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平成11年(行ケ)第224号 審決取消請求事件
平成11年11月9日口頭弁論終結
判決
原      告クローネアクチェンゲゼルシャフト
代表者【A】
同【B】
訴訟代理人弁理士【C】
同【D】
被      告株式会社シーエスケイ
代表者代表取締役【E】
訴訟代理人弁理士【F】
主文
 原告の請求を棄却する。
 訴訟費用は原告の負担とする。
 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定め
る。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 原告
 特許庁が平成9年審判第18156号事件について平成11年2月25日にした
審決を取り消す。
 訴訟費用は、被告の負担とする。
2 被告
 主文と同旨
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
 被告は、「HIGH WAY」の文字を横書きしてなり、指定商品を第11類
「電気機械器具、電気通信機械器具、電子応用機械器具(医療機械器具に属するも
のを除く)電気材料」とする登録第2504150号商標(昭和62年11月30
日登録出願、平成5年2月26日設定登録。以下「本件商標」という。)の商標権
者である。
 原告は、平成9年10月29日、原告を被請求人として、商標法50条に基づ
き、本件商標に係る指定商品中、「電気機械器具」についての登録の取消しの審判
請求をし、特許庁は、これを平成9年審判第18156号事件として審理した結
果、平成11年2月25日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決を
し、平成11年3月23日、その謄本を原告に送達した。
2 審決の理由
 審決の理由は、別紙審決書の理由の写しのとおりである。要するに、乙第2号証
の1(本件商標の通常使用権者であるCSKネットワークシステムズ株式会社(以
下「CSK社」という。)が平成9年9月に作成したパンフレット)及び乙第4号
証(CSK社が平成9年4月に作成したパンフレット)から、CSK社がその業務
の一つとする「ネットワーク機器、コンピュータ機器など関連周辺設備の販売」及
び「統合配線構築」の広告として本件商標が使用されていることが認められ、乙第
3号証(平成9年7月10日付け三井不動産建設株式会社作成の注文書)から、C
SK社が、平成9年7月に、第三者との間において「CAT-50.5×4Pケー
ブル」という商品の取引を行った事実が認められ、これらを総合すると、上記取引
は、前記パンフレットに基づいて行われたものと推認することができるから、本件
商標は、通常使用権者であるCSK社により、本件審判の請求の登録前3年以内に
日本国内において、指定商品中の「ケーブル」について使用されていたものと認め
られる、というものである。
 なお、本訴の乙第2号証の1、乙第3号証、乙第4号証は、審決の同番号のもの
と同じである。
第3 原告主張の審決取消事由の要点
 審決は、乙第2号証の1、乙第3号証、乙第4号証の証拠評価を誤り、その結
果、本件商標の商標法50条該当性を否定したものであるから、取り消されるべき
である。
1 乙第2号証の1及び乙第4号証の証拠評価の誤り
(1) 乙第2号証の1及び乙第4号証は、その表題から、「インターネットサービ
ス」及び「イントラネット・ソリューション」という役務の提供についてのパンフ
レットであることが明らかであるから、これらのパンフレット中に「ネットワーク
機器、コンピュータ機器など関連周辺設備の販売」(乙第2号証の1)及び「統合
配線構築」(乙第4号証)との記載があるとしても、これらの記載は、商品を具体
的に表しているものではなく、乙第2号証の1の「ネットワーク機器、コンピュー
タ機器など関連周辺設備の販売」についていえば、上位概念の項目である「その他
の関連サービス」に属する事項の1つとして挙げられているにすぎず、乙第4号証
の「統合配線構築」の記載についても、役務を表すのであって、いずれも、商品の
広告を目的としているものとは到底いえないものである。
 したがって、上記各パンフレットの表紙の右上方に表示された「Highwa
y」及び「lnternet」の文字を併記した標章は、商品についての商標とし
て使用されているのではなく、サービスマークとして役務の提供についての商標と
して使用されているのであるから、これを根拠に商品の広告として本件商標が使用
されているとする審決の認定は、誤っている。
(2) 乙第2号証の1に、「※Highway、CSKは、CSKネットワークシス
テムズ株式会社が株式会社CSKから使用許諾を受けている、株式会社CSKの登
録商標(サービスマーク)です。」(最終頁の下方から11行目)という記載があ
ることは、乙第2号証の1及び第4号証の表紙の上部等に表示されている「Hig
hway」の文字がサービスマーク、すなわち、役務に係る商標であることを裏付
けるものである。
2 乙第3号証の証拠評価の誤り
 乙第3号証は、三井不動産建設株式会社がCSK社宛てに発した商品等の注文書
(写)であるから、三井不動産建設株式会社からCSK社に注文があったことをこ
れによって認めることは可能であろう。しかし、注文があったからといって、取引
の事実があったことになるわけではないのはいうまでもないことである。したがっ
