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裁判例


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平成16年(ワ)第7239号 損害賠償請求事件
口頭弁論終結の日 平成17年7月4日
          判         決
    原      告      グンゼ株式会社
    訴訟代理人弁護士      松本司
    同             山形康郎
    同             緒方雅子
    被      告      日本写真印刷株式会社
    訴訟代理人弁護士      岡田春夫
    同             辻淳子
    同             森博之
    同             中西淳
    同             長谷川裕
    補佐人弁理士        植木久一
    同             菅河忠志
          主         文
   原告の請求を棄却する。
   訴訟費用は原告の負担とする。
          事実及び理由
第1 請求
   被告は、原告に対し、10億円及びこれに対する平成15年12月6日から
支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
   本件は、原告が「タッチスイッチ及びタッチスイッチ付ディスプレイ」に関
する実用新案権を有していたところ、被告による製品の製造販売が前記実用新案権
の侵害にあたると主張して、損害賠償を請求した事案である。
 1 前提となる事実(証拠により認定した事実は末尾に証拠を掲げた。その余は
争いがない事実である。)
  (1)ア 原告は、下記の実用新案権(以下「本件実用新案権」といい、その明細
書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された考案を以下「本件考案」と、
その明細書を以下「本件明細書」という。)の実用新案権者であった(甲1、
2)。
     考案の名称     タッチスイッチ及びタッチスイッチ付ディスプレ

     出願日       昭和63年12月6日
     出願番号      実願昭63-158071号
     公開日       平成2年6月19日
     公開番号      実開平2-79530号
     出願公告日     平成8年1月29日
     出願公告番号    実公平8-2896号
     登録日       平成9年7月11日
     登録番号      第2148710号
     権利移転登録日   平成12年3月22日
     権利存続期間満了日 平成15年12月6日
     実用新案登録請求の範囲の請求項1は、別紙実用新案公報(甲2)の該
当欄記載のとおり
   イ 本件考案の構成要件は、次のとおり分説される。
    A 2枚の透明電極付基板を電極面が相対向するように5~200μm程
度の間隔を置いて設置したタッチスイッチにおいて、
    B 少なくとも一方の透明電極付基板の電極側の表面に、
    C① その高さが基板間隔よりも小さく、
     ② 基板の凹凸の平均粗さ(Rz)が0.5~50μmとされている微
細な凹凸を形成してなる
    D ことを特徴とするタッチスイッチ
  (2) 被告は、遅くとも平成12年8月1日から、パーム社製モバイル端末「P
alm m100」用タッチスイッチを、遅くとも平成14年3月1日から、同社
製モバイル端末「Palm m130」用タッチスイッチ(これらを合わせて以下
「被告物件」という。)を、それぞれ製造、販売している。
    被告物件は、いずれも、少なくとも、本件考案の構成要件A、B、C①及
びDをいずれも充足する。
 2 争点
  (1) 被告物件は、本件考案の構成要件C②を充足するか
   〔原告の主張〕
   ア 本件考案における平均粗さ(Rz)は、その実用新案登録出願当時の規
格であった1982年制定の「JIS B 0601」の規格(以下「1982年
JIS規格」という。甲7)にいう十点平均粗さ(Rz)を意味するところ、上記
規格では、「十点平均粗さは、まず基準長さを指定した上で求める。表面粗さの表
示や指示を行う場合、その都度これを指定するのが不便であるので、特に指定する
必要がない限り、この表〔判決注・同規格の表5〕の値を用いる。」とし、十点平
均粗さの範囲が0.8μm以下の場合は基準長さとして0.25mmを、十点平均
粗さの範囲が0.8μmを超え6.3μm以下の場合は基準長さとして0.8mm
を用いるとしている。
     この意味は、まず基準長さを決定するため、本測定の前に、通常、5な
いし10mm程度の基準長さで、あるいは、2.5ないし7.5mm程度の基準長
さで、対象物の十点平均粗さの値を予備測定し、その値から、本測定において用い
る基準長さを決定するという手順をとるべきことを意味するものである。
     また、上記規格の表5の標準値の長さでは断面曲線に5個ずつの山頂と
谷底が存在せず、10点の測定ができない場合には、標準値より長い基準長さにし
て測定すべきであり、このことは、「JMAS5021-1996 JIS B 
0601(表面粗さ-定義及び表示)改正に伴う表面粗さパラメータの求め方」の
