の執行機関たる市長の職にあり,
大阪市の事務を自らの判断と責任において誠実に管理し及び執行する義
務を負っていた(地方自治法138条の2)。
(イ)本件出張の性質
本件出張は,民間の活力を利用した地域開発等に係る先進事例の調査
や,訪問都市との交流の深化等を目的としており,従来の交流と同じく,
都市間の友好を旨とするものであった。そのため,本件出張を円滑に実
施するためには,何よりも訪問都市であるサンフランシスコ市及びニュ
ーヨーク市との友好関係を維持することが肝要であった。
(ウ)参加人が負っていた債務ないし注意義務の内容
以上のことからすれば,参加人は,本件出張の円滑な実施が阻害され
ることのないよう,訪問都市との友好関係を損なったり,訪問都市の反
発を招いたりするおそれのある言動を慎むべき債務ないし注意義務を負
っていたというべきである。
イ参加人の債務不履行ないし注意義務違反
(ア)訪問都市の地域性等
本件出張の訪問都市の一つであるサンフランシスコ市は,中華人民共
和国(以下「中国」という。)及び大韓民国(以下「韓国」という。)に
ルーツを持つ市民が多いため,両国が日本を強く批判している従軍慰安
婦問題について,非常に敏感な反応を示す都市である。このことは,同
市選出の米国下院議員であるFが,従軍慰安婦問題に関する決議案を米
国下院議会に提出していることからも明らかである。このようなサンフ
ランシスコ市の地域性は,同市と60年近い交流を有し,かつ,平成2
4年まで米国内に海外事務所を開設していた大阪市にとって顕著な事実
であり,したがって,同市の市長の職にあった参加人にとっても顕著な
事実であった。
また,サンフランシスコ市及びニューヨーク市を含む米国は,女性の
人権問題における先進国であり,女性の人権を損なう言動に対しては非
常に敏感な反応を示す国家である。このことは,もはや公知の事実とい
うべきである。
(イ)従軍慰安婦に関する発言
参加人は,本件発言の中で,「当時の歴史をちょっと調べてみたらね,
日本国軍だけじゃなくて,いろんな軍で慰安婦制度ってのを活用してた
わけなんです。そりゃそうですよ,あれだけ銃弾が雨嵐のごとく飛び交
う中で,命かけてそこを走っていくときに,そりゃ猛者集団,精神的に
高ぶっている集団,やっぱりどこかで休息じゃないけども,そういうこ
とをさせてあげようと思ったら,慰安婦制度ってのは必要だということ
は誰だって分かるわけです。ただそこで,日本国が欧米社会でどういう
ふうにみられてるかというと,これはやっぱりね,韓国とかいろんなと
ころの宣伝効果があって,レイプ国家だってみられてしまっているとこ
ろ。ここが一番問題だからそこはやっぱり違うんだったら違うと。」と発
言した。
上記発言のうち「慰安婦制度ってのは必要だということは誰だって分
かるわけです。」との部分は,従軍慰安婦に関する責任を否定し,開き直
った態度を採っているかのような印象を与えるものであり,また,「韓国
とかいろんなところの宣伝効果があって,レイプ国家だってみられてし
まっているところ。」との部分は,従軍慰安婦問題に関する中国や韓国の
対日批判を,不当なあおり行為として非難するかのような印象を与える
ものである。そして,このような発言をした場合,中国及び韓国にルー
ツを持つ市民の多いサンフランシスコ市が強く反発し,大阪市とサンフ
ランシスコ市の友好関係が損なわれ,その結果,本件出張の円滑な実施
が阻害されることは,容易に予見することが可能である。
したがって,上記発言は,参加人が負っていた上記ア(ウ)の債務の不
履行ないし注意義務に違反する行為に当たるというべきである。
(ウ)在日米軍に風俗店の活用を勧める発言
参加人は,本件発言の中で,「でも,慰安婦制度じゃなくても風俗業
ってものは必要だと思いますよ。それは。だから,僕は沖縄の海兵隊,
普天間に行った時に司令官の方に,もっと風俗業活用してほしいって言
ったんですよ。そしたら司令官はもう凍り付いたように苦笑いになって
しまって,『米軍ではオフリミッツだ』と『禁止』っていうふうに言って
いるっていうんですけどね,そんな建前みたいなこというからおかしく
なるんですよと。」と発言した。
上記発言は,女性の人権を損なう極めて不適切なものであるから,こ
のような発言をした場合,女性の人権を損なう言動に敏感なサンフラン
シスコ市及びニューヨーク市が強く反発し,大阪市とサンフランシスコ
市及びニューヨーク市との友好関係が損なわれ,その結果,本件出張の
円滑な実施が阻害されることは,容易に予見することが可能である。し
たがって,上記発言は,参加人が負っていた上記ア(ウ)の債務の不履行
ないし注意義務に違反する行為に当たるというべきである。
ウ小括
以上のとおり,本件発言は,大阪市に対する債務不履行ないし注意義務
違反に当たる。
(被告の主張)
アマスメディアが参加人の真意とは異なる報道を行ったこと
参加人がした本件発言の骨子は以下のとおりである。すなわち,①歴史
を振り返ると,戦時中,多くの国家が慰安婦制度を利用していたが,国際
社会において非難の対象となっているのは日本だけである,②これは,日
本が国家として強制的に慰安婦を拉致したと考えられているからであるが,
日本が暴行脅迫を用いて慰安婦を拉致したことを裏付ける証拠はないので
あるから,この点に係る事実誤認は正していかなければならない,③もっ
とも,意に反して慰安婦となった女性に対しては,認めるべきところは認
め,謝るべきところは謝らなければならない,というものである。
上記骨子から明らかなように,参加人は,本件発言において,「慰安婦制
度が必要であった。」という自己の意見を述べたことはなく,「多くの国家
が慰安婦制度を必要としていた。」という歴史的事実を述べたにすぎない。
しかしながら,マスメディアは,「A氏『慰安婦必要だった』」,「A氏『慰
安婦必要』」,「『慰安婦制度必要なのはわかる』A氏」,「A氏『慰安婦,必
要だった』」などの見出しを用いて,あたかも参加人が「慰安婦制度が必要
であった。」という自己の意見を述べたかのような,参加人の真意とは異な
る報道を行った。
イサンフランシスコ市が本件発言の内容を誤解したこと
サンフランシスコ市は,マスメディアの報道が原因で,参加人が慰安婦
制度を正当化する発言をしたものと誤解した。このことは,サンフランシ
スコ市議会が平成25年7月2日に行った「第二次世界大戦における性奴
隷制度非難決議」の内容が,マスメディアの報道内容と軌を一にしていた
ことからも明らかである。かかる誤解により,サンフランシスコ市内にお
いて参加人に対する批判的な世論が過熱し,同市の幹部がCに対し本件出
張の延期を求める本件メールを送信することとなったのである。
ウサンフランシスコ市の誤解が原因で本件出張等が中止されるに至ったこ

参加人は,本件メールの内容に加え,参加人に対する批判的な世論の高