て、乙第3号証のみを根拠に、CSK社が平成9年7月にケーブルの取引を行った
事実が認められるとした審決の認定は、誤っている。
3 乙第2号証の1、乙第3号証、乙第4号証の証拠評価の誤り
 乙第3号証の注文品目の欄には、確かに、「CAT-50.5×4Pケーブル」
という記載がある。しかし、この「CAT」の文字は、ケーブルについて使用され
ている商標を表したものであったとしても、本件商標を含む前記各パンフレットの
表紙の商標とは無関係である。また、乙第2号証の1によれば、CSK社は、特別
第二種電気通信事業者であって、電気機械器具のメーカーではないから、そのよう
なCSK社が、本件商標を用いたケーブルを販売していたと推測することもできな
い。
 したがって、乙第2号証の1、乙第3号証、乙第4号証を総合して、前記各パン
フレットに基づいてケーブルの取引が行われ、その際本件商標が使用されたと推認
することができるとした審決の認定は、誤っている。
第4 被告の反論の要点
 審決の証拠評価は、いずれも正当であって、審決が取り消されるべき理由はな
い。
1 乙第2号証の1及び乙第4号証の証拠評価の誤りについて
(1) 原告は、乙第2号証の1及び乙第4号証の各パンフレットの表題に「サービ
ス」を含む文字が併記されていることをもって、本件商標が役務商標として使用さ
れていると主張しているが、失当である。
 取引社会一般において、「サービス」という語は、商標法でいうところの役務に
限らず、それが何であれ顧客に対して提供する業務内容を示す意味にも用いられる
ものであるから、パンフレットの表題の「サービス」の文字を、商標法の「役務」
しか意味しないとするのは、恣意的な限定であり、この恣意的な限定を根拠に、本
件商標が役務商標であるとするのは、明白な誤りである。
 CSK社は、実際に、上記各パンフレットに記載されたとおり、「ネットワーク
機器、コンピュータ機器などの関連周辺設備の販売」を業務として行っており、そ
して、その業務において、乙第3号証に示すとおり、「ネットワーク機器、コンピ
ュータ機器などの関連周辺設備」に属する商品の一つである「ケーブル」を販売し
ているのである。したがって、前記各パンフレット記載の「Highway」の商
標は、商品である「ネットワーク機器、コンピュータ機器、などの関連周辺設備」
の広告に使用されていることが明白である。
(2) 原告は、乙第2号証の1の最終頁にある「登録商標(サービスマーク)」を含
む記載を根拠に、乙第2号証の1及び第4号証の表紙の上部等に表示されている
「Highway」の文字は、サービスマーク(役務に係る商標)である旨主張す
る。しかし、同記載は、パンフレットのどの商品又は役務が商品に係る商標なのか
あるいは役務に係る商標なのか表示していないのであるから、この記載が、直ち
に、乙第2号証の1及び第4号証の表紙の上部等に表示されている「Highwa
y」の文字が役務商標としてしか用いられていないことに結び付くものではない。
 また、パンフレットは、顧客、すなわち、一般消費者に対して広く配布されるこ
とを意図して作成するものであり、このようなパンフレットを手にする者は、必ず
しも商標法に精通しているわけではないので、パンフレット作成者は、その作成に
当たって、商標法に明るくない人々にも分かりやすい記載にしようとするものであ
る。
 本件のパンフレットもまた、上記のとおり、商標法に明るくない人々にも分かり
やすい記載としているのであり、商品のみならず役務についても「High wa
y」について商標登録を受けていることを示すために、「登録商標」の文字に続け
て、一般消費者に耳慣れた言葉と思われる「サービスマーク」という文字を括弧書
きにして付記したものである。
 以上のとおりであるから、乙第2号証の1の最終頁の「登録商標(サービスマー
ク)」という記載をもって、これが役務を表示する「サービスマーク」であるとす
る原告の主張は失当である。
2 乙第3号証の証拠評価の誤りについて
 原告は、乙第3号証について、注文があったことで、取引の事実があったとはい
えない主張するが、趣旨不明である。
3 乙第2号証の1、乙第3号証、乙第4号証の証拠評価の誤りについて
 原告は、電気機械器具メーカーではないCSK社が本件商標を用いたケーブルを
販売していたと推測することができないと主張するが、そもそも商標法2条1項に
よれば、商標使用の主体は「商品を生産及び譲渡する者」に限定されていないので
あるから、主張自体失当である。
第5 当裁判所の判断
1 乙第2号証の1及び乙第4号証の証拠評価の誤りについて
(1) 乙第2号証の1及び乙第4号証が、CSK社の広告のパンフレットであるこ
と、両パンフレットの表紙の「Highway」という大きな欧文字が、CSK社
の業務に係る商標として使用されていることは、それぞれその全体の体裁から明ら
かであり、当事者間にも争いがない。
(2) 乙第2号証の1の2枚目には、CSK社の業務内容として、「アクセスサービ
ス」、「サーバシェアリングサービス」といった役務に関する事項のほかに、「イ
ンテグレーションサービス」のうちの「その他の関連サービス」という項目におい
て、「コンピュータ、通信関連機器などの販売」、「DeskTop Servi
ce」という記載があることが認められる。また、同号証の3枚目には、上記「そ
の他の関連サービス」に関して、「ネットワーク機器、コンピュータ機器など関連
