弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1被告は,原告に対し,674万円及びこれに対する平成18年10月20日
から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2被告は,日本国内において,本判決確定から2年間,原告が施工ないしフラ
ンチャイズ事業化している,別紙目録1及び2記載の各技術と同一内容の技術
を用いた,車両外装のへこみを修復する事業(デントリペア事業)及び家具・
車両内装の修復や色替えを中心とした事業(インテリアリペア事業)を行って
はならない。
3原告のその余の請求を棄却する。
4訴訟費用は,これを3分し,その1を原告の,その余を被告の負担とする。
5この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
1被告は,原告に対し,1208万円及びこれに対する平成18年10月20
()。日訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え
2被告は,日本国内において,原告が施工ないしフランチャイズ事業化してい
る,車両外装のへこみを修復する事業(デントリペア事業)及び家具・車両内
装の修復や色替えを中心とした事業(インテリアリペア事業)のそれぞれと類
似又は競合する事業を行ってはならない。
3訴訟費用は被告の負担とする。
4仮執行宣言
第2事案の概要
本件は,原告に雇用されていた被告が,在職中及び退職時に締結した機密保
持契約に基づく競業避止義務に違反したとして,損害賠償及び遅延損害金の支
払並びに上記義務に違反する行為の差止めを求める事案である。
1争いのない事実及び弁論の全趣旨から明らかな事実(文中では「争いのない
事実」と表記する)。
()原告1
原告は,建築物・構築物内外装の清掃・補修・保守の各事業,同各事業に
関わる機械・車両・器材・塗料・洗剤の輸入・販売・リース,同各事業に関
わるフランチャイズチェーン店の加盟店募集及び加盟店指導業務等を目的と
する株式会社である。
原告は,米国籍会社であるとの間で,同社が事業RedlineRestorationInc.
化している車両外装のリペア(修復)を中心とした事業(具体的には,①車
両外装のへこみを修復するデントリペア事業と②車両外装の傷や塗装のはが
れを修復するエクステリアリペア事業)についての日本国内における独占的
,,「」実施契約を締結し上記契約に基づき日本国内においてTOTALREPAIR
の名称で上記事業をフランチャイズ商品化して加盟店募集及び加盟店指導業
務を行っている。
原告は,米国籍会社であるとの間で,同社が事ColorGloInternationalInc.
業化している家具・車両内装のリペア(修復)や色替えを中心とした事業に
ついての日本国内における独占的実施契約を締結し,上記契約に基づき,日
本国内において「」の名称で上記事業をフランチャイズINTERIORREPAIR
商品化して加盟店募集及び加盟店指導業務を行っている。
原告は,上記トータルリペア事業・インテリアリペア事業のいずれについ
ても,埼玉県戸田市所在の直営店「トータルリペア戸田ショップ」において
自ら事業を行っている。
()被告2
被告は,平成2年6月に原告に入社し,平成15年8月に一身上の都合を
理由に退職届を提出して同年9月に退職した。
原告は,平成7年12月にインテリアリペア・デントリペア・エクステリ
アリペアの3業種につき「」事業として導入し,被告は,TOTALREPAIR
同月から平成8年4月まで,この3業種の技術習得のために米国研修(渡米
4回)及び国内における事業立上げの準備に従事した。
同年5月から平成14年11月には,被告は,原告パートナーサポート事
業部(加盟店の開業後の機器材・消耗品等受注,営業報告の受理をはじめそ
の他開業後の加盟店の具体的な営業活動に対する加盟店サポートを行うと共
に,原告事業のうち車関連事業(本件で問題となるインテリアリペアとデン
トリペアを含む)の原告直営施工を行う)に所属し,インストラクターの。
地位にあって,加盟店への技術指導及び車関連事業の直営施工を担当した。
