弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告人の上告理由について。
 所論は、第一審において弁論更新手続がなされていないのにも拘らず、原判決は、
第一審において弁論更新手続がなされたものと判断した上、かような場合には更新
前の口頭弁論に関与した裁判官山田市平が控訴審において関与するも差し支えない
と判示したのは違法であるという。しかし記録によれば、第一審において弁論更新
の手続がなされて、同裁判官はその後の第一審口頭弁論および判決に関与していな
いことが明らかであるから、同裁判官がその後右判決の上訴審たる控訴審において
口頭弁論に関与し判決をしたからといつて、民訴三五条六号にいわゆる前審の裁判
に関与したものにはあたらないから、所論は理由がない。
 次に所論は、控訴判決には甲第一号証および甲一号証につき判断を遺脱した違法
があるのに、原判決はこの点に関する上告人の主張につき審理を尽さなかつた違法
があるという。しかし記録によれば、所論の甲一号証とは、第一審において提出さ
れ更に控訴審において再提出の後撤回の手続がなされた甲第一号証に外ならないこ
とが明らかであり、右のとおり撤回された書証について、控訴審がこれを証拠に供
しなかつたのは当然のことであるから、この点に関する原判決の判示は相当であつ
て、所論は理由がない。
 また所論は、原判決には証拠として提出した甲一号証(前記甲第一号証とは別個
のものであつて原審記録中の書証目録末尾一二四丁として編綴の分)、甲S第四号
証の一(DのEに対する告発状・原審記録一四六丁以下をさすものと思われる)、
甲S第四号証の二(告発状追完と題する書面・原審記録一五五丁以下をさすものと
思われる)、甲S第四号証の三(告発状追申と題する書面・原審記録一五七丁以下
をさすものと思われる)および甲S第四号証の四(告発状(第二)追完と題する書
面・原審記録一六三丁以下をさすものと思われる)につき、なんら審理判断しなか
つた違法があるという。しかし記録によれば、右各証拠はいずれも証拠申出の手続
がなされていないことが明らかであるから、原審がこれにつき審理判断の資料に供
しなかつたからといつて違法とはいえない。所論は理由がない。
 また所論は、控訴審における検証および鑑定の違法をいうが、いずれも独自の見
解に基づいて控訴審の適法になした訴訟手続を非難するに過ぎず、この点に関する
原判決の判断はすべて首肯できるから、所論は理由がない。
 また所論は、書証の提出および調書の作成に関し、その他職務に関して裁判官も
しくは裁判所職員または鑑定人が罪を犯し、または裁判官が被上告人側から賄賂を
収受しているというが、記録によるもなんらこれを認めるに足る証拠はなく、従つ
て公訴時効完成により右罪につき有罪の確定判決が得られないとの所論は前提を欠
くものであるから理由がない。
 更に所論は、控訴審が採用した証言、書証および鑑定の結果はすべて虚偽である
というが、記録によれば、右証拠のいずれについてもこれが虚偽でありしかも民訴
四二〇条二項所定の事由があるものとは到底認められないから、この点に関する原
判決の判断は相当であつて、所論は理由がない。
 その他所論は縷縷述べるが、そのいうところは結局、控訴判決の適法になした事
実認定・証拠の取捨判断を、独自の見解に基づいて違憲もしくは違法として非難す
るに過ぎないから、採用できない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助

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