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平成27年9月10日判決言渡同日原本受領裁判所書記官
平成26年(ワ)第1860号損害賠償等請求事件
口頭弁論終結日平成27年7月7日
判決
原告TOWA株式会社
同訴訟代理人弁護士小松陽一郎
同森本純
同辻淳子
同中原明子
被告アサヒ・エンジニアリング株式会社
同訴訟代理人弁護士深井俊至
同磯田直也
主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
被告は,原告に対し,1億4200万円及びこれに対する平成26年3月8日か
ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要等
1事案の概要
本件は,発明の名称を「電子部品の樹脂封止成形方法及び装置」とする2件の特
許権を有していた原告が,被告が製造,販売等する製品が,当該発明の技術的範囲
に属し,原告の特許権を侵害すると主張して,被告に対し,①特許権侵害の不法行
為に基づく損害賠償請求として,本件訴訟提起の日の3年前の日である平成23年
2月28日から特許の存続期間満了の日である平成25年7月22日までの期間
に,特許法102条2項により原告に生じたと推定される損害額のうちの一部であ
る1億円の支払を求め,②本件訴訟提起の日の10年前の日である平成16年2月
28日から平成23年2月27日に至るまでの期間に,被告が法律上の原因なく利
得を受けた本件特許の実施料相当額の一部に当たる4200万円について,不当利
得返還請求権に基づき支払を求めるとともに,③これら合計1億4200万円に対
する平成26年3月8日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5
分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
2前提事実等(争いのない事実及び証拠により容易に認定できる事実等)
(1)当事者
ア原告は,精密金型,電子部品用生産装置,精密成形部品等の開発,設計,製
造及び販売等を主な業務とする株式会社である。
イ被告は,電子部品製造に使用する装置及び金型・冶工具の製造,輸出入及び
販売等を主な業務とする株式会社である。
(2)原告が有した特許権
ア原告は,次の特許権を有していた(以下,これを「本件特許権1」といい,
本件特許権1に係る特許を「本件特許1」といい,そのうち請求項3に係る発
明を「本件発明1」という。また,この特許出願の願書に添付した明細書及び
図面を「本件明細書1」という。)(甲1及び甲2)。
登録番号特許第2932136号
発明の名称電子部品の樹脂封止成形方法及び装置
出願日平成5年(1993)7月22日
出願番号特願平5-202689
登録日平成11年(1999)5月28日
権利消滅日平成25年(2013)7月22日
特許請求の範囲
【請求項3】「固定型と可動型とを対向配置した金型と,該金型に配設した樹脂
材料供給用のポットと,該ポットに嵌装した樹脂加圧用のプランジャと,上
記金型の型面に配設したキャビティと,該キャビティと上記ポットとの間に
配設した樹脂通路とを有するモールディングユニットと,上記モールディン
グユニットに電子部品を装着した樹脂封止前リードフレーム及び樹脂タブレ
ットを供給する手段と,樹脂封止された電子部品を上記モールディングユニ
ットから外部へ取出す手段とを備えた電子部品の樹脂封止成形装置であって,
既に備えられた上記モールディングユニットに対して他のモールディングユ
ニットを着脱自在の状態で装設可能とし,これによって該モールディングユ
ニットの数を増減調整自在に構成したことを特徴とする電子部品の樹脂封止
成形装置。」
イ原告は,次の特許権を有していた(以下,これを「本件特許権2」といい,
本件特許権2に係る特許を「本件特許2」といい,そのうち請求項3に係る発
明を「本件発明2」といい,この特許出願の願書に添付された明細書及び図面
を「本件明細書2」という。また,本件発明1と本件発明2を併せて「本件発
明」,本件明細書1と本件明細書2を併せて「本件明細書」という。)(甲3及
び甲4)。
登録番号特許第2932137号
発明の名称電子部品の樹脂封止成形方法及び装置
出願日平成5年(1993)7月22日
出願番号特願平5-202690
登録日平成11年(1999)5月28日
権利消滅日平成25年(2013)7月22日
特許請求の範囲
【請求項3】「固定型と可動型とを対向配置した金型と,該金型に配設した樹脂
材料供給用のポットと,該ポットに嵌装した樹脂加圧用のプランジャと,上
記金型の型面に配設したキャビティと,該キャビティと上記ポットとの間に
配設した樹脂通路とを有するモールディングユニットと,上記モールディン
グユニットに電子部品を装着した樹脂封止前リードフレーム及び樹脂タブレ
ットを供給する手段と,樹脂封止された電子部品を上記モールディングユニ
ットから外部へ取出す手段とを備えた電子部品の樹脂封止成形装置であって,
既に備えられた上記モールディングユニットに対して相互に異なる種類の他
の電子部品の樹脂封止成形用モールディングユニットを着脱自在の状態で装
設可能とし,これによって,相互に異なる少なくとも二種類以上の電子部品
の樹脂封止成形用モールディングユニットを構成したことを特徴とする電子
部品の樹脂封止成形装置。」
(3)本件発明1の構成要件
本件発明1を構成要件に分説すると以下のとおりである。
A-1:固定型と可動型とを対向配置した金型と,該金型に配設した樹脂材料供
給用のポットと,該ポットに嵌装した樹脂加圧用のプランジャと,上記
金型の型面に配設したキャビティと,該キャビティと上記ポットとの間に
配設した樹脂通路とを有するモールディングユニットと,
A-2:上記モールディングユニットに電子部品を装着した樹脂封止前リードフ
レーム及び樹脂タブレットを供給する手段と,
A-3:樹脂封止された電子部品を上記モールディングユニットから外部へ取り
出す手段とを備えた電子部品の樹脂封止成形装置であって,
B:既に備えられた上記モールディングユニットに対して他のモールディン
グユニットを着脱自在の状態で装設可能とし,これによって該モールディ
ングユニットの数を増減調整自在に構成したことを特徴とする
C:電子部品の樹脂封止成形装置。
(4)本件発明2の構成要件
本件発明2を構成要件に分説すると以下のとおりである。
D-1:固定型と可動型とを対向配置した金型と,該金型に配設した樹脂材料供
給用のポットと,該ポットに嵌装した樹脂加圧用のプランジャと,上記金
型の型面に配設したキャビティと,該キャビティと上記ポットとの間に配
設した樹脂通路とを有するモールディングユニットと,
D-2:上記モールディングユニットに電子部品を装着した樹脂封止前リードフ
レーム及び樹脂タブレットを供給する手段と,
D-3:樹脂封止された電子部品を上記モールディングユニットから外部へ取り
出す手段とを備えた電子部品の樹脂封止成形装置であって,
