弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
1 原判決のうち被上告人B1に関する部分を次のとおり変更する。
  第1審判決のうち上記部分を次のとおり変更する。
 (1) 上告人は,被上告人B1に対し,266万9559円及びうち63万38
83円に対する平成12年12月1日から,うち172万3665円に対する平成
14年2月2日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 (2) 被上告人B1のその余の請求を棄却する。
2 上告人の被上告人B2及び同B3に対する上告を棄却する。
3 第1項に関する訴訟の総費用は,これを5分し,その1を被上告人B1の,そ
の余を上告人の負担とし,前項の部分に関する上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 第1 事案の概要
 1 原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
 (1) 被上告人ら3名の父であるD(大正12年10月20日生)は,平成11
年8月29日午前3時35分ころ,兵庫県加古郡a町b)c番地のd先の信号機に
より交通整理の行われている交差点において,自転車を運転して自転車横断帯上を
横断中,Eの運転する普通乗用自動車(以下「本件自動車」という。)に衝突され
て死亡した(以下,これを「本件事故」という。)。
 (2) Eには,交通閑散であった上,対面する信号機の信号が青色を表示してい
ることに気を許して前方注視を怠り,制限速度時速60㎞のところを時速90㎞以
上で本件自動車を走行させて交差点に進入した過失があり,他方,Dには,対面す
る信号機の信号が赤色を表示しているのに,これを無視して上記交差点を横断した
過失がある。上記に加え,本件事故が夜間に発生したものであること,Dが本件事
故当時75歳の高齢であったことなどに照らすと,Dの過失割合は5割である。
 (3) 本件事故によってDに発生した損害は,治療費3万4000円,文書料3
600円,逸失利益1089万2584円,慰謝料2100万円の合計3193万
0184円である。
 (4) 被上告人らは,Dの本件事故による損害賠償請求権を相続により3分の1
ずつ取得した。
 (5) 本件事故当時,本件自動車について自動車損害賠償保障法(以下「法」と
いう。)で定める自動車損害賠償責任保険又は自動車損害賠償責任共済の契約はい
ずれも締結されていなかった。
 (6) 被上告人らは,平成12年11月30日,上告人に対し,法72条1項後
段の規定による損害のてん補を請求し,平成14年2月1日,上告人から1079
万4097円の支払を受けた。また,被上告人B1は,Dの葬儀費用として94万
7767円を支出しており,国民健康保険法58条1項の規定により,葬祭費とし
て5万円の支給を受けた。
 2 本件は,被上告人らが,上告人に対し,法72条1項後段の規定に基づき,
損害のてん補として既に支払を受けたものを除く残額の内金として,被上告人B1
につき332万8136円及びこれに対する遅延損害金の支払を,その余の被上告
人らにつき各290万3999円及びこれらに対する遅延損害金の支払を求める事
案である。
 第2 上告代理人都築弘ほかの上告受理申立て理由第2の2ないし8について
 【要旨1】法72条1項後段の規定による損害のてん補額の支払義務は,期限の
定めのない債務として発生し,民法412条3項の規定により政府が被害者から履
行の請求を受けた時から遅滞に陥るものと解するのが相当である。
 したがって,被上告人らが上告人に対しててん補を請求した日の翌日からてん補
すべき額に対する遅延損害金が発生するとした原審の判断は,正当として是認する
ことができる。論旨は採用することができない。
 第3 同第2の9について
 1 原審は,前記事実関係等の下において,次のとおり判断して,被上告人B1
の上告人に対する請求につき,269万4559円及びうち65万8883円に対
する平成12年12月1日から,うち172万3665円に対する平成14年2月
2日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める
限度で認容し,その余を棄却した。
 (1) 治療費,文書料,逸失利益及び慰謝料の合計3193万0184円に過失
相殺をしてその5割を減額すると,1596万5092円となる。
 被上告人らは,法72条1項後段の規定により,上告人から損害のてん補の一部
として1079万4097円の支払を受けているから,これを1596万5092
円から控除すると517万0995円となり,その3分の1は172万3665円
である。
被上告人らが,上告人に対し,上記損害のてん補の請求をした平成12年11月3
0日の翌日である同年12月1日から1079万4097円の支払を受けた平成1
4年2月1日までの1596万5092円に対する民法所定の年5分の割合による
遅延損害金は93万6035円(円未満切捨て。以下同じ。)であり,その3分の
1は31万2011円である。
 (2) 被上告人B1がDの葬儀費用として支出した94万7767円から同被上
告人が国民健康保険法58条1項の規定により支給を受けた5万円を控除した89
万7767円に過失相殺をしてその5割を減額すると,44万8883円となる。
 (3) 本件事故と相当因果関係のある被上告人B1の弁護士費用は21万円とす
るのが相当である。
 (4) したがって,被上告人B1の上告人に対する請求は,269万4559円
及びうち65万8883円(葬儀費用分44万8883円及び弁護士費用分21万
円)に対する平成12年12月1日から,うち172万3665円に対する平成1
4年2月2日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払
を求める限度で理由がある。
 2 しかしながら,原審の上記1(2),(4)の判断は是認することができない。そ
の理由は次のとおりである。
 法72条1項後段の規定により政府が被害者に対しててん補することとされる損
害は,法3条により自己のために自動車を運行の用に供する者が賠償すべき責めに
任ずることとされる損害をいうのであるから,法72条1項後段の規定による損害
のてん補額は,被害者の過失をしんしゃくすべきときは,被害者に生じた現実の損
害の額から過失割合による減額をした残額をいうものと解される。そして,法73
条1項は,被害者が,健康保険法,労働者災害補償保険法その他政令で定める法令
に基づいて法72条1項の規定による損害のてん補に相当する給付を受けるべき場
合には,政府は,その給付に相当する金額の限度において,上記損害のてん補をし
ないと規定し,自動車損害賠償保障法施行令21条14号は,法73条1項に規定
する政令で定める法令の一つとして国民健康保険法を挙げているから,同法58条
1項の規定による葬祭費の支給は,法73条1項に規定する損害のてん補に相当す
る給付に該当する。したがって,【要旨2】法72条1項後段の規定による損害の
てん補額の算定に当たり,被害者の過失をしんしゃくすべき場合であって,上記葬
祭費の支給額を控除すべきときは,被害者に生じた現実の損害の額から過失割合に
よる減額をし,その残額からこれを控除する方法によるのが相当である。
 そこで,被上告人B1が支出した葬儀費用94万7767円に過失相殺をしてそ
の5割を減額すると47万3883円となり,これから上記葬祭費5万円を控除す
ると42万3883円となる。これに,上記1(1)の172万3665円及び31
万2011円の合計203万5676円並びに同(3)の21万円を加算すると,被
上告人B1に対しててん補すべき残額は266万9559円となる。
 したがって,被上告人B1の上告人に対する請求は,266万9559円及びう
ち63万3883円に対する平成12年12月1日から,うち172万3665円
に対する平成14年2月2日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅
延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は棄却すべきである。原審の上
記判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣
旨をいうものとして理由があり,原判決のうち上記の額を超えて被上告人B1の請
求を認容した部分は破棄を免れない。
 第4 以上の次第で,原判決のうち被上告人B1に関する部分を主文第1項のと
おり変更し,その余の被上告人に対する上告を棄却することとする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 泉 徳治 裁判官 横尾和子 裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 才
口千晴)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