弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人大山菊治の上告趣意第一点について。
 原判決はその前文に「当裁判所はA関与の上審理を遂げ左の通り判決する」と記
載してあつてAが検事であることを示すべき官名の記載がないのである。旧刑訴第
六九条第三項によれば公判に関与した検事の官氏名を記載すべきことを要求してい
るのであるから前示の如く判決に検事の官名を遺脱したことは右法条に違反したも
のであることは所論のとおりである、然し右のような法律違反は絶対的上告理由に
該らないのであるから、その違反が裁判に影響を及ぼす虞あるときに限り上告の理
由とすることができるのである。従つて右のような違法があつても事実上検事が公
判に関与し被告事件の陳述をなす等公判審理の手続が適法に施行された以上その違
法は判決に影響を及ぼさないことが明白であるからこれを上告の理由となすことは
できないのである。記録を調べてみると原審公判に検事Aが立会いその審理手続が
適法に施行せられたことは原審公判調書により明白であるから原判決書に立会検事
の官名の記載のないことを理由として原判決の破毀を求める論旨は採用できない。
 同第二点について。
 昭和二二年一二月三〇日公布になつた食糧管理法施行規則改正の農林省令は第百
三号であつて第百四号でないことは所論のとおりである。尤も昭和二二年一二月三
〇日の官報号外には第百四号として掲載されているのであるがそれは昭和二三年二
月一二日の官報によつて「第百三号」の誤りと正誤されているのである、原審は右
正誤に気付かず正誤前の官報の記載によつて第百四号として引用したものと思われ
るのである、それ故原判決に第百四号とあるのは第百三号の明白な誤記であるから
論旨は理由がない。
 同第三点について。
 しかしその判決をした当該裁判所の公判廷における被告人の自白は憲法第三八条
第三項並に刑訴応急措置法第一〇条第三項にいわゆる「本人の自白」にあたらない
ことは当裁判所の判例とするところである(昭和二三年(れ)第一六八号、同年七
月二九日大法廷判決)従つて原判決には何等所論のような違法なく論旨は理由がな
い。
 仍つて刑訴施行法第二条、旧刑訴第四四六条により主文の通り判決する。この判
決は右第三点について裁判官真野毅、同斎藤悠輔の補足意見、裁判官塚崎直義、同
井上登、同栗山茂、同穂積重遠の各少数意見がある外裁判官全員一致した意見によ
るものである。
 斎藤裁判官の補足意見及び塚崎、井上、栗山、各裁判官の少数意見は前掲大法廷
判決に、穂積裁判官の少数意見及び真野裁判官の補足意見は昭和二三年(れ)第一
五四四号、昭和二四年四月二〇日大法廷判決に示された通りである。
 検察官 岡本梅次郎関与
  昭和二四年五月四日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    塚   崎   直   義
            裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    井   上       登
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    島           保
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

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