まりにより,訪問先のアポイントメントを取ることが困難になったことや,
訪問都市との関係に悪影響を及ぼすおそれがあること等を総合的に勘案し,
本件出張を決行してもその目的を達成することは困難であるとの結論に達
したことから,本件出張等を中止にした。
エ本件発言が債務不履行及び注意義務違反に当たらないこと
以上のように,本件出張等が中止に至ったのは,マスメディアが参加人
の真意とは異なる報道を行ったこと,そして,かかる報道に基づきサンフ
ランシスコ市が本件発言の内容を誤解したことによるものである。しかし
ながら,このような特異な経緯を事前に予測することは困難な上,日本の
一都市の首長の発言が国際的に大きく報道され,それによって,当該首長
が海外出張の予定を変更せざるを得ないほどに国際的な非難が高まるとい
う事態は,通常想定し難いものであって,これまでにこのような事態が大
阪市で起こったこともなかったのであるから,参加人が本件出張等の中止
を予見することはおよそ不可能であったというべきである。そうすると,
参加人が,このような予見不可能な事態を避けるために本件発言を差し控
えるべき債務及び注意義務を負っていたと解する余地はないから,本件発
言は大阪市に対する債務不履行及び注意義務違反に当たらない。
(2)争点2(相当因果関係の有無)について
(原告らの主張)
前記(1)(原告らの主張)記載のとおり,本件発言の結果,本件出張の円
滑な実施が阻害されることは,容易に予見することができたのであるから,
本件発言と本件出張の中止との間に相当因果関係があることは明らかである。
なお,被告及び参加人は,本件発言に対するサンフランシスコ市の反発は,
本件発言の内容を誤解したことに基づくものである旨主張する。しかしなが
ら,本件出張の中止後にサンフランシスコ市議会で採択された非難決議が,
本件発言の趣旨内容を正確に引用していること等の事情に照らせば,サンフ
ランシスコ市の反発が誤解に基づくものでないことは明らかである。
(被告及び参加人の主張)
仮に,本件発言が債務不履行又は注意義務違反に当たるとしても,本件発
言と本件出張の中止に伴う本件キャンセル料の支出との間には,前記(1)(被
告の主張)記載のとおり,マスメディアが参加人の真意とは異なる報道を行
ったこと,そして,かかる報道に基づきサンフランシスコ市が本件発言の内
容を誤解したという予見することが不可能な第三者の行為が介在しているの
であるから,本件発言と損害との間の因果関係は断絶しているというべきで
ある。
(3)争点3(違法性の有無)について
(被告の主張)
政治家の行う政治的意見の表明(以下「政治的発言」という。)は,国民の
政治意思決定に直接的に寄与するものであるから,民主制に資する表現活動
として表現の自由の中でとりわけ高い社会的価値を有している。また,政治
的発言の当否は,選挙や対抗言論によって評価することが可能であり,また,
これらによって評価することが相当であると考えられる。以上を踏まえれば,
政治的発言については,その内容が政治的発言としての域を逸脱したもので
ない限り,債務不履行ないし不法行為の違法性を欠くものというべきである。
これを本件についてみると,本件発言は,前記(1)(被告の主張)ア記載
のとおり,国政に関する意見を表明するものであるから,大阪市長としての
発言ではなく,国政政党である「Bの会」の共同代表としての発言である。
そして,その内容が政治的発言としての域を逸脱したものでないことも明ら
かであるから,本件発言は,政治的発言に当たり,不法行為ないし債務不履
行の違法性を欠くというべきである。
(参加人の主張)
原告らが論難する従軍慰安婦問題に関する本件発言は,多くの国家が戦時
中に慰安婦制度を利用していたという歴史的事実を前提に,日本のみが慰安
婦を利用していたかのような国際社会の批判に対して反論していかなければ
ならないとの政治的意見を明らかにするものである。そして,本件発言がき
っかけとなって,従軍慰安婦問題に関する議論が活況を呈し,その結果,日
本政府がいわゆる河野談話の検証を行ったり,朝日新聞が従軍慰安婦の強制
連行に関する記事を誤報であると認めたりするなど,従軍慰安婦問題を取り
巻く環境に大きな変化がみられたのである。
また,原告らが論難する風俗店の活用に関する発言は,在日米軍による性
犯罪の防止措置として,実効性のない建前論にとどまらず,現実的な解決策
を模索していくべきであるとの政治的意見を明らかにするものである。
以上のような本件発言の趣旨及び内容や,本件発言後の経緯等を踏まえれ
ば,本件発言は正に政治的発言というべきであって,表現の自由として最大
限に尊重されなければならない。政治家である参加人がした本件発言に対す
る審判は,選挙によってのみ下されるべきであって,法的責任の有無によっ
て判断されるべき類のものではない。したがって,本件発言は,債務不履行
及び不法行為の違法性を欠くものというべきである。
(原告らの主張)
争う。
第3当裁判所の判断
1認定事実
前記前提となる事実,証拠(後掲のほか,乙5,証人C)及び弁論の全趣旨
を総合すれば,以下の事実が認められる。
(1)大阪市とサンフランシスコ市との関係等
アカリフォルニア州サンフランシスコ市は,米国西海岸最大の商工業,湾
岸都市である。日本を含むアジアとの交易の中心地であり,市民構成も多
様で,日系の他,中国系及び韓国系の市民も多数居住している。(甲41,
42)
イ大阪市は,昭和32年10月7日,サンフランシスコ市との間で姉妹都
市提携をし,5年毎の周年の節目に市長等を代表とする訪問団を派遣した
り,記念事業等を実施したりするなど,50年以上にわたって同市との都
市間交流を継続している。また,サンフランシスコ市内には,日系人を中
心とした姉妹都市協会が組織されており,大阪市とサンフランシスコ市の
交流について様々な役割を担っている。(甲33,34,41,42)
ウ大阪市は,平成24年11月30日まで,パートナー都市提携をしてい
る米国イリノイ州シカゴ市に海外事務所を設置しており(以下「シカゴ事
務所」という。),訪問団の派遣等に関してサンフランシスコ市との行程
調整等が必要な場合には,シカゴ事務所に駐在する大阪市職員がこれを行
っていた。(甲43)
(2)本件発言当時の従軍慰安婦問題をめぐる国内外の情勢
ア日本政府は,平成2年(1990年)頃に従軍慰安婦問題が提起されて
以降,元慰安婦から聞き取り調査を行った上,平成5年に当時のG内閣官
房長官が慰安婦の強制性を認めて謝罪する談話を発表したり(いわゆる河
野談話),元慰安婦に対する償い事業などを行うことを目的として設立さ
れた「女性のためのアジア平和国民基金」に協力したりするなどの対応を
講じている。もっとも,こうした取り組みにもかかわらず,従軍慰安婦問
題は,本件発言当時も日本にとって大きな政治問題,外交問題の一つであ
