弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件各控訴を棄却する。
     当審における訴訟費用中証人Aに支給した分は被告人Bの負担とし、証
人Cに支給した分は被告人Dの負担とする。
         理    由
 被告人Bの弁護人西本計三、同梱原隆一、被告人D、E、同Fの弁護人鈴木惣三
郎の各控訴の趣旨は記録編綴の各控訴趣意書記載のとおりであるから、ここに之を
引用する。
 これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。
 弁護人鈴木惣三郎の論旨第一点について
 所論は、原判決は原判示貨物をG丸に積み替えたことを以て密輸出を遂げたもの
と認定しているが、自国領海内で外国仕向け船舶に積替えたに過ぎない場合は密輸
出の予備に過ぎないから原判決の認定はその認定自体において何故既遂なのか判明
しない理由不備の違法があるというにある。しかし原判決挙示の各証拠によれば
(同弁護人の論旨第三点について後に説示する如く)本件貨物は朝鮮に密輸出する
目的で下関市H岸壁からI丸に積み込み同市J燈台沖に於て朝鮮行きに仕向けられ
たG丸に積み替えられたものであることを認めるに十分である。
 <要旨>而して、右の如く貨物を密輸出する目的で外国仕向け船舶に積み込んだ以
上、関税法第一一一条第一項に所謂輸出を為したものと認めるべきであるか
ら原判示貨物の積み替えを以て輸出の既遂と認定した原判決には何等所論のような
違法は存しない。論旨は理由がない。
 同弁護人の論旨第二点について
 所論は原判示別紙第二目録の番号一乃至六、四五乃至七五の各貨物はいずれもC
よりKに、同人から被告人Dに順次販売を委託されて交付せられたものであるから
その所有権はCに属するものなるにかかわらず、原判決が被告人Dの所有に属する
ものとして関税法第一一八条を適用し没収したのは擬律錯誤の違法があるというの
である。よつて記録並びに当審証拠調の結果を検討するに、被告人Dの司法警察員
に対する供述調書、Kの司法巡査に対する供述調書、原審公判調書中同人の証人と
しての供述記載、当審に於ける証人C尋問調書にはいづれも右主張に副うような供
述部分もあるのであるが、これ等の各供述内容の全趣旨を仔細に検討し、更に関係
証拠を参照して考察すれば所論の各取引は委託販売契約ではなくして売買契約であ
ると認めるのが相当であるから原審が右貨物を被告人Dの所有に属するものとして
前記法条を適用し没収したのは相当であつて所論のような違法は存しない。論旨は
理由がない。
 同弁護人の論旨第三点について
 所論は被告人D、同L、同F等は対島に赴いて品物を売捌き引返すか、或は同地
に於て海女となつて生活するつもりであつて朝鮮に密輸出する意思はなかつたもの
である旨事実誤認を主張するものである。しかし被告人等が原判示貨物を朝鮮に密
輸出しようとしたものであることは原判決挙示の各証拠を綜合すれば優に之を認め
ることが出来るのである。なるほど同被告人等は検挙以来終始右論旨に主張するよ
うな弁解をしているのであるが、右は被告人B、原審相被告人M、同N、同O、同
Pの各検察官に対する供述調書、被告人B、Q、R、S、Tの各司法警察員に対す
る供述調書に比照し到底信を措き難く他に右主張事実を肯認せしむべき何等の証拠
も存しない。原判決には所論のような事実誤認の違法はなく、論旨は理由がない。
 弁護人西本計三、同掴原隆一の各論旨第一点について
 所論はいづれも原判示G丸はAの所有に属するものであつて被告人Bの所有では
ないから同被告人の所有に属するものとして関税法第一一八条を適用し之を没収す
べきものとした原判決には事実誤認乃至法令適用の誤の違法があるというのであ
る。よつて按ずるに領置の証第一〇七号領収証書の記載、並びにそれが被告人Bの
手裡にあつた事実に、Aの検察官に対する供述調書、原審公判調書中同人の証人と
しての供述記載部分、当審に於ける同人に対する証人尋問調書によれば右G丸は昭
和三〇年七月一五日Aと被告人Bとの間に代金三七万五千円で売買契約成立し同時
にその所有権は被告人Bに移転したものと認めるのが相当である。尤も右Aは右各
調書に於て終始右G丸の所有権はその代金の完済されるまで売主たる同人において
留保していたものであるかの如き趣旨の供述を為しているのであるが、前記各証拠
によつて認められる右売買契約成立と同時に内金として契約の当初授受された手附
金をふくめて二〇万円の支払が為されていること、代金三七万五千円の領収証が被
告人Bに交付されていること、船籍票等と共に現実にG丸の占有が被告人Bに移さ
れていること等から見て同船の所有権移転の効力発生を特に残代金支払のときまで
停止する特約があつたものとは認め難く、それは単に被告人Bが朝鮮人であるため
正式に所有権移転手続を履践することができないので第三者名義を藉りて所有権移
転の手続をする必要があり、その手続が直ちに出来かねる事情にあつたので該手続
の完了するまで残代金の支払が留保せられていたに過ぎないと見るのが相当であ
る。右認定に反する前記Aの各調書中の供述記載部分、被告人Bの司法警察員並び
に検察官に対する各供述調書、原審公判調書中同被告人の供述記載部分は措信し難
く他に右認定を覆すに足る証拠は存しない。されば原判決には所論のような違法は
なく、論旨はいづれも理由がない。
 同論旨各二点について
 所論はいづれも被告人Bについて原判決の量刑不当を主張するものであるが、本
件犯行の態様、罪質、密輸出にかかる貨物の数量、被告人の犯罪経歴その他記録に
あらわれた諸般の情状を考察すれば原審の量刑は已むを得ないところというべく、
所論の諸点を参酌考量するも不当に重いとは思料されない。論旨は理由がない。
 よつて刑事訴訟法第三九六条第一八一条第一項本文を適用し主文のとおり判決す
る。
 (裁判長裁判官 村木友市 裁判官 渡辺雄 裁判官 原田博司)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