弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主     文      
     原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。
     被上告人らの本件請求を棄却する。
     訴訟の総費用は被上告人らの負担とする。
         理    由
 職権によって次のとおり判断する。
 一 原審の適法に確定した事実関係の概要等は、次のとおりである。
 1 Dは、昭和五七年三月三一日、公正証書遺言により、Eに対し、所有の第一
審判決添付別紙物件目録一、二記載の各土地(以下「本件一土地」、「本件二土地」
といい、併せて「本件各土地」という。)を遺贈し、遺言執行者にFを指定した。
 2 Dは、昭和五七年四月六日に死亡した。その法定相続人は、妻である被上告
人B1、長女である被上告人B2、次女であるG、Dと先妻との間の長男H(昭和
一六年に推定相続人から廃除された。)の長男である上告人A1、Hの非嫡出子で
あるI並びにDの非嫡出子である上告人A2及び同A3である。
 3 本件各土地につき、昭和五七年四月二七日受付同月六日相続を原因とする各
法定相続分に従った相続登記(被上告人B1の持分四八分の二四、同B2及びGの
持分各四八分の六、Iの持分四八分の二、上告人A1の持分四八分の四、上告人A
2及び同A3の持分各四八分の三)がされた。
 4 被上告人らは、Dの前記遺贈の内容を知り、昭和五八年、静岡地方裁判所富
士支部において、Eに対し、右遺贈についての遺留分減殺請求訴訟を提起した。被
上告人らは、右訴訟において、Dの遺産は本件各土地(価格五七四〇万円)及び静
岡県富士宮市所在の畑(価格約二八九万円)であり、右遺産のほかDがEに対して
生前に贈与した土地が遺留分算定の基礎となる財産であるなどとした上、右遺贈に
ついて遺留分減殺をした結果、被上告人B1は本件一土地について三三二一分の一
二一一、本件二土地について二四一九分の八八四、被上告人B2は本件一土地につ
いて三三二一分の三〇二、本件二土地について二四一九分の二二〇の各持分権を有
すると主張した。
 しかし、被上告人らとEとは、昭和五九年五月一六日、被上告人らが、Eから、
遺留分減殺を原因として本件各土地を被上告人B1において持分五分の四、同B2
において持分五分の一の各割合で取得し、他方、Eに対し、遺産である前記畑の被
上告人らの各法定相続分を無償譲渡するとともに、和解金五〇〇万円を支払う旨の
訴訟上の和解をした。
 二 被上告人らは、平成八年九月、上告人らに対し、本件各土地につき本件相続
登記を同一相続を原因とする被上告人B1の持分を五分の四、同B2の持分を五分
の一とする所有権移転登記に更正登記手続をするよう求める本件訴訟を提起した。
 上告人らは、本件訴訟において、被上告人らは、遺留分の範囲を超え、上告人ら
の遺留分を侵害し上告人らに損害を与えることを知って本件各土地を取得したもの
であるから、被上告人らに対し遺留分減殺請求権を行使するなどと主張して争って
いる。
 三 原審は、右の事実関係の下において、次のとおり判断して、被上告人らの本
件請求を認容すべきものとした。
 1 被上告人らのEに対する遺留分減殺請求訴訟における主張を前提とすれば、
被上告人らは、本件各土地がほとんど唯一の遺産であり、被上告人らがこれを取得
することにより他の共同相続人の遺留分を侵害することになると認識し得たと言え
なくはないが、そうであっても、相続開始後一〇年以上経過しているから、上告人
らは遺留分減殺請求権を行使し得ない。
 2 被上告人らは、Eに対する遺贈の登記がされる前に遺留分減殺をし、遺留分
をなすものとして、本件各土地につき、被上告人B1において持分五分の四、同B
2において持分五分の一を取得したものである。そして、遺留分減殺により取得す
る持分については、相続登記がされていなければ、被相続人から直接相続を原因と
して移転登記を受けることとなるので(昭和三〇年五月二三日民事甲第九七三号法
務省民事局長通達参照)、被上告人らは、本件相続登記を被上告人B1の持分五分
の四、同B2の持分五分の一の所有権移転登記に更正登記手続をするよう求めるこ
とができる。
 四 しかしながら、原審の前記三2の判断は是認することができない。その理由
は、次のとおりである。
 1 原審の適法に確定した前記事実等によれば、被上告人らが、遺留分減殺の名
