弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成20年5月30日判決言渡
平成19年(ネ)第10077号損害賠償請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所平成19年(ワ)第14650号)
口頭弁論終結日平成20年5月15日
判決
控訴人X
被控訴人株式会社日立製作所
訴訟代理人弁護士城山康文
同篠森重樹
主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴人の当審における予備的請求を棄却する。
3控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2被控訴人は,控訴人に対し,617万2134円及びこれに対する昭和62
年1月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
第2事案の概要
1事案の要旨
被控訴人(1審被告)の元従業員である控訴人(1審原告)は,平成19年
6月11日,被控訴人に対し,平成16年法律第79号による改正前の特許法
35条(以下,「特許法」という。)に基づき,控訴人が被控訴人に承継させ
た職務発明に係る特許権について,相当対価の一部として昭和61年実施分に
対応する617万2134円の支払を求めて訴えを提起した(訴状送達日は,
平成19年6月29日)。
原審は,控訴人が被控訴人から本件特許発明に係る特許を受ける権利の承継
の対価の一部として平成3年3月ころに6万6660円を受領した時から10
年経過後の平成13年3月ころに消滅時効が完成したことを理由として,控訴
人が支払を求めていた昭和61年実施分の相当対価の支払請求を棄却した。
これに対して控訴人は,原判決を不服として本件控訴を提起し,当審におい
て,予備的請求として,平成8年実施分の日本国内生産分全部に対する相当対
価3054万8500円及びその遅延損害金の支払請求権の一部である617
万2134円及びこれに対する弁済期である平成9年3月31日から支払済み
まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求を追加した。
2当事者間に争いがない事実,争点及びこれに関する当事者の主張
次のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」の「事案の概要」(原
判決1頁21行目から8頁14行目まで)に記載のとおりであるから,これを
引用する。
(1)当審における控訴人の主張
ア昭和61年実施分の相当対価支払請求について
被控訴人は,別件訴訟(東京地方裁判所平成10年(ワ)第16832号
事件)において,「相当対価の支払は,年末の表彰後の褒賞金の支払のみ
により行うものではなく,給料,退職金又は年金で支払う金額の中にも含
められている。」旨主張している。そうすると,相当対価の支払時期は,
年金の支払終了時になるはずであり,控訴人の年金の支払はまだ開始され
ていないから,相当対価の支払請求権の消滅時効も完成していない。
イ平成8年実施分の相当対価支払請求について
(ア)BA6303が本件特許発明の実施品であること
UnionElectronicDistributorsのネッ
トカタログ(甲16)に,ローム株式会社(以下「ローム社」とい
う。)の製造に係るBA6303について「HITACHIPART
S」と記載されていることからすれば,BA6303が,被控訴人の開
発に係るローム社製造のICであることは明らかである。また,被控訴
人のサービス技術資料(乙11)においても,BA6303(ソフトラ
ンディング制御用IC)が被控訴人製品(VT−F430,VT−F5
40,VT−S630,VT−S640)に使用されていることが記載
されている。そして,別紙「計算機シミュレーションによる鋸歯波電圧
のグラフ表示」及び別紙「計算機シミュレーションによるF/V変換器
の変換効率に関する考察」によれば,BA6303が,本件特許発明を
実施したICであることは明らかである。
(イ)平成8年実施分の相当対価の額
a被控訴人の平成8年生産高=日本総生産台数×被控訴人のシェア×
平均単価=6710万3000台×3.1%×2万9371円≒61
0億9700万円
