弁護士法人ITJ法律事務所

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主文
原判決を破棄する。
本件を東京高等裁判所に差し戻す。
理由
上告代理人伊東秀彦ほかの上告受理申立て理由について
1本件は,駐車場の所有者である上告人が,駐車中の自動車について,同自動
車の購入代金を立替払して同自動車の所有権を留保している被上告人に対し,土地
所有権に基づき,同自動車の撤去と駐車場の明渡しを求めるとともに,駐車場の使
用料相当損害金の支払を求める事案である。
2原審の確定した事実関係の概要は,以下のとおりである。
(1)上告人は,平成15年10月29日,Aに対し,原判決別紙物件目録記載
の土地(以下「本件土地」という。)を,原判決別紙車両目録記載の自動車(以下
「本件車両」という。)の駐車場として使用する目的で,賃料を月額5000円と
して貸し渡した(以下,この契約を「本件賃貸借契約」という。)。
(2)Aと被上告人は,平成15年11月22日,Aが自動車販売店から購入す
る本件車両の代金を被上告人が立替払すること等を内容とするオートローン契約
(以下「本件立替払契約」という。)を締結した。本件立替払契約の要旨は,①
被上告人は,本件車両の代金を立替払し,Aは,被上告人に対し,上記立替払によ
り発生する債務(以下「本件立替金債務」という。)を頭金のほか60回に分割し
て支払う,②本件車両の所有権は,自動車販売店から被上告人に移転し,Aが本
件立替金債務を完済するまで同債務の担保として被上告人に留保される,③A
は,自動車販売店から本件車両の引渡しを受け,善良な管理者の注意をもって本件
車両を管理し,本件車両の改造等をしない,④Aは,本件立替金債務について,
分割金の支払を怠って被上告人から催告を受けたにもかかわらずこれを支払わなか
ったとき,強制執行の申立てのあったときなどは,当然に期限の利益を喪失し,残
債務全額を直ちに支払う,⑤Aは,期限の利益を喪失したときは,事由のいかん
を問わず,被上告人からの同人が留保している所有権に基づく本件車両の引渡請求
に異議なく同意する,⑥被上告人がAから本件車両の引渡しを受けてこれを公正
な機関に基づく評価額をもって売却したときは,売却額をもって本件立替金債務の
弁済に充当するというものであった。
(3)Aは,原審口頭弁論終結時まで,本件立替払契約上の分割金の不払を続け
ている。
(4)Aは,本件賃貸借契約に基づく平成16年12月分以降の賃料を支払わな
かった。上告人は,平成18年4月27日付けで本件賃貸借契約を解除する意思表
示をし(同年5月10日到達),同年12月19日,Aに対して本件賃貸借契約に
基づく未払賃料等の支払を命ずる確定判決に基づき,Aの給料債権等を差し押さえ
た。
(5)本件賃貸借契約終了後も,本件土地上には本件車両が駐車されている。
3原審は,被上告人は本件立替金債務を担保するために本件車両の所有権を留
保したものであって,被上告人が有するのは,通常の所有権ではなく,実質的には
担保権の性質を有するものにすぎないから,被上告人は所有者として本件車両を撤
去して本件土地を明け渡す義務を負わないと判断し,上告人の請求をいずれも棄却
すべきものとした。
4しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,以
下のとおりである。
本件立替払契約によれば,被上告人が本件車両の代金を立替払することによって
取得する本件車両の所有権は,本件立替金債務が完済されるまで同債務の担保とし
て被上告人に留保されているところ,被上告人は,Aが本件立替金債務について期
限の利益を喪失しない限り,本件車両を占有,使用する権原を有しないが,Aが期
限の利益を喪失して残債務全額の弁済期が経過したときは,Aから本件車両の引渡
しを受け,これを売却してその代金を残債務の弁済に充当することができることに
なる。
動産の購入代金を立替払する者が立替金債務が完済されるまで同債務の担保とし
て当該動産の所有権を留保する場合において,所有権を留保した者(以下,「留保
所有権者」といい,留保所有権者の有する所有権を「留保所有権」という。)の有
する権原が,期限の利益喪失による残債務全額の弁済期(以下「残債務弁済期」と
いう。)の到来の前後で上記のように異なるときは,留保所有権者は,残債務弁済
期が到来するまでは,当該動産が第三者の土地上に存在して第三者の土地所有権の
行使を妨害しているとしても,特段の事情がない限り,当該動産の撤去義務や不法
行為責任を負うことはないが,残債務弁済期が経過した後は,留保所有権が担保権
の性質を有するからといって上記撤去義務や不法行為責任を免れることはないと解
するのが相当である。なぜなら,上記のような留保所有権者が有する留保所有権
は,原則として,残債務弁済期が到来するまでは,当該動産の交換価値を把握する
にとどまるが,残債務弁済期の経過後は,当該動産を占有し,処分することができ
る権能を有するものと解されるからである。もっとも,残債務弁済期の経過後であ
っても,留保所有権者は,原則として,当該動産が第三者の土地所有権の行使を妨
害している事実を知らなければ不法行為責任を問われることはなく,上記妨害の事
実を告げられるなどしてこれを知ったときに不法行為責任を負うと解するのが相当
である。
5そうすると,本件立替金債務について,その残債務全額の弁済期が経過した
か否かなどを検討することなく,上告人の請求をいずれも棄却すべきものとした原
審の判断には,法令の解釈適用を誤った違法があり,同違法は原判決の結論に影響
を及ぼすことが明らかである。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判
決は破棄を免れない。そして,上記の点等について,更に審理を尽くさせるため,
本件を原審に差し戻すのが相当である。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官近藤崇晴裁判官藤田宙靖裁判官堀籠幸男裁判官
那須弘平裁判官田原睦夫)

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