目でEから取得した本件各土地の前記各持分は、被上告人らが前記遺留分減殺請求
訴訟において減殺請求により取得したと主張していた本件各土地に対する各持分の
割合よりも大きく、また、前記和解において、被上告人らはEに対し他の土地の法
定相続分の無償譲渡と和解金五〇〇万円の支払を約したというのであるから、被上
告人らがEから取得した本件各土地の各持分は、減殺請求によって取得したものと
は到底認め難い。したがって、被上告人らは右各持分を減殺請求によって取得した
ことを前提として前記のような更正登記手続を求めることはできないといわなけれ
ばならない。
 また、そもそも、【要旨】被上告人らがEから取得した本件各土地の各持分は、
遺留分減殺により取得すべき持分の割合に止まるものであれ、右割合を超えるもの
であれ、本件相続登記がされた後に被上告人らがEから新たに取得した持分である
から、本件相続登記の更正登記によって右各持分の取得登記を実現することはでき
ない。
 2 そうすると、本件相続登記を被上告人B1の持分を五分の四、同B2の持分
を五分の一とする所有権移転登記に更正登記手続をするよう求める被上告人らの本
件請求を認容すべきものとした原審の判断は、法令の解釈適用を誤った違法があり、
右違法は判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。したがって、原判決は上
告理由を判断するまでもなく破棄を免れず、第一審判決を取り消して、被上告人ら
の本件請求を棄却すべきである。
 よって、裁判官千種秀夫の補足意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文
のとおり判決する。
 千種裁判官の補足意見は、次のとおりである。
 私は、法廷意見に賛同するものであるが、被上告人らが本来採るべき方策を含め、
その理由について、補足して意見を述べておきたい。
 本件更正登記手続請求において被上告人らの意図するところは、本件各土地の本
件相続登記を、被上告人らが受遺者であるEから取得した本件各土地の前記各持分
の登記に是正することにあると解される。しかし、Dは、遺言において遺言執行者
としてFを指定しており、遺贈の履行をすべき任務を負うのは遺言執行者のみであ
るから、本来、Fにおいて本件相続登記の抹消をした上、Eに対する遺贈を原因と
する登記手続をすべきものである。したがって、受遺者であるEとしては、本件相
続登記が経由されている本件各土地の所有権移転登記を得るために、所有権に基づ
き本件相続登記の抹消を求めることは可能であるが、遺贈の履行としての所有権移
転登記手続は遺言執行者に対して求めるべきであったのであり、Eから前記経緯で
本件各土地について五分の四、五分の一の各持分を取得した被上告人らにおいても、
右持分権に基づき相続登記の抹消登記を求めるとともに、Eに代位して、遺言執行
者に対しその遺贈の履行を求めるというのが本則であろう。被上告人らが、遺言執
行者を何ら関与させることなく、遺贈の履行義務を有しない相続人らのみを相手と
して、直接、本件相続登記の更正登記手続を求める本件請求は、右の本則から外れ
たものといわざるを得ない。
 もっとも、遺言執行者が指定されていない場合においては、受遺者は、相続登記
を経由している相続人らに対し、直接、真正な登記名義の回復を原因とする所有権
移転登記手続を求めることができるのであり、受遺者から目的不動産を取得した第
三者においても同様である。このことからすると、遺言執行者に指定された者が就
任を承諾しながら、その任務を懈怠し、相続登記が放置されたまま長年月経過して、
その任務の履行が期待できないときでも、受遺者又は同人から目的不動産を取得し
た者が、直接、名義人である相続人を相手にすることは許されず、当該遺言執行者
又は所定の手続を経て選任された遺言執行者(民法一〇一九条、一〇一〇条)を手
続に関与させなければならないのか、この点については検討の余地がないでもない
と考える。
 いずれにしても、被上告人らの上告人らに対する本件更正登記手続請求は許され
る余地はないのであって、被上告人らがその意図するところを実現するためには、
別途適切な手段を採ることが必要であり、本件請求を棄却するのが相当と思料する。
(裁判長裁判官 千種秀夫 裁判官 元原利文 裁判官 金谷利廣 裁判官 奥田
昌道)

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