った。(甲45,丙9)
イ従軍慰安婦問題は,国際的にも関心の高い問題であり,平成8年(19
96年)には,国際連合人権委員会の「女性に対する暴力特別報告官」で
あるHが出した報告書(いわゆるクマラスワミ報告)において,日本政府
に対し,慰安婦への国家としての補償と加害者の処罰等を行うことが勧告
されている。また,平成19年(2007年)には,河野談話の見直しを
主張していたI衆議院議員が内閣総理大臣に就任したことや,同総理大臣
が河野談話に関連して「強制性を裏付ける証拠がなかった。」と発言した
こと等が端緒となって,日本政府が河野談話で認めた慰安婦の強制性を否
定しようとしているとの批判的な報道が巻き起こり,その結果,米国下院
本会議において,従軍慰安婦問題に関する対日謝罪要求決議(以下「対日
謝罪要求決議」という。)が採択されている。なお,上記決議案の提出者
の一人が,カリフォルニア州選出のF下院議員であった。(甲44,45,
丙14の1)
ウ従軍慰安婦問題の当事国である韓国では,平成23年(2011年)8
月に憲法裁判所において元慰安婦への補償について韓国政府が日本側と解
決に向けた努力をしないことは違憲である旨の判決が出され,同年12月
にはソウルの日本大使館前に慰安婦を象徴する少女像が設置され,さらに,
平成24年(2012年)には当時のJ韓国大統領が従軍慰安婦問題に対
する日本の消極的な態度を理由に島根県の竹島に上陸するなど,従軍慰安
婦問題に関する日本批判が根強い状態にあった。(甲45)
(3)本件出張の中止に至る経緯
ア本件出張の計画
大阪市は,平成25年4月12日,所定の決裁を経て,参加人他6名か
らなる訪問団を,同年6月10日から同月16日までの期間,サンフラン
シスコ市及びニューヨーク市に出張させることを決定し(本件出張),さ
らに,同年5月9日,本件出張の事前調整を行うため,大阪市職員2名を,
本件出張に先立つ同月30日から同年6月2日までの期間,ニューヨーク
市に出張させることを決定した(本件下見)。本件出張の概要は,以下の
とおりであった。(甲2)
(ア)目的
民間の活力を利用した地域開発など米国における先進事例を調査する
ほか,サンフランシスコ市及びニューヨーク市との交流を深めるととも
に,現地企業等との連携の可能性を探ることを目的に,イノベーション
産業を重点産業と位置付けているサンフランシスコ市及び大阪市が推進
する施設分野において先駆的な施策を数多く展開しているニューヨーク
市を訪問する。
(イ)旅程
6月10日関西国際空港出発
サンフランシスコ市到着
現地企業訪問
同月11日サンフランシスコ市長との意見交換
姉妹都市関係者等との交流,現地企業訪問
同月12日サンフランシスコ市出発
ニューヨーク市到着
在ニューヨーク総領事・大使ブリーフィング
同月13日ニューヨーク市長との意見交換
同市関係部局からのブリーフィング等
同月14日ハイライン公園視察
K高校視察
同月15日ニューヨーク出発(サンフランシスコ乗換え)
同月16日関西国際空港到着
イ本件発言
参加人は,同年5月13日,大阪市役所に登庁した際及び同市役所から
退庁する際にそれぞれ実施された「ぶら下がり取材」において,記者の質
問に答える形で本件発言をした。なお,参加人に対する「ぶら下がり取材」
は,毎登退庁の際に行われており,取材に訪れるのは概ね日本のマスメデ
ィアであった。(甲35)
ウ本件発言に対する日本国内の反応
(ア)日本の新聞各紙は,同日の夕刊において,登庁時の「ぶら下がり取
材」における参加人の発言を取り上げ,「A氏『慰安婦必要だった』」,
「『慰安婦制度必要なのは分かる』A氏」といった否定的な見出しの記
事で大きく報道した。(丙2~4)
さらに,日本の新聞各紙は,同月14日及び15日,退庁時の「ぶら
下がり取材」における参加人の発言も併せて取り上げ,「『慰安婦は必
要』波紋」,「海兵隊風俗業を活用して」,「『女性への冒とく』市
民団体憤りの声歴史認識疑問視も」,「慰安婦発言広がる波紋」と
いった否定的な見出しの記事で大きく報道したほか,「これが政治家の
発言か」,「『A流』暴走日米関係にきしみも」といった見出しの記
事で,本件発言を厳しく批判した。(甲4~13,丙5~8)
(イ)本件発言に対しては,政府閣僚や国会の与野党議員から批判の声が
上がったほか,参加人が共同代表を務める「Bの会」内からも批判の声
が上がった。(甲6,10~12,丙5,6)
エ本件発言に対する海外の反応
本件発言については,日本国内にとどまらず,米国や韓国においても,
批判的な報道がされた。
(ア)韓国外務省は,同月13日,「反人道的な犯罪を擁護し,歴史認識
と人権尊重意識の深刻な欠如をさらけ出していることに失望を感じる。」
とのコメントを出し,本件発言を批判した。(甲4,丙6)
(イ)米国国務省D報道官は,同月16日に実施された記者会見において,
従軍慰安婦に関する本件発言を「言語道断で侮辱的なものだ。」と強く
批判した上で,戦時中に性的な目的で連れて行かれた女性たちの身に起
きたことは,嘆かわしく,とてもゆゆしき人権侵害であることは明らか
だ。被害者には心からの同情を改めて示す。」と述べた。(甲15,1
7)
また,米国政府の当局者は,本件発言に関する朝日新聞の取材に対し,
D報道官と同旨の内容を述べるとともに,本件出張について,「A氏の
こうした発言を踏まえると,面会したいと思う人がいるかは分からない。」
と述べた。(甲14)
(ウ)姉妹都市協会は,同日,「大阪市長A氏の最近の発言について」と
題する声明を発表し,その中で「戦争の必要性として,第二次世界大戦
中,日本軍によって強制された慰安婦制度を正当化する大阪市長A氏の
最近の声明は,協会,そして,姉妹都市提携の精神を決して反映するも
のではないことを明確にしたい。」,「私たちは,A氏の損害を与えた
声明の否定的な影響に対処するためのA市長の積極的な取組を促す。」
と述べ,本件発言に否定的な立場を表明した。(甲33,34)
また,サンフランシスコ市女性地位局長Lも,同日,本件発言に抗議
する内容の声明を発表した。(乙1の1・2,3)
オ参加人の反論等
(ア)参加人は,同月15日に実施された「ぶら下がり取材」において,
本件発言に対する海外の反応について,「僕が現在も慰安婦を認めてい
るとかね,慰安婦なんてものは絶対に必要だってことを言い続けている
ような報じ方をされれば世界各国が誤解もするでしょうね。」などと述
べて,海外の批判的な反応の原因がマスメディアの報道姿勢にあるとの
認識を示した。その一方で,記者からの「こういったようないろいろな
各国の反応というのは想定内の」という質問に対し,質問を途中で遮っ
て「大反撃を食らうのは百も承知ですよ。」と述べるなど,海外の批判
的な反応を予見していたかのような発言もした。また,「ぶら下がり取