E:既に備えられた上記モールディングユニットに対して相互に異なる種類
の他の電子部品の樹脂封止成形用モールディングユニットを着脱自在の
状態で装設可能とし,これによって,相互に異なる少なくとも二種類以上
の電子部品の樹脂封止成形用モールディングユニットを構成したことを
特徴とする
F:電子部品の樹脂封止成形装置。
(5)被告の行為
被告は,別紙物件目録1に記載の製品(以下「イ号製品」という。)を遅くと
も平成10年2月から,別紙物件目録2に記載の製品(以下「ロ号製品」という。)
を遅くとも平成10年7月から,別紙物件目録3に記載の製品(以下「ハ号製品」
という。)を遅くとも平成11年11月から,別紙物件目録4に記載の製品(以
下「ニ号製品」という。)を遅くとも平成12年9月から,別紙物件目録5に記
載の製品(以下「ホ号製品」という。)を遅くとも平成13年3月から,別紙物
件目録6に記載の製品(以下「ヘ号製品」という。)遅くとも平成18年12月
頃から,別紙物件目録7に記載の製品(以下「ト号製品」という。)を遅くとも
平成19年10月頃から,別紙物件目録8に記載の製品(以下「チ号製品」とい
う。)を遅くとも平成20年1月頃から,別紙物件目録9に記載の製品(以下「リ
号製品」という。)を遅くとも平成21年8月頃から,いずれも現在に至るまで,
業として製造し,販売し,輸出し,又は販売の申出(販売のための展示を含む。)
をしている(甲5,甲6)。
(6)原告は,①別紙物件目録記載の被告製品全て(以下,これを単に「被告製品」
ということがある。)について,本件発明1の技術的範囲に属すると主張し,②
別紙物件目録記載の,ロ号,ハ号,ヘ号及びチ号製品が,本件発明2の技術的範
囲に属すると主張している。
被告製品は,いずれも,本件発明1の構成要件A-1,A-2,A-3及びC
を充足する。また,ロ号,ハ号,ヘ号及びチ号製品は,いずれも,本件発明2の
構成要件D-1,D-2,D-3及びFを充足する。
3争点
(1)被告製品の構成
(2)被告製品が本件発明1の構成要件B及び本件発明2の構成要件Eを充足するか。
(3)本件特許1,2が,特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか。
(4)損害発生及び不当利得の有無並びにその額
第3争点に関する当事者の主張
1争点(1)(被告製品の構成)について
(原告の主張)
被告製品の構成は,別紙「物件説明書」記載のとおりである。なお,被告製品の
「プレスモジュール」は,本件発明の「モールディングユニット」に当たる。
(被告の主張)
(1)イ号製品には,4枚取りであるイ号製品,8枚取りであるイ号製品,12枚取
りであるイ号製品の3製品が存在する。被告は,「少なくとも4枚取りから12枚
取りまでの選択・拡張(4枚/プレス)が可能な半導体樹脂封止成形装置」を製
造,販売したことはない。
ロ号製品には,2枚取りであるロ号製品,4枚取りであるロ号製品,6枚取り
であるロ号製品,8枚取りであるロ号製品の4製品が存在する。被告は,「少な
くとも2枚取りから8枚取りまでの選択・拡張(2枚/プレス)が可能な半導体
樹脂封止成形装置」を製造,販売したことはない。
ハ号製品には,2枚取りであるハ号製品,4枚取りであるハ号製品,6枚取り
であるハ号製品(以下「ハ-3号製品」という。),8枚取りであるハ号製品の4
製品が存在する。被告は,「少なくとも2枚取りから8枚取りまでの選択・拡張
(2枚/プレス)が可能な半導体樹脂封止成形装置」を製造,販売したことはな
い。
ニ号製品には,2枚取りであるニ号製品,4枚取りであるニ号製品の2製品が
存在する。被告は,「少なくとも2枚取りから4枚取りまでの選択・拡張(2枚
/プレス)が可能な半導体樹脂封止成形装置」を製造,販売したことはない。
ホ号製品には,2枚取りであるホ号製品,4枚取りであるホ号製品,6枚取り
であるホ号製品,8枚取りであるホ号製品の4製品が存在する。被告は,「少な
くとも2枚取りから8枚取りまでの選択・拡張(2枚/プレス)が可能な半導体
樹脂封止成形装置」を製造,販売したことはない。
ヘ号製品には,2枚取りであるヘ号製品,4枚取りであるヘ号製品,6枚取り
であるヘ号製品,8枚取りであるヘ号製品の4製品が存在する。被告は,「少な
くとも2枚取りから8枚取りまでの選択・拡張(2枚/プレス)が可能な半導体
樹脂封止成形装置」を製造,販売したことはない。
ト号製品には,2枚取りであるト号製品,4枚取りであるト号製品,6枚取り
であるト号製品,8枚取りであるト号製品の4製品が存在する。被告は,「少な
くとも2枚取りから8枚取りまでの選択・拡張(2枚/プレス)が可能な半導体
樹脂封止成形装置」を製造,販売したことはない。
チ号製品には,2枚取りであるチ号製品,4枚取りであるチ号製品の2製品が
存在する。被告は,「少なくとも2枚取りから4枚取りまでの選択・拡張(2枚
/プレス)が可能な半導体樹脂封止成形装置」を製造,販売したことはない。
リ号製品には,2枚取りであるリ号製品,4枚取りであるリ号製品,6枚取り
であるリ号製品の3製品が存在する。被告は,「少なくとも2枚取りから6枚取
りまでの選択・拡張(2枚/プレス)が可能な半導体樹脂封止成形装置」を製造,
販売したことはない。
(2)被告のハ-3号製品の構成は,別紙ハ-3号製品説明書記載のとおりである。
2争点(2)(被告製品が本件発明1の構成要件B及び本件発明2の構成要件Eを充足
するか)について
(原告の主張)
(1)「着脱自在の状態で装設可能」の意義について
ア本件発明の特徴は,半導体樹脂封止成形装置全体が一体化された従来品では,
例えば,生産量の増大に対応するには,それに見合った仕様の装置を購入して,
丸ごと入れ替え又は別の装置を追加しなければならなかったが,モールディン
グユニットを着脱自在の状態で装設し,その数を任意に増減調整することによ
り,必要数のモールディングユニットのみを追加購入して工場内で増設し,顧
客の要求に応える仕様の半導体樹脂封止成形装置を簡易に構成することがで
きるようにした点にある。したがって,本件発明の構成要件B及びEの「着脱
自在の状態で装設可能」とは,モールディングユニットに他のモールディング
ユニットを連結しあるいは取り外すことができることを意味する。
イ被告は,後記被告の主張(1)のとおり主張する。
しかし,そもそも本件発明が自動化した重量物である樹脂封止装置を対象と
するものであることや,それを前提とする本件明細書の記載からすると,「簡易
に即応」というのも,金型を大型化又は小型化することやそのような金型を備
えた装置に全体を置き換えることとの比較において表現されているものであり,
着脱に際して,係合手段の連結,解除以外に,モールディングユニットの移動,
カバーや配線類の取り外し,コントローラの制御条件の変更等の付随的作業が
伴い,一定の時間を要することは明らかである。
また,方法の発明ではなく物の発明である本件発明は,装置の構成について
の発明であって,操作主体についての限定は何らなされていないから,モール
