弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人三上孝孜、同小林勤武、同宇賀神直、同戸谷茂樹、同藤原猛爾、同宮地光
子、同出田健一、同梅田章二の上告趣意のうち、公職選挙法(昭和五七年法律第八
一号による改正前のもの。以下同じ。)一四二条一項、二四三条三号の各規定及び
その適用の違憲をいう点は、右各規定が憲法前文、一四条、一五条、二一条に違反
しないこと及び右各規定を本件に適用しても憲法前文、一五条、二一条に違反しな
いことは、当裁判所の判例(昭和二八年(あ)第三一四七号同三〇年四月六日大法
廷判決・刑集九巻四号八一九頁、昭和三七年(あ)第八九九号同三九年一一月一八
日大法廷判決・刑集一八巻九号五六一頁、昭和四三年(あ)第二二六五号同四四年
四月二三日大法廷判決・刑集二三巻四号二三五頁)の趣旨に徴して明らかであるか
ら、所論は理由がなく(最高裁昭和五五年(あ)第一五七七号同五七年三月二三日
第三小法廷判決・刑集三六巻三号三三九頁参照)、公職選挙法一二九条、二三九条
一号の各規定の違憲をいう点は、右各規定が憲法二一条、三一条に違反しないこと
は、当裁判所の判例(前掲昭和四四年四月二三日大法廷判決)の趣旨に徴して明ら
かであるから、所論は理由がなく、選挙運動の意義についての原判断に関し違憲(
一五条一項、二一条一項、三一条)をいう点は、公職選挙法一二九条、一四二条一
項にいう「選挙運動」とは、原判決説示のとおり、特定の選挙の施行が予測されあ
るいは確定的となつた場合、特定の人がその選挙に立候補することが確定している
ときはもとより、その立候補が予測されるときにおいても、その選挙につきその人
に当選を得しめるため投票を得若しくは得しめる目的をもつて、直接又は間接に必
要かつ有利な周旋、勧誘若しくは誘導その他諸般の行為をなすことをいうものと解
するのが相当であり(最高裁昭和三八年(あ)第九八四号同年一〇月二二日第三小
法廷決定・刑集一七巻九号一七五五頁参照)、したがつて、右「選挙運動」の意義
が所論のように広範かつ不明確であるとはいえないから、所論は前提を欠き、その
余は、判例違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であつて、
いずれも刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。
 被告人本人の上告趣意のうち、文書頒布規制規定、事前運動禁止規定の各違憲(
二一条)をいう点が理由のないことは、前記のとおりであり、本件の捜査手続に関
し違憲(一四条)をいう点は、実質は単なる法令違反の主張であり、その余は、事
実誤認の主張であつて、いずれも刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。
 よつて、同法四〇八条により、主文のとおり判決する。
 この判決は、裁判官伊藤正己の補足意見があるほか、裁判官全員一致の意見によ
るものである。
 裁判官伊藤正己の補足意見は、次のとおりである。
 私は、公職選挙法(昭和五七年法律第八一号による改正前のもの)一四二条一項、
二四三条三号の各規定が憲法二一条等に違反するものでないとする法廷意見に同調
するが、その根拠の詳細は、当裁判所昭和五五年(あ)第一五七七号同五七年三月
二三日第三小法廷判決・刑集三六巻三号三三九頁における私の補足意見のとおりで
ある。
  昭和六三年二月二三日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    安   岡   滿   彦
            裁判官    伊   藤   正   己
            裁判官    長   島       敦
            裁判官    坂   上   壽   夫

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