材」の最後に,本件出張について触れ,「入国を拒否されない限り,ア
メリカはそんな懐の狭い国じゃないので入国拒否はないでしょうけども,
現地に行って,今設定されているスケジュール,そのまま円滑にはいか
ないと思いますけど…とにかくアメリカに行って…しっかり議論させて
もらいたいですね。」と述べて,本件発言によって本件出張の実施に一
定の支障が生じる可能性があるとの認識を示した。(甲38)
(イ)参加人は,同月17日,ツイッター(「ツイート」と称される短文
の投稿を共有するインターネット上のサービスのこと。)に多数の投稿
を行い,本件発言に対する米国政府の批判的な反応について「世界各国
がやっていたからといって,日本の慰安婦活用を正当化することは許さ
れない。しかし,日本だけを特別に非難するのはアンフェアだ。」など
と反論した。一方で,本件発言のうち在日米軍に風俗店の活用を勧める
部分については,「風俗のワードを出したことは不適切だったことは認め
ます。」などとして,不適切な発言があったことを認めた。(甲35)
カ大阪市の対応
(ア)Cは,本件発言について海外で様々な報道がされているとの情報に
接し,同月15日頃から,部下に指示をして本件出張の訪問都市である
サンフランシスコ市やニューヨーク市の状況を調査したところ,本件発
言に対して極めて批判的な反応を示していることが判明した。
(イ)そこで,Cは,同月21日,シカゴ事務所に勤務していた頃に親交
のあったサンフランシスコ市幹部に電子メールを送信し,①参加人の訪
問を受け入れる余地があるか,②本件発言がサンフランシスコ市にいか
なる影響を与えているかの2点について意見を求めた。同月22日に同
市幹部から返信されてきた電子メール(本件メール)には,個人の見解
である旨の留保が付された上で,以下の内容が記載されていた。(乙1
の1・2)
①「A市長が今現在に至ってまだアメリカ合衆国サンフランシスコ・
ニューヨークに来ようと思っているとは我々には考えられません。率
直に言って,彼のコメントを知った上で彼に会いたいと思う政府役人
やビジネスリーダーがいるとは思えません。」
②「A市長が…個人的に本市を訪問することを妨げることはできませ
んが,それを公式訪問として扱うことはないでしょう。」
③「姉妹都市委員会や日米コミュニティ,その他多くの人たちが我々
と同様に市長の訪問に関心がないことも知っておいてください。」,
「地元の状況として,A市長の発言は広く知られています。そして例
外なく批判されています。(サンフランシスコ)市長は発言を非難す
る人々に圧倒されています。」
④「A市長が訪問したら,抗議行動に会うことは間違いありません。」,
「これは,サンフランシスコ市にとって,大きな警備体制と費用負担
を課すことになります。」,「大阪がこのような費用,危険を我々の
警察に課すのは公平だとは思いません。」
⑤「個人的に,私は(ニューヨークの)M市長が現時点でA市長に会
うとは思いません。」
⑥「(サンフランシスコ市の)ほぼ全員の意見は,現時点でA氏とは
一切関わりたくないというものです。率直に言って訪問は大阪にとっ
て非常に有害なものになると信じます。」,「ですから,結局A市長
の決断だと分かっていますが,認識,警備面,経済発展の見地から強
く訪問の延期を望むものです。」
(ウ)Cは,同日,参加人に対し,本件メールの要旨を報告した。Cの報
告を受けた参加人は,ひとまず間近に迫った本件下見を中止することを
決め,その旨の指示を出した。本件下見の中止は,同月24日に所定の
決裁を経て確定した。(甲2,乙2)
キ国際連合拷問禁止委員会による見解要求
国際連合拷問禁止委員会は,同月21日及び同月22日にスイス連邦ジ
ュネーブで実施した対日審査において,本件発言に繰り返し言及し,本件
発言に対する日本政府の見解を求めた。(甲20)
クE党大阪市会議員団による申入れ
E党大阪市会議員団は,同月23日,参加人に対し,本件発言が国際的
な政治問題となっていること,本件出張の訪問都市であるサンフランシス
コ市において,女性地位局長が抗議の声明を発表したり,姉妹都市協会が
抗議の意思を示したりしていることからすれば,本件出張を実施しても,
大阪市及び大阪市民にとって有益な視察が可能であるということはできな
いとして,本件出張を中止するよう申し入れた。(乙3)
ケ日本外国特派員協会における記者会見
参加人は,同月27日,日本外国特派員協会において記者会見を開き,
その冒頭で,「慰安婦の利用を容認したことは一度もない。真意と正反対
の報道が世界中を駆け巡ったことは極めて遺憾である。」旨述べる一方,
本件発言のうち在日米軍に風俗店の活用を勧める部分については「米軍の
みならず米国民の侮辱もつながる不適切な表現だった。撤回するとともに
おわびをする。」旨述べた。また,参加人は,外国人記者に対し,「私の
認識と見解」と題する文書を配布して,本件発言の趣旨を改めて説明した。
(甲22~27,39,丙11)
コ本件出張の中止
大阪市の幹部は,同月28日に開催された幹部会議において,サンフラ
ンシスコ市及びニューヨーク市における安全面での懸念,両市との関係に
与える影響,訪問先のアポイントメントを取ることが困難になったこと等
の事情を総合的に勘案すると,本件出張を実施してもその目的を達成する
ことは困難と考えられるとして,本件出張を延期することが適当であると
の判断を下した。幹部会議の結果報告を受けた参加人は,本件出張を中止
することを決め,その旨の指示を出した。本件出張の中止は,同月30日
及び同年6月7日に所定の決裁を経て確定した。なお,これまで大阪市に
おいて,市長の発言が原因で海外への出張が中止となった事例はなかった
(甲2,28,40)
2争点1(債務不履行ないし注意義務違反の有無)について
(1)参加人は,本件発言をした平成25年当時,大阪市の執行機関たる市長
の職にあったため(前記前提となる事実(1)ウ),同市を統括し(地方自治
法147条),市政全般に及ぶ担任事務を自らの判断と責任において誠実に
管理し及び執行する義務を負っていたというべきである(地方自治法138
条の2,148条,149条)。また,参加人のこのような地位に照らせば,
参加人は,同市の事務の執行を阻害するような行動を控えるべき一般的な注
意義務を負っていたというべきである。
そこで,参加人が本件発言をしたことが,上記の誠実管理執行義務ないし
注意義務に違反するか,具体的には,参加人が,本件発言時において,本件
発言が米国の反発を招き,本件出張が中止に至ることを予見することができ,
このような事態を回避するため,本件発言を控えるべき債務ないし注意義務
を負っていたかを検討する。
(2)予見可能性の有無について
ア参加人は,平成25年当時,大阪市長であるとともに,国政政党である
「Bの会」の共同代表の地位にあり(前記前提となる事実(1)ウ),また,