ディングユニットの着脱は,装置の使用者ができる必要はない。
(2)被告製品の構成要件充足性について
ア被告製品は,プレスモジュール(被告のいうプレス設置ユニット)のフレー
ム壁面におけるボルト・ナット(仮にナットでないとしても,ナットと同等の
機能を果たす「●●●」)による螺着によりプレスモジュールを連結又は取り外
すことができる構成を有している点で,モールディングユニットに他のモール
ディングユニットを「着脱自在」の状態に装設可能な構成を有している。
被告は,被告製品ではボルトの締結は強固で,ボルトを取り外す作業スペー
スもないと主張するが,●●●●●●●●●●●●は,市販のレンチ工具を用
いて手動で締結し,同じ力で取り外すことができる程度にすぎないし,着脱の
ためのスペース確保のために,各機構をいったん取り外すことは容易である。
イまた,被告製品は,別紙ハ-3号製品説明書に基づいても,ローダー・アン
ローダーの搬送経路,電気配線,エア配管のいずれもプレスモジュールの着脱
に対応できる構造となっており,プレスモジュールの増減に必要な接続部を有
し,着脱自在の構成となっている。
(ア)ローダー・アンローダーの搬送経路について
ハ-3号製品においては,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●については,プレスモジュールの連結部において分
割可能な構造をしており,モジュール単位で接続,取り外しが可能な構造(被
告が主張するところの接続部)を有する。ボルトを取り外して●●●●●●
を分割後,ユニットの増減に対応してその数を増減してボルトを締めて適切
な●●●●●●同士を連結すれば,装置の稼働に何ら支障が生じることはな
く,被告のいう障害は発生しない。
また,●●●については,●●●をプレスモジュールの増減に伴い適切な
長さの●●●へ交換することは容易な作業である。
(イ)エア配管について
ハ-3号製品の圧縮エアチューブには,材料供給部設置ユニット,及び,
プレスNo.1設置ユニットとプレスNo.2設置ユニット間に「中継継手」
があり,プレスモジュールの着脱・増減に際してエア配管の長さを調節でき
る。
被告は,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●があることから,
同ユニットを取り外すと圧縮エア供給ができないと主張する。しかし,増設
のためには,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●を残せば問題な
く,減設の場合には,●●●●●●●を最終No.のプレスに移設すれば問
題ない。エアチューブが長すぎれば,一般的なニッパーやカッターナイフを
用いて切断すればよく,長さが足りない場合には,中継継手と追加のエアチ
ューブを設ければ足りる。
(ウ)電気配線について
被告の主張によれば,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●とのことであり,これら2種の配線はケーブルベア
にまとめられているものと判断されるところ,ケーブルベア自体はブロック
状の物であって本来適宜長さの変更が可能であり,配線については,●●●
同様にいったん取り外し,作業後改めて適切な長さの物を取り付けることも,
延長配線を用いることも,長い配線の余分部分を適宜収納しておくことも容
易である。
ウまた,被告が主張するその他の点も,被告製品が「着脱自在」であることを
妨げるものではない。
(ア)プレスモジュールの移動について
トン単位のモールディングユニットであっても,適切な作業によって移動
することはできる。ハ-3号製品も脚がついていて,各ユニットが独立して
おり,移動に際して冶具等用いやすい構造となっている。
当業者であれば,チルローラー等,通常用いられる輸送ツールを使ってユ
ニットを床面から持ち上げ,コロ,車輪等を用いて移動させるのが当然であ
り,安全部材の存在により,移動が困難であるとする被告の主張は失当であ
る。
(イ)コンピュータープログラムの変更が容易であること
被告の主張によっても,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●なお,本件明細書においても,
モールディングユニットの増減に伴うプログラム変更は予定されている(本
件明細書1【0034】,本件明細書2【0033】)。
(ウ)被告製品の増設作業時間について
被告製品の増設作業に要する時間は,合計●●●●●●●となると算出さ
れるが,この値は,装置全体をいったん撤収して,新しい装置を購入して一
から据付けをすることに比較するとはるかに簡易であり,本件発明の極めて
有益な特徴が被告製品にも当てはまる。
エそしてまた,被告は,広報資料において,拡張可能で,少量から大量生産ま
で1台で幅広い対応が可能な装置である旨を宣伝しており,これは,被告製品
がプレスモジュールの数を着脱自在に増減可能な構成を有していることの証
左である。
(被告の主張)
(1)「着脱自在の状態で装設可能」の意義について
ア「自在」とは,「束縛も支障もなく,心のままであること。思いのまま。」と
の意味であり,「着脱」とは,「その部分に着けたり,はずしたりすること。」
との意味である。したがって,本件発明の構成要件B,Eにおける「着脱自在
の状態」とは,モールディングユニットに対して,他のモールディングユニッ
トを,束縛も支障もなく,心のまま(思いのまま)に着けたり外したりできる
状態を意味する。
イところで,樹脂封止成形装置においては,一方のモールディングユニットと
他のモールディングユニットとの間に,①樹脂封止前リードフレームの供給路
の接続部,②樹脂封止済リードフレームの搬出路の接続部,③樹脂の供給路の
接続部,④空気の配管の接続部,⑤電気配線の接続部,⑥各装置部分を保持す
るための保持機構の接続部の各構成が存在する。本件明細書1及び2の実施例
(図7)では,保持機構の接続部(前記⑥)についてのみ,ボトムベース部分
の側面の2か所について,一方を凹状,他方を凸状として嵌合させるという構
成が開示されているが,「着脱自在」といえるためには,前記①ないし⑤も,
束縛も支障もなく,心のまま(思いのまま)に着けたり外したりできる構成で
ある必要がある。そして,その具体的構成は,着け外しの容易さとして,ボト
ムベースにおける嵌合方式と同程度である必要がある。
また,樹脂封止成形装置は,コンピューター制御で動作するところ,コンピ
ューター装置及びそのコンピュータープログラムには,追加ユニットの数に応
じて適切に樹脂封止成形装置を動作させるために,制御条件の変更その他,追
加ユニットの数に応じる構成を備えていなければならず,各種電気配線も,そ
れに対応している必要がある。
さらに,追加されるモールディングユニットは,着脱のために移動するもの
であるから,容易に移動可能である必要がある。
ウまた,本件明細書では,本件発明により,「電子部品の樹脂封止成形に際し
て」,つまり,電子部品に樹脂封止成形を行う生産現場で,一方のモールディ
