弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成25年(受)第2415号配当異議事件
平成27年10月27日第三小法廷判決
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人河野勉の上告受理申立て理由について
1原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1)被上告人は,平成19年4月18日,滋賀県甲賀市所在の上告人所有の山
林3筆及び建物1個について,債権の範囲を金銭消費貸借取引等,極度額を700
0万円とする根抵当権(以下「前件根抵当権」という。)の設定を受け,その旨の
登記がされた。
また,被上告人は,平成21年7月3日,京都府城陽市所在の上告人所有の山林
3筆について,債権の範囲を金銭消費貸借取引等,極度額を5000万円とする根
抵当権(以下「本件根抵当権」という。)の設定を受け,その旨の登記がされた。
(2)被上告人は,上告人に対し,次のアからオまでのとおり,5口合計453
7万円を貸し付けた(以下,各貸付けに係る債権を併せて「本件各貸金債権」とい
う。)。
ア貸付日平成19年5月25日,金額200万円,利息年5%,遅延損害金の
定めなし
イ貸付日平成19年11月12日,金額3600万円,利息年15%,遅延損
害金年21.9%
ウ貸付日平成20年2月8日,金額300万円,利息年14.6%,遅延損害
金年21.3%
エ貸付日平成20年3月14日,金額400万円,利息年14.6%,遅延損
害金年21%
オ貸付日平成21年1月23日,金額37万円,利息及び遅延損害金の定めな

(3)ア被上告人は,平成21年3月,大津地方裁判所に対し,本件各貸金債権
を被担保債権として,前件根抵当権に基づき,担保不動産競売を申し立て,同月2
6日,その開始決定がされた(以下,この競売手続を「前件競売手続」とい
う。)。
イ平成22年2月4日の配当期日(以下「前件配当期日」という。)において
作成された前件競売手続の配当表(以下「前件配当表」という。)には,被上告人
の債権額が,元金4537万円,利息72万1052円及び損害金1107万01
50円と記載され,被上告人の配当額が3739万2363円と記載されていた。
ウ上告人は,前件配当期日において,前件配当表に記載された被上告人の配当
額の全額につき異議の申出をした。また,後順位根抵当権者も,被上告人の配当額
につき異議の申出をした。そして,上告人及び上記後順位根抵当権者が被上告人に
対して配当異議の訴えを提起したことから,前件配当表記載の被上告人の配当額に
相当する3739万2363円が供託された。
エ上記ウの訴えに係る訴訟について,平成22年12月24日,上告人及び上
記後順位根抵当権者の請求をいずれも棄却する判決が言い渡され,同判決は平成2
3年1月12日に確定した。
オ上記エの判決の確定により上記ウの供託の事由が消滅したことから,その供
託金(以下「本件供託金」という。)につき配当の実施としての支払委託がされ,
被上告人は,平成23年2月3日,供託所から,本件供託金3739万2363円
及び供託利息8225円の払渡しを受けた。
(4)ア被上告人は,平成23年3月,京都地方裁判所に対し,本件各貸金債権
の残債権を被担保債権として,本件根抵当権に基づき,担保不動産競売を申し立
て,同月9日,その開始決定がされた(以下,この競売手続を「本件競売手続」と
いう。)。
イ平成24年4月27日の配当期日(以下「本件配当期日」という。)におい
て作成された本件競売手続の配当表(以下「本件配当表」という。)には,被上告
人の債権額が,元金2717万8118円及び損害金675万9189円と記載さ
れ,被上告人の配当額が3393万7307円(「現金」が96万6874円,
「差引額」が3297万0433円)と記載されていた。
ウ本件供託金及び供託利息を,その払渡しがされた平成23年2月3日時点に
おける本件各貸金債権に,民法489条から491条までの規定に従った充当(以
下「法定充当」という。)をすると,その残元金の合計額は2717万8118円
を上回り,同残元金に対する本件配当期日までの遅延損害金の合計額は675万9
189円を上回る。
エ上告人は,本件配当期日において,本件配当表に記載された被上告人の配当
額につき異議の申出をした上で,本件配当異議の訴えを提起した。
上告人の主張は,前件競売手続における被上告人の配当金は,前件配当期日にお
ける前件配当表記載の利息,損害金及び元金に法定充当がされるのであって,本件
各貸金債権について前件配当期日後に生じた遅延損害金には充当されず,したがっ
て,本件各貸金債権の残元金の合計額は1976万8839円,同残元金に対する
平成23年2月4日(被上告人の主張する遅延損害金の起算日)から平成24年4
月27日(本件配当期日)までの遅延損害金の合計額は475万7928円となる
というものである。
これに対し,被上告人の主張は,前件競売手続における被上告人の配当金は,本
件供託金の払渡しがされた平成23年2月3日時点における本件各貸金債権に法定
充当がされるのであって,本件各貸金債権について前件配当期日後に生じた遅延損
害金にも充当され,したがって,本件各貸金債権の残元金の合計額は2976万9
793円,同残元金に対する同月4日から平成24年4月27日までの遅延損害金
の合計額は745万7030円となる(もっとも,本件競売手続において,被上告
人は,計算を誤って債権額を過少に計上した債権計算書を提出したために,本件配
当表に記載された債権額は,上記各金額を下回っている。)というものである。
2原審は,本件供託金及び供託利息は,その払渡しがされた平成23年2月3
日時点における本件各貸金債権に法定充当がされるとし,その結果,本件各貸金債
権の額は,本件配当表記載の被上告人の債権額を下回らないとして,上告人の請求
を棄却した。
3所論は,本件供託金は,前件配当表に記載された利息,損害金及び元金に法
定充当がされ,本件各貸金債権について前件配当期日後に生じた遅延損害金には充
当されない旨をいうものである。
4担保不動産競売の手続における根抵当権者に対する配当は,根抵当権の優先
弁済権を実現して被担保債権を満足させるものであるから,配当によって消滅する
のは,配当の時点において実体法上存在する被担保債権であるというべきである。
そして,担保不動産競売の手続における配当金が被担保債権の全てを消滅させるに
足りない場合には,その配当金は法定充当がされるところ(最高裁昭和62年
(オ)第893号同年12月18日第二小法廷判決・民集41巻8号1592頁,
最高裁平成6年(オ)第2122号同9年1月20日第二小法廷判決・民集51巻
1号1頁参照),配当表記載の根抵当権者の配当額について配当異議の訴えが提起
されたためにその配当額に相当する金銭が供託され,その後,当該根抵当権者が上
記訴えに係る訴訟において勝訴したことにより,当該根抵当権者に対し上記配当表
記載のとおりに配当がされる場合には,その配当の実施は,供託金の支払委託によ
って行われる(民事執行法188条,92条1項,民事執行規則173条1項,6
1条,供託規則30条1項)。そうすると,上記の場合には,当該供託金は,その
支払委託がされた時点における被担保債権に法定充当がされるものと解するのが相
当である。
5これを本件についてみると,前記事実関係によれば,本件供託金の支払委託
がされた時点における本件各貸金債権に,本件供託金及び供託利息の法定充当がさ
れた結果残存する本件各貸金債権の額は,本件配当表記載の被上告人の債権額を下
回らないものと認められるから,上告人の本件請求には理由がないことになり,こ
れを棄却した原審の判断は,結論において是認することができる。論旨は採用する
ことができない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官大谷剛彦裁判官岡部喜代子裁判官大橋正春裁判官
木内道祥裁判官山崎敏充)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