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平成31年1月29日判決言渡
平成30年(ネ)第10057号商標権侵害行為差止等請求控訴事件(原審東京
地方裁判所平成29年(ワ)第12058号)
口頭弁論終結日平成30年12月5日
判決
控訴人ジー・エス・エフ・ケー・シ
ー・ピー株式会社
被控訴人株式会社国際建機販売
被控訴人Y
上記両名訴訟代理人弁護士小林幸夫
弓削田博
河部康弘
藤沼光太
神田秀斗
平田慎二
同補佐人弁理士葦原エミ
角田智香子
吉田麻実子
関原亜希子
主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1原判決のうち損害賠償請求に係る部分を取り消す。
2被控訴人らは,控訴人に対し,連帯して2140万円及びこれに対する平
成29年6月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
1(1)本件は,原判決別紙「商標権目録」記載の商標(以下「本件商標」とい
う。)につき商標権を有する控訴人が,被控訴人らが,原判決別紙「被告標章目録
1~5」記載の標章(以下「被告標章」と総称し,各目録の標章を示すときは,同
目録の番号を付して「被告標章1」などという。)を使用しているとして,被控訴
人らに対し,商標権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求として,損害金2140
万円及びこれに対する不法行為後の日である平成29年6月7日から支払済みまで
民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。
原審は,控訴人の請求を棄却したところ,控訴人が控訴を提起した。
(2)なお,控訴人は,原審において,上記の請求の他に,①商標法36条1項
及び同2項に基づき,被告標章を付したコンクリートポンプ車等の販売及び同販売
に係る営業活動等の差止め並びにコンクリートポンプ車等の廃棄,②同条1項に基
づき,ウェブページ上の本件商標及びこれに類似する商標の削除,③同法39条で
準用する特許法106条に基づき,新聞及びウェブページにおける謝罪広告の掲載
を求め,また,上記の損害賠償請求における遅延損害金の起算日を,被控訴人Y
(以下「被控訴人Y」という。)につき平成29年4月30日,被控訴人株式会社
国際建機販売(以下「被控訴人会社」という。)につき同年5月2日としていたが,
前記(1)の請求の限度で不服を申し立てた。
2前提事実(争いのない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により認められ
る事実),争点及び争点に対する当事者の主張は,次のとおり補正するほかは,原
判決の事実及び理由欄の「第2事案の概要」2~4に記載のとおりであるから,
これを引用する。原判決中の「別紙」を「原判決別紙」と改める。
(1)原判決3頁20行目の「英語での表記」から22行目の「113」までを
次のとおり改める。
「以下「KCP社」という。なお,KCP社の英語表記が「KCPHEAVY
INDUSTRIESCO.,LTD.」であるか,「KCEPHEAVYI
NDUSTRIESCO.,LTD.」であるかについては当事者間に争いがあ
る。」
(2)原判決4頁1行目の「商標登録出願をし,」の後に「同年6月1日,商標
登録の査定を受け,」を加える。
(3)原判決4頁6行目の「別紙被告標章」から8行目の「特定する。」までを
「被告標章1」と改める。
(4)原判決6頁5行目末尾の次に行を改めて次のとおり加える。
「アKCP社の英語表記は,「KCPHEAVYINDUSTRIES
CO.,LTD.」(以下「KCP」ということがある。)であること
(ア)社団法人韓国貿易協会(以下「韓国貿易協会」という。)の会員証の
「CompanyName」欄には,「KCPHEAVYINDUSTRI
ESCO.,LTD.」と記載されている(乙93)。
なお,上記会員証におけるKCP社の英語表記が,平成30年5月29日頃に,
「KCPHEAVYINDUSTRIESCO.,LTD.」から「KCE
PHEAVYINDUSTRIESCO.,LTD.」に一時的に訂正され
たが,これは,控訴人による異議(乙129)を契機としたものである。KCP社
は,韓国貿易協会に対し,商号の英語表記を正しい表記に戻すよう連絡したため,
