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裁判例


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平成12年(行ケ)第37号 審決取消請求事件(平成13年6月18日口頭弁論
終結)
          判           決
       原      告   ザ ゲイツ コーポレイション
       訴訟代理人弁護士   熊倉禎男
       同          辻居幸一
       同          宮垣 聡
       同          岩瀬吉和
       同    弁理士   箱田 篤
       被      告   特許庁長官 及川耕造
       指定代理人      森田ひとみ
       同          谷口浩行
       同          宮川久成
          主           文
      原告の請求を棄却する。
      訴訟費用は原告の負担とする。
      この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日
と定める。
          事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
 1 原告
   特許庁が平成10年審判第7542号事件について平成11年8月30日に
した審決を取り消す。
   訴訟費用は被告の負担とする。
 2 被告
   主文第1、2項と同旨
第2 当事者間に争いのない事実
 1 特許庁における手続の経緯
   原告は、1994年(平成6年)10月31日にアメリカ合衆国においてし
た特許出願に基づく優先権を主張して、平成7年10月31日、名称を「エチレン
-アルファ-オレフィンベルティング」とする発明につき国際出願をし(PCT/
US95/14237、特願平8-514852号)、平成8年6月28日に特許
庁長官に対し所定の翻訳文を提出したが、平成10年1月20日に拒絶査定を受け
たので、同年5月11日、これに対する不服の審判の請求をした。
 特許庁は、同請求を平成10年審判第7542号事件として審理した上、平
成11年8月30日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その
謄本は同年9月29日原告に送達された。
 2 平成9年12月4日付け及び平成10年6月4日付け各手続補正書をもって
補正された明細書(以下「本件明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1~
6記載の発明(以下、単に「請求項1~6に係る発明」などと表記する。ただし、
請求項1記載の発明のみを指す場合には「本願発明」という。)の要旨
1.下記の(a)、(b)、(c)からなる、フリーラジカル促進物質を用い
て硬化されるエラストマー配合物から構成される、溝車とかみ合うのに適合したV
-ベルト、マルチ-V-リブ付ベルト、同期ベルト、エアスプリング、又はエンジ
ン台。
(a)エチレン-アルファ-オレフィンエラストマー100重量部;
(b)前記エラストマー100重量部当たり約1~約20重量部の、α-β-
不飽和有機酸の金属塩;および
(c)前記エラストマー100重量部当たり約25~約250重量部の補強充
填剤。
2.前記エチレン-アルファ-オレフィンエラストマーが下記:
(a)エチレンプロピレンコポリマー;
(b)エチレンオクテンコポリマー;
(c)エチレンプロピレンジエンターポリマー;および
(d)それらの混合物、
からなる群から選択される、請求の範囲1記載のV-ベルト、マルチ-V-リ
ブ付ベルト、同期ベルト、エアスプリング、又はエンジン台。
3.前記エチレン-アルファ-オレフィンを、エチレン-アルファ-オレフィ
ンエラストマーの重量を基準として25重量%までの下記:
(a)シリコーンゴム;
(b)ポリクロロプレン;
(c)エピクロロヒドリン;
(d)水素化ニトリルブタジエンゴム;
(e)天然ゴム;
(f)エチレン-酢酸ビニルコポリマー;
(g)エチレンメタクリレートコポリマーおよびターポリマー;
(h)スチレンブタジエンゴム;
(i)ニトリルゴム;
(j)クロル化ポリエチレン;
(k)クロロスルホン化ポリエチレン;
(l)アルキル化クロロスルホン化ポリエチレン;
(m)トランスポリオクテナマー;
(n)ポリアクリルゴム;
(o)ブタジエンゴム;および
(p)前記の混合物、
からなる群から選択される第2のエラストマー材料とブレンドする請求の範囲
1又は2記載のV-ベルト、マルチ-V-リブ付ベルト、同期ベルト、エアスプリ
ング、又はエンジン台。
4.前記α-β-不飽和有機酸の金属塩が、アクリル酸、メタクリル酸、マレ
イン酸、フマル酸、エタクリル酸、ビニル-アクリル酸、イタコン酸、メチルイタ
コン酸、アコニチン酸、メチルアコニチン酸、クロトン酸、アルファ-メチルクロ
トン酸、桂皮酸および2、4-ジヒドロキヒ桂皮酸(「2、4-ジヒドロキシ桂皮
酸」の誤記と認める。)からなる群から選択される酸の金属塩を含有する請求の範
囲1乃至3のいずれかに記載のV-ベルト、マルチ-V-リブ付ベルト、同期ベル
ト、エアスプリング、又はエンジン台。
5.前記金属塩が
(a)ジアクリル酸亜鉛;および
(b)ジメタクリル酸亜鉛、
からなる群から選択される請求の範囲4記載のV-ベルト、マルチ-V-リブ
付ベルト、同期ベルト、エアスプリング、又はエンジン台。
6.前記硬化剤が、
(a)有機ペルオキシド;および
(b)電離線、