同年12月∼平成15年8月には,被告は,特殊メンテナンス事業部(原
告直営業務のうち上記車関連事業以外の事業を行う部署)に所属していた。
()競業避止義務に関する合意の存在3
ア原告就業規則32条4号には「会社の業務上の機密および会社の不利,
益となる事項をほかに洩らさないこと(退職後においても同様である」)
との記載が存する。
イ原告は,上記()の事業導入時に,機密保持の必要性から従業員との間2
で機密保持誓約書を取り交わした。被告は,原告に対し,平成8年3月,
,()機密保持・競業避止義務の確認損害賠償の約定いずれも退職後も含む
を記載した機密保持誓約書(甲12)に署名押印して提出した。
ウ被告は,原告に対し,退職時の平成15年8月24日,機密保持の確認
・競業避止義務の確認・損害賠償の約定(いずれも退職後も含む)を記載
した機密保持誓約書(甲13)に署名押印してこれを提出した。
同誓約書の内容は,上記イのそれとほぼ同様であるが「機密事項」に,
,「,,,()」ついてA①販売先仕入先提携先輸入先のデータや名簿以下略
との記載があり,また「在職中,B①∼B④の事項を知り得る立場に在,
り,また技術,知識を習得できる職に在った場合は,貴社を退職した後も
次の行為を行わないことを約束します。
4)貴社のフランチャイジー,代理店等として開業する場合を除き,同じ
商品を取り扱っている又は取り扱う予定がある事業を無断で自ら開業,設
立すること」との記載がある。
()被告の行為4
被告は,平成15年12月から本件口頭弁論終結時に至るまで「○○」,
の屋号で,原告のインテリアリペア類似事業及びデントリペア類似事業を自
ら開業して行っている。
被告は,少なくとも,以下の業者から受注して上記事業を行っている。
株式会社テクニカルメイト(神奈川県相模原市<以下略>所在)
有限会社カーステーション(以下「カーステーション」という。東京都板
橋区<以下略>所在)
有限会社調布自動車サービスセンター(東京都調布市<以下略>所在)
ガリバー多摩ニュータウン店(東京都八王子市<以下略>所在)
サイドキャニオン(東京都府中市<以下略>所在)
マイクロ・デポ株式会社(以下「マイクロ・デポ」という。東京都練馬区
<以下略>所在)
2争点
()被告が競業避止義務を負うか(争点1)1
()被告による競業避止義務違反行為,とりわけ顧客奪取行為の存否(争点2
2)
()原告の損害(争点3)3
3当事者の主張
()争点1(被告が競業避止義務を負うか)について1
(原告の主張)
ア被告は,原告に対し,前記争いのない事実()の各合意に基づき,競業3
避止義務を負う。
イ一般的な技術であるとの被告主張について
原告の技術(デントリペア及びインテリアリペア)は,どこにもある一
般的な技術ではない。以下に述べるように,原告の技術は営業秘密に当た
り,高度の保護が与えられるべきである。
(ア)内装修復事業は,原告が日本で初めてフランチャイズ化したもので
あって,原告こそが素人ができるマニュアルとトレーニングを提供した
初めての会社なのである「取り替える「張り替える」といった内装。」
修復事業者は以前からあるが,原告のインテリアリペアは「取り替え,
」「。」「」「」ない出張して行う色替えをしたりその場で色合わせをして
,。部分的な修復を行う事業でありこれは広く行われているものではない
(イ)外装修復事業についても,板金塗装業は一般的に知られているが,
原告のデントリペアの技術は一般的に知られているものではない。板金
塗装は,車両の外装が事故などでへこんだ場合において,その部分を取
り外して内側からハンマー等で叩いて直したり,取り替えたりするもの
であって,しかも,車両を工場に運んで,数日間預って行う必要がある
ものである。これに対し,デントリペア事業は,板金塗装業では全く行
われていない「小さなへこみを特殊な器具を使って「ドア等を取り,」
外すことも交換することもしないで「短時間で修復する」事業なの,」
である。
いずれの事業も,未経験者が行うには,相当なトレーニングと自己訓練
を積まなければ,顧客に提供できるような技術を持てない。被告は,原告
でトレーニングと経験を積んだからこそ,材料を販売している会社から材
料を購入するのみで仕事をすることが可能になったのである。
