弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 弁護人船内正一の上告趣意第一点について。
 所論は単なる訴訟法違反の主張であつて適法な上告理由とならない。
 しかも刑訴施行法五条の規定にいわゆる前条の事件とは犯罪の行われた時が、新
刑訴法施行の前であると後であるとを問わずいやしくも新刑訴法施行の際にまだ公
訴の提起されていないすべての事件を指す義と解すべきことは文詞からも条理から
も明なところであつて、同条の規定が新刑訴法を施行することに関して定められた
ものであるからといつて所論のように犯罪が新刑訴法の施行後に行われた場合の事
件の審判にはその適用がないと解すべきではない。(昭和二四年新(れ)三二二号
同二五年七月一三日第一小法廷判決参照)。原判決のこの点の判断もまたこれと同
旨であつて所論は採用できない。
 同第二点について。
 憲法三七条三項は、刑事々件についてはいかなる事件であつても、例外なしに弁
護人がなければ公判を開廷することができないことを規定したものでなく、如何な
る事件を必要弁護事件となすべきであるかは専ら訴訟法により決すべきことである。
(昭和二四年(れ)六〇四号同二五年二月一日大法廷判決)。従つて刑訴施行法五
条がその所定の事件について所定の要件のもとに弁護人なくして開廷できるとして
も右憲法の条項に違反するものとはいえない。次に新刑訴法を如何なる時から如何
なる事件に適用するかは経過法の立法に際して諸般の事情を勘案して決せらるべき
問題で法律に一任されているところである。(昭和二三年(れ)一五七七号同二四
年五月一八日大法廷判決)。そして、刑訴施行法五条はすべて同類型の事件(簡易
裁判所事件)に同様の取扱をなすものであるから同条が憲法一四条に違反するとい
えないこと当裁判所大法廷判例に徴し明らかである。(昭和二四年(れ)二三二号
同二五年七月一九日大法廷判決参照)。以上の次第であるから論旨の理由のないこ
と明らかである。
 同第三点について。
 所論は単なる法令違反の主張であつて適法な上告理由とならない。しかも被告人
等は第一審裁判所の弁護人選任の照会に対し自ら弁護人を必要としない旨を書面で
申出たものであり、その弁護人の選任について裁判所がこれを妨げた事跡は記録上
窺えないのであるから所論は採るを得ない。
 同第四点について
 所論は量刑不当の主張であつて適法な上告理由とならない。
 なお記録を精査しても刑訴四一一条を適用すベき事由は認められない。
 よつて同四〇八条に従い全裁判官一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和二七年五月一三日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    井   土       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

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