弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1原判決中,船舶の撤去命令の取消しに係る部分を取り消す。
2前項の部分につき,本件を横浜地方裁判所に差し戻す。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1主文第1項と同旨
2神奈川県知事が,平成19年10月4日付けで控訴人に対してした原判決別
紙船舶目録記載の船舶(以下「本件船舶」という)の撤去命令を取り消す。。
3訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
第2事案の概要
1本件は,神奈川県知事が管理する二級河川であるα川に本件船舶を錨のみに
よって係留していた控訴人が,平成19年10月4日付けで同知事が河川法
(以下「法」という)75条1項の規定に基づき控訴人に対してした本件船。
舶の撤去命令処分(同項の「その他の措置」として命じられたもの。以下「本
件撤去命令」という)の取消しを求めるとともに,将来における本件撤去命。
令に基づく代執行の差止めを請求した事案である。
原判決は,控訴人の訴えをいずれも却下したため,控訴人が控訴をした。控
訴人は,原判決中本件撤去命令の取消しに係る部分についてのみ不服を申し立
てたので,当審の審理の対象は,同部分に限られる。
2本件の争点及び争点に関する当事者の主張は,控訴人の当審における主張を
次のとおり補足するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の第2の3及び4
(原判決3頁15行目から6頁13行目まで)に記載のとおりであるから,こ
れを引用する。ただし,原判決3頁17行目を削り,同頁18行目の「()」3
を「()」に改め,同4頁16行目から5頁13行目までを削り,同頁14行2
目の「()争点()」を「()争点()」に改め,同6頁2行目の「河川法」3322
を「法」に改める。
()法75条1項の規定による監督処分は,係留施設に係留されている船舶1
の除却を命ずることはできるが,錨のみによって停泊している船舶の撤去を
命ずることはできない。
,()神奈川県内にはα川以外にβ川及びγ川といった二級河川があるところ2
神奈川県知事は,β川及びγ川においては許可を得ない占用を容認している
のに,α川における占用についてのみ撤去命令を発することは,法の下の平
等(憲法14条1項)に違反する。
第3当裁判所の判断
1本件撤去命令の取消しを求める訴えの利益について
()行政処分を受けた者が当該行政処分によって課せられた公法上の義務を1
任意に履行し,その結果,当該行政処分が目的を達成した場合には,当該行
政処分の法的効果は消滅し,当該行政処分の取消しを求める訴えの利益も消
滅する。そこで,まず,本件で控訴人が本件撤去命令によって課された義務
を任意に履行し,本件撤去命令が目的を達成したということができるかどう
かを検討する。
証拠(甲1の1,3の1,12,29の1及び2,32,33,乙1,3
から6まで,12,原審控訴人本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実
を認めることができる。
ア神奈川県知事は,法10条1項の規定に基づき,二級河川であるα川
(逗子市所在)を管理している。
イ控訴人は,遅くとも平成19年9月4日から,神奈川県知事の許可を受
けないで,本件船舶をα川に錨のみによって係留させるようになった。
控訴人は,α川沿いの駐車場(神奈川県逗子市δ−×−27所在)を年
間契約で借り,同駐車場に軽トラックを停め,同所近くのα川に係留して
いる本件船舶に乗り込んでいた。
ウ神奈川県知事は,平成19年9月12日付けで,控訴人が本件船舶をα
川に係留することは法24条の規定に違反するので,本件船舶の撤去命令
を予定しているとして,控訴人に対し,行政手続法13条1項2号の規定
に基づき,弁明書を提出するよう通知した。
エ神奈川県知事は,平成19年10月4日付けで,控訴人に対し,本件船
舶の係留は法24条の規定に違反するとして,法75条1項の規定に基づ
き,同月25日までに本件船舶をα川から撤去するように命じた(本件撤
去命令。)
オ控訴人が本件撤去命令に従わず,本件船舶をα川から撤去しなかったの
で,神奈川県知事は,平成19年11月14日付けで,控訴人に対し,行
