弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
       事   実
第一 求める判決
一 控訴人
1 原判決を取消す。
2 被控訴人らの請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は第一、第二審とも被控訴人らの負担とする。
二 被控訴人ら
主文第一項と同旨。
第二 主張
当事者双方の主張は、原判決事実欄第二記載のとおりであるから、これを引用す
る。
第三 証拠(省略)
       理   由
一 請求原因事実は、当事者間に争いがない。
二 抗弁冒頭の事実のうち、被控訴人両名は、控訴人組合が昭和四五年二月一七日
付中央本部指令第二七号により同年同月二二日を申請書の提出期限と定めて実施し
た支部組合員に対する再登録申請に反対し、再登録申請書を提出しなかつたことは
当事者間に争いがなく、抗弁の判断につき前提となるべき右再登録申請にいたるま
での経緯についての認定判断は、次に付加・補正するほか原判決理由二と同一であ
るから、これを引用する。
1 原判決五〇枚目ー記録七四丁ー表二行目の「二二日」を「二日」と改め、同裏
六行目の「乙第四ないし第八号証」の前に「同第三八、第四一号証、」を、同裏九
行目の「同第五六号証、」の後に「同第五七号証」を、同五一枚目ー同七五丁ー表
一〇行目の「証人」の前に「原審及び当審における」をそれぞれ加え、同表一一行
目冒頭の「同」を「原審における証人」と改め、同裏二行目の「A」の後に「、当
審における証人B、同C」を加え、同行の「原告両名各本人尋問の結果」を「原審
における被控訴人両名各本人尋問の結果(以上、いずれも下記認定にそう部分に限
る)」と改める。
2 原判決六〇枚目ー同八四丁ー表二行目の「政治運動」を「政治活動」と、同七
四枚目ー同九八丁ー裏三行目の「組合が」を「組合に」とそれぞれ改め、同七五枚
目ー同九九丁ー裏一〇行目の次に行をかえて「前記各証言及び各本人尋問の結果
中、上記認定に反する部分はたやすく信用することができず、他にこれを左右する
に足る証拠はない。」を加える。
三 次に、本件再登録が実施された昭和四五年当時、控訴人組合において、組合規
約のうえに再登録申請制度に関する明文の規定がなく、また、再登録申請をしない
ことの効果として組合員がその資格を喪失するとの確立した慣習が存在しなかつた
ことについての認定判断は、原判決理由三と同一であるから、これを引用する(但
し、原判決七七枚目ー記録一〇一丁ー表七行目の「発され」を「発せられ」と、同
表一一行から裏一行にかけて、同裏三行目の「発された」(二か所)を「発せられ
た」とそれぞれ改める。)。
四 そこで、控訴人は、被控訴人両名が本件再登録申請書を提出しなかつたことに
より自動的に控訴人組合の組合員としての資格を喪失したと抗争するので、この点
について検討する。
1 まず、控訴人組合の組合員資格の得喪に関する組合規約の規定を検討するに、
同規約第三五条が組合員の資格につき「組合員の資格は規約第五条による郵政労働
者であつて規約第三六条により組合に届出をし、中央執行委員会の承認を得たとき
にはじまり、規約第三九条による脱退または除名されたときに終る。2 組合員は
いかなる場合といえども、人種、宗教、信条、性別、門地または身分によつて組合
員たる資格を失わない。」と規定し、同規約第三九条が脱退につき「脱退は次の場
合による。一、退職 二、死亡 三、除名 2(省略)3 前項以外の理由により
脱退しようとする者は、脱退の理由をあきらかにし、支部に申し出で、地区本部、
地方本部を経由して中央執行委員会の承認を必要とする。4(省略)」と規定し、
同規約第四四条が組合員に対する制裁につき「組合員で次の各号に該当するものは
制裁をうける。一、組合の綱領、規約および組合機関の決定に違反したとき。二、
組合の名誉を著しく汚す行為のあつたとき。三、組合の秩序をみだしたとき。四、
正当な理由がなく組合費および準組合費の納入を三カ月以上滞納したとき。」と規
定していることは、いずれも当事者間に争いがない。
 次に前掲甲第一号証によれば、同規約には、次のような各規定のあることが認め
られる。
第三六条(加入)「組合へ加入しようとするものは、綱領、規約を認めた旨の誓約
書と、組合費月額相当額をそえ、所在の支部に申し出で、地区本部を経由して、中
央執行委員会の議を経てはじめて組合員となる。2中央執行委員会は、組合員とな
ることを決定した場合は組合費領収書を添付して本人に通知しなければならな
い。」
第四五条(審査委員会)「前条の制裁を審査するため、中央本部に審査委員会をお
く。審査委員会の運営および構成は別に定める審査委員会規則による。」
第四六条(制裁の種類と決定)「第四四条に基く制裁は警告、権利停止、除名の三
種とする。2 除名は支部または地方決議機関の決定により、地方本部執行機関或
いは決議機関の賛成を経て、別に定める審査委員会に申請し、その答申により中央
執行委員会の議を経て組合の決議機関の承認をうけなければならない。この決議は
出席構成員の直接無記名の秘密投票による三分の二以上の賛成を必要とする。3
(省略)」
 そして、以上のほかに組合員がいつたん取得した組合員資格を喪失する原因等に
ついて触れた規定は見当らない。
2 ところで、一般に労働組合における組合員の資格の得喪及び組合員に対する制