規格(以下「1996年JMAS規格」という。甲10)においても明確にされて
いる。
     被告は、断面曲線に5個ずつの山頂と谷底が存在しない場合には、存在
する山頂と谷底の値をそれぞれ合計し、いずれも5で割って計算すべきであると主
張するが、それでは、10点を測定して平均を求める「十点平均粗さ(Rz)」に
はならない。
     また、被告は、基準長さを0.25mmに固定すべきであるとも主張す
るが、基準長さ0.25mmは、十点平均粗さの範囲が0.8μm以下の場合の基
準長さであり、本件考案においては、基板の凹凸の平均粗さの範囲は0.5~50
μmとされているのであるから、被告の主張は相当でない。被告物件が本件実用新
案の技術的範囲に属するか否かの判断のために問題とすべきは、被告物件の十点平
均粗さが0.5μm未満であるか否かではなく、被告物件の十点平均粗さの値その
ものであり、これを測定した上で、これが0.5ないし50μmの範囲内であるか
否かを検討すべきものである。
   イ 被告物件の基板8個を試料とした鑑定嘱託の結果によれば、本測定に先
立つ予備測定は行われていないが、これに相当するものとして、基準長さ2.5m
m及び8mmを用いた十点平均粗さの値を見ると、いずれの試料についても、基準
長さ2.5mmの場合には0.968μmないし1.607μm、基準長さ8mm
の場合には1.508μmないし2.040μmの間にあったのであるから、本測
定における基準長さとしては0.8mmを用いるべきである。
     なお、鑑定嘱託の結果において、基準長さを0.25mmとして測定し
た結果を見るに、8個の試料につきそれぞれ5点、合計40点測定したうち、断面
曲線に5個ずつの山頂と谷底が存在するものは4点にすぎず、その余の点について
は存在する山頂と谷底の値をそれぞれ合計し、いずれも5で割って計算したもので
あるから、そのような計算結果は「十点平均粗さ」とはいえないのであって、結
局、基準長さを0.25mmとして測定することは相当ではない。
     そして、鑑定嘱託の結果によれば、基準長さ0.8mmを用いた測定の
結果、十点平均粗さの平均値は、いずれの試料についても、0.663μmないし
1.039μmの間にあったのであるから、被告物件の基板の凹凸の平均粗さは、
0.5~50μmの範囲にあることは明らかである。
     よって、被告物件は、本件考案の構成要件C②を充足するものである。
   〔被告の主張〕
   ア 本件考案における平均粗さ(Rz)は、その実用新案登録出願当時の規
格であった1982年JIS規格(乙1)により測定されるべきところ、同規格で
は、十点平均粗さを求めるときの基準長さの標準値は、特に指定する必要がない限
り、同規格の表5の区分によるとされ、十点平均粗さの範囲が0.8μm以下の場
合は基準長さとして0.25mmを用いるとされている。そして、本件明細書にお
いては、基板の凹凸の平均粗さを測定する際の基準長さについて、何らの指定もさ
れていないから、上記標準値を用いるべきであり、本件考案においては、十点平均
粗さが0.5μm以上であるか否かが問題となるのであるから、十点平均粗さの範
囲が0.8μm以下のときの標準値である0.25mmを基準長さとして用いるべ
きである。
     原告は、基準長さを決定するため、本測定の前に、予備測定し、その値
から、本測定において用いる基準長さを決定するという手順をとるべきと主張する
が、そのような手順は上記規格のどこにも記載されておらず、何の根拠も合理性も
ない。
     また、上記規格では、断面曲線に5個ずつの山頂と谷底が存在しない場
合の測定方法については記載されていない。ここで、本件考案の本質が、光の干渉
縞を極めて狭い間隔で多数発生させることにより、人間の目で見た場合、判別でき
なくし、干渉縞が発生していないことと同じことにする点にあり、本件考案におい
て、平均粗さは、極めて狭い間隔で干渉縞を多数発生させるか否かを決するパラメ
ータであることに照らせば、原告が主張するように標準値より長い基準長さによっ
て測定したり、あるいは、山頂及び谷底の高さの和をそれぞれ5で割るのではな
く、基準長さの内に存在する山頂及び谷底の数に応じて割ることは、いずれも本件
考案の本質に反する結果を招くものであり、とるべき方法ではない。これに対し、
山頂及び谷底の数にかかわらず、山頂及び谷底の高さの和をそれぞれ5で割る方法
は、断面曲線に存在する山頂及び谷底以外に、その数が5個に達するまで高さ0の
山頂及び谷底が存在すると考えるものであり、山頂や谷底の数が少ない方が粗さが
小さくなるという、表面の粗さについての一般常識にも合致するものであり、上記
規格の作成に大きく関与した上記規格の表面粗さ専門委員会の構成委員でもあった
株式会社小坂研究所の測定器においても、そのような測定方法をとっているもので
あるから、断面曲線に5個ずつの山頂と谷底が存在しない場合には、その数にかか
わらず、山頂及び谷底の高さの和をそれぞれ5で割る方法により十点表面粗さを求
めるべきである。
     原告は、1996年JMAS規格(甲10)を援用するが、これは19
94年制定の「JIS B 0601」の規格(以下「1994年JIS規格」と
いう。)について述べるものであって、本件考案においてよるべき1982年JI
S規格について述べるものではない。
     仮に、原告が主張するように、基準長さとして1982年JIS規格の