政代執行法3条1項の規定に基づき,同月25日までに控訴人が本件撤去
命令を履行しないときは,本件船舶撤去の代執行をする旨文書で戒告した。
カ控訴人は,平成19年11月21日,本件撤去命令の取消しを求める本
件訴訟を提起した。
キ神奈川県知事は,同年12月7日付けで,控訴人に対し,行政代執行法
3条2項の規定に基づき,次の内容の代執行令書を送付した。
(ア)物件の所在地二級河川α川
(イ)物件の名称本件船舶
(ウ)代執行の時期平成19年12月19日から同月27日まで
(エ)代執行責任者神奈川県県土整備部河川課課長代理A
(オ)代執行に要する費用の概算見積額約18万円から36万円
ク控訴人は,平成19年12月12日,係属中の本件撤去命令の取消訴訟
に,代執行の差止請求を追加する訴えの変更申立てをした。
ケ被控訴人の代執行担当者は,平成19年12月19日,本件撤去命令に
ついての代執行を実施しようとしたが,控訴人が同日早朝に本件船舶をα
川から移動させたため,実施することができなかった。
コ控訴人が上記ケの本件船舶の移動を行ったのは,代執行を免れるためで
あり,その後民間の施設と契約して,本件船舶を係留し,又は陸揚げして
保管している。控訴人は,本件取消訴訟に勝訴したら,直ちに本件船舶を
α川に戻すことを明言している。
一方,神奈川県知事は,控訴人が本件船舶を再びα川に係留することを
困難にするような措置をとっていないので,控訴人は,本件船舶を容易に
α川に戻すことができる。
サ本件船舶は,小型船舶の登録等に関する法律の規定により登録されてい
るところ,控訴人は,平成20年10月27日,その船籍港を横浜市から
逗子市に変更する変更登録を行った。
()ところで,本件撤去命令は,控訴人が本件船舶の係留によってα川の河2
川区域内の一定の土地を占用しているとして(なお,後記のように,法24
条にいう「河川区域内の土地の占用」とは,ある特定の目的のために,その
目的を達成するのに必要な限度において,公共用物である河川区域内の土地
を排他的,継続的に使用することをいい,河川区域内の土地に固着せず水面
部分だけを使用する場合も,河川管理上支障があると認められるような場合
には「占用」に含まれると解される,控訴人に対し,本件船舶をα川の。)
河川区域から撤去して,河川区域内の土地の占用の解消を義務付けるもので
ある。
そこで,上記()の事実関係に照らし,控訴人が任意にα川の河川区域内1
の土地の占用を解消して上記義務を履行したといえるかどうかを検討する。
この点については,以下の点を指摘することができる。本件での河川区域
内の土地の占用は,上記のように本件船舶を錨のみによって係留することで
されているから,本件船舶が係留場所から一時的,暫定的に移動したとして
も,容易に元の係留場所に戻り,再び占用を継続することが可能であるとい
う特質を有する。したがって,本件船舶がα川の河川区域から任意に移動し
たとしても,それが一時的,暫定的なものであって,容易に元の係留場所に
戻り,占用を継続できるという場合には,本件船舶の移動をもって控訴人の
占用が解消されて本件撤去命令の目的が達成されたものと評価することは相
当でないというべきである。
これを本件についてみると,上記()によれば,①控訴人は,平成19年1
10月4日付けの本件撤去命令により,本件船舶をα川から撤去するように
命じられ,同年11月14日付けで同月25日までに本件撤去命令を履行し
ないと代執行をする旨の戒告を受けると,時を置かずに同月21日に本件撤
去命令の取消しを求める本件訴訟を提起していること,②控訴人が同年12
月19日に本件船舶をα川から移動させたのは,代執行を免れるためであり,
控訴人は,本件取消訴訟に勝訴したら,直ちに本件船舶をα川に戻すことを
明言しており,平成20年10月には本件船舶の船籍港をあえてα川のある
逗子市に変更していること,③神奈川県知事は,控訴人が本件船舶を再びα
川に係留することを困難にするような措置をとっていないので,控訴人は本
件船舶を容易にα川に戻すことができるという事情が認められるから,控訴
人の行った本件船舶の移動は一時的,暫定的なものであり,かつ,控訴人は
本件船舶を容易に元の係留場所に戻すことができるといえるのである。した
がって,本件では,控訴人の占用が解消されて本件撤去命令の目的が達成さ
れたものとすることは相当でない。なお,この点の判断は,控訴人が民間の