ングユニットと他方のモールディングユニットとの着脱が「簡易に即応」でき
るとされている。「即応」できるとは,「即時」に「応じる」ことができるとい
うことである。したがって,この作用効果を奏するためには,着脱の時間とし
て,一方のモールディングユニットと他のモールディングユニットとの着脱は,
「即時」にされている必要がある。
また,一方のモールディングユニットと他のモールディングユニットとの着
脱の場所は,電子部品に樹脂封止成形を行う生産現場であり,電子部品に樹脂
封止成形を行う際に,電子部品の樹脂封止成形装置の使用者が,一方のモール
ディングユニットと他のモールディングユニットを束縛も支障もなく,心のま
ま(思いのまま)に着けたり外したりでき,それが即時であり,追加されるモ
ールディングユニットを容易に移動できるようにされている必要がある。仮に,
「着脱自在の状態で装設」につき,装置のメーカーの技術者にとっては着脱自
在であるが,生産現場での装置の使用者には着脱自在とはいえない構成まで含
まれるとすれば,サポート要件違反の無効理由があることになる。
なお,着脱自在の状態になっているべき対象は,モールディングユニット相
互であり,全ての接続箇所の着脱作業を総合して,「着脱自在の状態で装設」さ
れ,かつ,着脱自在が「簡易に即応」できるといえる必要がある。
(2)被告製品の構成要件充足性について
被告製品が本件発明の構成要件B,Eを充足しないことを,具体例であるハ-
3号製品について見れば,以下のとおりである。
アハ-3号製品は,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●を備えた全体として一つの装置である。ハ-3号製品では,●●●
●●●●●●●●●●を取り外した残りのユニットだけでは,樹脂封止成形装
置として機能しない。
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●本件発明の全体構成,すなわち,電子部品の樹脂封止成形装置とし
て機能するために必要となる各装置部分を全て備えた主装置が存在し,その主
装置の側部に第1追加ユニットを追加し,更に追加された追加ユニットの側部
に,以降の追加ユニットを順次追加していく構成と全く異なる。
イ原告は,プレスモジュールのフレーム壁面について,ボルト・ナット等を用
いたユニットの連結が可能と主張する。しかし,●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
よって,ハ-3号製品において,同製品の使用者が,支障もなく,心のまま
(思いのまま)に,即時に,締結ボルトを取り外し,接続し直すことは不可能
である。
ウまた,保持機構以外の接続についても,「着脱自在」とはいえない。
(ア)ローダー・アンローダーの搬送経路について
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●原告が主張するように,
プレスモジュール減設に伴い,●●●を取り外し,同製品に存在しない新た
な長さの●●●と交換する必要があるとすれば,ハ-3号製品には,●●●
●●●●●●●●●●を取り外した状態で,樹脂封止成形装置として機能す
るに必要な構成が欠けているということになる。●●●●●●についても同
様である。したがって,そもそも●●●●●●●●●●●●●をハ-3号製
品から取り外すことはできないのであり,原告の主張は失当である。
(イ)圧縮エア供給部及び圧縮エアチューブについて
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
原告が主張するように,プレスモジュール増設のために,ハ-3号製品に
存在しない新たな圧縮エアチューブや中継継手を取り付ける必要があるとす
れば,そもそも,ハ-3号製品は,樹脂封止成形装置として機能するに必要
な構成が欠けているということになる。
使用者が,圧縮エアチューブの切断,取替え等を行うのも容易ではない。
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●の取り外しのために,圧縮エアチュー
ブの切断,取替え等を論じること自体,意味がない。
(イ)配線について
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●配線の長さも,現にそこに設置されている長さ
のものを有するハ-3号製品が侵害対象とされた製品なのであるから,他の
長さのものに取り替えるという主張は失当である。
また,使用者による配線の切断や,新たな配線接続も容易なことではない。
エプレス設置ユニットの移動について
ハ-3号製品においては,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●を移動させることは著しく困難である。
オコンピュータープログラムについて
樹脂封止成形装置は,コンピューター制御で動作するのであり,物理的な各
機構からなるハードウェア(各種配線等も含む。)と,コンピューターというソ
フトウェアから構成されるところ,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●ということは,そこに新たな構成を持ち込む必要があるというこ
とであり,被告製品が,「着脱自在の状態で装設」できるために必要な構成を欠
いているということである。
なお,原告主張の本件明細書1及び2の記載(本件明細書1【0034】,本
件明細書2【0033】)から読み取れるのは,制御条件を増減するモールディ
ングユニット5の数に対応して変更する必要があるということだけであり,原
告が主張するような,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●こ
とは示唆もされていない。
また,既に設置されているコンピューター装置,コンピュータープログラム
及びコンピューターへの配線,その配線を接続するための端子は,そのユニッ
ト数用のものであり,増設されたユニットからの信号線を接続するという接続
端子がないことから,ユニットが増設されても,樹脂封止成形装置として機能
しない。
3争点(3)(本件特許1,2が,特許無効審判により無効にされるべきものと認めら
れるか)について
(被告の主張)
次のとおり,本件特許1,2は,構成要件B,Eにおいて,当業者が容易に実施
できる程度の記載がないから,平成6年法律第116号による改正前の特許法36
条4項,123条1項4号により,無効理由を有するものであり,特許無効審判に
より無効にされるべきものである。
(1)構成要件Bに関し,本件明細書1には,実施例が一つのみ記載されており,発
明の詳細な説明(【0015】,【0035】)には,単に,ボトムベース39に係
合手段を設けて位置決めがされることが記載されているにすぎず,モールディン
グユニットの他の部分がどのようにして他方のモールディングユニットと接続し
ているのかについての記載が全くない。