表5の標準値を用いなくてもよいとするならば、基準長さによって得られる十点平
均粗さも大きく変動するものであるから、本件考案は実施不可能なものとなる。
     なお、仮に、十点平均粗さの測定方法について、被告が主張する以外の
解釈があり得たとしても、被告が上記のとおり主張する測定方法は、合理的なもの
であるから、当該合理的な方法によって測定した結果、本件考案の構成要件を充足
しないときには、その物は本件実用新案権を侵害するものではないと解すべきであ
る。
   イ 被告物件の基板8個を試料とした鑑定嘱託の結果によれば、基準長さ
0.25mmを用いた測定の結果、十点平均粗さの平均値は、いずれの試料につい
ても、0.231μmないし0.421μmの間にあったのであるから、被告物件
の基板の凹凸の平均粗さは、0.5~50μmの範囲にないことは明らかである。
     よって、被告物件は、本件考案の構成要件C②を充足しないものであ
る。
  (2) 本件実用新案登録は、登録無効審判により無効とされるべきものか
   〔被告の主張〕
   ア 本件考案の構成要件C②は、基板の凹凸の平均粗さ(Rz)を0.5μ
m以上とするものであるが、この、平均粗さの下限値を0.5μmとする数値限定
には、技術的意義が全くなく、その結果、臨界的意義もないから、当業者におい
て、本件明細書の記載に基づいて本件考案を実施することができないものであっ
て、本件実用新案登録には登録無効理由が存在する。
     すなわち、本件明細書の記載と本件実用新案登録出願過程における出願
人の主張に照らせば、本件考案の技術的意義は、極めて狭い間隔で干渉縞を多数発
生させることにより、人間の目で干渉縞を見えなくすることにあるものというべき
である。
     しかるに、本件明細書においては、基板の凹凸の十点平均粗さが数μm
の場合のみが言及されており、0.5μmのような極めて小さい場合については、
何ら具体的な言及も示唆もされていない。
     そこで、基板の凹凸の十点平均粗さが0.5μmの場合について検討す
ると、100μmの幅の中心に0.5μmの凸部が存在しているときを想定し、光
の波長を500nmとすると、凸部の両側にせいぜい各々2本の干渉縞が発生する
にすぎず、狭い間隔で多数の干渉縞を生じさせることはできない。
     したがって、基板の凹凸の十点平均粗さが0.5μmの場合において
は、本件考案の技術的意義である、極めて狭い間隔で多数の干渉縞を発生させ、こ
れによって干渉縞を見えなくするという作用効果を奏することはできないのであっ
て、この下限値には技術的意義も臨界的意義もなく、当業者において、本件明細書
の記載に基づいて本件考案を実施することはできない。
   イ 十点平均粗さは、基準長さにより影響を受け、これが長くなれば、十点
平均粗さの値も大きくなるという関係にある。
     もし、原告が主張するように、基準長さについて、必ずしも1982年
JIS規格の表5の標準値を用いないとするならば、十点平均粗さの測定方法の定
め方も曖昧となり、当業者において、本件明細書の記載に基づいて本件考案を実施
することができないこととなる。
     したがって、原告の上記主張を前提とすれば、本件実用新案登録には、
登録無効理由が存在することとなる。
   〔原告の主張〕
   ア 本件考案は、干渉縞を多数発生させ、これによって干渉縞を見えなくす
ることを目的としている。すなわち、波長λの半分の距離で暗い干渉縞が発生する
から、可視光線の長波長側の光(760~830nm)に、明るい干渉縞とともに
暗い干渉縞も発生させようとすると、その波長の半分である380~415nmの
距離(凹凸の高低差)以上が必要となる。本件考案において、基板の凹凸の平均粗
さの最低値を0.5μm(=500nm)としたのは、この理由による。
     確かに、被告が主張するように、波長500nmの光では、0.5μm
の凹凸1個の両側に2本ずつの干渉縞しか発生しない。
     しかしながら、十点平均粗さは、断面曲線から基準長さだけ抜き取った
部分において、凹凸が少なくとも5個存在することが前提となっているものであ
る。
     したがって、波長500nmの光においては、0.5μmの凹凸5個の
両側に、少なくとも合計10本の干渉縞が発生することになるのであるから、本件
考案の作用効果を奏しないという、上記〔被告の主張〕アの主張は理由がない。
   イ 十点平均粗さが基準長さにより変動するものであり、上記(1)〔原告の主
張〕アのとおり基準長さを長くして測定する場合があるとしても、10点の山谷が
存在することを前提とする限定された方法で決定されるのであるから、上記〔被告
の主張〕イの主張は理由がない。
  (3) 損害額
   〔原告の主張〕
    被告は、遅くとも平成12年8月1日から(ただし、「Palm m13
0」用タッチスイッチについては遅くとも平成14年3月1日から)平成15年1
2月6日まで、被告物件を、少なくとも500万台製造し、これを単価800円で
販売している。
    被告物件の利益率は、低くとも、販売額の25パーセントである。
    したがって、被告は、被告物件の製造販売により、少なくとも10億円の
利益を得た。
    これが、原告が被った損害の額である。
   〔被告の主張〕
    否認ないし争う。
第3 当裁判所の判断
 1 争点(1)(構成要件C②充足性)について
  (1) 本件考案における基板の凹凸の平均粗さの一般的測定方法について
