弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人本人両名の上告趣意について。
 所論のうち、憲法二一条違反をいう点は、同条は、言論、出版の自由を絶対無制
限に保障しているのではなく、公共の福祉のために必要がある場合には、その時、
所、方法等につき合理的制限のおのずから存するものであるところ、たとえ思想を
外部に発表するための手段であつても、その手段が他人の財産権、管理権を不当に
害するごときものは、もとより許されないところであるから、軽犯罪法一条三三号
前段の規定する程度の規制は、公共の福祉のため、表現の自由に対し許された必要
かつ合理的な規制であつて、右法条を憲法二一条一項に違反するものということが
できないことは、当裁判所の判例(昭和二四年(れ)第二五九一号同二五年九月二
七日大法廷判決、刑集四巻九号一七九九頁、昭和二八年(あ)第三一四七号同三〇
年四月六日大法廷判決、刑集九巻四号八一九頁、昭和四二年(あ)第一六二六号同
四五年六月一七日大法廷判決、刑集二四巻六号二八〇頁)とするところであり、こ
れと同趣旨に出た原判決の判断は正当であるから、論旨は理由がない。また、憲法
一四条、一一条違反をいう点は、実質は単なる訴訟法違反の主張であり、憲法三八
条一項、一八条違反をいう点は、被告人の氏名のごときは、原則として憲法三八条
一項にいう「不利益」な供述ということはできず、それにつき黙秘する権利がある
とはいえないことは、当裁判所の判例(昭和二七年(あ)第八三八号同三二年二月
二〇日大法廷判決、刑集一一巻二号八〇二頁)とするところであるから、論旨は、
その前提を欠き、いずれも適法な上告理由にあたらない。さらにまた、憲法三七条
一項違反をいうものと解される点は、同条項にいう「公平な裁判所の裁判」とは、
組織、構成において不公平のおそれのない裁判所の裁判をいうものであること、か
りに、所論のように、本件裁判が迅速を欠いたものとしても、これにより原判決を
破棄する理由にならないことは、いずれも当裁判所の判例(前者につき昭和二二年
(れ)第二九〇号同二三年六月三〇日大法廷判決、刑集二巻七号七七三頁、後者に
つき昭和二三年(れ)第一〇七一号同年一二月二二日大法廷判決、刑集二巻一四号
一八五三頁)とするところであるから、論旨は理由がない。その余の所論は、単な
る法令違反、事実誤認の主張であつて、適法な上告理由にあたらない。
 弁護人坂本修ほか三七名の上告趣意第一点について。
 所論一のうち、憲法二一条一項違反をいう点は、被告人本人両名の上告趣意中の
憲法二一条違反の主張に対して説示したとおりであつて、論旨は理由がなく、憲法
三一条違反をいう点は、原審でなんら主張、判断を経ていない事項に関する違憲の
主張であつて、適法な上告理由にあたらない。
 所論二は、憲法二一条一項違反をいうが、第一審判決が確定し、原判決が是認支
持した事実関係のもとにおいて、被告人らの本件電柱に対するビラはり行為が軽犯
罪法一条三三号前段に該当するものであり、このように解釈しても右法条が憲法二
一条一項に違反するものでないことは、当裁判所の判例(昭和四二年(あ)第一六
二六号同四五年六月一七日大法廷判決、刑集二四巻六号二八〇頁)の趣旨に徴し、
明らかであるから、論旨は理由がない。
 同第二点について。
 所論は、憲法一四条違反をいうが、記録に徴しても、原判決が、所論のように、
被告人らの思想、信条を理由として不利益な差別を加えたものと認めるべき証拠は
全くないから、所論違憲の主張は、その前提を欠き、適法な上告理由にあたらない。
 同第三点について。
 所論は、単なる法令違反の主張であつて、適法な上告理由にあたらない。
 同第四点について。
 所論は、量刑不当の主張であつて、適法な上告理由にあたらない。
 また、記録を調べても、刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて、同法四〇八条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
  昭和四七年六月六日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    下   村   三   郎
            裁判官    関   根   小   郷
            裁判官    天   野   武   一
            裁判官    坂   本   吉   勝

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