周辺設備の販売」という記載があることが認められる。
 また、乙第4号証の3枚目には、「共同VANは、貴社に最適なイントラネット
を構築します。」との記載があり、その下に、「③製品価格検索システム ORA
CLEの製品データベースWeb Serverで公開」との記載があることが認
められる。
(3) 上記記載によれば、乙第2号証の1は、他の種々の役務に加えて、「ネットワ
ーク機器、コンピュータ機器など関連周辺設備の販売」というCSK社の取り扱う
商品の販売をも広告の対象としていること、乙第4号証は、CSK社が取り扱う
「ORACLEの製品」(弁論の全趣旨によれば、「ORACLE」印のネットワ
ーク機器などの商品と認められる。)を広告の1つの対象としていることが認めら
れる。
(4) 原告は、乙第2号証の1及び乙第4号証は、その表題から、「インターネット
サービス」及び「イントラネット・ソリューション」という役務の提供についての
パンフレットであることが明らかであるから、これらのパンフレット中に「ネット
ワーク機器、コンピュータ機器など関連周辺設備の販売」(乙第2号証の1)及び
「統合配線構築」(乙第4号証)との記載があるとしても、これらの記載は、商品を
具体的に表しているものではなく、乙第2号証の1の「ネットワーク機器、コンピ
ュータ機器など関連周辺設備の販売」についていえば、上位概念の項目である「そ
の他の関連サービス」に属する事項の1つとして挙げられているにすぎず、乙第4
号証の「統合配線構築」の記載についても、役務を表すのであって、いずれも、商
品の広告を目的としているものとは到底いえない旨主張する。
 しかしながら、乙第2号証の1の「ネットワーク機器、コンピュータ機器など関
連周辺設備の販売」という記載が、上記の各用語に含まれる具体的な商品の販売を
表すものであることは自明であるから、「その他の関連サービス」が商品の販売を
も包含する意味で使用されていることは明らかというべきである。また、乙第4号証
の「統合配線構築」という記載をもって、役務のみを表すものとみることは、同号
証の記載全体との関係で不自然である。原告の主張は、採用できない。
 原告は、乙第2号証の1の「※Highway、CSKは、CSKネットワーク
システムズ株式会社が株式会社CSKから使用許諾を受けている、株式会社CSK
の登録商標(サービスマーク)です。」という記載は、乙第2号証の1及び第4号
証の表紙の上部等に表示されている「Highway」の文字がサービスマーク、
すなわち、役務に係る商標であることを裏付ける旨主張する。
 しかしながら、前記認定のとおり、乙第2号証の1は、CSK社の役務と並んで
その商品をも広告をしているのであるから(なお、乙第1号証によれば、被告とC
SK社は、平成9年4月4日、本件商標に関して商標使用権許諾契約を締結し、被
告がCSK社に対し、「電気機械器具、電気通信機械機具、電子応用機械機具(医
療機械機具に属するものを除く)、電気材料、移動体電話による通信、電子計算機
端末による通信、電話による通信、ファクシミリによる通信、無線呼び出し、電話
機・ファクシミリその他の通信機器の貸与」に係る商品又は役務について本件商標
を独占的に通常使用することを許諾していることが認められる。)、そしてまた、
「サービスマーク」という言葉が、パンフレットにおいて、役務に関する商標とい
う専門的な意味で正確に用いられるとは限らないことは明らかであるから、上記
「※Highway、CSKは、CSKネットワークシステムズ株式会社が株式会
社CSKから使用許諾を受けている、株式会社CSKの登録商標(サービスマー
ク)です。」という記載における「登録商標(サービスマーク)」の語が、乙第2
号証の1の表紙の上部等に表示されている「Highway」の商標を、役務に係
るものとしてのみ用いられているとし得るものでないことは自明である。原告の主
張は、失当である。
(5) 以上によれば、乙第2号証の1及び乙第4号証の表紙の「Highway」と
いう大きな欧文字が、CSK社の役務のみならず、商品の広告のためにも使用され
ているものと認められ、そこで広告の対象とされている「ネットワーク機器、コンピ
ュータ機器など関連周辺設備の販売」や「ORACLEの製品」が本件商標に係る指
定商品の「電気機械器具」に該当することは明らかである。そして、乙第2号証の
2によれば、乙第2号証の1のパンフレットは、平成9年9月30日ころに発行さ
れており、乙第4号証及び乙第5号証によれば、乙第4号証のパンフレットは、平
成8年7月1日から平成9年3月31日までの間に発行されていることが認められ
るから、本件商標は、通常使用権者であるCSK社により、本件審判の請求の登録
前3年以内に日本国内において、指定商品のうちの「電気機械器具」について使用さ
れていたということができる。
2 そうすると、原告主張の審決取消事由は、その余の点について検討するまでも
なく理由がないことが明らかであり、審決の認定判断は、結論において相当であ
る。
第6 よって、原告の本訴請求を棄却することとし、訴訟費用の負担、上告及び上
告受理の申立てのための付加期間についてについて行政事件訴訟法7条、民事訴訟
法61条、96条2項を適用して、主文のとおり判決する。
  東京高等裁判所第6民事部
裁判長裁判官山 下 和 明
   裁判官山 田 知 司
   裁判官宍 戸   充

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