また,構成要件Eに関し,本件明細書2にも,実施例が一つのみ記載されてお
り,発明の詳細な説明(【0014】,【0034】)には,単に,ボトムベース3
9に係合手段を設けて位置決めがされることが記載されているにすぎず,モール
ディングユニットの他の部分がどのようにして他方のモールディングユニット
と接続しているのかについての記載が全くない。
(2)ア本件明細書1,2の実施例においては,主装置と第1追加ユニット間,第1
追加ユニットと第2追加ユニット間,第2追加ユニットと第3追加ユニット間,
さらに追加されるユニット間において,主装置の第1追加ユニット側の側部及
び追加ユニットの両側分において,①樹脂封止前のリードフレームの供給路の
接合部,②樹脂封止済みリードフレームの搬出路の接続部,③樹脂の供給路の
接続部,④空気の配管の接続部,⑤電気配線の接続部,⑥各装置部分を保持す
るための保持機構の接続部の各構成が必要である。
「モールディングユニットに対して他のモールディングユニットを着脱自在
の状態」となっているためには,①ないし⑥の各接続部が存在し,かつ,これ
らが着脱自在でなければならない。
本件明細書1,2では,このうち,⑥の保持機構の接続部についてのみ,具
体的構成として,一方を凹状,他方を凸状として嵌合させるという構成が示さ
れているが,①ないし⑤については,嵌合方式と同程度の着脱の容易さを満た
す具体的構成についての記載がない。
イ樹脂封止成形装置はコンピューター制御で動作することから,コンピュータ
ーのプログラムについても追加ユニットが追加されることに対応している必
要がある。しかし,本件明細書1,2には,追加ユニット数に応じて装置を動
作させるための制御条件変更を可能とするコンピュータープログラム構成及
びそれに対応できるハードウェア(各種電気配線も含む。)について具体的記
載がない。
原告が指摘する本件明細書1【0034】,本件明細書2【0033】の記載
においては,単に制御条件の変更という抽象的な機能が開示されているだけで,
制御条件変更を可能とする構成及びそれに対応できる各種電気配線については
一切開示がなされておらず,当業者が容易に実施できるとはいえない。
ウ追加されるモールディングユニットは,着脱のために移動するものであるか
ら,容易に移動できるものでなければならないが,本件明細書1,2には,そ
のための構成についての具体的記載がない。
エ以上のア,イ,ウについて,本件特許出願時において技術常識は存在せず,
当事者にとって自明な事項であるとはいえない。
(原告の主張)
(1)構成要件Bについては,本件明細書1【0035】の例示等の記載に基づき,
従来から知られている様々な手段から適切なもの(例えば,ボルト・ナットを用
いるユニットの連結手段等)を選択採用して,モールディングユニットを着脱自
在に装設できるように,すなわち,本件発明1の効果を得るためにモールディン
グユニットの数を増減調整できるように,当業者が適宜実現し得る実施可能なも
のである。
構成要件Eについても,本件明細書2【0034】や図面に同程度に開示され
た記載に基づき,当業者が従来から知られている様々な手段から適切なもの(例
えばボルト・ナットを用いるユニットの連結手段等)を選択採用して,本件発明
の効果を得るためにモールディングユニットの増減調整作業を実施できるよう
に適宜実現し得ることは明らかである。
(2)ア被告主張の①ないし⑥の各接続部は,必ずしも個別に必要ではなく,一部に
ついてユニット間で接続を行う代わりに必要な長さの物に取り替えてもよく,
一つの構成で複数の機能を兼用してもよい。
「着脱自在」の意義には必要な付随的作業も含むところ,①ないし⑤について,
嵌合方式と同程度に着脱が容易であることまで求められていないから,これを
前提として具体的構成についての記載がないとする被告の主張には理由がない。
イコンピューターの制御条件の変更については,本件明細書1【0034】,本
件明細書2【0033】にそれぞれ記載があるところ,これを超えて,電気配
線も含めたハードウェア及びプログラムについての具体的記載がなければ当業
者が容易に実施できないとは到底評価し得ない。
ウ本件発明の「着脱自在」は,モールディングユニットの移動について,格別
の容易性や即時性を要求するものではないから,被告の主張には理由がない。
4争点(4)(損害発生及び不当利得の有無並びにその額)について
(原告の主張)
(1)損害22億2600万円
ア被告は,平成23年2月28日以後,本件特許1の存続期間が満了した平成
25年7月22日に至るまでの約2年5か月間に,被告製品のいずれのシリー
ズについても少なくとも単価7000万円以上で,少なくとも合わせて106
台の被告製品を製造販売しており,被告製品の製造販売における被告の限界利
益率は少なくとも30パーセントを下らない。
したがって,被告が被告製品についての本権特許権1についての侵害行為に
よって得た利益の額は少なくも以下のように算定され,特許法102条2項に
より,原告が受けた損害の額と推定される。
(計算式)
106台(推定販売数)×7000万円(単価)×30パーセント(被告
限界利益率)=22億2600万円
イ被告のロ号製品,ハ号製品,ヘ号製品及びチ号製品の製造販売により被告が
得た利益は,前記アにおいて算定した利益と重なるものと考えられることから,
被告による特許権2の侵害行為によって原告が受けた損害の額については,損
害の額に加算しないこととする。
(2)不当利得金10億7800万円
ア被告は,平成16年2月28日以降平成23年2月27日に至るまでの約7
年間に,被告製品を少なくとも単価7000万円で,少なくとも合わせて30
8台,うち,ロ号製品,ハ号製品,ヘ号製品及びチ号製品を少なくとも合わせ
て150台製造販売している。
本件特許権1及び2の実施料相当額は,その各々につき売上高の5パーセン
トを下らず,また,本件特許権1及び2の実施料相当額を合わせた場合も少な
くとも売上高の5パーセントを下らない。
したがって,前記期間の被告による被告製品についての特許権侵害行為によ
る原告の損失額,即ち被告の不当利得額は,以下の計算式により算定される。
(計算式)
308台(推定販売数)×7000万円(単価)×5パーセント(実施料
相当額)=10億7800万円
イロ号製品,ハ号製品,ヘ号製品及びチ号製品の特許権2についての不当利得
は下記のとおり5億2500円であるが,これは,前記アの10億7800万
円の中に合わせて評価している。
(計算式)
150台(推定販売数)×7000万円(単価)×5パーセント(実施料
相当額)=5億2500万円
(被告の主張)
争う。
第4当裁判所の判断
1争点(1)(被告製品の構成)について
証拠(乙3)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品のうちハ-3号製品の構成は,
別紙ハ-3号製品説明書記載のとおりと認められ,これを覆すに足りる証拠はない。
なお,弁論の全趣旨によれば,ハ-3号製品において,●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●と認められる。