b特許収入=平成8年生産高×相当対価のみなしロイヤリティー率=
610億9700万円×0.3%=1億8329万1000円
c平成8年実施分の相当対価=みなし特許料×(1−被控訴人貢献
度)×(他の共同発明者との関係での控訴人の貢献度)=1億832
9万1000円×(1−0.5[被控訴人会社の貢献度50%])×
(100%÷3)=3054万8500円
よって,控訴人は,被控訴人に対し,特許法35条に基づき,①主位的
に,昭和61年実施分の相当対価617万2134円及びこれに対する昭
和62年1月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延
損害金の支払を,②予備的に,平成8年の日本国内生産分全部に対する相
当対価3054万8500円の一部である617万2134円及びこれに
対する平成9年3月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合によ
る遅延損害金の支払を求める。
(2)当審における被控訴人の反論
ア昭和61年実施分の相当対価支払請求に対し
(ア)勤務規則等において,相当対価を分割支払とし,一定の期間ごとに
特許発明の実施の実績や実施料収入に応じた額を使用者から従業者に支
払う旨の定めがされている場合にあっては,相当対価のうち分割された
各期間における特許発明の実施や実施料収入に対応する分については,
各期間に対応する分ごとに当該支払時期から消滅時効が進行すると解す
べきである。
また,各期間における各支払が勤務規則等に基づき各支払時期に対応
する期間についての特許発明の実施や実施料収入に対応する分として支
払われたものであれば,その支払は,それ以前の期間に対応する相当対
価に関するものではないから,それ以前の期間に対応する相当対価に関
する時効完成前における債務の承認(民法147条3号)等に当たらない
と解すべきである。
(イ)上記を前提とすると,昭和61年実施分の実績補償金支払請求権の
消滅時効の起算日及び完成日は,次のとおりとなる。
a昭和61年1月1日から同年6月30日までの実績についての実績
補償金
実績補償金については,昭和57年5月6日付けで改正及び施行さ
れた「発明,考案等に関する表彰規程」(乙2)及びその第3条2項
に基づき定められ同日付けで改正及び施行された「発明,考案等に関
する表彰審査基準」(乙3)が,それぞれ適用される。乙3の第1.
1条により特許賞の表彰が毎年行われ,同第2条柱書により「実施製
品の売上高R」が特許賞の一つの基準とされ,同第2.2.1条によ
り「前年7月初より当年6月末までの年間売上」が「売上高(R)」
とされる。特許賞の金額は,乙2の第5条2項により定められてい
た。なお,本件特許の出願時に適用されていた昭和48年7月5日改
正及び施行の「発明,考案等に関する表彰規程」(乙4)及びその第
4条2項に基づき定められ同日付けで改正及び施行された「特許賞表
彰審査基準」(乙5)も,同様に定められていた。
昭和60年7月1日から昭和61年6月30日までの期間の実績に
対する特許賞は,乙2の第6条に基づく通達(乙6「昭和61年度特
許関係表彰の件」)により,昭和61年12月下旬の社長表彰式で表
彰され,遅くとも同年12月31日に支払われた。
したがって,上記の相当対価支払請求権の消滅時効の起算日は,昭
和61年12月31日であり,平成8年12月31日の経過により,
その消滅時効が完成した。被控訴人は平成19年11月28日の第1
回口頭弁論期日においてその消滅時効を援用した。
そして,上記の消滅時効は,他の期間の実績に対する実績補償金の
支払によっては,中断しない(この点,原判決は,「平成3年3月こ
ろの6万6660円の支払及びこれに先立つ支払」について,各支払
の都度時効は中断したと判断している(原判決10頁15行∼16
行)が,同支払は,他の期間の実績に対する実績補償金の支払である
から,原判決の上記判断は誤りである。)。
b昭和61年7月1日から同年12月31日までの実績についての実
績補償金
昭和61年7月1日から昭和62年6月30日までの期間の実績に
対する特許賞は,乙2の第6条に基づく通達(乙7「昭和62年度特
許関係表彰の件」)により,昭和62年12月下旬の社長表彰式で表
彰され,遅くとも昭和62年12月31日に支払われた。したがっ