毎登退庁時に「ぶら下がり取材」に応じたり,ツイッターに頻繁に投稿を
行ったりするなど(甲35~37)自己の意見の発信に積極的であったこ
とから,日本全国の衆目を集める存在であったと認められる。
そして,本件発言の内容が,従軍慰安婦問題という大きな政治問題,外
交問題に関わるものであったこと(別紙2発言目録参照)も併せ考えれば,
本件発言が日本のマスメディアによって,日本国内で大きく報道されるこ
とを,参加人は当然に予見することができたと考えられる。
しかしながら,①本件発言は,専ら日本のマスメディアに向けて発信さ
れたものであって,海外のマスメディアに向けて発信されたものではない
こと(前記認定事実(3)イ),②日本のマスメディアが海外においてどの
ような内容,規模で報道を行っているか,海外のマスメディアが日本にお
いてどのような取材を行い,自国においてどのような報道をしているかと
いった事情については,これらを判断するに足りる的確な証拠がないこと,
③本件発言は,記者会見等公式な場における発言ではなく,登退庁時に実
施された「ぶら下がり取材」という非公式な場における発言にすぎないこ
と(前記認定事実(3)イ),④本件発言をした参加人は,日本の自治体の
首長ないし国政野党の党首の地位にあったが(前記前提となる事実(1)ウ,
顕著な事実),このような地位にある者の発言は,必ずしも海外の注目を
集めるものではないこと,⑤本件発言がされた当時,米国において,参加
人自身や,参加人が首長ないし共同代表を務める大阪市ないし「Bの会」
が特に注目されていたことをうかがわせる事情も認めらないこと等に鑑み
れば,本件発言が米国において大きく取り上げられ,米国,取り分けサン
フランシスコ市の反発を招き,本件出張が中止に至ることについてまで,
参加人が予見することができたということはできない。
イこの点,前記認定事実(2)によれば,本件発言当時,従軍慰安婦問題は
日本にとって大きな外交問題であり,こうした国際状況に加え,平成19
年に,I内閣総理大臣の発言等が端緒となって,日本政府が河野談話で認
めた慰安婦の強制性を否定しようとしているとの批判的な報道が巻き起こ
り,米国下院本会議において,従軍慰安婦問題に関する対日謝罪要求決議
が採択されていること(前記認定事実(2)イ)をも踏まえれば,本件発言
当時において,日本政府が慰安婦の強制性に否定的な見解を示した場合に,
平成19年と同様に米国の反発を招く可能性があることについては,予見
することができたと考えられる。しかしながら,前記のとおり,本件発言
は,日本政府関係者の発言ではないのであって,日本の自治体の一首長な
いし一野党の党首にすぎない参加人の発言を,日本政府関係者の発言と同
一視することもできないのであるから,上記の可能性を予見することがで
きたことをもって,米国において本件発言が米国の反発を招き,本件出張
が中止に至ることを,参加人が予見することができたということはできな
い。
また,本件出張の訪問都市であるサンフランシスコ市については,従軍
慰安婦問題の当事国である韓国系の住民が多数居住していること(前記認
定事実(1)ア),平成25年当時,従軍慰安婦問題に対する韓国の批判が
とりわけ厳しい状況にあったこと(前記認定事実(2)ウ),また,カリフ
ォルニア州(同州の州都がサンフランシスコ市である。)選出のF下院議
員が,対日謝罪要求決議案の共同提出者の一人となっていること(前記認
定事実(2)イ)等の事情が認められ,これらの事情に鑑みれば,同市は,
米国の都市の中でも,従軍慰安婦問題に対する関心が相対的に高い地域で
あったことがうかがわれる。しかしながら,サンフランシスコ市において
も,参加人自身や,参加人が首長ないし共同代表を務める大阪市ないし「B
の会」が,特に注目をされていたことをうかがわせる事情は認めらないの
であるから(大阪市はサンフランシスコ市と姉妹都市提携をしているが〔前
記認定事実(1)イ〕,サンフランシスコ市において大阪市に関する情報が
特に注目されたり報道されたりしているといった事情をうかがわせる証拠
はない。),上記の事情を踏まえても,本件発言が同市の反発を招き,本
件出張が中止に至ることを,参加人が予見することができたということは
できない。
ウそして,その他に,本件発言が米国の反発を招くことを予見することが
できたことをうかがわせる事情は見当たらないのであるから,参加人が,
本件発言時に,その内容が米国,特にサンフランシスコ市の反発を招き,
本件出張が中止に至ることを予見することができたと認めることはできな
い。
エなお,原告らは,参加人が,本件発言の翌々日である平成25年6月1
5日に実施された「ぶら下がり取材」において,「(各国から)大反撃を
食らうのは百も承知ですよ。」と発言していることを根拠に,参加人は本
件発言が米国を始めとする海外の反発を招くことを予見していたと主張す
る。確かに,前記認定事実(3)オ(ア)のとおり,上記「ぶら下がり取材」
の際,記者からの「こういったようないろいろな各国の反応というのは想
定内の」という質問に対し,参加人は,「大反撃を食らうのは百も承知で
すよ。」と海外の批判的な反応を予見していたような発言をしているが,
上記発言中の「大反撃」との文言は抽象的なものにとどまり,その発言か
ら,本件出張の訪問予定先である米国,特にサンフランシスコ市において,
本件出張の実施を困難とするほどの反発,批判的反応が生ずることまでを
も予見していたことが直ちに裏付けられるものではなく,上記発言の存在
をもって,前記イの判断が左右されるものではない。
また,原告らは,参加人が,上記「ぶら下がり取材」において,「入国
を拒否されない限り,アメリカはそんな懐の狭い国じゃないので入国拒否
はないでしょうけども,現地に行って,今設定されているスケジュール,
そのまま円滑にはいかないと思いますけど…とにかくアメリカに行って…
しっかり議論させてもらいたいですね。」と述べて,本件発言によって本
件出張の実施に一定の支障が生ずる可能性があるとの認識を示しているこ
とを根拠に,参加人は本件発言が米国を始めとする海外の反発を招くこと
を予見していたと主張する。しかしながら,上記発言は,海外において現
に批判的な報道がされていることを踏まえ,こうした報道が本件出張に及
ぼす影響に言及したものにすぎず,本件出張に及ぼす影響を予見していた
旨をいうものではないから,上記発言をもって,参加人が事前に米国の反
発を予見していたと認めることはできない。
(3)債務不履行及び注意義務違反の有無について
大阪市は,本件発言がされた平成25年5月13日の時点において,その
約1か月後の同年6月10日から同月16日までの期間,参加人他6名から
なる訪問団を,サンフランシスコ市及びニューヨーク市に出張させること(本