また,他の被告製品の構成は,その詳細を認めるに足りる証拠はないが,弁論の
全趣旨によれば,おおむねハ-3号製品と同様であると認められる。
2争点(2)(被告製品が本件発明1の構成要件B及び本件発明2の構成要件Eを充
足するか)について
(1)証拠(甲2及び4)によれば,本件明細書において,次の記載があることが認
められる。
ア従来の技術
(ア)本件発明1
従来の「トランスファモールド法によって電子部品を樹脂封止成形」する
方法に用いられた樹脂封止成形装置における金型は,「通常の場合,適宜に交
換することが可能であるため,金型に少量生産用のもの或は多量生産用のも
のを夫々選択して用いることができ」,「その意味において,生産量に対応す
ることが可能な構成となっている」(【0002】,【0003】)。
(イ)本件発明2
従来の「トランスファモールド法によって電子部品を樹脂封止成形」する
方法に用いられた樹脂封止成形装置における金型は,「通常の場合,同種の成
形品を同時に成形するように設けられている。従って,異なる成形品を成形
するには,成形装置に装着する金型自体を交換する必要がある。また,同じ
成形装置を用いて異なる成形品を同時に成形するには,例えば,金型自体の
レイアウトを変更するか」「成形装置に異種の金型を同時に装着する必要があ
る」(【0002】,【0003】)。
イ発明が解決しようとする課題
(ア)本件発明1
「従来装置に装着する金型に多量生産用のものを用いる場合においては,
特に,次のような問題がある。
例えば,金型の重量や形状が必然的に大型化されるので,その取り扱いが
面倒になるのみならず,金型の加工精度を均一に維持することが困難となる。
このため,該金型の各部位において樹脂成形条件が相違することになり,特
に,電子部品の樹脂封止成形のように高品質性及び高信頼性を要求される製
品の製造に際しては,樹脂封止成形条件の相違に起因して,キャビティ内の
樹脂未充填状態が発生したり,樹脂封止成形体の内外部にボイドや欠損部が
形成されて製品の品質を著しく低下させると云った樹脂封止成形上の重大
な弊害が生じる。更に,金型の加工精度を均一に維持するには,高級型材を
使用する等の必要があるため,金型及び装置が高価格になると云った問題も
ある。
また,金型の型面に樹脂バリが多量に付着することになるため,該樹脂バ
リの取り除きに手数を要して全体的な成形時間が長くなり,生産性を著しく
低下させると云った問題がある。
また,金型の大型化は型締機構等の大型化をも考慮しなければならないの
で,上記従来装置に多量生産用の金型を装着する場合にも限度があって,金
型の大きさや生産量に必然的な制約を受けると云った問題がある。(【000
4】ないし【0007】)
「そこで,本発明は,電子部品の樹脂封止成形に際して,その少量生産及
び多量生産に夫々簡易に即応できる」「樹脂封止成形方法とその装置を提供
することを目的とするものである」(【0009】)。
(イ)本件発明2
「異なる成形品を成形するために,成形装置に装着する金型自体を頻繁に
交換する場合は,金型交換作業が面倒であると共に,生産性を低下させると
云った問題がある。」「成形装置に装着する金型自体のレイアウトを異なる成
形品を同時に成形できるように変更する場合は,金型の設計製作が面倒にな
ると共に,使用・用途がそのレイアウトのものに限られて汎用性を欠き金型
及び成形装置が高価格になると云った問題がある。」「また,成形装置に異種
の金型を,即ち,複数の金型を同時に装着する場合等においては,金型取付
スペースの制約から,金型自体を夫々小型化する必要があって金型の設計製
作が面倒になると共に,生産性を低下させると云った問題がある。」「そこで,
本発明は,電子部品の樹脂封止成形に際して,異なる成形品を同時的に製造
する場合に簡易に即応できる」「樹脂封止成形方法とその成形装置を提供する
ことを目的とするものである」(【0004】,【0008】)。
ウ実施例
(ア)本件発明1
「図1に示した最少構成単位の組合せから成る電子部品の樹脂封止成形装
置は,そのモールディングユニット5の側部に他のモールディングユニット
を順次に追加することによって,実質的に金型を大型化して多量生産用に対
応させた樹脂封止成形装置を構成することができる。逆に,追加した他のモ
ールディングユニットを順次に取り外すことにより(若しくは,追加した他
のモールディングユニットの作動を中止することにより),実質的に金型を小
型化して少量生産に対応させた樹脂封止成形装置を構成することができる。」
(【0033】)
「また,図1に示した最少構成単位の組合せから成る電子部品の樹脂封止
成形装置におけるモールディングユニット5と,これに連結され或は取り外
される他のモールディングユニット5との間には,両者の連結及び位置決め
を簡易に且つ確実に行うための係合手段38が夫々設けられている。該係合
手段38は,例えば,図3及び図7に示すように,モールディングユニット
5のボトムベース39に形成した凹凸状の嵌合部等から構成すればよい。」
(【0035】)
(イ)本件発明2
上記本件発明1と同様の記載がある(【0032】,【0034】)。
エ発明の効果
(ア)本件発明1
「本発明によれば,他のモールディングユニットを追加しない態様・構成
においては,電子部品を樹脂封止成形する最少構成単位の樹脂封止成形装置
として利用することができる。また,このような電子部品を樹脂封止成形す
る最少構成単位の組合せから構成した電子部品の樹脂封止成形装置に対して,
他のモールディングユニットを適宜に追加して構成することができるので,
金型自体を大型化することなく,多量生産用に対応させた樹脂封止成形装置
を簡易に構成することができる。また,追加した他のモールディングユニッ
トを適宜に取り外して構成することができるので,金型自体を小型化するこ
となく,少量生産用に対応させた樹脂封止成形装置を簡易に構成することが
できる。即ち,必要な生産量に対応して,成形装置におけるモールディング
ユニットの数を任意に且つ簡易に増減調整することができる。従って,電子
部品の樹脂封止成形に際して,必要に応じて,その少量生産及び多量生産に
夫々簡易に即応できると云った優れた実用的な効果を奏する。
また,本発明によれば,金型自体を大型化することなく,多量生産用に対
応させた樹脂封止成形装置を簡易に構成することができるので,電子部品の
樹脂封止成形体における内外部にボイドや欠損部が形成されない高品質性及
び高信頼性を備えた製品を高能率生産することができる。従って,前述した
ような従来の弊害を確実に解消し得る電子部品の樹脂封止成形方法とその成
形装置を提供することができると云った優れた実用的な効果を奏するもので
ある。」(【0042】,【0043】)
(イ)本件発明2
「本発明によれば,異なる種類の他の電子部品の樹脂封止成形用モールデ
ィングユニットを追加しない態様・構成においては,電子部品を樹脂封止成
形する最少構成単位の樹脂封止成形装置として利用することができる。また,