ウ被告の地位について
被告は単に原告の直営施工を行っていたのではない「トータルリペア。
インストラクター」として,加盟店への技術指導を行う技術職だったので
あり,原告により,加盟店よりも高度な技術習得がされていた。原告は,
被告を1か月近い渡米研修を行って技術を習得させ,それでも指導者のレ
ベルには達しなかったので,わざわざ米国から指導者を呼び寄せ,講習費
や渡航費,滞在費等を支払って日本で講習をしてもらう,ということを2
度にわたり行った。このように,被告の技術習得には,多額の費用を原告
が負担している。被告は,原告勤務中に得たこの高水準の技術を習得した
,,。上で退職後に当該技術を利用して現在の顧客を獲得しているのである
また,フランチャイズ契約においては,施工技術に限らず顧客獲得のた
めの営業ノウハウ等も供与される。さらには,被告は,戸田ショップで原
告直営業務を行っており,原告と取引先間の情報については,自らが担当
していたかにかかわらず広く知り得る立場にあった。
,。エ代償措置については原告のフランチャイジーとなる途が開かれている
(被告の主張)
,,ア競業避止の特約は労働者の退職後の職業選択の自由を制限するもので
その生存を脅かし得るものであるから,その締結に合理的な事情がないと
きは,公序良俗に反して無効である。そして,この合理的事情の有無は,
①労働者の従前の地位,②禁止される業務の内容・程度,③不利益に対す
,。る代償措置の有無・程度等を総合的に考慮し判断されるべきものである
本件においては,以下に述べるような特約の内容及び締結の事情から,合
理的な事情は存しない。
イ知織・技能の普遍性
競業規制によって保護されるのは使用者の営業秘密であるから,規制の
対象となるのは,その使用者だけが有する特殊な知織・技能を利用する行
為に限られ,労働者が習得した知識・技能が当時の同一業種において普遍
的なもの,すなわち,他でも習得できる一般的知識・技能である場合,こ
れを労働契約終了後に活用することを禁ずることは,職業選択の自由を不
当に制限するもので,公序良俗に反する。
原告の行っているデントリペア及びインテリアリペアにおける補修・修
理方法は,現在はもちろん,原告がこれらの事業を開始した平成8年当時
も,他社が既に同様な方法による補修・修理を行う事業を行っており,そ
,。の技能は原告のみが有する特別な技術ではなく一般的な技術にすぎない
したがって,本件における競業禁止特約は,被告の職業選択の自由を不当
に制限するものである。
ウ被告の原告勤務中における地位
被告は,原告において,主としてデントリペア及びインテリアリペアの
技術者として稼働していたにすぎず,一般的な技術の習得はしたものの,
それ以上に原告の重要な秘密を知りうる立場にはなかった。したがって,
競業避止義務を課せられる立場にない。
エ時間的・場所的範囲
退職者に競業避止義務を課すことは,退職者に重大な不利益を課すこと
になるので,その範囲は可能な限り制限的でなければならず,時間的・場
所的に広範な制限を課す特約は,公序良俗に反し無効である。本件の競業
禁止特約は,競業を禁止する期間や場所的範囲につき,いずれも全く制限
が設けられておらず,被告が原告と同種の業務を行うことを一切否定する
もので,極めて厳しい制限となっている。
オ代償措置の不存在
競業避止義務により退職者に重大な不利益を課すことになるので,使用
者は,十分な代償措置を講じなければならないところ,原告は,秘密保持
手当や退職金の増額等の代償措置を全く講じていないばかりか,被告に対
しては退職金すら支払っていない。
以上のとおり,本件における競業禁止特約は,競業行為を禁止する必要性
が乏しいにもかかわらず,被告に課される義務は過大で,これに対する代償
措置も全く謙じられず,被告に対し一方的に著しい不利益を課すものである
ので,その締結に合理的な事情があるとは到底いえない。したがって,公序
良俗に反し無効である。
()争点2(被告による競業避止義務違反行為,とりわけ顧客奪取行為の存2
否)について
(原告の主張)
ア被告は,前記のように原告に対し競業避止義務を負うところ,これは取
引先を問わない。前記争いのない事実()記載のように,被告は,原告の4