て,その消滅時効の起算日は,昭和62年12月31日であり,平成
9年12月31日の経過により,消滅時効が完成した。被控訴人は平
成19年11月28日の第1回口頭弁論期日においてその消滅時効を
援用した。
そして,この消滅時効は,他の期間の実績に対する実績補償金の支
払によっては中断しない(この点,原判決は,「平成3年3月ころの
6万6660円の支払及びこれに先立つ支払」について,各支払の都
度時効は中断したと判断している(原判決10頁15行∼16行)
が,同支払は,他の期間の実績に対する実績補償金の支払であるか
ら,原判決の上記判断は誤りである。)。
(ウ)実績補償金請求権と年金請求権は全く別個の請求権であるから,相
当対価の消滅時効が完成していないとする控訴人の主張は失当である。
イ平成8年実施分の相当対価支払請求に対し
(ア)ローム社製品BA6303が本件特許発明の実施製品であるとの立
証がないこと
a被控訴人製品(VT−F430,VT−F540,VT−S63
0,VT−S640)で使用されているBA6303(ソフトランデ
ィング制御用IC)が本件特許発明の実施製品であることを否認す
る。BA6303は,ローム社が汎用品として設計及び製造し,広く
一般に販売した製品であり,被控訴人は,その設計又は製造に全く関
与していない。したがって,被控訴人は,BA6303の回路構成に
ついての資料を保有していない。
b本件特許発明の特許請求の範囲は,以下の構成要件に分説される
(甲7の2)。
A入力信号の周波数に比例した繰り返し周波数で両者のパルス間隔
が接近し第1のパルスより第2のパルスの方が先方した2つのパル
スを発生するパルス発生回路と,
Bこのパルス発生回路に接続され第1のパルスにより駆動され鋸歯
状波を発生する鋸歯状波発生回路と,
Cこのパルス発生回路に接続され第2のパルスにより駆動され鋸歯
状波をサンプルホールドするサンプルホールド回路とを備え,
Dこのサンプルホールド回路は,
D1前記鋸歯状波発生回路にベースが接続されコレクタが電源の
一端に接続された第1トランジスタと,
D2第1トランジスタのエミツタと電源の他端間に接続されたコ
ンデンサと,
D3第1トランジスタのベースと電源の他端間に接続され第2の
パルスにより駆動され第2のパルス入力時に第1トランジスタ
を導通してコンデンサに鋸歯状波をサンプルホールドするトラ
ンジスタ装置と,
D4第1トランジスタのエミツタにコレクタが接続されエミツタ
が電源の他端に接続されベースに第2のパルスが入力されてコ
ンデンサによるサンプリングを高速化する第2トランジスタと
からなる
Eことを特徴とするf−V変換器。
cこれに対して,BA6303のブロックダイアグラムを参照する
と,BA6303の構成は,鋸歯状波発生回路とサンプルホールド回
路とを有するが,以下のとおり,本件特許発明の構成要件を充足する
ものではない(甲14)。
Aパルス発生回路を有しているか否か不明である。
B鋸歯状波発生回路がパルス発生回路に接続されているか否か不明
であり,また,第1のパルスにより駆動されているか否か不明であ
る。
Cサンプルホールド回路がパルス発生回路に接続されているか否か
不明であり,また,第2のパルスにより駆動されているか否か不明
である。

D1第1トランジスタを有しているか否か不明である。
D2コンデンサを有しているか否か不明である。
D3トランジスタ装置を有しているか否か不明である。
D4第2トランジスタを有しているか否か不明である。
d以上のように,BA6303が本件特許発明を実施した製品である
との立証はされていない。
(イ)また,被控訴人は,平成8年においてBA6303を使用していな
い。BA6303が搭載された被控訴人製ビデオデッキは,平成元年又
は平成2年に発売された4機種(乙11記載のVT−F430,VT−
F540,VT−S630,VT−S640)及び平成6年に発売され
た2機種(製品型番7B−S60,7B−F61)のみであり,これら
のビデオデッキは,最も遅いものでも平成7年9月にはその生産を終了
した。したがって,仮にBA6303が本件特許発明を実施した製品で
あったとしても,平成8年において被控訴人による本件特許発明の実施
はない。
(ウ)さらに,被控訴人は,ローム社に対して本件特許の実施を許諾した
ことがなく,ローム社から本件特許の実施許諾の対価を受領したことも
