弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人田所和十郎及び千島勲の上告趣意は末尾添附別紙記載のごとくであつて、
これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。
 同上告趣意第一点について。
 原判決の認定したところに従えば、被告人は、判示の米五俵が占有を離れた他人
の物であることを認識しながら、不法にこれを領得しようと決意して、自宅の蔵の
内に匿い込んだというのであるから、これはまさしく刑法第一五四条の横領罪に該
当する。仮りに所論のように被告人が右の米の盗品であることを認識していたとし
ても、不法領得の意思を以て之れを拾得した以上、同条所定の横領罪が成立するの
であつて所論のように賍物収受罪が成立するのではない。それ故に本件を以て賍物
収受罪に該当するものとする論旨は、理由がない。のみならず刑法第二五六条第一
項所定の賍物収受の罪は、同法第二五四条の占有離脱物横領の罪より重いのである
から、論旨は被告人の不利益を主張することゝなり、この点に於ても採用すること
ができない。
 同第二点について。
 被告人は判示の米の拾得を届出るつもりであつた、と主張する論旨は、被告人に
不法領得の意思を否認することになる。しかしそれは原判決の事実認定を非難する
ことに帰するので、上告適法の理由とならない。
 同第三点について。
 論旨は、浦和土地検察庁熊谷支部に於て事務官A作成に係る聴取書に供述者の署
名捺印がないことを非難しているが、原判決は右の聴取書を証拠として採用してい
ない。従つて仮りにそれが違法であつたとしても、そのことは原判決に影響なきこ
と明白であるから、刑事訴訟法第四一一条によつて、これを上告の理由とすること
はできない。論旨は理由がない。
 同第四点について。
 記録を調べてみると、昭和二二年一一月六日の原審の決定にもとずき、受命判事
B及び同Cの両名は、同月二二日、深谷警察署において、検事、被告人及びその弁
護人等立会の下に、D外一〇名の証人を訊問した。そうしてその一一名の証人の中、
証人D、同E及び同Fの証言については、被告人に意見弁解の有無を問い又は被告
人に証人を訊問する機会を与えた形跡のないこと、所論の通りである。しかしこの
ことが仮りに違法であつたとしても右の各証言は何れも原審に於て証拠として採用
せられていないのであつて、原判決に影響を及ぼしていないこと明白であるから、
その点に於ても論旨は理由がない。
 弁護人千島勲並びに同田所和十郎の各提出した上告趣意補充書については期間経
過後の提出であるから、これに対しては判断をしない。
 以上の理由により刑事訴訟法第四四六条により主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。
 検察官 宮本増蔵関与
  昭和二三年一二月二四日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介

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