弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
     当審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。
         理    由
 弁護人有吉実の上告趣意は、末尾添付の別紙書面記載の通りである。
 第一点について。
 論旨は、すべて、原判決の刑事訴訟手続に関する法令違反を主張するに過ぎない
から、刑訴法第四〇五条所定の上告理由に当らない。
 なお、本件起訴状及び訴因追加請求書の各謄本が被告人に送達されていないこと
は、所論の通りである。しかし、記録によれば、被告人が起訴されたのは、昭和二
四年四月一六日で、訴因追加請求書が提出されたのは同月二一日である。そして、
被告人は、起訴された日に、早速、弁護士本郷雅広を、自ら、弁護人に選任してお
り、起訴状の謄本は同月一六日、訴因追加請求書の謄本は同月二一日、即ち、いず
れも、即日、それぞれ右弁議人に送達されている。しかも、福岡地方裁判所行橋支
部裁判所書記官Aの同庁判事松山安馬宛報告書(記録四二五丁)によれば、同書記
官が被告人に起訴状の謄本を送達せず、殊更ら、これを弁護人に送達したのは、右
送達を心待ちしていた同弁護人の請求に基ずくもので、書記官としては、弁護人に
これを送達すれば、必らずやそれは被告人に手交せられるものと考え、便宜、弁護
人にこれを送達したものであることが窺われる。そして、第一審は第一回公判を同
年五月二〇日に開いている。即ち、同公判は公訴提起の日から二箇月以内に開かれ
ていると共に、起訴状謄本が弁護人に送達されてから同公判までには一箇月以上、
訴因追加請求書が弁護人に送達されてからでも同公判までには一箇月近くの余裕が
あつたことになる。したがつて、弁護人としては、被告人との連絡、その他、公判
における被告人の防禦権伸張の為めに、いわゆる弁論の準備をする十分の期間があ
つたものといわなければならない。まして、第一審公判では被告人側より何等の異
議も申し出でずして終了しており、且つその間に、被告人の防禦権の行使に遺憾な
点があつたとの節も認められない。かかるる特別の事情が認められる以上、たとい、
被告人に起訴状及び訴因追加請求書の各謄本が被告人に送達されておらず、したが
つて、刑訴法第二七一条第二項第三一二条第三項刑訴規則第二〇九条第三項の遵守
に欠くる点があつたとしても、右瑕疵は、本件については、未だ刑訴法第四一一条
を適用すべき事由とするに足らないものというべきである。
 次ぎに、本件起訴状公訴事実の冒頭に、「被告人は賭博前科二犯を有し、a町並
に其の近郊に於て誰れ知らぬ者もない不良の輩で、酒癖が悪く、被告人の姿を見る
と、これを避けて通ると云ふ所謂町の不良青年仲間の親分格として横暴の限りを尽
して居るものであるが」と記載せられていることは所論の通りである。そして、起
訴状に公訴事実を記載するに際し、犯罪事実とは何等直接の関係がないのに、唯だ
被告人の悪性を中傷強調する目的で、被告人の性格、経歴及び素行等に関する事実
を記載することは、刑訴法第二五六条末項り規定の趣旨に鑑み、もとより、許され
ないところである。しかし、本件公訴事実は、被告人が一般人を恐れさせるに足る
ような自己の性格、経歴及び素行等に関する事実を告知し、若しくは相手方が予ね
て、そのような事実を知つて恐れをなしているのに乗じて金品、その他財産主の利
益を受けるという方法によつて度々の恐喝を働いたというにあつて、被告人の性格、
経歴及び素行等に関する事実は、本件では、犯罪事実と何等直接の関係のない事項
ではなく、むしろ、その恐喝手段そのものゝ内容をなしている事柄であるといわな
ければならない。されば、これと同趣旨に出でた原判決は正当で、論旨は理由がな
い。
 更らに、裁判官の証人B外九名に対する証人尋問が、被告人及び弁護人の立会な
くして行われたことは所論の通りである。しかし、右の各証人尋問は、刑訴法弟二
二七条の規定に基ずく検察官の請求によるものであり、この請求を受けた裁判官が
右各証人尋問に被告人及び弁護人を立会わしめなかつたのは、同裁判官において、
右立会が搜査に支障を生ずる虞れがありと認あたことによるものというべきである。
そして、本件犯罪の態様、被害者の地位、その地諸般の情況から判断すると、同裁
判官が右のように認めたのも、理由のあることだと考えられる。即ち、右裁判官の
前記の措置は、刑訴法第二二八条第二項刑訴規則第一六二条に基ずく適法なもので、
これを目して反対尋問の機会を奪つた不当な処置だということはできない(昭和二
五年(あ)第七九七号、同二七年六月一八日大法廷判決参照)。しかも、第一審第
一判公判調書によると、被告人は同公判で右の証人尋問調書を証拠とすることに同
意していることが認められ、その証拠調べは適法になされているから、同審判決が
これを証拠にしたのは、もとより、適法で(前掲大法廷判例参照)、論旨は採用す
ることができない。
 第二点について。
 論旨は、要するに、理由不備乃至事実誤認の主張に過ぎないから、適法な上告理
由に当らない。なお、第一審判決は、被告人の同公判廷における自由、司法巡査作
成の素行調書及び裁判官のB外九名に対する各証人尋問調書によつて、その事実摘
示の各犯罪事実を認定しており、同犯罪事実は右の適法な各証拠によつて、優にこ
れを認めることができるから、同判決には何等所論のような違法はない。
 その他、記録を精査しても、本件につき刑訴法第四一一条を適用すべき事由あり
とは認められない。
 よつて、刑訴法第四一四条第三八六条第三号第一八一条第一項に則り、裁判官全
員一致の意見を以つて、主文のとおり決定する。
  昭和二七年七月一八日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