事業に類似する事業を行っており,これは同義務に違反する行為である。
イ被告は,原告在職中に知り得た原告の顧客に対し,営業活動を行って,
さらに安い金額での受注を働きかけ顧客を奪取している。顧客情報につい
ても,原告が多大な費用と労力を費やして獲得したものであり,営業秘密
としての保護に値する。原告の技術も,顧客情報も営業秘密であるから,
この両者を利用して原告の顧客を奪取する行為は,より違法性が強い。
(被告の主張)
被告は,カーステーション及びマイクロ・デポに対し,原告在職中に知り
得た知識を利用して営業活動を行った事実は存しない。
アカーステーションとの取引が行われるようになったのは,同社従業員の
1人が被告の知人であったことから,同人が被告の退社及び独立を知り,
被告の技術を見込んで,同社が被告に修理を依頼してきたのである。
イマイクロ・デポは,被告が,車の補修・修理とは異なる壁面の補修・修
理を業とする特殊メンテナンス事業部に在籍していた際に原告と取引が開
始された会社であり,被告は同社に関する情報をほとんど有していない。
被告退社後,同社を担当していた者も原告を退社し,優秀な技術者が原告
を退社したことによって,原告の施工技術に不満を感じるようになったマ
イクロ・デポが新たな取引先を探していたところ,被告の後輩が被告を紹
介したことから被告との取引が始まった。
,,,ウこのように両社と被告との取引はいずれも両社が被告の技術を知り
被告に接触してきたことから開始しており,原告の主張するように,被告
が従業員として知り得た顧客・取引内容・価格等に関する情報を利用して
営業活動を行ったものではない。
()争点3(原告の損害)について3
(原告の主張)
ア開業資金540万円
被告は,前記争いのない事実()ウの機密保持誓約書により,守秘義務3
に違反した場合,賠償する旨を約している。同誓約書5項により,違約金
として「その行為があったと認められる時点でのフランチャイズ募集要,
項の規定による当該フランチャイズシステムの開業資金合計に相当する金
員と,そのフランチャイズシステム等を導入するために要した費用」を支
,,払うべきものとされているところトータルリペア加盟店契約書によれば
デントリペア事業導入時の開業資金は160万円,インテリアリペア事業
導入時のそれは380万円であり,その合計額は540万円となる。
イロイヤリティ280万円
上記違約金の定めは,原告のフランチャイズ募集要項に準拠して定めて
いるところ,本来であれば,被告は原告とフランチャイズ契約を締結しな
い限り前記事業を行ってはならなかったのであり,少なくとも競業期間中
に支払うべきフランチャイズ契約上の基本ロイヤリティ(1種導入の場合
は月額5万円,2種導入の場合は同合計8万円)の支払義務がある。
少なくとも被告は平成15年12月から競業行為を行っているから,本
訴提起時まで2年11か月分としてその金額は280万円となる。
ウ顧客奪取行為による減収388万円
被告の顧客奪取行為により,別表のとおりカーステーションとの間の売
上高が減少している。平成14年,15年の同社に対する総売上げが40
5万5000円であるのに,平成16年,17年のそれは17万5000
円となってしまった。
被告が自認している競業行為開始時期(平成15年12月)を基準とし
て,過去2年間(平成14年1月∼同15年12月)の同社と原告との間
のデントリペア・インテリアリペア事業に関する総売上と,その後2年間
(平成16年1月∼同17年12月)の総売上を比較すると,上記の差額
となり,原告は減少分388万円を請求する。
(被告の主張)
ア原告の主張するア,イは,競業禁止特約自体が無効であるから,その定
めも無効である。仮に特約が有効であるとしても,ロイヤリティはフラン
チャイズ契約が締結されて初めて発生するものであり,契約締結がない本
件では損害とならない。
イカーステーションは顧客の方から被告に接近してきたものであり,被告
の営業秘密保持義務違反の結果ではないので,同損害は発生しない。
第3当裁判所の判断
1競業避止義務の範囲について
()被告は,原告との間で,前記争いのない事実()のとおり,競業禁止に関13
する合意をしている。このうち,ア及びイのものは「退職後を含む」と,。