このような電子部品を樹脂封止成形する最少構成単位の組合せから構成した
電子部品の樹脂封止成形装置に対して,異なる種類の他のモールディングユ
ニットを適宜に追加して構成することができるので,金型自体を大型化した
り或はこれを小型化することなく,異なる成形品を同時的に製造する樹脂封
止成形装置を簡易に構成することができる。即ち,必要な生産量に対応して
成形装置におけるモールディングユニットの数を任意に且つ簡易に増減調整
することができるので,電子部品の樹脂封止成形に際して,異種製品の夫々
を同時的に少量生産及び多量生産する場合に簡易迅速に即応できると云った
優れた実用的な効果を奏するものである。」(【0043】)
(2)以上に加え,本件発明において,既に備えられたモールディングユニットに対
する他のモールディングユニットの着脱が,電子部品に樹脂封止成形を行う生産
現場において行われるものであることにつき,当事者間に争いがないことを併せ
考慮すると,本件発明は,従来の樹脂封止成形装置において,①少量生産及び大
量生産への対応は,金型を選択することによって行われていたが,大量生産用の
大型金型については,加工精度を均一にすることの困難等に伴う問題点があり,
②異なる成形品を同時に成形することへの対応は,金型の交換,金型のレイアウ
トの変更,複数金型の同時装着によって行われていたが,それぞれに問題点があ
ったことから,樹脂封止成形を行う生産現場において,最少構成単位の樹脂封止
成形装置に,同じ又は他の製品用のモールディングユニットを適宜追加し,又は
追加したモールディングユニットを適宜取り外す構成を採用することにより,必
要な生産量や製品種類に簡易に対応し得るようにしたものであると認められる。
このような本件発明の意義からすると,本件発明の効果である「簡易に増減調
整することができる」,「簡易迅速に即応できる」とは,必要な生産量や製品種類
への対応を,樹脂封止成形を行う生産現場において,金型の選択や交換等により
行うのではなく,モールディングユニットの増減設によって行うこと自体の効果
を述べているものにすぎないと認めるのが相当である。
そして,本件明細書の記載によれば,本件発明は,モールディングユニットの
増減設を行った場合でも,樹脂封止成形を問題なく行えることを当然の前提とし
ていることから,「着脱」,すなわち増減設作業の内容としては,実施例の記載の
ように,単に新たなモールディングユニットのフレーム(保持機構)と既存のモ
ールディングユニットのフレーム(保持機構)とを物理的に連結又は分離するの
みならず,搬送レール機構(電気設備も含む。)及び配管の調整並びにコンピュ
ータープログラムの設定等,増減設後のモールディングユニットが問題なく製品
を製造するために必要となる調整作業も含むものと解すべきである。そして,そ
うである以上,本件発明では,それらの増減設作業のために相応の時間と労力を
要することは想定されていると解するのが相当であり,本件明細書における「簡
易」「即応」との記載は,このことに反するものではない。被告は,このように
解する場合には本件特許にはサポート要件違反の無効理由があると主張するが,
本件発明が樹脂封止装置のモールディングユニット間の接続と分離を内容とし
ている以上,上記の調整作業が必要になることは当業者であれば自明なことであ
るから,被告の主張は採用できない。
また,このように生産現場でモールディングユニットの増減設を行える構成を
備える点に本件発明の特徴があることからすると,「着脱」は,樹脂封止成形を
行う生産現場で行われるものであれば足り,それが装置のユーザー側によって行
われるものであると,装置のメーカー側によって行われるものであるとを問わな
いと解するのが相当である。
(3)もっとも,乙4によれば,複数のプレス設置ユニットを有するモジュール形式
の半導体樹脂封止装置は,本件発明の特許出願前からの周知技術であったとされ
ている。そして,生産を効率化する等の観点から,樹脂封止成形装置のプレス部
分をモジュール化し,顧客の求めに応じた数のモジュールを設置場所で適宜接続
して全体装置を納品するが,その後のモジュールの増減設は行われないという製
品の場合には,たとえ各モジュールが他のモジュールとの間で接続・分離するこ
とが物理的にできる構造となっていたとしても,本件発明の特徴を利用している
とはいえない。
そうすると,本件発明の「着脱自在」の意義を,単にプレスモジュールの接続・
分離が物理的にできる構造になっていると解することはできないというべきで
あり,樹脂封止成形の生産現場におけるプレスモジュールの接続・分離(増減設)
を特に予定した構造になっていることを要すると解するのが相当であり,本件発
明の効果である「簡易に即応できる」というのもこのような構成を反映した趣旨
に理解するのが相当である。
(4)そこで次に,この点を,原告が本件発明1の実施品と主張する「オートモール
ディングシステムY1E2060」(以下「原告製品」という。)について見てみ
ることとする。
ア原告製品の設置マニュアル(甲30。その説明が甲33。)には,概要,次の
ような説明がある。
(ア)「モジュールユニットの接続」(4-10頁以下)
a電源の接続
マスタユニットとモジュールユニットの接続は,後記(オ)のとおり機械的
な接続が終了した時点で,電気的な接続を行うこととし,モジュールユニ
ット側電源ケーブルを,アンプボックス下部にある中継端子台の右側にト
ルクで締め付けることにより接続する。
bプレス後部I/Oケーブルの接続
モジュールユニット後部に取り付けられているコネクタボックスにマス
タユニットから出ているケーブルを接続する。
モジュールユニット接続用のケーブル及びコネクタの種類は,1モジュ
ール当たり3種類あり,それぞれ対応するケーブルとコネクタとを接続す
る。
c温度調節器の設定
モジュールユニットに使用されている温度調節ユニットは,使用モジュ
ール数,モジュール位置によって温度調節器内の設定を変更しなければな
らない。設定の変更は,上位コンピューターとの通信で温度調整ユニット
を認識するためのコード(ユニット番号)の設定によって行う。
(イ)「各部品の取付け」(4-16頁以下)。
aレールの取付け
各モジュールユニットにレール(ローダー・アンローダー用)を取り付
け,各レールを合わせ,アジャストボルトで水平になるよう調整する。
bベルトの取付け
最後のモジュールユニットのレール(ローダー・アンローダー用)にベ
ルトの金具4本を取り付ける。接続するモジュール数によって決められた
回数ボルトを回転させ,ベルトの伸びを調整する。
cゴムバンドのはめ込み
dモジュールユニット間の配線とエア配管の接続
モジュールユニット間で,通信ケーブル同士を接続した後,マスタモジ
ュールから出ている通信ケーブルを,各モジュールのアンプボックスへ接
続し,エア配管を接続する。
(ウ)「各部品の取り外し」(5-12頁以下)
aモジュールユニット間の配線とエア配管の取り外し
モジュールユニット間の通信ケーブルをコネクタで外し,エア配管を外