件出張)を予定していたのであるから(前記認定事実(3)ア),同市の長で
あり,また上記訪問団の団長を務めるべき参加人は,本件出張を円滑かつ適
正に実施すべく,本件出張を阻害するような行動を避けるべき立場にあった
ということができる。
参加人は,このような状況下で本件発言を行っているところ,前記認定(3)
ウ~コのとおり,本件発言が米国,取り分けサンフランシスコ市の強い反発
を招き,これにより本件出張等が中止されるに至っている。しかしながら,
前記(2)のとおり,参加人が,本件発言時において,本件発言が米国,特に
サンフランシスコ市の反発を招き,本件出張が中止に至ることを予見するこ
とができたとは認められないから,参加人が本件発言時において,このよう
な事態を回避するため,本件発言を控えるべき債務ないし注意義務を負って
いたと認めることはできない。したがって,参加人が本件発言をしたことは,
大阪市に対する債務不履行ないし注意義務違反に当たらない。
(4)よって,大阪市が参加人に対し民法415条ないし同法709条に基づ
く損害賠償請求権を有しているとは認められない。
3結論
以上によれば,原告らの請求は,その余の点につき判断するまでもなく,い
ずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第2民事部
裁判長裁判官西田隆裕
裁判官角谷昌毅
裁判官松原平学
(別紙2)
発言目録
1登庁した際に実施された「ぶら下がり取材」における発言
(記者の発言)
「村山談話ですが,E党のNさんが侵略という言葉はどうかと批判的なことを
おっしゃっていましたが,I首相も侵略についてはっきりとおっしゃっていない
とこもあるのですが,植民地支配と侵略をお詫びするという村山談話については
どう考えているのか。」
(参加人の発言)
「侵略の定義については学術上きちんと定義がないことはI首相が言われてい
るとおりです。
第二次世界大戦後,事後的に,国連で安保理が,侵略かどうかを最後に判定す
るという枠組みが決まりましたけれども。侵略とは何かという定義がないことは
確かなのですが,日本は敗戦国ですから。戦争をやって負けたんですね。そのと
きに戦勝国サイド,連合国サイドからすればね,その事実というものは曲げるこ
とはできないでしょうね。その評価についてはね。ですから学術上定まっていな
くてもそれは敗戦の結果として侵略だということはしっかりと受け止めなくては
いけないと思いますね。
実際に多大な苦痛と損害を周辺諸国に与えたことは間違いないですからその事
実はしっかりと受け止めなくてはならないと思います。その点についても反省と
お詫びというものはしなくてはいけない。
またこの立場はずっと週刊朝日や朝日新聞に対して言い続けていますけども,
こういう立場というのは自らの一方当事者が『もう終わりだ,終わりだ。』と言っ
て時間を区切って終わりにすることができないんですね。それは時間が解決する,
要は相手方がある程度納得するまでの期間,時間的な経過が必要であることは間
違いないです。だから,戦後60年経ったんだから,70年経ったんだから,全
部ちゃらにしてくれよってことを当事者サイドが言うことではないです。これは
第三国がね,まあアメリカや連合国の方が,また,まあアメリカもそりゃ損害は
あったんでしょうけど,それでも第三者的な立場の国がね,『もういいんじゃない
の。』っていうのは,まあそれはいいんでしょうけど。当事者である日本サイドの
方が『もう60年経ったんだから,70年経ったんだから,もうちゃらだよ。』っ
ていうのは,これは違うと思いますね。
ただ事実と違うことでね,我が日本国が不当に侮辱を受けているようなことに
関しては,しっかり主張はしなくてはいけないと思っています。だから敗戦国と
して受け入れなければいけない,けんかっていうはそういうことですよ,負けた
んですから。だからそれは当時の為政者に重大な責任があるわけです。負けたん
だったらね,そりゃ負けたらね,そりゃいろんなことを…我慢ならんことだって
ね,いろいろ言われることもあるけれども,負けたってことはそういうことなん
です。だから負けるような戦争なんかやっちゃいけないんです。そもそも戦争な
んかやっちゃいけないけれども。だから負けたってことをすぐさま捨て去れるよ
うな,そんな甘いものじゃないですね,けんかをやったってことは。
ただね,事実としては言うべきことは言っていかなくちゃいけないと思ってい
ますから。僕は,従軍慰安婦問題だってね,慰安婦の方に対しては優しい言葉を
しっかりかけなきゃいけないし,優しい気持ちで接しなければいけない。意に反
してそういう職業に就いたということであれば,そのことについては配慮しなけ
ればいけませんが。
しかし,なぜ,日本の従軍慰安婦問題だけが世界的に取り上げられるかという
と,その当時,慰安婦制度っていうのは世界各国の軍は持っていたんですよ。こ
れはね,いいこととは言いませんけど,当時はそういうもんだったんです。とこ
ろが,なぜ欧米の方で,日本のいわゆる慰安婦問題だけが取り上げられたかとい
うと,日本はレイプ国家だと。無理矢理国を挙げてね,強制的に意に反して慰安
婦を拉致してですね,そういう職業に就かせたと。
レイプ国家だというところで世界は非難してるんだっていうところを,もっと
日本人は世界にどういうふうに見られているか認識しなければいけないんです。
慰安婦制度がなかったとはいいませんし,軍が管理していたことも間違いないで
す。ただ,それは当時の世界の状況としては,軍がそういう制度を持っていたの
も厳然たる事実です。にもかかわらず,欧米が日本だけを。だってそれはね,朝
鮮戦争のときだって,ベトナム戦争だってそういう制度はあったんですから,第
二次世界大戦後。
でもなぜ日本のいわゆる従軍慰安婦問題だけが世界的に取り上げられるかとい
うと,日本は軍を使ってね,国家としてレイプをやっていたんだというところが
ね,ものすごい批判を受けているわけです。僕はね,その点については,違うと
ころは違うと言っていかなければならないと思いますね。ただ意に反して慰安婦
になってしまった方はね,それは戦争の悲劇の結果でもあるわけで,戦争につい
ての責任はね,我が日本国にもあるわけですから。そのことに関しては,心情を
しっかりと理解して,優しく配慮していくことが必要だと思いますけど。しかし,
違うことは違うって言わなきゃいけませんね。
それから戦争責任の問題だって敗戦国だから,やっぱり負けたということで受
け止めなきゃいけないことはいっぱいありますけど,その当時ね,世界の状況を
みてみれば,アメリカだって欧米各国だって,植民地政策をやっていたんです。
だからといって日本国の行為を正当化しませんけれども,世界もそういう状況
だったと。そういう中で日本は戦争に踏み切って負けてしまった。そこは戦勝国