   ア 本件考案における基板の凹凸の平均粗さ(Rz)については、本件明細
書(甲2)の「考案の詳細な説明」の項の「問題を解決するための手段」の項に、
「より具体的には、JIS B 0601に基づく凹凸の平均粗さ(Rz)を、
0.5~50μmとする。」との記載が存在する(4欄15行ないし17行)こと
から、本件考案の実用新案登録出願(昭和63年12月6日)当時の「JIS B
 0601」の規格によって測定すべきものであるところ、これが1982年JI
S規格(甲7、乙1)であることは当事者間に争いがない。
   イ そこで、1982年JIS規格(甲7、乙1)を見るに、そこには、次
のとおりの記載が存在する。
    ① 3.5.1 十点平均粗さの求め方
      十点平均粗さは、断面曲線から基準長さだけ抜き取った部分におい
て、平均線に平行、かつ、断面曲線を横切らない直線から縦倍率の方向に測定した
最高から5番目までの山頂の標高の平均値と最深から5番目までの谷底の標高の平
均値との差の値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。〔以下略〕
    ② 3.5.3 基準長さの標準値
      基準長さの標準値は、特に指定する必要がない限り、表5の区分によ
る。
      表5 十点平均粗さを求めるときの基準長さの標準値
           十点平均粗さの範囲       基準長さ
          を超え      以下       mm
                 0.8μmRz   0.25
        0.8μmRz  6.3μmRz   0.8
        6.3μmRz   25μmRz   2.5
         25μmRz  100μmRz   8
        100μmRz  400μmRz   25
      備考 十点平均粗さは、まず基準長さを指定した上で求める。表面粗
さの表示や指示を行う場合、その都度これを指定するのは不便であるので、特に指
定する必要がない限り、この表の値を用いる。
    ③ 3.6.1 十点平均粗さの呼び方
      十点平均粗さの呼び方は、次による。
         十点平均粗さ_μm 基準長さ_mm
       又は
         _μmRz L_mm
    ④ 3.6.2 十点平均粗さの標準数列
      十点平均粗さによって表面粗さを指定するときは、特に必要がない限
り、表6の標準数列を用いる。
      表6 0.05  0.8   12.5  200
         0.1   1.6   25    400
         0.2   3.2   50
         0.4   6.3  100
    ⑤ 3.6.4 十点平均粗さの区間表示
      十点平均粗さをある区間で指示する必要があるときは、その区間の上
限(表示値の大きい方)及び下限(表示値の小さい方)に相当する数値を表6から
選んで併記する。
      例1:上限と下限の基準長さの標準値(表5)が等しい場合
         上限6.3μmRz、下限1.6μmRzのときの区間表示は
(6.3~1.6)Zと表示する。この場合の基準長さは、0.8mmを用いる。
      例2:上限と下限の基準長さの標準値(表5)が異なる場合
         上限25μmRz、下限6.3μmRzのときの区間表示は
(25~6.3)Zと表示する。この場合は、基準長さ2.5mmで測定した十点
平均粗さが25μmRz以下であり、基準長さ0.8mmで測定した十点平均粗さ
の値が6.3μmRz以上であることを意味する。
      備考1.上限及び下限に対応する基準長さを同一にする必要がある場
合又は表5の標準値以外の基準長さを用いる場合には、基準長さを併記する。例
2:において、上限及び下限に対応する基準長さを2.5mmとするときは、(2
5~6.3)Z,L2.5mmと表示する。
      備考2.ここで言う上限及び下限の十点平均粗さは、指定された表面
からランダムに抜き取った数箇所のRzの算術平均値であって、個々の最大値では
ない。
   ウ また、1982年JIS規格の解説(甲7、乙1)を見るに、そこに
は、次のとおりの記載が存在する。
    ⑥ 4.1 表面粗さ
      …表面粗さを指定し、又は測定する場合”カットオフ値”(又は基準
長さ)が最も重要な要素となるが、カットオフ値(基準長さ)は、測定の目的によ
って異なるべきであるという考え方をとっている。…一般にカットオフ値(基準長
さ)が長いと、表面粗さの値は大きく出る。
      この規格を適用した表面粗さを求める場合、カットオフ値又は基準長
さはあらかじめ関係者によって決定されるべきであるが、今までの多くの経験か
ら、ある程度の大きさが決まっていることと、計測器を製作する立場からは数種類
に限定されていることが望ましいことなどから、規格としてはISOやその他の外
国との規格とも合うような数種類に限定した。
    ⑦ 5.3 基準長さ
      一定のピッチで山形が並んでいるような規則的な表面では、基準長さ
の採り方に注意しなくても粗さの値はほぼ一定に定まるが、研削やラップ仕上げの
ような不規則な山形の並んだ表面や、大きなピッチのうねりのある表面では基準長
さを大きくすれば、得られた表面粗さの値が大きくなることが知られており、これ