現在では,「KCPHEAVYINDUSTRIESCO.,LTD.」と
いう正しい表記に戻っている(乙130)。
(イ)KCP社の英語表記がKCPとなることは明らかである(乙94,95,
112,113)。
韓国地方国税庁が発行した事業者登録証明(乙112)の英語表記KCPは,K
CP社が自身で入力した英文表記を反映したものである。KCP社は,事業者登録
証明という公的書類に掲載する自らの商号の英文表記としてKCPを採用したので
あるから,KCP社の商号の英文表記はKCP以外にあり得ない。」
(5)原判決6頁6行目の「ア」を「イ」に,同頁21行目の「イ」を「ウ」に,
7頁11行目の「ウ」を「エ」に,16行目の「エ」を「オ」に,それぞれ改める。
(6)原判決7頁26行目の末尾の次に行を改めて次のとおり加える。
「ア以下のとおり,KCP社の英語表記は,「KCEPHEAVYIND
USTRIESCO.,LTD.」(以下「KCEP」ということがある。)で
ある。
(ア)登記事項全部証明書(乙3)の商号の翻訳である「株式会社ケーシーピ
ー重工業」は間違いであり,正しくは「株式会社ケーシーイーピー重工業」である
ことは明らかである(甲24,36)。
(イ)韓国貿易協会は,会員らが会費を出して営む民間団体であり,会員証は,
会員加入申請書に従って記載されるから,その会員証の記載(乙93)に証明力は
ない。
韓国貿易協会においても,KCP社の英語表記が「KCPHEAVYIND
USTRIESCO.,LTD.」から「KCEPHEAVYINDUST
RIESCO.,LTD.」に訂正された(甲63)。
また,KCP社が,韓国貿易協会に加入したのは,本件訴訟の提起後の平成27
年9月4日であり,KCP社は,英文表記の証明を得るために韓国貿易協会に加入
したのである。
(ウ)大韓貿易投資振興公社(KOTRA)は,中小企業や個人が加入できる
団体であり,同団体のホームページ(乙94)から名称などを確認することはでき
ない。また,求人求職広告サイト(乙95)の記載は利用者が提出した資料に基づ
いているから証明力はない。
韓国の税務署は事業者登録証明に書き込んでいる英文(乙112)に対して保証
しない(甲59,65)。また,SGSは,各種認証をする私的企業であり,SG
Sが発行した証明書(乙113)の記載も,申請者の申請のとおりに記載したもの
である。
(エ)韓国では,法人定款に英文表記は可能であるが,商業登記をする際,国
語基本法の公文書のハングル表記の原則を遵守していない場合には英文表記は登録
できない。KCP社をハングル表記の原則に従って表記すると,KCEPとなるか
ら,KCP社は意図的に英文登録をしていないのである。」
(7)原判決8頁1行目冒頭に「イ」を,同頁8行目冒頭に「ウ」をそれぞれ加
える。
(8)原判決8頁7行目末尾の次に行を改めて次のとおり加える。
「さらに,平成28年以降は,KCP社の売上げはほとんどなくなった。」
(9)原判決10頁23行目「下らない。」から11頁3行目末尾までを次のと
おり改める。
「下らないから,控訴人の受けた損害の額は1500万円となる(商標法38条
2項)。
また,控訴人は,被控訴人らによる商標権侵害行為により精神的苦痛を被ったが,
そのうち平成27年7月から平成30年2月までの間に受けた精神的苦痛を慰謝す
るに足る額は640万円である。
したがって,被控訴人らによる商標権侵害によって控訴人が受けた損害額は21
40万円である。」
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,控訴人の被控訴人らに対する損害賠償請求は,いずれも理由が
ないから棄却すべきものと判断する。その理由は,次のとおり補正するほかは,原
判決の事実及び理由欄の「第3当裁判所の判断」の2に記載のとおりであるから,
これを引用する。控訴人代表者尋問は,原審において行われたものである。
(1)原判決12頁26行目の「販売している」を「販売し,また,同社製品の
型番の一部として使用している」に改める。
(2)原判決14頁10行目の「ヴォンジン産業」を「ウォンジン産業」に改め,
12行目の「原告代表者」から14行目末尾までを次のとおり改める。
「同面会において,控訴人代表者,A及びKCP社の理事は,日本における販売
代理店契約締結についての話合いをしたが,合意に至らず,当面の間,控訴人代表
