弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件訴えをいずれも却下する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1大阪入国管理局関西空港支局特別審理官が原告に対して平成20年9月17
日付けでした出入国管理及び難民認定法7条1項2号に掲げる上陸のための条
件に適合していない旨の処分を取り消す。
2大阪入国管理局関西空港支局特別審理官が原告に対して平成20年9月17
日付けでした出入国管理及び難民認定法7条1項2号に掲げる上陸のための条
件に適合していない旨の処分が不適法であることを確認する。
第2事案の概要
本件は,ウガンダ共和国(以下「ウガンダ」という。)国籍を有する外国人
である原告が,関西国際空港(以下「関西空港」という。)に到着して本邦へ
の上陸の申請をしたところ,大阪入国管理局(以下「大阪入管」という。)関
西空港支局特別審理官から出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」とい
う。)7条1項2号所定の上陸のための条件に適合していないとの認定を受け
たことから,同認定処分の取消しと違法確認を求めている事案である。
1前提事実
本件において前提となる事実は,以下のとおりであり,当事者間に争いのあ
る事実は,各末尾記載の証拠及び弁論の全趣旨により認定した。
(1)原告の身分事項について
原告は,昭和▲年(▲年)▲月▲日に出生したウガンダ国籍を有する外国
人である。(乙1,2)
(2)原告の上陸拒否に至る経緯等
ア原告は,平成20年9月17日,A航空762便で関西空港に到着し,
入管法6条2項に基づき,大阪入管関西空港支局入国審査官に対し,渡航
目的を「商用」,日本滞在予定期間を「68日」と記載した外国人入国記
録を提出し,上陸の申請をした。同入国審査官は,同日,上陸審査を行い,
原告が入管法7条1項に掲げる上陸のための条件に適合しているとは認定
することができなかったことから,入管法9条5項に基づき,原告を大阪
入管関西空港支局特別審理官に引き渡した。同特別審理官は,同日,入管
法10条1項に基づき口頭審理を行い,原告が本邦において行おうとする
活動に係る申請の内容が虚偽のものでないとは認められないとして入管法
7条1項2号に掲げる上陸のための条件に適合していない旨の認定処分
(以下「本件認定処分」という。)をし,入管法10条10項に基づき,
原告に対し,上記理由を示して本件認定処分がされたことを通知するとと
もに,認定に不服があるときは同通知を受けた日から3日以内に法務大臣
に対して異議を申し出ることができる旨を通知した。(甲1,乙4)
イ原告は,平成20年9月19日,法務大臣に対し,入管法11条1項に
基づく異議の申出をしたが,法務大臣から権限の委任を受けた大阪入国管
理局長は,同月20日,上記異議の申出には理由がない旨の裁決をし,同
裁決の通知を受けた大阪入管関西空港支局主任審査官は,同日,これを原
告に通知し,入管法11条6項に基づき,原告に対し,本邦からの退去を
命ずるとともに,A航空に対してその旨を通知した。(甲2,3,乙5,
6)
ウ原告は,平成20年9月20日,関西空港からA航空317便により出
国した。
(3)訴えの提起について
原告は,平成21年3月17日,本件認定処分の取消しを求める訴えを提
起し(請求1),同年6月24日,行政事件訴訟法7条及び民訴法143条
による訴えの追加的変更として,本件認定処分が不適法であることを確認す
ることを求める訴え(請求2)を提起した。(当裁判所に顕著な事実)
2争点
(1)訴えの利益の有無
(2)本件認定処分の適法性
3争点に関する当事者の主張の概要
(1)争点(1)(訴えの利益の有無)について
(原告の主張)
ア本件認定処分の理由によっては,原告が今後の上陸申請においても同様
の理由により上陸のための条件に適合していない旨の認定を受けることに
なるから,原告には,本邦を出国した後も本件認定処分の正当性を争う利
益がある。
イ上陸申請をした外国人が上陸のための条件に適合していない旨の認定を
受けた後に本邦から出国したときは上記認定処分の取消し又は違法確認を
求める訴えの利益が失われるとすると,上記認定処分を訴訟で争うことが
ほとんど不可能となり,当該外国人の裁判を受ける権利を侵害する結果と
なる。
(被告の主張)
入管法の上陸の手続に関する諸規定に照らすと,入管法は,上陸の申請に
対して上陸のための条件に適合しているか否かの認定を受けるためには,当
該外国人の身柄が入国審査官や特別審理官の下にあり,旅券に上陸許可の証
印を受け,又は特別審理官から通知を受けることができる状態にあることを
要するものとしているというべきである。そうすると,当該外国人が本邦か
ら出国した場合には,もはや当該外国人の身柄は入国審査官や特別審理官の
下にないばかりか,その旅券に上陸許可の証印を受け,又は特別審理官から
通知を受ける余地がなくなる。そうすると,上陸の申請をした外国人が上陸
のための条件に適合していない旨の認定を受けた後に本邦から出国したとき
は,もはや当該上陸の申請に対して新たな判断を受けて上陸許可の証印を受
ける可能性はないから,上記認定処分の取消し又は違法確認を求める訴えの
利益は失われるというべきである。
そして,原告は,本件認定処分を受けた後,大阪入管関西空港支局主任審
査官から退去命令を受けて平成20年9月20日に本邦から出国しているか
ら,原告には本件認定処分の取消し又は違法確認を求める訴えの利益はない。
(2)争点(2)(本件認定処分の適法性)について
(原告の主張)
原告は,本邦において行おうとする活動につき虚偽の事実を述べたことは
ないから,本件認定処分には理由がない。
(被告の主張)
争う。
第3争点に対する判断
1争点(1)(訴えの利益の有無)について
