弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人A、同B、同Cの弁護人山岸龍、同大黒正恭の上告趣意は、後記のとおり
である。
 弁護人山岸龍の上告趣意について。
 所論は、事実審に事実の誤認があることを主張し、弁護人等が原審において証人
Dの尋問及び検証の証拠調を請求するため、終結した弁論の再開を申請したのに、
原審がこれを許さなかつたことは、憲法三七条二項に違反すると主張する。
 しかしながら、裁判所は、適当と認めるときに終結した弁論を再開することがで
きるのであつて、再開すると否とは裁判所の自由裁量に属するのであるから、再開
しなかつたからとて違法ということはできない。のみならず、憲法三七条二項は、
裁判所は被告人側の申請にかかる証人であつても不必要と思われる者まで悉く訊問
しなければならないという趣旨でないこと、当裁判所大法廷判決(昭和二三年(れ)
八八号同二三年六月二三日大法廷判決、昭和二三年(れ)二三〇号同二三年七月二
九日大法廷判決)の判示するところであるから、論旨は理由がない。
 弁護人大黒正恭の上告趣意について。
 所論被告人Aの司法警察官Eに対する供述調書を証拠としたことが憲法三八条一
項の法意に反するとの論旨は、右被告人の供述が任意性を欠くことを前提とする。
しかしながら、右供述が強要された自白であつて任意性を欠くものであることは記
録上確認し得ないので、この点に関する原審の判断は相当であり、論旨は理由がな
い。所論証人Eの証拠調申請を原審が却下したことが憲法三七条二項に反するとの
論旨については、右証人は第一審公判で証人として喚問され、被告人本人及び弁護
人等から自白強要の点につき反対尋問を受けているのであるから、原審がさらに右
証人申請を採用しなかつたからとて必ずしも所論のように不当ということはできな
い。所論違憲の主張の理由ないことは、弁護人山岸龍の上告趣意につき引用した当
裁判所大法廷判決の趣旨に徴し明らかである。なお論旨は、銀行の回答書の信憑性
に関し弁護人の申請した弁論の再開を原審が許さなかつたことを目して、憲法三七
条一項の保障する公平な裁判所の裁判を受ける権利を蹂躙するものであると主張し
ているが、同条にいわゆる「公平な裁判所の裁判」とは、組織、構成等において不
公平の惧れのない裁判所の裁判」をいうものであつて、所論のような趣旨でないこ
とは、当裁判所大法廷判決(昭和二二年(れ)二九〇号同二三年六月三〇日大法廷
判決)の判示するとおりである。その他の論旨は、事実誤認の主張に帰し、刑訴四
〇五条の上告理由に当らない。
 また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和三〇年一一月二九日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎
            裁判官    垂   水   克   己

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