が生産現場での粗さの測定の大きな問題点であった。〔中略〕
      この規格で、断面曲線から粗さを求めるには、まず、基準長さが定め
られるべきであるとしていることは前述のとおりである。…基準長さの選定は、表
面粗さの測定を始める前に、測定を企画する側から指定されるべきである。しか
し、今までのところ、各種加工面に対し、どのような基準長さを取ればよいのかと
いうことについては定説もないので、ここでは基準長さの種類だけを規定してある
…。〔後略〕
   エ さらに、本件明細書(甲2)を見るに、本件明細書には、実用新案登録
請求の範囲の項においても、考案の詳細な説明の項においても、上記アで掲げた以
上に、基板の凹凸の平均粗さの求め方についての記載は存在しない。
   オ 上記イないしエのとおりの本件明細書の記載及び1982年JIS規格
とその解説の記載に照らせば、本件明細書において、基板の凹凸の平均粗さを十点
平均粗さとして測定する際の基準長さにつき、何らの指定もされていない以上、そ
の測定に際しては上記規格に定められた標準手法と標準値を用いるべきものと解す
るのが相当である。
     したがって、本件考案の構成要件C②において、基板の凹凸の平均粗さ
を、「0.5~50μm」と範囲によって指定していることの意味は、1982年
JIS規格における上記イ②、⑤の記載に照らせば、基板の凹凸について、上限5
0μmRz、下限0.5μmRzとして十点平均粗さの区間が指示されているも
の、すなわち、上記イ⑤の「例2」に倣っていえば、基準長さ8mmで測定した十
点平均粗さが50μm以下であり、基準長さ0.25mmで測定した十点平均粗さ
が0.5μm以上であることを意味するものと解すべきである(ただし、断面曲線
に山頂と谷底がそれぞれ5個以上存在しないときの測定方法については、別途後
記(2)で検討する。)。
   カ 原告の主張について
    (ア) この点につき、原告は、上記イ②の記載の意味は、まず基準長さを
決定するために、通常5ないし10mm、あるいは2.5ないし7.5mm程度の
基準長さで予備測定を行い、その値から、本測定において用いる基準長さを決定す
るという手順をとるべきことを意味すると主張する。
      しかしながら、1982年JIS規格(甲7、乙1)には、その解説
部分を含め、原告が主張する上記手順については何らの記載も示唆も存在しない。
      また、上記ウ⑥、⑦の記載によれば、本件考案の実用新案登録出願当
時、十点平均粗さ自体、基準長さを変更すれば測定値が変動する性格のものである
ことが当業者に知られていたものと認められる。すなわち、上記ウ⑦の「不規則な
山形の並んだ表面・・・では基準長さを大きくすれば、得られた表面粗さの値が大
きくなる」とは、例えば、平均線が0.5μmであって、長さ0.16mmごと
に、標高値が0.95μm、0.05μm、0.6μm、0.4μm、0.6μ
m、0.4μm、0.6μm、0.4μm、0.6μm、0.4μmの山と谷が等
間隔で並んでいる面があった場合、基準長さを0.25mmにすれば、標高値0.
95μmの山と0.05μmの谷は、0.25mm中に1回ないし2回存在するか
ら、十点平均粗さは、0.34μm〔算式は、{(0.95+0.6+0.6+
0.6+0.6)-(0.05+0.4+0.4+0.4+0.4)}÷5=0.
34〕、ないし0.48μm〔算式は、{(0.95+0.95+0.6+0.6
+0.6)-(0.05+0.05+0.4+0.4+0.4)}÷5=0.4
8〕となるのに、基準長さを0.8mmにすれば、標高値0.95μmの山と0.
05μmの谷は、0.8mm中に各5回存在するから、十点平均粗さは、0.9μ
m〔算式は、{(0.95+0.95+0.95+0.95+0.95)-(0.
05+0.05+0.05+0.05+0.05)}÷5=0.9〕となってしま
うことを指しているものと解される。また、上記ウ⑦の「大きなピッチのうねりの
ある表面では基準長さを大きくすれば、得られた表面粗さの値が大きくなる」とい
うのは、大きなピッチのうねりがある場合には、基準長さを長く取ればうねりの成
分も含めた最高値と最低値が算出されるため値が大きくなることを指すものと解さ
れる。このように、十点平均粗さ自体、基準長さを変更すれば測定値が変動する性
格のものであることが知られていたのであるから、最初に特定の基準長さにおける
測定値を基に「正しい」基準長さを決定することが技術常識であったとは認められ
ない(そのようにすると、上記の例では、予備測定の基準長さを0.25mmとす
れば、本測定の基準長さも0.25mmとなり、予備測定の基準長さを0.8mm
とすれば、本測定の基準長さも0.8mmとなってしまい、不合理である。)。の
みならず、その最初の「特定の基準長さ」として「5ないし10mm、あるいは
2.5ないし7.5mm程度」という数値を選択する合理的理由も認められない。
    (イ) 原告は、被告物件が本件実用新案の技術的範囲に属するか否かの判
断のために問題とすべきは、被告物件の十点平均粗さの値そのものであるとも主張
する。
      しかし、本件考案の実用新案登録出願当時、十点平均粗さ自体が、基
準長さを変更すれば測定値が変動する性格のものであることが当業者に知られてい
たことは、前示のとおりである。そうである以上、当業者は、基準長さの取り方に
よって、十点平均粗さが、0.5μm未満となったり、0.5μm以上となったり