いうような記載が形式的に付け加わっているが,在職中の競業行為を禁止す
ることを主眼とするものと考えられる。これに対し,ウのそれは,退職後の
競業を主眼として,明示的に禁止する趣旨のものといえる。
一般に,従業員が退職後に同種業務に就くことを禁止することは,退職し
た従業員は,在職中に得た知識・経験等を生かして新たな職に就いて生活し
ていかざるを得ないのが通常であるから,職業選択の自由に対して大きな制
約となり,退職後の生活を脅かすことにもなりかねない。したがって,形式
的に競業禁止特約を結んだからといって,当然にその文言どおりの効力が認
められるものではない。競業禁止によって守られる利益の性質や特約を締結
した従業員の地位,代償措置の有無等を考慮し,禁止行為の範囲や禁止期間
が適切に限定されているかを考慮した上で,競業避止義務が認められるか否
かが決せられるというべきである。
ところで,このうちの競業禁止によって守られる利益が,営業秘密である
ことにあるのであれば,営業秘密はそれ自体保護に値するから,その他の要
素に関しては比較的緩やかに解し得るといえる。原告は,原告のデントリペ
ア及びインテリアリペアにおける補修・修理の技術,並びに顧客情報が営業
秘密であると主張するので,以下この点につき検討する。
()営業秘密該当性について2
営業秘密として保護されるには,①秘密管理性,②非公知性,③有用性,
が必要であると解される。このうち,③有用性の要件を,原告主張のデント
リペア及びインテリアリペアにおける補修・修理の技術,並びに顧客情報が
備えることは明らかである。
ア非公知性の要件について
まず②の非公知性の要件について検討する。
(ア)前記争いのない事実,証拠(甲2ないし7,甲21の1及び2,甲
22,証人P1,被告本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が
認められる。
原告は,前記争いのない事実()のとおり,デントリペア及びインテ1
リアリペアの各技術について,各米国会社と独占的実施契約を締結し,
埼玉県で直接これを実施・施工する事業及び全国でのフランチャイズ事
業を行っている。デントリペアは,車両の外装が事故などでへこんだ場
合において,小さなへこみを特殊な器具を使って,ドア等を取り外すこ
とも交換することも,塗装もしないで,短時間で修復することを特徴と
する技術である。このような外装の修復については,一般的には板金塗
装が行われているが,板金塗装は,その部分を取り外して内側からハン
マーなどで叩いて直したり,取り替えたりするもので,しかも,車両を
工場に運んで,数日間預った上で行う必要がある。これに対し,デント
リペアは上記のような技術であるから,車両を工場に運ぶこともなく,
,,(。)出張して日数を要せず非常に短時間10分程度ということもある
かつ安価に行うことのできる,特殊な技術である。日本国内でこの技術
,,。を導入するには原告からするか後記(イ)の事業者からするほかない
インテリアリペアは,車両の内装や椅子等の家具の表面についた傷等
を,取替え,張替えといった従来の技術と異なって,出張修理で,特殊
な充填剤を使って,取り替えずに,塗装をして色替えをしたり,その場
で色合わせをして,部分的な修復を行う技術である。この技術は,原告
が日本で初めてフランチャイズ化したもので,原告が,初めて,素人が
マニュアルとトレーニングを経てこの技術を事業化できるようにした。
上記いずれの技術も,我が国で広く行われているものではなく,電話
帳やインターネットで探しても,数えるほどしか業者は存在しない。殊
,,,。にインテリアリペアでは首都圏に23軒しか存しない状態である
さらに,被告にこの技術を習得させるために,原告は,第2,3()1
(原告の主張)ウ記載のような手間と多額の費用をかけ,被告をフラン
チャイジーに対するインストラクターをこなせる技術者に育てた。高度
な技術のレベルに到達するには,型どおりの講習を受ければ済むもので
はなく,多数回の実地体験をこなす必要があり,被告にはそれだけの経
験を積ませた。
,,(イ)これに対し被告はデントリペア及びインテリアリペアの各技術が
一般的な技術であり,他にこれを実施している業者があり,被告はそれ