(1)入管法は,本邦に上陸しようとする外国人は,上陸しようとする出入国
港において入国審査官に対し上陸の申請をして上陸のための審査を受けなけ
ればならず(入管法6条2項),入国審査官は,当該外国人が入管法7条1
項に規定する上陸のための条件に適合しているかどうかを審査して(同項),
これに適合していると認定したときは,当該外国人の旅券に上陸許可の証印
をしなければならないとする一方,上記条件に適合していると認定しないと
きは,口頭審理を行うため,当該外国人を特別審理官に引き渡さなければな
らないとし(入管法9条1項,5項),特別審査官において速やかに口頭審
理を行い,当該外国人が入管法7条1項に規定する上陸のための条件に適合
しているかどうかを認定するものとし,適合していると認定したときは,直
ちにその者の旅券に上陸許可の証印をしなければならないとする一方,適合
していないと認定したときは,その者に対し,速やかに理由を示してその旨
を知らせなければならないとする(入管法10条1項,8項及び10項)な
ど,上陸審査手続においては,上陸の申請をした外国人が上陸しようとする
出入国港又は仮上陸許可(入管法13条1項)において定められた場所にと
どまっていることを前提とする規定を置いている。他方,入管法には,上陸
審査手続中に本邦から出国した外国人について当該手続を更に進めるべきこ
とを定めた規定は見当たらない。このような入管法上の上陸審査に関する規
定に照らすと,入管法は,上陸の申請をした外国人は,上陸審査手続中,本
邦にいることを要するものとしていると解するのが相当である。
また,本邦に在留する外国人が,再入国の許可を得ないまま,いったん本
邦から出国したときは,その有する在留資格及び在留期間が消滅する結果,
再び本邦に入国する場合には,入国に先立って所要の査証を取得し,上陸審
査を受ける必要があるとされるのであるから,これとの均衡上も,上陸審査
手続中に本邦から出国した外国人が再び本邦に上陸する場合には,改めて上
陸審査を受ける必要があると解するのが合理的である。
以上の諸点に照らすと,上陸の申請をした外国人が特別審理官から上陸の
ための条件に適合しない旨の認定を受けた後本邦から出国した場合において,
当該外国人が再び本邦に上陸しようとするときは,改めて上陸審査を受けな
ければならず,仮に,上記認定処分が取り消され,又はその不適法であるこ
とが確認されたとしても,もはや当初の上陸申請に基づく上陸許可がされる
余地はないというべきである。
(2)これを本件についてみるに,前記前提事実によれば,原告は,本件認定
処分を受けた後本邦から出国していることが認められるのであるから,仮に,
本件認定処分を取り消し,又はその不適法であることを確認する判決がされ
たとしても,当初の上陸申請に基づく上陸許可がされる余地はない。したが
って,本件訴えは,いずれも原告が本邦から出国したことにより訴えの利益
を欠くに至ったものというほかない。
(3)原告は,本件認定処分の理由の内容によっては,今後の上陸申請におい
ても同様の理由で上陸のための条件に適合しない旨の認定を受けることにな
るから,原告には本邦から出国した後も本件認定処分の正当性を争う利益が
存すると主張する。
しかし,原告が今後本邦への上陸申請をした際に本件認定処分を理由に原
告を不利益に取り扱い得ることを認めた法令の規定は見当たらないから,原
告が主張する本件認定処分による不利益は,原告が今後本邦への上陸申請を
した際に本件認定処分の存在又はその理由とするところが考慮されるおそれ
があるという事実上のものにすぎず,本件認定処分により当然かつ直接的に
招来されるものということはできないのであって,このような不利益をもっ
て本件訴えにつき訴えの利益が存在することの根拠とすることはできないと
いうべきである。したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(4)また,原告は,本邦を出国したことにより本件訴えの訴えの利益が失わ
れるとすると,上陸のための条件に適合しない旨の認定を訴訟で争うことが
ほとんど不可能となり,裁判を受ける権利を侵害する結果になると主張する。
しかし,憲法32条は,訴訟の当事者が訴訟の目的たる権利関係につき裁
判所の判断を求める法律上の利益を有することを前提として,かかる訴訟に
つき本案の裁判を受ける権利を保障したものであって,そのような利益の有
無にかかわらず,常に本案につき裁判を受ける権利を保障したものではない
から(最高裁昭和32年(オ)第195号同35年12月7日大法廷判決・
民集14巻13号2964頁参照),原告が本邦から出国したことにより訴
えの利益が失われたとして本案の裁判がされないことをもって直ちに裁判を
受ける権利が侵害されたということはできない。また,実質的にみても,原
告は,本件認定処分又は退去強制令書(入管法24条5号の2)の執行につ
いて執行停止の申立てをすることにより本邦にとどまった状態で本件認定処
分を争うこともできたのに,このような手段を執ることなく自ら本邦から出
国したのであるから,本邦からの出国により訴えの利益が失われたとして本
件訴えにつき本案の裁判がされないことが不当であるということはできない。
したがって,原告の上記主張も採用することができない。
2以上によれば,本件訴えはいずれも不適法な訴えであるからこれらを却下す
ることとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民訴法61条を適
用して,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第38部
裁判長裁判官杉原則彦
裁判官品田幸男
裁判官角谷昌毅

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