施設と契約して本件船舶を係留し,又は保管しており,本件船舶をα川から
移動させた後約1年半近くが経過しているということにより左右されるもの
ではない(本件で,本件船舶の移動後経過した期間の長短により,本件撤去
命令の目的が達成されたか否かが決まるとすると,訴訟が長引くと訴えの利
益が消滅することになって,妥当を欠くことが明らかである。。)
そうすると,控訴人には,本件撤去命令の取消しを求める訴えの利益があ
るというべきである。
2したがって,本件を第一審裁判所に差し戻すべきである(行政事件訴訟法7
条,民事訴訟法307条。)
なお,本件は,以下のとおり,当審が本案について判断できる例外的な場合
に当たらない。
すなわち,本件撤去命令は,法24条の規定に基づくものであるところ,同
条は,河川区域内の土地を占用しようとする者は,河川管理者の許可を受けな
ければならないと定めている。この「河川区域内の土地の占用」とは,ある特
定の目的のために,その目的を達成するのに必要な限度において,公共用物で
ある河川区域内の土地を排他的,継続的に使用することをいい,河川区域内の
土地に固着せず水面部分だけを使用する場合も,河川管理上支障があると認め
られるような場合には「占用」に含まれると解するのが相当である。なお,河
川区域は,法6条1項で定義されており「河川の流水が継続して存する土,
地」が含まれる。
河川区域内の土地(水面部分を含む。以下同じ)を排他的,継続的に使用。
するということは,当然そこに一定範囲の特定の土地が観念されなければなら
ないのであり,被控訴人は,本件撤去命令の適法性を基礎付けるため,河川区
域内の土地を特定した上,控訴人が本件船舶により当該部分を排他的に(すな
わち他の使用を排除して,かつ,継続して(すなわち一定期間以上連続し)
て)使用していることを主張,立証する必要がある。しかしながら,本件では,
占用に係る土地の特定が不十分であることが明らかである(なお,特定の桟橋
にチェーン等で結び付けて固定するような形態での係留を想定すると,当該桟
橋を特定さえすれば当該桟橋から一定の距離内の特定の土地を観念できないこ
とはないが,本件では,錨のみにより固定する形態での係留という主張である
から,端的に錨のみにより固定した船舶が排他的,継続的に使用しているとす
る土地部分の特定が必要である。また,当該部分を排他的,継続的に使用。)
したといえるかについての主張,立証も尽くされていない(控訴人の主張はは
なはだ不分明であるが,錨のみによる停泊であるから,排他的,継続的な使用
ではないということを主張しているとも読み取れるものである。。)
したがって,本案を判断するためには,審理がなお必要であり,本件は,当
審が本案について判断できる例外的な場合に当たらない。
3以上によれば,控訴人には本件撤去命令の取消しを求める訴えの利益が認め
られ,これを否定した原審の判断には誤りがあるから,行政事件訴訟法7条,
民事訴訟法307条により,更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻
すこととする。
よって,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第9民事部
裁判長裁判官大坪丘
裁判官宇田川基
裁判官尾島明
(原裁判等の表示)
主文
1本件訴えをいずれも却下する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1神奈川県知事が,平成19年10月4日付けで原告に対してした別紙船舶目
録記載の船舶の撤去命令を取り消す。
2神奈川県知事は,原告に対し,前項の船舶撤去の代執行処分をしてはならな
い。
第2事案の概要
1事案の骨子
二級河川であるα川を管理する神奈川県知事は,原告が河川法(以下「法」
ともいう)24条の規定に違反して別紙船舶目録記載の船舶(以下「本件船。
舶」という)をα川に係留しているとして,平成19年10月4日付けで,。
原告に対し,法75条1項に基づき,本件船舶を撤去するよう命じ(以下「本
件撤去命令」という,同年11月14日付けで,行政代執行法3条1項に。)
基づき,本件船舶撤去の代執行をする旨を戒告し,同年12月7日付けで,同
法3条2項に基づき,代執行令書を送付したものの,原告はそのころ本件船舶
をα川から移動させたため,代執行の実施には至らなかった。