裁は、組合を構成する組合員に関する最も重要かつ基本的な事項であつて、組合員
は組合の規約に定める組合員資格の得喪の方式あるいは制裁の方式に関する明文の
規定がある限り、これ以外の方式によつてその資格を奪われあるいは制裁を科せら
れないことを保障されていると解すべきであるから、このような組合員資格の得喪
及び組合員に対する制裁に関する規約の解釈については、特に厳格な態度を貫くべ
きである。仮に組合が組織的危機に直面するなど、非常緊急の場合に限り、団結権
の維持強化のため、組合の規約に明文の定めがなくても、統制処分として組合員資
格を喪失させることが可能であるとする見解に従うとしても、規約上統制処分とし
て組合員資格喪失の方式に関する定めがある以上、これによらず右以外の方式に基
づく統制処分により組合員資格を喪失させる措置をとりうると解することは、組合
員の地位の保障もまた団結権に由来しているのであり、規約を潜脱した措置が超規
約的統制処分と称して組合員の地位を保障した規約を空文化するおそれがあるの
で、これを肯認することはできない。
 これを本件についてみるに、控訴人組合の規約上、組合員がその意思に反して組
合員資格を喪失する事由として定めるのは、除名の制裁を受けたときを除いてない
のであるから、組合員は右規約に定める除名の事由及びその手続によらないで、そ
の意に反して組合員たる資格を失うことはないのである。してみれば、控訴人組合
が本件再登録を実施した昭和四五年当時、組合規約に再登録申請手続に関する明文
の規定がなく、また確立された慣習の存在も認められないにもかかわらず、控訴人
組合が再登録申請書を提出期限内に提出しなかつた被控訴人両名につき超規約的統
制処分として組合員の資格を喪失したものとして取扱うことは許されないといわな
ければならない。
 なお、成立に争いのない甲第一三号証の二、第一五号証、第一六号証の二、弁論
の全趣旨により成立の認められる乙第五五号証の一、二、原審証人D、同E、同F
の各証言によれば、本件再登録申請手続実施の結果については、昭和四五年二月二
六日から同月二八日まで開催の中央委員会の承認を受け、さらに、その後開催の全
国大会の承認をも受けていることが認められるけれども、この承認をもつて規約所
定の除名の手続と同視することはできないから、右の事実があつたからといつて、
被控訴人らにつき除名と同様な組合員資格喪失(剥奪)の効果を生ずるいわれはな
い。
3 また、本件再登録申請手続の実施の経過は前記認定のとおりであつて、これに
よれば、控訴人組合は、昭和四五年二月一七日付中央本部指令第二七号に基づき、
支部組合員全員の組合員資格を一時停止するとともに、被控訴人両名を含む支部旧
役員等については中央本部に敵対して組織を混乱に陥れた旧執行部派の首謀者とし
て無期限の権利停止の仮制裁に付し、しかるのち、支部全組合員から「組合員再登
録申請書」と題し「私は、控訴人組合の綱領、運動方針、控訴人組合中央本部の組
織指導九項目および指令第二二号を遵守し、組織の団結を固め闘うことを確保し、
組合員の再登録を申請します。」と記載された書面に記名押印してこれを同月二二
日までに中央執行委員長宛に提出させたうえ、この再登録申請書を提出した者に対
し、中央執行委員会が同月二三日から翌三月二日までの間に組合員としての適格性
を審査し、これに合格して再登録したもののみを組合員として認めるというのであ
るから、支部旧役員として他の旧役員及び青年部常任委員らとともに同指令により
無期限の権利停止の仮制裁をうけていた被控訴人両名は、かりに期限内に右申請書
を提出したとしても、とうてい審査で承認を得られないであろうことは見やすいと
ころであるうえ、被控訴人両名は、組合員資格は組合に加入したときに既に取得し
ているのだから改めて再登録申請手続をする必要はないとして、脱退の意思が全く
ないのにもかかわらず、申請書を提出しなかつたというのであるから、右不提出を
もつて、直ちに被控訴人両名が控訴人組合から脱退する意思を表示し又は組合員資
格を放棄したものとみなすこともできない。
4 以上に説示したところからすれば、控訴人の主張する本件再登録申請書の不提
出による組合員資格の喪失は、実質において組合員の意思に反する組合員資格の剥
奪にほかならないが、前述のとおり、規約に定める方式以外の方式によつて組合員
資格の剥奪を認める余地はないのであるから、本件再登録申請書を提出しなかつた
ことにより被控訴人両名の組合員資格が剥奪されたものとすることはできない。
 したがつて、控訴人の抗弁は理由がない。
五 してみると、被控訴人らは現在もなお控訴人組合の組合員としての資格を有す
るものというべきであり、控訴人がこれを容認していないことも明らかであるか
ら、被控訴人らのその資格の確認を求める本訴請求は理由があり、これを認容すべ
きである。
 よつて、右と同旨に出た原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないのでこれ
を棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条本文、八九条を適用し
て、主文のとおり判決する。
(裁判官 岡垣學 手代木進 上杉晴一郎)

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