なく,ローム社から本件特許発明について利益を得たこともない。した
がって,本件特許発明の独占の利益を観念することができず,被控訴人
が本件特許発明についての特許を受ける権利の譲渡を受けたことにより
利益を受けたことはない。
(エ)平成8年1月1日から同年3月20日までの期間の実績についての
実績補償金支払請求権の時効消滅
平成8年1月1日から同年3月20日までの期間の実績についての実
績補償金ついては,平成7年4月10日付けで改正及び施行がされた
「発明考案等に関する補償規程」(乙8)並びにその第11条に基づき
定められて同日付けで改正及び施行がされた「発明考案等に関する補償
基準」(乙9)が,それぞれ適用される。乙8の第6条5項及び6項に
より実績補償金は毎年支払われ,乙9の「実績補償基準(発明考案)」
第2.1条(1)により「前年3月21日より当該年度3月20日まで
の1年間」の売上高がベースとされた。そのため,平成7年3月21日
から平成8年3月20日までの期間に係る実績補償金については,乙8
の第6条6項により,遅くとも平成8年12月31日に支払われた。し
たがって,消滅時効の起算日は,平成8年12月31日であり,平成1
8年12月31日の経過により,その消滅時効が完成した。
被控訴人は,平成19年11月28日の第1回口頭弁論期日におい
て,上記消滅時効を援用する旨の意思表示をした。
第3当裁判所の判断
当裁判所も,控訴人の被控訴人に対する請求は,理由がないものと判断す
る。
その理由は,次のとおり,訂正付加するほか,原判決の「事実及び理由」欄
の「第3当裁判所の判断」の1及び2(原判決8頁18行目から10頁19
行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
1原判決の訂正
(1)原判決10頁14行目から16行目にかけての「平成3年3月ころの6
万6660円の支払及びこれに先立つ支払によりその都度中断したもの
の,」を,「平成3年3月ころの6万6660円の支払及びこれに先立つ支
払が昭和61年の実績に対する実績補償金の支払の趣旨を含んでいたと仮定
した場合には,それらの支払によりその都度中断したということができるも
のの,」と改める。
(2)原判決10頁18行目の「認められる。」の次に,「なお,平成3年3
月ころの6万6660円の支払及びこれに先立つ支払がいずれも昭和61年
の実績分の実績補償金の支払の趣旨を含んでいなかったと仮定すると,昭和
61年1月1日から同年6月30日までの期間の実績に係る実績補償金支払
請求権の消滅時効の起算日は昭和61年12月31日のままであって消滅時
効の中断がなく,平成8年12月31日の経過によりその消滅時効が完成し
たものと認められるとともに,昭和61年7月1日から同年12月31日ま
での期間の実績に係る実績補償金支払請求権の消滅時効の起算日は昭和62
年12月31日のままであって同様に中断がなく,平成9年12月31日の
経過によりその消滅時効が完成したものと認めることができる(乙2∼
7)。」を加える。
(3)原判決10頁18行目の「そして,」の後に,「平成19年7月26日
の口頭弁論期日において,」を加える。
2当審における控訴人の主張に対する判断
(1)昭和61年実施分の相当対価支払請求権について
控訴人は,被控訴人が,別件訴訟(東京地方裁判所平成10年(ワ)第16
832号事件)において,相当対価の支払は,年末の表彰後の褒賞金の支払
のみにより行うものではなく,給料,退職金又は年金で支払う金額の中にも
含められている旨主張した点をとらえて,そうであれば,相当対価の支払時
期は,年金の支払終了時になるから,相当対価の支払請求権の消滅時効も完
成していないと主張する。
しかし,控訴人のこの主張は,以下のとおり理由がない。すなわち,被控
訴人が別件訴訟においてした上記主張は,相当対価の額の算定に当たり考慮
すべき諸事情の一つを述べたにすぎないものと理解すべきであって,年金支
払請求権と実績補償金支払請求権とは別個の権利であることに照らすなら
ば,被控訴人が上記主張をしたことにより,相当対価の支払時期が年金の支
払終了時となるとすべき余地はない。
(2)平成8年実施分の相当対価支払請求(予備的請求)について
ア本件特許発明は,アナログ方式によるモータ制御に関するものであって
(甲7の2),被控訴人においては,据置型ビデオカセットレコーダー