本件は,原告が,被告に対し,本件撤去命令の取消し及び本件船舶撤去の代
執行を差し止めるよう求めた事案である。
2基礎となる事実(証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
()原告は,本件船舶を所有している(甲1の1,32,33,乙1。1)
()原告は,遅くとも,平成19年9月4日には,法10条1項に基づき二2
級河川であるα川を管理する神奈川県知事の許可を受けないで,本件船舶を
α川に停泊させるようになった(乙3。)
()神奈川県知事は,原告が,河川区域内の土地を占用しようとする者は河3
川管理者の許可を受けなければならないとする法24条の規定に違反して本
件船舶をα川に係留していることから,本件船舶に対する撤去命令を予定し
ているとして,同月12日付けで,原告に対し,行政手続法13条1項2号
に基づき,弁明書を提出するよう通知した(乙3。)
()神奈川県知事は,同年10月4日付けで,原告に対し,法75条1項に4
基づき,同月25日までに本件船舶を撤去するよう命じた(本件撤去命令。
甲3の1,乙4。)
()神奈川県知事は,同年11月14日付けで,原告に対し,行政代執行法5
3条1項に基づき,同月25日までに本件撤去命令の履行がないときは本件
),船舶撤去の代執行をする旨を文書で戒告し(乙5,同年12月7日付けで
同法3条2項に基づき,以下の内容の代執行令書を送付した(乙6。)
ア物件の所在地二級河川α川
イ物件の名称本件船舶
ウ代執行の時期同月19日から同月27日まで
エ代執行責任者神奈川県県土整備部河川課課長代理A
オ代執行に要する費用の概算見積額約18万円から36万円
()被告の担当者は,同月19日,本件撤去命令についての行政代執行を実6
施しようとしたが,原告が同日早朝に本件船舶をα川から移動させていたた
め,実施することができなかった(乙12。)
()原告は,その後現在に至るまで,本件船舶をα川に戻していない。7
3争点
()本件撤去命令の取消しを求める訴えの利益の有無1
()本件船舶撤去の代執行の差止めを求める訴えの適法性2
()本件撤去命令等の適法性3
4争点に関する当事者の主張
()争点()(本件撤去命令の取消訴訟の訴えの利益)について11
(原告の主張)
原告は,本件撤去命令によって,本件船舶をα川にびょう泊できず,α川
の水利利用ができなくなっており,本件撤去命令の取消しを求める訴えの利
益がある。
(被告の主張)
ア本件撤去命令の目的は,α川からの本件船舶の撤去であるから,それさ
えされれば処分の法的効果は消滅することになるが,河川の不法係留船は
容易に移動できるため,撤去してからの期間,撤去された船の係留場所の
確保等を総合的に勘案して,処分の相手方が命令を受け入れ自主的に撤去
したと認められない等の特別の事情がある場合には,撤去命令処分が履行
されたとはいえない。
本件において,原告は,自らのした撤去は行政代執行を免れるための緊
急避難であること,α川に係留する権利があることを主張しており,自主
的に撤去されたという状況になく,本件撤去命令は現在でも有効であり,
本件撤去命令の取消しを求める訴えの利益が消滅したとはいえない。
イもっとも,本件においては,原告がα川から本件船舶を撤去した事実が
あり,撤去後の期間が長期間であること,原告が係留施設との間で本件船
舶を係留するための契約をしているという事情があるから,これをもって
処分の目的が達成され,本件撤去命令は履行されたと解されなくもなく,
そうだとすれば,本件撤去命令の取消しを求める訴えの利益があるとはい
えない。
()争点()(代執行の差止訴訟の適法性)について22
(原告の主張)
原告は,代執行処分によって,本件船舶をα川にびょう泊できず,α川の
水利利用ができないことになるが,これにより,平成18年12月に永年勤
務した団体を退職した原告が,同19年1月から生計を立てるために始めた
本件船舶を利用しての相模湾一帯を作業現場とする船舶の修理業が行えなく
なり,また,修理業を行うにしても,α川にびょう泊した場合より燃料代と
時間を要するようになったとの不利益を被るから,本件撤去命令に基づき今
後行われる代執行処分全般の差止めを求める。
(被告の主張)
ア本件船舶が現時点においてα川にないという事実関係の下においては,
神奈川県知事は本件船舶をα川から撤去させる行政代執行を行う状況にな
