弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件抗告を棄却する。
     抗告費用は抗告人の負担とする。
         理    由
 抗告人は抗告の趣旨として、「原決定を取消す、相手方より抗告人に対する山口
地方法務局所属公証人A作成第○△□□号公正計書の執行力ある正本に基ずいて、
別紙目録記載物件につきなした強制執行はこれを許さない」との裁判を求めた。そ
の理由の要旨は左記の通りである。
 (一) 山口地方裁判所所属執行吏B代理Cは相手方の委任により前示公正証書
に基ずき抗告人に対する強制執行として昭和三十一年六月二十八日山口県a町大字
bD方において同女所有の別紙目録記載物件の差押をなした。しかし、同女は抗告
人と内縁関係を有するに止まり、同女の右住所は抗告人の住所ではないのであるか
ら、同女方に不法に侵入して同女の意思に反して同女所有の財産を差押えた本件執
行は違法である。そして、右差押物件が競売せられた暁においては、抗告人は同女
より損害賠償の請求を受けるおそれがあるから、抗告人は本件執行の排除を求める
利益を有する。
 (二) 本件差押調書に記載された抗告人の住所はDの住所であつて、前示公正
証書に表示せられた抗告人の住所並びに住民票記載の抗告人の住所及び本籍とそれ
ぞれ符合しないから、本件差押手続は違法である。
 右に対する、当裁判所の判断は次の通りである。
 (一) 執行吏が誤まつて、債務者以外の第三者の所持する第三者所有の有体動
産を差押えた場合には、執行吏はその所有権の実体的帰属を判定する職責を有しな
いのであるから、債務者は勿論その第三者も、右物件が債務者の所有に属しないと
の実体上の理由に基ずき民事訴訟法第五百四十四条による異議を申立てることは許
されない。その第三者は右の如き実体上の理由に基ずき同法第五百四十九条による
訴を提起すべきものである。もつとも、第三者は右差押が同法第五百六十七条に反
してその者の任意に提供しない動産に対しなされたもので<要旨>あることを理由と
して同法第五百四十四条による異議を申立て得ることは明らかであるが、元来同法
第五百六十七条は第三者の所持を保護することを目的とする規定であるか
ら、同条違反の差押によりその所持を侵された第三者以外の者は、たとえ債務者と
いえども、同条の違反を理由として執行方法に関する異議を申立て得ないものと解
するのを相当とする。従つて、仮に債務者が同法第五百六十七条に違反した差押に
より間接的に損害を被むるおそれがあるとしても、債務者はこれを理由として異議
を申立て得ないものといわねばならぬ。また、債務者の住所以外の場所にある有体
動産でも、債務者の所持に属するものと認められる限り、執行吏は同法第五百六十
六条によりこれを差押え得ることは明らかであるから、本件差押が債務者たる抗告
人の住所以外の場所でなされたからと言つて、そのために本件差押が直ちに違法と
なるものではない。通常、債務者はその住所に存する有体動産を所持しており、他
人の住所においてこれを所持する場合は稀有であるというのに止まり、執行吏が債
務者以外の第三者の住所において債務者の所持に属する有体動産としてこれを差押
えた以上、その第三者は別として債務者はその物が第三者の所持に属し自己の所持
に属しないことを理由として執行方法の異議を申立て得ないのである。しからば仮
に抗告人主張の通り本件差押が債務者たる抗告人の内縁の妻Dの住所において同女
所有の物件について同女の意思に反してなされたものであつたとしても、抗告人が
これを理由として執行方法に関する異議の申立をなし得ないことは明らかである。
 (二) 公正証書或は有体動産差押調書に債務者の住所を表示するのは債務者の
同一性を明らかにするためであるから差押調書に表示された債務者の住所が債務名
義たる公正証書に表示された債務者の住所或は現実の債務者の住所と異なつていて
も、債務者の同一人であることが明白である限り、差押手続に瑕疵があるものとは
いえない。
 よつて、抗告人の異議申立を却下した原決定は相当であつて、本件抗告は理由が
ないからこれを棄却すべきものとし、抗告費用につき民事訴訟法第八十九条を適用
して主文の通り決定する。
 (裁判長裁判官 植山日二 裁判官 佐伯欽治 裁判官 松本冬樹)

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