としては,連合国としては絶体日本のね,負けの事実,悪の事実ということは,
戦勝国としては絶対に譲れないところだろうし,負けた以上はそこは受け入れな
きゃいけないところもあるでしょうけど。
ただ,違うところは違う。世界の状況は植民地政策をやっていて,日本の行動
だけが原因ではないかもしれないけれど,第二次世界大戦が一つの契機としてア
ジアのいろんな諸国が独立していったというのも事実なんです。そういうことも
しっかり言うべきところは言わなきゃいけないけれども,ただ,負けたという事
実だったり,世界全体で見て,侵略と植民政策というものが非難されて,アジア
の諸国の皆さんに多大な苦痛と損害を与えて,お詫びと反省をしなければいけな
い。その事実はしっかりと受け止めなければいけないと思いますね。
日本の歴史認識というか,政治家のメッセージの出し方の悪いところは,歴史
問題に関して,謝るとこは謝って,言うべきところは言う。こういうところがで
きないところですね。一方のスタンスでは,言うべきとこも言わない。全部言わ
れっぱなしで,すべて言われっぱなしっていう一つの立場。もう一つは事実全部
を認めないという立場。あまりにも両極端すぎますね。
認めるところは認めて,やっぱり違うところは違う。世界の当時の状況はどう
だったのかという,近現代史をもうちょっと勉強して,慰安婦っていうことをバ
ーンと聞くとね,とんでもない悪いことをやっていたと思うかもしれないけど,
当時の歴史をちょっと調べてみたらね,日本国軍だけじゃなくて,いろんな軍で
慰安婦制度ってのを活用してたわけなんです。
そりゃそうですよ,あれだけ銃弾が雨嵐のごとく飛び交う中で,命かけてそこ
を走っていくときに,そりゃ猛者集団,精神的に高ぶっている集団,やっぱりど
こかで休息じゃないけども,そういうことをさせてあげようと思ったら,慰安婦
制度ってのは必要だということは誰だって分かるわけです。ただそこで,日本国
が欧米社会でどういうふうにみられてるかというと,これはやっぱりね,韓国と
かいろんなところの宣伝効果があって,レイプ国家だってみられてしまっている
ところ。ここが一番問題だからそこはやっぱり違うんだったら違うと。
証拠が出てきたらね,それは認めなきゃいけないけれども,今のところ200
7年の閣議決定では,そういう証拠はないという状況になっています。先日,ま
たI政権で新しい証拠が出てくる可能性があると閣議決定したから,もしかする
と,証拠が100%ない,強制的に暴行脅迫をして慰安婦を拉致したという証拠,
今までは第一次I内閣ではそういう証拠がないと言い切ったのに,証拠が出てく
る可能性があると閣議決定をしたので,もしかすると言い切れない状況が出てき
たのかもわかりませんが,ただ今のところ,日本政府自体が暴行脅迫をして女性
を拉致したという事実は今のところ証拠に裏付けられていませんから,そこはし
っかり言ってかなければいけないと思いますよ。
ただ意に反して慰安婦になった方に対しては,配慮しなければいけないと思い
ます。認めるところは認めて,謝るところは謝って,負けた以上は潔くしないと。
E党だって,すぐ武士精神とか武士道とか持ち出すのに,負けたのにグチャグチ
ャ言ったってしょうがないですよ。負けちゃったんですから。そこは潔く認めて。
ただ,いわれなき事実,根拠のない評価については言うべきところは言う。世
界の当時の状況はどうだったのか,それも前面に持ちだしてね。当時植民地政策
っていうものがあった。あったんだけれども,日本は戦争して負けてしまった。
その中で損害と苦痛を与えてしまったことについてどう評価するのかということ
は,真摯に考えなきゃいけないし,反省するところは反省しなければいけないと
思いますね。」
2退庁する際に実施された「ぶら下がり取材」における発言
(記者の発言)
「朝の慰安婦の件についてなんですが,以前,元慰安婦の方が市役所に来られ
たときにお会いになられたことがあったと思うんですけど,5月25日,26日
に講演があって,来日される,それでまた市長に面会を申し込んでいると伺って
いるんですが,それはお会いになるのでしょうか。」
(参加人の発言)
「ええ,秘書部には調整するように指示しています。」
(記者の発言)
「それは前向きに会えれば会いたいということですか。」
(参加人の発言)
「ええ,そうですね。まぁ,すべて,先方の方にも,もう中で何をしゃべって
るか分からないような状況にはせずに,フルオープンでお話伺わせてもらえるん
であればっていうふうに言ってますけどもね。
ただ,先方が顔を出したくないとか,しゃべっている内容を聞かれたくないと
いうことであれば,そこのご意見は伺わなきゃいけないですけど。ただ,僕に会
うというのは一定の政治的な主張をするためだと思いますから,それはフルオー
プンであればお会いさせていただこうと思ってますけれども,そうでなければ,
僕自身が市長としてお会いする意味もあまりないと思いますんでね。僕の政治的
な発言に対していろんな意見があるということで,面会依頼があるというふうに
思ってますから,そうであればフルオープンの中でしっかりとお互いに主張を出
し合うというのは意味があるんじゃないでしょうかね。」
(記者の発言)
「以前から元慰安婦の方に対して優しいお言葉をかけていかなきゃいけないと
おっしゃっていますが,具体的にはどんなお話を。もしお会いになられたら。」
(参加人の発言)
「それは今ここで言っても仕方がありませんから。その時に,お会いしたとき
に話をします。」
(記者の発言)
「優しい言葉をかけなきゃいけないとおっしゃっている一方で,今朝,各国の
軍隊が当時制度として持っていた事実があって,当時の状況を考えると必要だっ
たというような発言もあったと思いますが,今までにない踏み込んだ発言だった
ようにも感じたんですが。」
(参加人の発言)
「いや,そんなことなくて,ま,聞かれなかったから言わなかっただけで,当
時の状況ではそういうことを活用していたのは事実ですから。当時の状況として
は。ただ,それを良しとするかどうかというのは別でね。意に反してそういう職
業に就かなければならない。『意に反して』ですよ。自らの意志でそういう職業に
就いてる人も中にはいたでしょうしね。
現代社会にだって風俗業というのはしっかり職業としてあるわけですから。自
らの意志でやった場合には,まあ,それは自らの意志でしょうということになり
ますけど,意に反して,そうせざるを得なかったという人たちに対しては,これ
は配慮が必要だと思いますよ。」
(記者の発言)
「『意に反して』ということでも必要ではあったということでしょうか。いい
気はしないけれども,状況からして必要であったということですか。」
(参加人の発言)
「いや,意に反した,意に即したかということは別で,慰安婦制度っていうの
は必要だったということですよ。意に反するかどうかに関わらず。軍を維持する