く,行政事件訴訟法3条7項にいう「一定の処分・・・がされようとして
いる場合」に当たらず,このような差止請求は認められない。
イまた,不法係留船の行政代執行は,たんにその船を当該河川から移動さ
せることが目的であり,通常,移動した船は一定期間県有地ほかに留め置
かれることになるが,船の所有者は,行政庁に申し出ることにより自らの
権原のある場所に移動させ,以前のとおり使用することができるから,原
告に重大な損害が生ずるおそれ(行政事件訴訟法37条の4第1項)があ
るとはいえない。
しかも,原告は,行政代執行により本件船舶を使用した修理業ができな
くなるわけではなく,原告が現在本件船舶を係留させている施設が修理の
作業場所から遠いというにすぎず,事前の救済を認めなければならない程
度の損害があるとはいえない。
()争点()(本件撤去命令等の適法性)について33
(原告の主張)
ア原告は,本件船舶をα川にびょう泊していただけであり,係留していた
わけではない。びょう泊とは,自船の錨で留まりいつでも船を出せる状態
のことであり,係留とは陸岸の設備にロープをつなげて船を留めることで
あり,両者は「航行中』とは,船舶がびょう泊をし,陸岸に係留をし,,『
又は乗り揚げていない状態をいう」と規定する海上衝突予防法3条9項。
でも区別されている。α川に係留設備はなく,係留船舶など存在しないの
である。
イ神奈川県内の二級河川はα川のほか,β川及びγ川があるが,神奈川県
知事は,β川及びγ川における水利利用は公認しているのに,α川におけ
る水利利用は禁止しており,これは差別以外の何ものでもない。
(被告の主張)
ア河川区域内における船舶の係留については,係留杭等の施設を設置して
係留する場合には,河川法24条,26条等の河川管理者の許可が必要で
あり,また,錨のみによる係留等,係留施設を設置することなく係留する
場合でも,一時係留でなければ,法24条の許可は必要である。
本件船舶は,平成19年4月以降,継続的に同一水面上に係留をしてお
り,法24条に違反していたから,神奈川県知事は本件撤去命令をしたの
であり,これは適法なものである。
イ神奈川県では,従前から不法係留船の対策に取り組んでいるが,不法係
留船はかなりの数になりつつあり,また,恒久的な係留施設の建設が十分
に進んでいない状況の下では,河川によっては一挙に強制的な撤去措置を
とることが困難な状況にあった。県は,各河川の状況を踏まえて,対処方
法が整った河川から順次不法占有対策を実施しているのであって,あえて
α川だけを差別的に措置するというものではない。
第3当裁判所の判断
1争点()(本件撤去命令の取消訴訟の訴えの利益)について1
()前記第2の2()のとおり,原告は既に本件船舶をα川から移動させてい16
るので,これにより本件撤去命令の取消しを求める利益が消滅するかどうか
について,検討する。
()この点,行政庁の処分の法的効果が既に消滅しているのであれば,取消2
訴訟において処分を取り消し,個人の権利利益に対する侵害状態を解消させ
る必要がないから,訴えの利益は存在しないといわざるを得ない。そして,
本件撤去命令は,河川法75条1項に基づく工作物の除去命令であるところ,
同命令はその名宛人に当該工作物を除去すべき義務を課すものであるから,
当該工作物が除去されれば,処分の効果は消滅することとなる。
()これを本件についてみると,前記基礎となる事実及び証拠(甲24,乙3
12,原告本人)によれば,神奈川県知事は,平成19年12月19日に本
件撤去命令に係る行政代執行を行う予定であったところ,原告は,同日早朝
に本件船舶をα川から自ら移動させ,そのころから横浜市ε区にあるBに係
留し,その後他の施設で保管していることが認められるから,本件船舶をα
川から撤去するとの本件撤去命令の目的は達成され,本件撤去命令の法的効
果は既に消滅したというべきである。
もっとも,原告は,本件船舶をα川から移動させたのは,行政代執行を免
れるためであって,本件訴訟で勝訴した場合は直ちにα川に船舶を戻すと主
張しているが,原告の供述によれば,原告が本件船舶をα川から移動させて
から約1年もの期間が経過し,その間にα川に本件船舶を戻して停泊させた
こともないというのであるし,原告は係留施設と契約を締結するなどして他
に係留場所ないし保管場所を確保して,本件船舶を係留ないし保管させてい
るというのであるから,原告による本件船舶のα川からの移動は必ずしも暫