す。
bゴムバンドの取り外し
モジュールユニットのアンローダー上にあるダクトの隙間にはめ込まれ
ているゴムバンドを外す。
cケーブルベアのリンクの取り外し
ケーブルベア(ローダー,アンローダー)のリンクに,ドライバーを入
れて取り外す。
dローダー,アンローダーのテンションベルトの取り外し
ベルトの金具の取付ボルトとテンション用ボルトを外して,ローダー,
アンローダーのテンションベルトを取り外す。
eローダー,アンローダーの取り外し
各モジュールユニットのレール(ローダー用,アンローダー用)を取り
外す。
(エ)「モジュールユニットの分離」(5-15頁以下)
a電源の分離
中継端子台にトルクで締め付けられているモジュールユニット側電源ケ
ーブルを,適応する工具を使用して分離する。
bプレス後部I/Oケーブルの分離
モジュールユニット後部に取り付けられているコネクタボックスに接続
されている,マスタユニットから出ているケーブルを分離する。
最後にケーブルカバーを外し,ケーブルをマスタユニット内に収納する。
(オ)モジュールユニットの設置(4-8頁)
マスタモジュールを設置した後,モジュールユニットの前後扉を開けて,
ローダー,アンローダー側のケーブルベアのリンクを嵌めた後,連結ボルト
を締めることにより,マスタモジュールとモジュールユニットを接続する。
更にモジュールユニットを設置する場合は,以上の作業を繰り返す。
(カ)「モジュールユニットの取り外し」(5-18頁)
モジュールユニットの連結ボルト6か所を外し,一番外側よりモジュール
ユニットを順に移動する。
イ以上によれば,原告製品は,モジュールユニットごとに対応する長さのレー
ルを設置し,モジュールユニットの接続の際に,これら個々のレールをつなぎ
合わせ,接続を解除する場合には,これらレールを外す構造になっていること
(ア(イ)a,(ウ)e),モジュールユニット間の配線とエア配管についても,各モ
ジュールが,接続のためのケーブル及びアンプボックスを備えており,モジュ
ール間の接続の際にはこれらをつなぎ合わせ,モジュール間の接続を解除する
場合には,これらを外す構造になっていること(ア(イ)d,(ウ)a),各モジュー
ルユニットにケーブルベアが存在し,接続の際にはこれをはめ合わせる構造に
なっていること(ア(ウ)c),モジュールユニット間の結合は,連結ボルトの締
結により行うこと(ア(オ),(カ))が認められる。以上に加え,原告製品に関し
ては,購入者に向けて,モジュールユニットの増減設等についてのマニュアル
が発行されていること(甲30)を総合すると,原告製品は,電子部品に樹脂
封止成形を行う生産現場において,モジュールユニットの接続又は分離を行う
ことを前提とし,各接続部がもともと接続,分離を予定し,容易に接続,分離
できる造りとなっているということができる。
(5)そこで,以上を踏まえて,ハ-3号製品が本件発明の構成要件B,Eを充足す
るかを検討する。
ハ-3号製品の構成は,別紙ハ-3号製品説明書記載のとおりであり,●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
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●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●原告製品のように,電子部品に樹脂封止成形を行う生産現場での接続又は
分離を意識し,作業を容易にすべく,モジュールごとにレールを設置するといっ
た構造や,複数のモジュールの電気的接続のために必要となるケーブルやコネク
タなどが備えられているわけではない。
また,被告は,被告製品はいずれもプレス設置ユニットの設置数が固定してお
り,その数を選択・拡張可能な装置を販売したことはないと主張しており,この
主張は,電子部品に樹脂封止成形を行う生産現場において,顧客が被告製品に対
するモールディングユニットの増設を行ったことはなく,被告が,複数のプレス
設置ユニット構造を利用するのは,顧客の注文に応じたプレス設置ユニット数の
製品を製造する場面のみであるとの趣旨を含むと解されるところ,本件において,
これに反する事情は認められない。
以上からすると,ハ-3号製品は,生産の効率化等のためにモジュール構造を
採用したにとどまると見ることが十分可能であり,樹脂封止成形の生産現場にお
ける接続・分離(増減設)を特に予定した構造になっているとは認められないか
ら,本件発明の構成要件B及びEの「着脱自在の状態で装設可能」の要件を充足
しないというべきである。そして,他の被告製品がハ-3号製品と異なる構造を
有していると認めるに足りる証拠はないから,他の被告製品についても,同様に
本件発明の構成要件B及びEの「着脱自在の状態で装設可能」の要件を充足しな
いというべきである。
したがって,被告製品は本件発明の技術的範囲に属しない。
(6)アこれに対し原告は,被告の広報資料等には,被告製品は拡張が可能で,少量
から大量生産まで1台で幅広い対応が可能な装置であるなどとする記載がある
と指摘し,これは,被告製品が樹脂封止装置に備えられたプレスモジュールと
他のプレスモジュール壁面をボルト・ナットで螺着することによって装設でき,
これによってプレスモジュールの数を着脱自在に増減可能な構成を有している
ことの証左であると主張する。
確かに,被告の広報資料(甲6ないし14,25ないし28)には,上記の
記載があり,電波新聞(甲28)においても同様の紹介記事が掲載されている
ことが認められる。しかし,これら広報資料等の文言は,プレスモジュールが
増減可能であることを示すものであるということはできるが,それが電子部品
に樹脂封止成形を行う生産現場でなされるものであるのか,被告製品を製造す
る段階においてなされるものであるのか,文言自体から直ちに明らかとはいえ
ないから,これをもって,被告製品がプレスモジュールを「着脱自在」に装設
可能な構成を有することを示すものとは認められない。
イまた,原告は,ハ-2号製品(ハ号製品のうち4枚取りのもの)のモニター
コントロール画面には,同製品に実装されていないプレスモジュール2台分の
画像枠が表示されている(甲29)ことから,増設が予定されていると主張す
る。
しかし,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●上記の
原告指摘の点は,複数のハ号製品の専用プログラム間で,コントロール画面の
表示デザインが共通化されているにすぎないと見ることも十分可能であり,こ
れをもってプレス設置ユニットの増設が予定されていると認めることはできな
い。
3以上の次第で,その余の争点につき検討するまでもなく,原告の請求はいずれ
も理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官
髙松宏之
裁判官
田原美奈子
裁判官
大川潤子

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