者(GSFInc.)が,ウォンジン産業を通して,KCP社からKCP社の製
品を購入し,これを日本国内において販売していくことになった(乙65,66,
69,73,控訴人代表者)。」
(3)原判決16頁21行目の末尾の次に「控訴人代表者は,本件商標出願のと
きに,KCP社がKCP社商標を使用していることを認識していた。」を加える。
(4)原判決16頁23行目の末尾の次に行を改めて次のとおり加える。
「(ウ)なお,本件商標については,商標登録無効審判請求(無効2017-89
0019号)がされ,特許庁は,平成30年10月29日,本件商標登録を無効と
する旨の審決をした(乙128)。」
(5)原判決17頁6行目から7行目にかけての「ヴォンジン産業」を「ウォ
ンジン産業」に改める。
(6)原判決19頁9行目の「2月18日)」の次に「及び査定日(同年6月1
日)」を加え,17行目末尾の次に行を改めて次のとおり加える。
「また,控訴人は,KCP社の売上げは,平成28年以降はほとんどない旨主
張するが,乙18によると,平成28年の売上げは平成25年及び平成26年より
も高いことが認められる上に,そもそも,商標法4条1項19号の周知性の判断の
基準時は,登録出願時及び査定時であるところ(商標法4条3項),本件商標の出
願及び査定は,いずれも平成27年にされている以上,KCP社商標の周知性の判
断は,平成28年における売上高に左右されない。
(ウ)さらに,控訴人は,KCP社の英語表記は,「KCEPHEAVYIN
DUSTRIESCO.,LTD.」であると主張するので,同主張について,
以下検討する。
a前記(1)アのとおり,KCP社は,設立後,「KCEP」ではなく,「KC
P」の文字からなるKCP社商標を,同社の製品に付して販売し,また,型番の一
部にも使用していることからすると,KCP社及び同社の製品を示す表示として,
KCP社商標が使用されていることは明らかである。
また,控訴人代表者も,代表者尋問において,本件商標出願の時点で,KCP社
がKCP社商標を使用していたことを認識していた旨供述していること,KCP社
の理事に送信したメールの韓国語の文書に,KCP社を「KCP」と記載している
こと(乙90)からすると,控訴人代表者自身も,KCP社の英語表記をKCPで
あると認識しているものと認められる。
b控訴人は,KCP社の正式な英語表記は「KCEP」であると主張する。
しかし,前記のとおり,KCP社は,自社製品に「KCP」との英語の表記を
付しており,また,証拠(乙107,114)によると,KCP社は,外国企業へ
の見積もり送り状や外国企業との契約書において,自社を「KCPHEAVY
INDUSTRIESCO.,LTD.」と表記していることが認められる。
一方で,本件証拠上,KCP社が「KCEP」との英語表記を用いた事実は認
められない。なお,証拠(甲63,乙130)によると,KCP社の韓国貿易協会
の会員登録における英語表示が,「KCP」から「KCEP」に変更され,その後,
「KCP」に戻ったことが認められるが,上記の「KCEP」への変更は控訴人の
働きかけによるものであり(乙129),KCP社が関与していたとは認められな
いから,同事実によって,KCP社が,自社の英語表示として「KCEP」を使用
していたと認めることはできない。
したがって,KCP社は,同社の英語表記として「KCP」を選択して使用し
たものと認められ,このことは,KCP社の商号を韓国語から英語に訳する際の訳
語いかんによって左右されるものではない。
c以上より,KCP社及び同社の製品を示す表示として,KCP社商標が使
用されているのであり,前記(ア)の判断は左右されない。」
(7)原判決19頁18行目の「(ウ)」を「(エ)」に改める。
(8)原判決20頁1行目の「販売していたこと」を「販売し,KCP社がKC
P社商標を使用していたことを認識していたこと」に改め,1行目の「(1)イ(ウ)」
の次に「及びエ(ア)」を加える。
2結論
以上のとおり,原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから,これを棄却
することとして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官
森義之
裁判官
佐野信
裁判官
熊谷大輔

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