することもあり得ると認識していたものと解されるから、本件考案の構成要件C②
について、特定の基準長さの指定を伴わない「十点平均粗さの値そのもの」が存在
し、それを問題とするべきであると認識したとは認められない。原告の主張は、採
用することができない。
    (ウ) 本件考案の構成要件C②は、基板の十点平均粗さが、そこで指定さ
れた区間内(上限50μmRz、下限0.5μmRzの区間内)にあることを要件
とするものであり、そのような区間による指定の意味については、上記規格におい
て、上記イ⑤のとおり規定されており、それによれば、その上限(50μm)の基
準長さの標準値で測定した十点平均粗さが上限値以下であり、下限(0.5μm)
の基準長さの標準値で測定した十点平均粗さが下限値以上であることを意味すると
解されるところ、原告の上記主張は、これとも抵触するものであるから相当ではな
い。
    (エ) なお、原告従業員であるP1の陳述書(甲9、14、15)には、上
記原告の主張に沿う記述が存在するが、これには何らの客観的裏付けもない上、そ
の内容は、十点平均粗さが区間によって指定された場合の測定方法ではなく、漠然
と、あるものの表面粗さを十点平均粗さで測定する場合の基準長さの定め方と解さ
れるものであるから、これを前提としても、本件考案の構成要件C②の充足性判断
のために原告主張の手順を用いるべき根拠となるものではない。
    (オ) そして、他に、原告の主張する上記手順をとるべき根拠となる事情
も証拠も存在しないから、原告の上記主張は採用することができない。
  (2) 基板の断面曲線に山頂と谷底がそれぞれ5個以上存在しない場合の基板の
凹凸の平均粗さの測定方法について
   ア 上記(1)イ①のとおり、1982年JIS規格(甲7、乙1)において、
十点平均粗さとは、断面曲線の最高から5番目までの山頂の標高の平均値と最深か
ら5番目までの谷底の標高の平均値との差の値として定義されているところ、この
山頂及び谷底がそれぞれ5個以上存在しない場合の測定の方法については、その解
説部分を含めて、何らの記載もない。
     このような場合、原告は、標準値より長い基準長さにして測定すべきで
あると主張し、被告は、山頂又は谷底の数が5個に満たない場合には、5個に満た
ない数の分だけ標高0の山頂又は谷底が存在するものと考えて、存在する山頂及び
谷底の標高の和をそれぞれ5で割る計算方法により測定すべきであると主張する。
   イ そこで検討するに、仮に、このような場合について、とるべき測定方法
が本件明細書に記載されていれば、第1義的にはそれに従うべきと解されるが、上
記(1)エのとおり、本件明細書には何らの記載もない。
     また、本件実用新案登録出願当時の当業者の技術常識として、このよう
な場合の測定方法が確立されていたならば、これに従うべきと解されるが、本件に
おいて、これを認めるに足りる証拠はない。
     すなわち、原告従業員であるP1の陳述書(甲11)には、このような場
合には標準値より長い基準長さにして測定していた旨の記載があるが、仮に、原告
において(あるいは同人において)そのような方法をとっていたとしても、直ちに
これが当業者一般の技術常識であったとまでは認めがたい。なお、1996年JM
AS規格(甲10)の解説には、「Rzの主旨は少なくとも5個以上ある山頂、谷
底のうち大きい方からそれぞれ5個の山頂の高さ、谷底の深さを求め、その高さの
差を求めることにある。したがって、基準長さの標準値の長さでは、5個の山頂、
谷底が存在しない場合、より長い標準長さに変更して測定することが望ましい。」
との記載があるが、これは1994年JIS規格について、1996年に定められ
た規格であるから、昭和63年の本件実用新案登録出願当時の当業者の技術常識を
示すものとはいえない。
     他方、1982年JIS規格(甲7、乙1)によれば、同規格の制定に
は、株式会社小坂研究所の従業員が機械要素部会表面粗さ専門委員会の構成員とし
て関与していることが認められるところ、同社が製作した表面粗さ測定器「サーフ
コーダSE-3500」においては、山頂及び谷底の数にかかわらず、それぞれの
標高の和を5で割る計算方法がとられていることは、当事者間に争いがない。しか
し、同社が上記計算方法を採用した理由がいかなるものであったかは明らかでな
く、直ちにこれが当業者一般の技術常識であったと直ちに認めることもできない。
     かえって、上記1996年JMAS規格(甲10)の解説の「【補記】
-規格作成経緯-」には、「この規格書を作成した趣旨は、 1)このJISに従
い、各パラメータの値を実際に測定して求める上では、各メーカ間の測定器のパラ
メータの求め方の違いにより、表示値に差が生じる可能性がある 2)従って、J
IS改正の機会にこの種の表示値の差の発生を防ぐ為、測定器を製造する上での求
め方の細部構造を取り決める必要がある 〔3)略〕と判断したことによる。」と
の記載が存在するところ、この記載に照らせば、「JIS B 0601」の規格
による表面粗さの測定方法については、従前細かい部分で確立した技術常識が存在
せず、このような場合の測定方法を統一するために1996年JMAS規格が作成
されたものと認められる。そして、上記のとおり、1996年JMAS規格の解説
に山頂及び谷底が各5個以上存在しない場合の十点平均粗さの測定方法が記載され