ら業者の講習等を受けたと主張するので,この点につき検討する。
証拠(甲15,22,23,26の1及び2,証人P1)及び弁論の
全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
a上記デントリペア技術については,デントジャパンという事業者が
ほぼ同じ技術を教えているが,同事業者は,スクールのような事業者
であって,フランチャイズ事業の展開はしていない。同社では,原告
と同じような修理のための工具も付けて同技術を教えているが,それ
には65万円から百万円単位の受講料が必要である。この事業を行っ
ている業者は,首都圏に,被告を含め22店ほどである。被告は,デ
ントジャパンで,平成15年9月25日から6日間の講習を受け,受
講料等136万5000円を支払った。
bまた,インテリアリペア技術については,ユニタスファーイースト
株式会社(以下「ユニタス社」という)という会社が,ほぼ同じ技。
術につき,講習と資材の販売を行っている。同社もフランチャイズ事
業の展開はしていない。原告がインテリアリペアの単語でインターネ
ットで検索したところ,原告のフランチャイジー事業者2社しか発見
されなかった。被告は,ユニタス社で平成16年1月31日に5日間
の講習を受け,受講料等47万2500円を支払った。被告は現在,
資材は同社から購入している。
上記abに認定した事実からは,確かに,各技術は,原告以外にも教
えている業者がいて,事業としてこれを実施している業者も存するが,
原告のようにフランチャイズ事業をしている事業者が他にないせいか,
原告から習得した以外の業者はまだ非常に少数であり(殊にインテリア
リペア技術,一般的に知られている技術とはいえないと認められる。)
イ秘密管理性の要件について
上記ア(ア)のように,日本国内でこの技術を導入するには,原告からす
るか,ア(イ)の業者から得るかするしかない。
原告では,従業員及び退職者(退職者に対しては,退職願の定型書式に
も機密保持特約が確認されている。甲10)に対しては,前記争いのない
事実()のとおり,秘密保持義務を課している。証拠(甲12,13)に3
よれば,機密保持誓約書では,機密事項の対象として「B②導入,開発
した商品・システム・組織・技術等の内容とノウハウ」等を定め,原告の
「フランチャイジー,代理店等として開業する場合を除き,同じ商品を取
り扱っている又は取り扱う予定がある事業を無断で自ら開業,設立するこ
と」を禁止している(3項。また,原告では,フランチャイジーとも,。)
事業に関するノウハウ,マニュアル等の資料に関し,秘密保持特約を結ん
でいる(甲5,6の各12条。以上からすれば,原告の前記技術は,営)
業秘密として管理されていると認められる。
ウ検討
上記に検討したところからは,デントリペア及びインテリアリペアの各
技術の内容及びこれをフランチャイズ事業化したところに,原告の独自性
,。があるということができ一般的な技術等とはいえないというべきである
,,(,)このような点に鑑みると上記は不正競争防止法2条1項7号6項
にいう営業秘密には厳密には当たらないが,それに準じる程度には保護に
値するということができる。被告がフランチャイジーに技術を教えるイン
ストラクターの地位にあり,原告が,被告に高度な技術を身につけさせる
ために多額の費用や多くの手間をかけたとの事実を併せ考慮すればなおさ
らである。
他方,原告主張の顧客情報は,自動車関連業者においては,この種の需
要は少なからずあると考えられ,受注できるかどうかはともかく,飛込み
営業でも需要の有無程度は知り得るものといえる(被告本人も,中古車情
報誌等で見つけた事業所を100社ほど飛込み営業で回り,うち6,7割
から,単発ででも受注があったと述べている。したがって,原告がそ。)
れを得るために多額の営業費用や多くの手間を要したとしても,非公知性
,。に欠け営業秘密にもこれに準じるものにも当たらないというべきである
()被告が負う競業避止義務の範囲について3
上記判示のとおり,原告の技術は,営業秘密に準じるものとしての保護を
受けられるので,競業禁止によって守られる利益は,要保護性の高いもので
ある。そして,被告の従業員としての地位も,インストラクターとして秘密
