弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人本郷桂、同井上貫一の上告理由第一について。
 上告人が本訴において主張する被上告人らの不法行為とはなにを指すのか、必ず
しも明確ではないが、要するに、上告人が被上告人B1からその所有の本件土地を
同人の代理人と称する被上告人B2を通じて買い受け、その地上に本件建物を建築
所有していたところ、その後被上告人B1から上告人に対して本件土地を売り渡し
たことなしとして土地所有権に基づき本件建物収去本件土地明渡を求める訴を提起
され、被上告人B2に被上告人B1のための代理権がなかつたとの理由で上告人が
敗訴し、該確定判決に基づいて建物収去土地明渡の強制執行を受けたと主張して、
本件土地を取得しえず本件建物を収去すべきことにより生じた損害の賠償を求める
趣旨のものと解される。そして、原判決(引用の第一審判決)の確定したところに
よれば、上告人に対して建物収去土地明渡を命じた該判決は昭和三四年四月五日確
定したものであり、また、上告人は右訴訟の係属中すでに被上告人B1と被上告人
B2との間に使用関係が存在したことを知つていたというのである。しからば、上
告人としては、右判決確定の日には被上告人に対して建物収去土地明渡義務を負担
したことにより自己に損害が発生したことおよび加害者がなにびとであるかを確知
するにいたつたものというべく、したがつて、上告人の本訴請求が被上告人らの共
同不法行為を理由とする損害賠償を求めるものであろうと、また、被上告人ら間の
使用関係の存在を前提とし、被上告人B2を加害者、被上告人B1をその使用者と
してこれに対する不法行為に基づく損害賠償を求めるものであろうと、その損害賠
償請求権については、おそくとも右判決確定の日から消滅時効が進行したものとい
うべきである。それゆえ、これと同趣旨のもとに本件損害賠償請求権について消滅
時効の完成を認めた原審の判断は正当であり、これに所論の違法は存しない。論旨
は採用しえない。
 同第二について。
 原審が、所論民法七一五条による使用者責任の点にふれたのは、使用者としての
被上告人B1に対する請求に関してであるから、被上告人B2に関して原判決に理
由不備の違法がある旨の論旨は、原判決を正解しない結果によるものであり、被上
告人B2に対する損害賠償請求権の消滅時効の起算点に関する原審の判断に、所論
の違法は認められない。したがつて、論旨は採用するによしない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    色   川   幸 太 郎

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