弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原略式命令中被告人に関する部分を破棄する。
     被告人が自動車の運転免許を受けないで貨物自動車を運転したとの事実
に関する本件公訴を棄却する。
     被告人を罰金四千円に処する。
     右罰金を完納することができないときは百円を一日に換算した期間被告
人を労役場に留置する。
         理    由
 検事総長佐藤藤佐の非常上告趣意は、末尾添付の非常上告申立書記載のとおりで
ある。
 右非常上告趣意について、関係記録を調査するに、被告人は昭和二五年九月一一
日福岡県三養基郡a村道路上において、自動車の運転免許を受けていないにかかわ
らず、A運送店所有の貨物自動車福第六三、八〇二号を運転したとの犯罪事実につ
き、当初昭和二六年一月三一日大牟田簡易裁判所に対し公訴提起と同時に略式命令
を請求せられ、同年二月八日同裁判所は右事実につき道路交通取締法違反として被
告人を罰金千円に処する旨の略式命令をなし、この裁判は同年三月一七日確定した。
ところが右略式命令がなされた後未だその確定しない前である同年二月一三日、鳥
栖簡易裁判所に対し右同一事実につき他の業務上過失傷害の事実と併せて公訴提起、
略式命令の請求があり、同裁判所は同月一四日道路交通取締法違反及び業務上過失
傷害罪として被告人を罰金五千円に処する旨の略式命令(被告人Bに対する被告事
件と併合)をなし、この裁判は同月二四日確定した事実を認めることができる。し
からば右道路交通取締法違反の事実については、後に起訴を受けた鳥栖簡易裁判所
は刑訴第三三九条第一項第四号に則り決定を以て公訴を棄却すべきであつたのにか
かわらず、その措置をとらず略式命令をしたため、同一事実について二個の略式命
令がなされ相前後して確定した結果となつたものであつて、原略式命令は明らかに
違法であり、本件非常上告は理由がある。
 而して原略式命令は被告人のために不利益と認められるから、刑訴第四五八条第
一号但書により原略式命令中被告人に関する部分を破棄し、更に被告事件につき判
決をすることとし、刑訴第三三九条第一項第四号により二重起訴にかかる事実に関
する本件公訴を棄却し、原略式命令において確定された業務上過失傷害の事実につ
き刑法第二一一条前段を適用し、所定刑中罰金刑を選択し、罰金等臨時措置法第二
条第三条所定の罰金額の範囲内において被告人を罰金四千円に処し、刑法第一八条
により右罰金不完納の場合は百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置すべ
きものとし、主文のとおり判決する。
 この裁判は裁判官全員一致の意見によるものである。
 検察官 田中巳代治関与
  昭和二六年九月一八日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保

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