の内容を十分に知っており,かつ,原告が多額の営業費用や多くの手間を要
して上記技術を取得させたもので,秘密を守るべき高度の義務を負うものと
することが衡平に適うといえる。また,代償措置としては,証拠(甲16,
25,証人P1)及び弁論の全趣旨によれば,独立支援制度としてフランチ
ャイジーとなる途があること,被告が営業していることを発見した後,原告
の担当者が,被告に対し,フランチャイジーの待遇については,相談に応じ
通常よりもかなり好条件とする趣旨を述べたこと,が認められ,必ずしも代
償措置として不十分とはいえない。そうすると,競業を禁止する地域や期間
を限定するまでもなく,被告は原告に対し競業避止義務を負うものというべ
きである。
2争点2(被告による競業避止義務違反行為,とりわけ顧客奪取行為の存否)
について
()前記争いのない事実(),証拠(甲14ないし16,乙2ないし6,9,14
証人P2,被告本人,調査嘱託)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が
認められる。
ア被告は,原告を平成15年8月に退職したが,退職日付よりも前の7月
下旬ころから,その先の職業の選択肢として,これまでやっていたのと同
種の事業も念頭に置いて,職業を検討していた。その中で被告は,デント
ジャパンとユニタス社に資料請求をした。退職後,被告は,以前から考え
ていた義父の軽貨物運送業の手伝いというのも一応やってはみたが,到底
一生続けられるようなものでなく,これまでやっていたのと同種の事業で
。,あるデントリペアとインテリアリペアの事業をすることにしたそうして
デントジャパンとユニタス社で講習を受け,平成15年12月ころ,現在
の事業を開業した。被告のやっている事業において用いている技術は,外
。,,装補修は原告のデントリペアとほぼ同じものであるまた内装等補修は
原告のインテリアリペアとほぼ同様なものであるが,前記のとおり被告は
資材をユニタス社から購入していることから,資材の性質の違いで異なる
ところがある程度である。
イ被告は,現在の事業を開業した後,中古車情報誌等で見つけた事業所を
100社ほど飛込み営業で回り,うち6,7割から,単発ででも受注があ
った。この中には,カーステーション以外には,被告が原告在籍中に担当
したことのある顧客はいなかった。また,前記争いのない事実()記載の4
業者以外にも,被告は,株式会社関東マツダ多摩ニュータウン店(東京都
多摩市<以下略>所在)及び株式会社ガーネット車楽多摩店(東京都多摩
市<以下略>所在)から受注して,取引があった。被告が継続的に受注し
ている業者には,原告の顧客だったところはない。
ウ被告は,平成15年10月ころ,仕事がもらえればよいな,という淡い
期待を持ちながら,独立したことの挨拶に,カーステーションを訪れた。
この際は価格表を提示するなどはしていない。その後同社から,仕事の受
注があった。被告は,原告よりもやや安い価格設定でデントリペアを同社
から請け負っているため,同社は価格を重視するのか,原告が安値攻勢を
かけた時には,被告への発注が止まった。
エマイクロ・デポに関しては,被告が車の補修・修理とは異なる,壁面の
補修・修理を業とする原告の特殊メンテナンス事業部に在籍していた際に
原告と取引が開始された会社であり,被告は同社が原告の顧客と知らなか
。,,。った被告は知人の紹介で同社を知り継続的に受注するようになった
()上記認定事実からすれば,被告は,カーステーション以外には,特に原2
告在籍中に得た顧客情報を利用して,自己の事業を運営しているということ
はできない。カーステーションに関しては,被告は,原告の顧客を奪取して
いることにはなる。しかし,被告は,仕事をもらえるかという期待を抱いて
挨拶に行ったというのであるが,特に原告の価格を引き合いに出してそれよ
,。りも安くするという営業方法でもなく格別に悪質な営業方法とはいえない
そもそも,上記1認定のように,原告の顧客情報が,原告の技術と異なり格
別の保護を受けるものといえないのであるから,上記のような営業を行った
ことは,不法行為の成立上,特別な意味を持たないというべきである。
3争点3(原告の損害)について
()開業資金について1
