弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     当審における未決勾留日数中五十日を本刑に算入する。
     当審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。
         理    由
 弁護人の控訴趣意は別紙のとおりである。
 原審が原判示第一の事実を認定するに当り検察官作成の被告人の供述調書中の被
告人の供述記載を証拠として引用したことは所論のとおりである。しかして右供述
調書は被告人の不利益な事実の承認を内容とするものであることは該調書自体に徴
し明白であるから任意性があれば訴訟関係人が証拠とすることに同意したと否とを
問わず之を証拠として採用し得ることは刑事訴訟法第二百二十二条に明定するとこ
ろであるから先ず右調書の任意性を検討して見ると同調書の冒頭に「右の者に対す
る詐欺及窃盗被疑事件につき昭和二十五年七月八日旭川地方検察庁において本職は
あらかじめ供述を拒むことができる旨を告げて取調べたところ被疑者は任意左の通
り供述した」旨の記載があり其の末尾に被告人の署名拇印と共に「右の通り録取し
読み聞けたところ誤りない旨申立て署名拇印した」旨の記載があり、且その供述内
容は理路整然としている点を原審証人Aの供述記載等と比照考量すれば右調書の任
意性は十分に認定できるものであつて記録を精査するも右認定を左右<要旨>するに
足る証拠がない。もつとも原審各公判調書中には右供述調書につき其の任意性を調
査した旨の記載はないが其の記載のない事実を以て原審が任意性の調査をし
なかつたとは認められないのみならず、原審第一、二回公判調書の各記載によれば
原審は其の第一回公判期日において検察官の右供述調書の証拠請求に対し弁護人の
証拠調に異議がないが其の内容の真実性を争う旨の意見を聞いた上一時其の証拠調
を留保し、第二回公判期日に至り留保中の右調書を証拠として採用其の取調をなし
たことが明白であつて右の経過に徴すれば原審は上叙説示の如き見地より該調書に
任意性ありと認めて之を証拠として採用したことが窺われるから、原審が之を判決
に証拠として引用するに何等の支障があるものではない。従つて原審の訴訟手続に
は何等の違反もなく論旨は理由がない。
 第二点
 本件記録及び原審の取調べた証拠に現われた被告人が過去四十数年間に詐欺、窃
盗等の前科十数犯を重ねた事実其の他諸般の事情を綜合すれば弁護人の所論を考量
に容れても原審が被告人に対し懲役二年の刑を科したのは量刑相当であつて、論旨
は理由がない。よつて刑事訴訟法第三百九十六条により本件控訴を棄却し刑法等二
十一条により当審における未決勾留日数中五十日を本刑に算入し刑事訴訟法第百八
十一条第一項に則り当審における訴訟費用は全部被告人の負担とし主文のとおり判
決する。
 (裁判長判事 黒田俊一 判事 猪股薫 判事 鈴木進)

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