定的なものとはいえず,原告は本件撤去命令により課された義務を自ら履行
したと解するのが相当である。
したがって,本件撤去命令の取消しを求める訴えは,その利益を欠くに至
ったものといわざるを得ない。
2争点()(代執行の差止訴訟の適法性)について2
()原告は,第6回口頭弁論期日において,本件で原告が差止めを求めるの1
は,前記第2の2()の代執行令書(乙6)で予定された代執行ではなく,5
本件撤去命令に基づいて今後行われる本件船舶の撤去に係る代執行処分全般
であると主張している。
()これを前提に検討すると,上記1でみたとおり,本件撤去命令はその法2
的効果を既に失っており,神奈川県知事によって本件撤去命令に基づいて今
後本件船舶の撤去に係る代執行処分がされようとしているとはいえないから
(行政事件訴訟法3条7項,このような差止めの訴えは不適法である。)
なお,将来において原告が本件船舶をα川に停泊させ,河川区域内の土地
を占用した場合には,神奈川県知事によりこれに対する撤去命令及び代執行
の手続がとられることがあり得るが,本件の差止請求の趣旨を,このような
新たな撤去命令に基づく代執行処分を含むものと解したとしても,原告が将
来そのようなことをするかどうか,また,河川法75条に基づく監督処分が
されるかどうかは不確実であり,このような事実関係の下では,代執行の差
止めを求める訴えの利益を認めることはできないというべきである。
加えて,本件船舶撤去の代執行がされれば,原告としては一定期間本件船
舶の利用ができなくなるが,原告の供述によれば,原告は,平成18年12
月に勤務先を退職した後,本件船舶を利用して船舶等の修理業で生計を立て
ようと考えていたが,実際にはほとんど行っておらず,その他には特に本件
船舶を利用することはないというのであって(なお,原告は年金で生活して
いるようである,原告に行政事件訴訟法37条の4第1項が規定する。)
「重大な損害を生ずるおそれがある」と認めることもできない。
()したがって,いずれにせよ,本件船舶撤去の代執行の差止めを求める訴3
えは不適法である。
3争点()(本件撤去命令等の適法性)について3
()以上のとおり,本件訴えはいずれも不適法であるが,本件訴訟に至る経1
緯及び本件訴訟における原告の対応等にかんがみ,本件撤去命令の適法性に
ついての裁判所の判断を示すこととする。
()まず,原告は,本件船舶をα川にびょう泊していただけであると主張す2
るが,河川法24条は「河川区域内の土地を占用しようとする」場合には,
河川管理者の許可を受けるべき旨を規定しており,係留施設を設置しない場
合であっても,土地を排他的,継続的に使用していれば,上記許可を要する
ものと解される。
本件において,原告は,平成19年3月ころから本件船舶をα川に停泊さ
せていたと供述しており,原告がその場所を占用していたことは明らかであ
って,原告は,河川法24条に違反して河川管理者である神奈川県知事の許
可を予め受けないでα川を占用していたものである。
()また,原告は,神奈川県知事が,β川及びγ川について規制せずにα川3
のみ規制し,これが差別である旨主張する。
しかし,証拠(乙12)によれば,神奈川県は,α川については,河口付
近の県有地を事業者に貸し付け,小型船舶保管施設を整備(平成18年6月
に運営開始)し,不法係留船の所有者に対し,当該施設との利用契約の締結
を促す措置をとりつつ,船舶を撤去しない所有者に対しては,一斉に,平成
19年9月ころから,河川法75条1項に基づく監督処分及び行政代執行の
手続をとったことが認められ,あえてα川に係留された船舶,あるいは本件
船舶だけを差別的に取り締まったものとはいえない。
()したがって,神奈川県知事による本件撤去命令は適法であり,この点に4
関する原告の主張は採用することができない。
4結論
よって,本件訴えはいずれも不適法であるからこれらを却下することとし,
主文のとおり判決する。
横浜地方裁判所第1民事部
裁判長裁判官北澤章功
裁判官土谷裕子
裁判官高橋心平

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ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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