とか軍の規律を維持するためには,そういうことが,その当時は必要だったんで
しょうね。」
(記者の発言)
「今は違う。」
(参加人の発言)
「今はそれは認められないでしょう。でも,慰安婦制度じゃなくても風俗業っ
てものは必要だと思いますよ,それは。だから,僕は沖縄の海兵隊,普天間に行
ったときに司令官の方に,もっと風俗業活用してほしいって言ったんですよ。そ
したら司令官はもう凍り付いたように苦笑いになってしまって,『米軍ではオフリ
ミッツだ』と『禁止』っていうふうに言っているって言うんですけどね,そんな
建前みたいなこと言うからおかしくなるんですよと。
法律の範囲内で認められている中でね,いわゆるそういう性的なエネルギーを,
ある意味合法的に解消できる場所ってのが日本にはあるわけですから。もっと真
正面からそういうところ活用してもらわないと,海兵隊のあんな猛者のね,性的
なエネルギーをきちんとコントロールできないじゃないですかと。建前論じゃな
くてもっとそういうとこ活用してくださいよと言ったんですけどね。それは行く
なというふうに通達を出しているし,もうこれ以上この話はやめようって言うん
で打ち切られましたけどね。だけど風俗業ありじゃないですか。これ認めている
んですから,法律の範囲でね。」
(記者の発言)
「活用していないから事件が起こると。」
(参加人の発言)
「いやいや,それは因果関係は別です。でももっと,だから,そういうのは堂々
と。それは活用したから事件がおさまるというふうな因果関係にあるようなもの
ではないでしょうけど,でも,そういうのを真正面から認めないと,建前論ばか
りでやってたらダメですよ。そりゃあ兵士なんてのは,日本の国民は一切そうい
うこと考えずに成長するもんですから,あんま日本国民考えたことないでしょう
が,自分の命を落とすかもわかんないような,そんな極限の状況まで追い込まれ
るような,仕事というか任務なわけで。それをやっぱり,そういう面ではエネル
ギーはあり余っているわけですから,どっかで発散するとか,そういうことはし
っかり考えないといけないんじゃないですか。それは建前論で,そういうものも
全部ダメですよ,ダメですよって言っていたら,そんな建前論ばっかりでは,人
間社会はまわりませんよ。」
(記者の発言)
「午前中の従軍慰安婦の下りで,世界各国の軍は当時,大戦時,持っていたと。」
(参加人の発言)
「持っていたというより,活用していたと。」
(記者の発言)
「活用していたということで,それは具体的にどこの国が持っていたと。」
(参加人の発言)
「いやいや,持っていたではなく,活用していた。それはアメリカ軍だって活
用していたでしょう。Oさんのあの本でも,詳細に書いてんじゃないですか。」
(記者の発言)
「軍がそういう制度を活用していたのは厳然たる事実で,それは当時のアメリ
カ軍を指しての発言。」
(参加人の発言)
「いや,朝鮮戦争の時もあったんじゃないですか。沖縄の占領時代だってそう
いう商売というか,日本人が,日本人の女性が,そういうところに携わっていた
のは事実じゃないですか。米軍の基地の周辺でね。だから,それは良いか悪いか
は別で,そういうことがあったのは間違いないわけです。だから,それは女性が
ね,意に反してそういうところで働かなきゃいけないとか,そういうところは考
えなきゃいけないし,そうさせないように。それが戦争の悲劇の結果であれば,
それは戦争責任の一環として,そういう女性たちに対して配慮していかなければ
いけないんでしょうけれど。ただ,そういう仕事があったというのは事実です。
そこまでは否定できません。全世界でそういうことはある意味,当然のように考
えて,もっといえば歴史をひも解いたら,第二次世界大戦以前のね,野蛮な,ま
あ,第二次世界大戦も野蛮ですけども,いろんな戦争で勝った側が負けた側をレ
イプするだのなんだのなんていうのは,そんな事実は戦争に付きまとってあるわ
けじゃないですか。それはもう具体的な国名は出しませんけども。きちんと事実
を裏付けて出そうと思ったら出せますけども,第二次世界大戦の中でも日本の軍
以外でね,レイプだのなんだのってことがあったというのは事実として出てきて
いるわけで。
そういうのをやっぱり押さえていくっていうためには一定の慰安婦みたいな制
度っていうものが必要だったということも厳然たる事実だと思いますよ。そんな
中で,なぜ日本がね,世界から非難されているのかっていうことをね,もっと日
本国民は知っておかなければいけないわけでね。慰安婦制度を全部否定するとか,
正当化するってのは,それはダメなわけですよ。それは戦争の悲劇の中で生まれ
たものだから,それはね,慰安婦の方に対してはしっかり配慮を持って接しなけ
ればいけないけれども。
一番の問題点は,世界から日本がどこを非難されているかといったら,政府が
拉致して暴行脅迫で無理矢理そういう仕事に就けさせてね,レイプ国家だってい
うふうに言われているわけですよ,日本は。そこは,世界の認識からするとね,
慰安婦制度はあったかも分からないけれども,国をあげてレイプをしたなんて国
は,それはないよね,っていうので,欧米から批判を受けているわけで。そこは
違いますよってことは言わないといけないんじゃないですかね。
ただ,日本の軍がね,又は日本政府が国を挙げてね,暴行脅迫拉致をしたとい
う証拠が出てくれば,それはやっぱり日本国として反省しなければいけないけれ
ど,そういう証拠がないっていうふうに日本政府が閣議決定しているわけですか
らね。だから,今度,慰安婦の方が大阪市役所に来られたときにね,暴行脅迫受
けたのか,拉致されたのかね,そのあたりについても,お話伺わせてもらえるん
だったら,伺わせてもらいたいですけどね。
本当にそうだってことであるんだったら,日本政府の方に,Bの会の国会議員
団にでも言って,日本政府にもその証言取ってもらってですね,なんだ拉致ある
じゃないですかと,2007年の閣議決定のときと違うじゃないですかっていう
話になってもこれは仕方ないと思いますしね。今は,いろんな論戦の中で,従軍
慰安婦問題を否定している人たちっていうのは,暴行脅迫や拉致は絶対になかっ
たって言っているわけですから,それはあるって話になれば,それは従軍慰安婦
問題を真っ向から否定している人たちは論拠がなくなるわけですしね。まあ,だ
から,どういう状況で,どういう経緯で慰安婦にならざるを得なかったのか,そ
ういうお話を伺わせてもらえるんであればお聞かせいただきたいというふうに思
ってますけども。」
(記者の発言)
「先程の沖縄の司令官に風俗関係のお話をされたというのは,これはキャンプ
シュアブの。」
(参加人の発言)
「普天間です。」
(記者の発言)
「普天間の司令官。」
(参加人の発言)
「ええ。」

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