ていることに鑑みれば、そのような場合の測定方法について、この規格の制定前に
は、確立した技術常識が存在しなかったものと推認するのが相当である。
   ウ ところで、登録実用新案において、その明細書の記載は、当業者がこれ
に基づいて考案を実施することができる程度に明確かつ十分なものである必要があ
る。
     しかるに、上述のとおり、本件考案については、その構成要件C②は、
「基板の凹凸の平均粗さ(Rz)が0.5~50μmとされている微細な凹凸を形
成してなる」ものと規定しているところ、これについて、本件明細書には、「JI
S B 0601に基づく凹凸の平均粗さ(Rz)を、0.5~50μmとす
る。」との記載しか存在せず、本件実用新案登録出願当時の1982年JIS規格
によれば、この意味は、基板の凹凸について、基準長さ0.25mmで測定した十
点平均粗さが0.5μm以上であり、基準長さ8mmで測定した十点平均粗さが5
0μm以下であることを意味するものであると解されるものの、上記基準長さによ
り十点平均粗さの測定を試みた際に基板の断面曲線に山頂と谷底がそれぞれ5個以
上存在しないときの測定方法については、本件明細書や、1982年JIS規格と
その解説のいずれにも記載がなく、当業者の技術常識としても存在しなかったと認
められるところである。
     したがって、本件明細書に接した当業者において本件考案を実施するこ
とができるというためには、上記基準長さを用いて基板の凹凸の十点平均粗さの測
定を試みた際に、その断面曲線に山頂と谷底がそれぞれ5個以上存在しない測定点
は、これを考慮せず、もし、基板上に、断面曲線に山頂と谷底がそれぞれ5個以上
存在する測定点が存在しない場合は、そのような基板を用いた対象物件は本件考案
の構成要件C②を充足しないものと解するべきである。
     なぜならば、このように解さなければ、断面曲線に山頂と谷底がそれぞ
れ5個以上存在する測定点が存在しないような基板を用いた対象物が本件考案の技
術的範囲に属するか否かについて、当業者においては、本件明細書の記載と技術常
識から明確な判断をすることができず、したがって、当業者において、本件明細書
の記載と技術常識から本件考案を実施することができなくなるからであり、別の言
い方をすれば、当業者において、本件明細書の記載と技術常識に基づいて、本件実
用新案権を侵害することを回避することすらできなくなるからである。
   エ この点につき、原告は、標準値で十点平均粗さを測定しようとしたとき
に、断面曲線に山頂と谷底がそれぞれ5個以上存在しないときは、標準値よりも長
い基準長さによって測定すべきであると主張する。
     しかし、そのような方法が、本件明細書や、1982年JIS規格とそ
の解説のいずれにも記載されておらず、当業者の技術常識でもなかったことは、既
に述べたとおりであるから、原告の上記主張を採用するべき根拠はない。
     しかも、本件明細書(甲2)において、「考案の詳細な説明」の「問題
を解決するための手段」欄に、「本考案では、タッチスイッチの一対の透明電極付
基板の、少なくとも一方の透明電極付基板の電極側の表面に、その高さが基板間隙
よりも小さい微細な凹凸を形成しているので、基板間隙が微細な状態では大きく変
動していることになり、光の干渉縞はほとんど発生しない。」(3欄29行ないし
33行)と、また、「作用」欄に、「本考案のタッチスイッチでは、その一対の透
明電極付基板の、少なくとも一方の透明電極付基板の電極側の表面に、その高さが
基板間隙よりも小さい微細な凹凸を形成しているので、基板間隙が微細な部分で見
れば、数μmのオーダーで大きく変動していることになる。ところで、光の干渉縞
は、光の波長の1/2で1本発生する。しかし、本考案では、前述の如く、数μm
のオーダーで凹凸があるため、1/2波長の数十倍になるため、光の干渉縞が極め
て狭い間隔で多数発生していることになり、人間の目で見た場合、判別できなく、
干渉縞が発生していないと同じことになる。」(5欄21行ないし31行)とそれ
ぞれ記載されていることに照らせば、本件考案の構成要件C②において、基板の凹
凸の平均粗さ(Rz)が0.5~50μmとされている微細な凹凸を形成している
こととした技術的意義は、人間の目で判別することができない程度の狭い間隔で光
の干渉縞を多数発生させるための凹凸を基板の表面に形成することであると解され
る。
     ここでもし、原告が主張するように、基準長さを長くして測定しても足
りるとするならば、基板の表面に広い間隔で凹凸が形成されていても、延長された
基準長さの断面曲線にそれぞれ5個以上の山頂と谷底が存在すれば、十点平均粗さ
の値が得られることとなる。しかし、そのように測定して得られた基板の凹凸の十
点平均粗さの値が構成要件C②を形式上充足するものであったとしても、基板の表
面に形成された凹凸の間隔が広くなれば、これにより、光の干渉縞の発生間隔が広
がり、その結果、本件考案における同構成要件の上記技術的意義が充足されず、本
件考案の作用効果を奏しない場合が生じてくる。とするならば、原告の上記主張に
従えば、本件考案の構成要件を文言上充足しても、特段の阻害要因が付け加えられ
た訳でもないのに、本件考案の作用効果を奏しない場合が生じ得ることとなり、そ
の結果、当業者において、本件明細書の記載から本件考案を実施できない場合が生
じ得ることとなるから、やはり原告の上記主張を採用することはできない。