(「VTR」又は「ビデオデッキ」)の主制御ICのモータ制御用として
使用,実施していたものであるところ,例えば,被控訴人が製造していた
「日立Hi−FiビデオデッキVT−F330」に関する「サービス技術
資料」(平成1年5月。乙10)においては,「デジタルサーボシステ
ム」として,「モータ或いはテープからの比較信号を基準信号とデジタル
的に比較して誤差検出し,これをDC電圧に変換してモータ制御電圧とす
る」方式(デジタル方式)が採用されているとの記載がされ,更に「シス
テムの主要部はメイン処理IC601内に含まれる」との記載がされてお
り(乙10のサーボ回路1−2),「日立Hi−Fiビデオデッキ」に関
する「サービス技術資料」(平成2年6月。乙11)の「主制御IC型式
一覧表」によれば,その時点で販売されていた6機種について,サーボ系
の「速度制御/位相制御」がすべて「HD49741NT(IC60
1)」とされているから,昭和61年ころには,ほぼ全数がデジタル方式
による制御に移行し,遅くとも平成2年にはその移行が完了し,それ以降
は,アナログ方式による主制御ICのモータ制御が行われることがなくな
っていたものと認めることができる。そして,それから更に6年経過後の
平成8年の時点においては,主制御ICのモータ制御について,本件特許
発明が実施されることはなかったものと認めるのが相当である。
イこれに対し,控訴人は,乙11によれば,BA6303が被控訴人製品
(VT−F430,VT−F540,VT−S630,VT−S640)
においてソフトランディング制御用ICとして使用されている旨記載され
ているが,同部品は,本件特許発明を実施した製品であると主張する。
しかし,控訴人の上記主張は,以下のとおり採用できない。
まず,たとえローム社製造の上記製品BA6303が本件特許を実施し
た製品であると仮定したとしても,これを平成8年当時において被控訴人
が生産販売していたことを認めるに足りる証拠はない。かえって,本件特
許は,その第13年分から第15年分の特許料が平成5年6月29日に納
付されていたにもかかわらず,第16年分特許料については,平成8年1
0月13日不納付を原因として平成9年9月3日にその登録が抹消された
こと(乙12特許登録原簿),被控訴人はBA6303を搭載したHi−
Fiビデオデッキを平成8年には生産販売していなかったと述べられてい
ること(乙14陳述書)を総合すれば,被控訴人は,平成8年に本件特許
を実施していなかったものと認められる。そうすると,平成8年実績分に
係る控訴人の被控訴人に対する実績補償金支払請求は,理由がない。
また,仮に,被控訴人が,平成8年に,ローム社製造のBA6303が
搭載されたHi−Fiビデオデッキの生産販売を継続していたとしても,
乙15(陳述書)によれば,被控訴人はBA6303を製造販売するロー
ム社に対して本件特許の実施を許諾したことはなく,また,ローム社から
本件特許の実施許諾の対価を受領したこともないのであるから,ローム社
の製品BA6303に関して平成8年実績分として被控訴人(使用者)の
受けるべき利益が存在したと認めることができない。したがって,本件特
許による利益の存在を前提とする平成8年実績分に係る控訴人の被控訴人
に対する実績補償金支払請求は,理由がない。
3結論
以上によれば,控訴人の被控訴人に対する特許法35条に基づく,昭和61
年実施分の相当対価617万2134円及びこれに対する昭和62年1月30
日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求(主
位的請求)及び平成8年の日本国内生産分全部の実績に対する相当対価305
4万8500円の一部である617万2134円及びこれに対する平成9年3
月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請
求(当審で追加された予備的請求)は,理由がないのでいずれも棄却すること
とし,控訴人の請求(主位的請求)を棄却した原判決は相当であって,本件控
訴は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官飯村敏明
裁判官齊木教朗
裁判官嶋末和秀

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