(,),,(),証拠甲56によれば第23()原告の主張ア記載のとおり3
原告では,前記争いのない事実()の競業禁止特約において,損害賠償の予3
定を定めていることが認められる。上記1認定のように,上記競業禁止特約
の効力は認められるので,損害賠償の予定の特約の効力も格別問題を生じな
いといえる。上記同特約によれば,違約金として,フランチャイズシステム
の開業資金合計に相当する金員と,そのシステム等を導入するために要した
費用を支払うべきものとされており,上記書証によれば,デントリペア事業
導入時の開業資金は160万円,インテリアリペア事業導入時のそれは38
0万円であり,その合計額は540万円と認められる。そして,上記1に認
定したように,原告は上記技術を独占できるわけではないことから,このう
ち7割を原告の損害と認める。そうすると,この額は378万円となる。
上記は一種の損害賠償の予定であるが,在職中の労働者を足止めしようと
するものではないから,労基法11条違反の問題は生じないといえる。
()ロイヤリティについて2
上記書証によれば,原告では,原告のフランチャイズ募集要項において,
,,フランチャイズ契約上の基本ロイヤリティを1種導入の場合は月額5万円
2種導入の場合は同合計8万円と定めていることが認められる。被告は,上
記競業禁止特約に違反して,フランチャイズ契約を締結することなく,同じ
事業を始めたのであるから,このロイヤリティは損害となるといえる(不正
競争防止法5条3項3号にも同様の考え方が見られる。上記()の損害をイ1
ニシャルコストとすれば,ランニングコストの関係にあるといえる。。)
被告は,少なくとも平成15年12月から競業行為を行っているから,本
訴提起時まで2年11か月分としてその金額は280万円となる。上記()1
同様,原告は上記技術を独占できるわけではないことから,このうち7割を
原告の損害と認めるべきである。そうすると,この額は196万円となる。
()顧客奪取による減少3
原告は,被告がカーステーションに対する顧客奪取行為を行い,そのせい
で同社に対する売上げが,平成14年1月∼同15年12月の2年間と,平
成16年1月∼同17年12月の2年間とを比較し,その差額を売上げ減少
。(,。)分として請求している証拠甲17ないし19書証の枝番号は省略する
によれば,少なくとも別表程度には,原告の同社に対する売上げが存するこ
とが認められる。
しかしながら,原告の同社に対する売上げが減少した理由は,被告の行為
のみによるものかは明らかでなく,原告主張の期間に,同社にこの種の仕事
がどのくらいあったのかも明らかではないから,この減少をすべて原告の損
害と認め,被告に賠償を命じることもできないというべきである。また,上
,,。記()()同様に原告が上記技術を独占できるわけではない事情も存する12
これらの事情と,民訴法248条の精神も考慮し,この種原告の損害は,1
00万円と認める。
()差止請求について4
,。上記競業禁止特約が効力を認められる以上原告の差止請求は理由がある
しかし,その範囲は,技術の陳腐化や原告が上記技術を独占できるわけで
はないこと等を考慮すると,本判決確定後2年間に限られるべきである。
4結論
よって,原告の請求は,損害賠償として674万円及びこれに対する訴状送
達の日の翌日である平成18年10月20日から支払済みまで年5分の割合に
よる金員の支払並びに本判決確定後2年間の差止めについて,理由があるから
認容し,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第11部
村越啓悦裁判官
(別紙目録)
1車両外装のへこみを修復する技術
特殊な器具を用い,これを車両外板とのすき間に入れて,裏側から押すなど
のことによって,ドア等を取り外すことや交換することをせず,塗装をしない
で,短時間で修復することを特徴とする技術
2家具・車両内装の修復や色替え等の技術
車両の内装や椅子等の家具の表面についた傷を,取替え,張替えという方法
を用いず,特殊な充填剤を用いて,塗装により,色替えをしたり,色合わせを
して,部分的な修復を行う技術

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