   オ 他方、被告は、十点平均粗さを測定しようとしたときの断面曲線に存在
する山頂又は谷底の数が5個に満たない場合には、存在する山頂及び谷底の標高の
和をそれぞれ5で割る計算方法により測定すべきであると主張する。上記被告の主
張は、例えば、平均線を2μmとし、長さ0.25mmごとに、標高値が3.25
μmの山頂(平均線より1.25μm高い山頂)と標高値が0.75μmの谷底
(平均線より1.25μm低い谷底)が各1個だけ存在する場合でも、基準長さ
0.25mmの十点平均粗さは0.5μm〔算式は、(3.25-0.75)÷5
=0.5〕であるとの趣旨と解される。
     前記エ認定に係る本件明細書の記載と、可視光の波長は長いものでも
0.8μm強、0.9μm未満であることを考慮すると、0.5μmの高低差ごと
に、光の干渉縞は、少なくとも1本程度発生することが認められる。そうだとする
と、長さ0.25mmごとに、標高値が平均線より0.25μm高い山頂と0.2
5μm低い谷底が各5個ずつ存在する場合(基準長さ0.25mmの十点平均粗さ
が0.5μmの場合)には、光の干渉縞が0.25mm当たり10本程度発生する
のに対し、前記長さ0.25mmごとに、標高値が平均線より1.25μm高い山
頂と1.25μm低い谷底が各1個だけ存在する場合にも、光の干渉縞が0.25
mm当たり10本程度発生することになり、両者とも、光の干渉縞の発生する本数
はほぼ同数である。そうだとすると、「光の干渉縞が極めて狭い間隔で多数発生し
ていることになり、人間の目で見た場合、判別できなく」なるという本件考案の作
用効果に着目すれば、被告主張の計算方法も、一定の合理性があるように考えられ
ないこともない。
     しかし、山頂と谷底のそれぞれ5点、合計10点についての標高を測定
しないものを「十点平均粗さ」と呼ぶことができるものかは疑問である。
     また、前記株式会社小坂研究所が製作した表面粗さ測定器「サーフコー
ダSE-3500」では、被告が主張する測定方法がとられているものの、直ちに
その方法を相当なものとすることはできないし、その方法が、本件明細書や、19
82年JIS規格とその解説のいずれにも記載されておらず、当業者の技術常識で
あったとも認められないことは、前示のとおりである。
     以上のことからすれば、被告の主張も、やはり採用を躊躇せざるを得な
いところである。
  (3) 被告物件の構成要件C②充足性について
   ア 上記(1)及び(2)で述べたところを前提として、被告物件が本件考案の構
成要件C②を充足するか、検討する。
     被告物件の基板8個を試料とした鑑定嘱託の結果によれば、各資料につ
き5点ずつを測定点として、基準長さ0.25mmで十点平均粗さを測定したとこ
ろ、断面曲線に山頂及び谷底がそれぞれ5個以上存在した測定点は、資料番号1の
測定点D、資料番号3の測定点A、資料番号4の測定点A、資料番号6の測定点E
の4か所であり、それぞれの測定点での十点平均粗さは、0.465μm、0.4
04μm、0.454μm、0.243μmであったこと、それ以外の測定点で
は、断面曲線には山頂及び谷底がそれぞれ5個以上存在しなかったことが認められ
る。
     そうすると、上記(2)のとおり、被告物件の基板を基準長さ0.25mm
で十点平均粗さを測定した結果、断面曲線に山頂及び谷底がそれぞれ5個以上存在
しない測定点は考慮すべきではなく、これがいずれも存在した測定点のみを考慮す
べきところ、これに適合する測定点の十点平均粗さはいずれも0.5μm未満なの
であるから、鑑定嘱託の結果によれば、資料とした8個について、被告物件の基板
の凹凸の平均粗さの値が、本件考案の構成要件C②を充足するとは認められないこ
ととなる。
     なお、念のため、上記(2)オに記した被告が主張する十点平均粗さの測定
方法によった場合についても検討するに、鑑定嘱託の結果によれば、基準長さ0.
25mmで被告物件の基板8個の各5点の「十点平均粗さ」を被告主張の方法で測
定し、基板ごとにその平均値を求めたところ、その値はいずれも0.5μmに満た
なかったことが認められる。そして、(1)イ⑤の「備考2」の記載のとおり、「ここ
で言う上限及び下限の十点平均粗さは、指定された表面からランダムに抜き取った
数箇所のRzの算術平均値であって、個々の最大値ではない。」。したがって、作
用効果において構成要件C②の下限0.5μmRzに類似する面もあるかのように
も思われる被告主張の方法によっても、資料とした8個について、被告物件の基板
の凹凸の「十点平均粗さ」の値が、本件考案の構成要件C②を充足するとは認めら
れない。
   イ そして、他に、被告物件が、本件考案の構成要件C②を充足することを
認めるに足りる証拠はない。
     したがって、被告物件が、本件考案の構成要件C②を充足し、その技術
的範囲に属するものと認めることはできない。
 2 結論
   以上のとおりであるから、その余の点について判断するまでもなく、原告の
請求は理由がない。
   よって、主文のとおり判決する。
      大阪地方裁判所第26民事部
           裁判長裁判官     山  田  知  司
              裁判官     高  松  宏  之
              裁判官     守  山  修  生

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