弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告人A代理人森美樹の上告理由第一について。
 原判示によれば、本件C土地の貸主である被上告人Bと借主であるD(死亡)と
の間に昭和三〇年四月一日以降の賃料月坪六五〇円(従前は三五〇円)とする旨の
合意が成立し、Dは同年四月一日以降同三二年三月末日まで右賃料を支払つていた
が、その翌月以降その支払をしていなかつたこと、被上告人Bは同年八月頃Dに対
し右賃料を坪八〇〇円に増額すべき旨要求したが、その応ずるところとならず。か
くて両者の間に右賃料に関し協議がまとまらないでいたところ、被上告人Bは昭和
三二年九月三日書面を以てDに対し右賃料を同年四月一日にさかのぼつて月坪八〇
〇円に増額を通知するとともに、右増額による賃料を判示の期間内に支払うべき旨
の催告並びにその不払を条件とする契約解除の意思表示をなし、これに対しDは直
ちに被上告人Bに対し昭和三二年四月分以降月坪三五〇円の割合による賃料ならば
支払うべき旨通告し、被上告人Bから予めそのような賃料は受領することができな
い旨の回答に接していたので、同年九月六日月坪三五〇円の割合による同年九月三
〇日までの賃料を供託し爾来月割同額の賃料を供託しつつあるというのである。以
上の事実関係の下において、被上告人Bのなした右催告が過大催告であることは間
違いないが、さらばといつて、Dにおいて既定の賃料、すなわち月割六五〇円の割
合による賃料を現実に提供したというのでもなく、右月額六五〇円の賃料の前の約
定三五〇円の割合による賃料なら支払う旨通知し、被上告人Bの受領拒絶の回答に
接したというのであつてそれだけでは、右過大催告が全部無効とも(右催告は約定
にかかる月割六五〇円の割合による金額の範囲内において有効な催告と認むべきで
ある)また、被上告人Bの右受領拒絶が直ちにBをして受領遅滞に陥らしめるもの
とも論断するを得ない。従つてDにおいて、右催告にかかる猶予期間を徒過した以
上被上告人BとD間の判示賃貸借契約は有効に解除されたものと云わなければなら
ない。叙上と同趣旨に帰する原判決の判断は正当であり、所論引用の各判例は本事
案に適切のものではない。所論は独自の見方に即して展開する法律論であつて、採
るを得ない。
 同第二について。
 判示(C)土地の賃貸借契約が賃借人であるDの賃料債務の不履行に因り有効に
解除されたことが判示のとおりである以上、賃貸人であり且つ地主である被上告人
が右土地の明渡を求めるのは特段の事情の認められない本件に於いては当然の権利
行使であつて、これを信義誠実の原則に反するとか、権利乱用とか言うことのでき
ない旨の原判決の判断は正当である。そして所論の点を斟酌して考量しても、原判
決の右判断を動かすことはできない。所論引用の各判例は必ずしも本件に適切なも
のとは認められない。所論はひつきよう、右に反する独自の所見であつて、採るを
得ない。
 上告代理人岡田錫渕の上告理由第一点について。
 昭和三〇年初頃被上告人BからDに対し本件C土地の賃料を同年四月一日以降月
六五〇円に値上げする旨要求したところ、Dもこれに同意して昭和三〇年四月一日
以降同三二年三月末日迄の右賃料を右値上額である月坪六五〇円の割合で支払つて
きた旨の原判決の事実認定は挙示の証拠資料(判示にいわゆる裁判所に顕著な事実
を含む)に照し首肯できなくはなく、その認定の過程に所論違法のかどあるを見出
し得ない(所論引用の判例は必ずしも本事案に適切なものとは認められない)。ひ
つきようするに、所論は原審の専権に任かせられている証拠の自由な取捨並びに評
価及びこれによつてなされた自由な事実認定を非難攻撃するものでしかなく、採る
を得ない。
 同第二点について。
 所論は原判決は上告人らの主張を誤解し、判断を遺脱し、延いて審理不尽の違法
を犯した欠点があるという。しかし記録によつて認め得られる本件訴訟の経過を具
さに検索して考量するも、原判決に所論のような暇瑾あるを見出し得ない。所論は
ひつきようするに原判決の認定の範囲外において種々陳弁するに外ならないもので
あり、原判決に対する独自の見方に帰する。また所論引用の判例は必ずしも本事案
に適切なものとも認められない。それ故所論は採用できない。
 同第三点一について。
 原審において上告人側は昭和三二年九月四日被上告人Bから地代支払の催告をう
けると、直ちに従来の約定額と信じていた金額を持参したのに被上告人がこれを受
領しないので云々と主張していることは原判決事実の部の記載により明らかである。
原判決は右主張事実を参酌し、挙示の証拠を綜合し判示賃料債務は持参債務である
との趣旨の認定をしているものと判文上解し得られないわけのものではない。所論
指摘の人証の各供述は原審の措信しないところである。従つて右認定に反する主張
の下に原判決を攻撃する所論の採用できないことは言をまたない。
 同第三点二について。
 原判示所論の過大催告はすでに取りきめられている賃料六五〇円を超えた部分は
ともあれ、右六五〇円の範囲内においては判示契約解除の前提たる催告としては有
効であり、判示の場合右六五〇円の割合による賃料を現実に提供したというのでな
ければ、右六五〇円の賃料前の賃料月坪三五〇円の賃料を提供したというだけでは
被上告人に受領遅滞の責があるものと言えないことはすでに前段に説示したとおり
であり、右六五〇円を提供しても被上告人において、これを受領しない意思が明瞭
であつたとは原審において主張も判断もされていない。故に原判決には所論の違法
ありというを得ず、所論引用の判例は本事案に適切でなく、これを以て判示の場合
を律することはできない。所論も亦独自の見解に立脚するものであつて、採るを得
ない。
 同第四点について。
 原判決が本件賃料一ヶ月六五〇円に合意によつて改訂されたと認定するについて
原審は所論のような手続を経なければならない筋合があるわけのものではない。従
つて原判決には所論審理不尽の違法ありと言うを得ない。それ故所論も採用し難い。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い裁判官全員の一致で主文
のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    斎   藤   朔   郎
            裁判官    長   部   謹   吾

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