からなる群から選択される物質の有効硬化量である請求の範囲1乃至5のいず
れかに記載のV-ベルト、マルチ-V-リブ付ベルト、同期ベルト、エアスプリン
グ、又はエンジン台。
 3 審決の理由
   審決は、別添審決書写し記載のとおり、請求項1~6に係る発明は、いずれ
も特開平2-36246号公報(本訴甲第5号証、以下「引用例2」という。)及
び特開平6-116442号公報(平成6年4月26日公開、本訴甲第6号証、以
下「引用例4」という。)記載の各発明に基づいて、当業者が容易に発明をするこ
とができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることがで
きないとした。
第3 原告主張の審決取消事由
   審決の理由中、請求項1~6に係る発明の要旨の認定(審決書2頁5行目~
5頁末行)、引用例2、4の記載をそのまま摘記した部分の認定(同6頁2行目~
11頁2行目)、本願発明と引用例4記載の発明との一致点及び構成要件(c)に
係る相違点の認定(同11頁4行目~13頁8行目)は認める。
 審決は、本願発明と引用例4記載の発明との相違点を看過する(取消事由
1)とともに、相違点についての判断を誤り(取消事由2)、また、本願発明の顕
著な効果を看過し(取消事由3)、本願発明の容易想到性の判断を誤ったものであ
り、この誤った判断に基づいて、請求項2~6に係る発明の容易想到性についても
同様の誤った判断に至ったものであるから、違法として取り消されるべきである。
 1 取消事由1(相違点の看過)
   審決は、本願発明と引用例4記載の発明との対比において、以下の相違点を
看過した。
 (1) 引用例4記載の発明は、加硫ゴム組成物を製造するに際して、有機過酸化
物の分解が起こらない低温域で加熱反応させた後、引き続き有機過酸化物の分解が
起こる高温域で加熱反応させるという2段階の加硫方法を発明の必須の構成要件と
しているのに対し、本願発明は、このような2段階の加硫方法を必須の構成要件と
しない点(以下「相違点1」という。)。
 (2) 引用例4記載の発明は、補強充填剤の添加を必須の構成要件とするもので
はないのに対し、本願発明は、一定範囲の重量部の補強充填剤の添加を必須の構成
要件とする点(以下「相違点2」という。)。
    なお、引用例4(甲第6号証)には、「カーボンブラック、シリカ等の補
強剤・・・を必要に応じて適宜添加される」(段落【0025】)との記載はある
ものの、実施例においてこれらの補強充填剤は一切使用されていないから、上記の
点は相違点というべきである。
 (3) 引用例4記載の発明は、ゴムの材料としてH-NBR、NR、NBRをE
PDM(エチレンプロピレンジエン共重合体)と全く同列に扱っているのに対し、
本願発明は、EPDM等のエチレン-アルファ-オレフィンエラストマーに限定し
ている点(以下「相違点3」という。)。
 (4) 引用例4記載の発明において、EPDM100重量部当たりのα-β-不
飽和有機酸金属塩である不飽和カルボン酸金属塩の含有量は33重量部であるのに
対し、本願発明においては、EPDMを含むエチレン-アルファ-オレフィンエラ
ストマー100重量部当たりのα-β-不飽和有機酸金属塩の含有量は1~20重
量部である点(以下「相違点4」という。)。
    なお、引用例4(甲第6号証)には、その特許請求の範囲において、硫黄
加硫可能なゴム100部に対して不飽和カルボン酸金属塩を「10~100重量
部」添加するとの記載があるが、ゴムの材料としてEPDMを使用した場合におけ
る実施例におけるα-β-不飽和カルボン酸金属塩に該当するメタクリル酸亜鉛の
配合量は、すべて本願発明の数値範囲からはずれる「33重量部」であるから、上
記の点は相違点というべきである。
 2 取消事由2(相違点についての判断の誤り)
 (1) 審決は、その認定に係る本願発明と引用例4記載の発明との相違点、すな
わち「引用例4には本願請求項1に係る発明(注、本願発明)の構成要件である、
『(c)エラストマー100重量部当たり約25~約250重量部の補強充填剤』を
含む点について記載されていない点」(審決書13頁3行目~7行目)について、
「引用例4に記載されたゴム組成物において補強剤を添加しようとする際に、その
配合量として、同様の主要成分からなる引用例2に記載のゴム組成物において用い
られている補強剤の配合量である5~60重量部程度を採用することは容易に想到
し得たものというべきであり、その範囲を本願請求項1に係る発明のように『約2
5~約250重量部』に設定することは、補強効果等を勘案しつつ適宜実験的にな
し得たものというほかはない」(同14頁11行目~末行)と判断するが、誤りで
ある。
 (2) すなわち、引用例2(甲第5号証)には、「用いるジメタクリル酸亜鉛
の・・・好適な量はゴム状重合体100重量部当たり約50~約80重量部であ
る」(6頁右上欄17行目~左下欄1行目)と記載されているように、引用例2記
載の発明は、α-β-不飽和有機酸の金属塩であるジメタクリル酸亜鉛を約50~
約80重量部含有するのが好適な高分子組成物において、カーボンブラック等の補
強充填剤5~60重量部が添加されているものであって、そのような組成が全体と
して充足して初めて所定の作用効果を奏するものである。他方、引用例4記載の発
明において、ゴムの材料としてEPDMを用いた実施例は、上記1(4)で述べたとお
り、α-β-不飽和有機酸の金属塩であるメタクリル酸亜鉛の含有量を33重量部
としているから、引用例4記載の発明に引用例2記載の発明を組み合わせて本願発
明の補強充填剤の添加量に係る構成を想到することは困難というべきである。
    また、引用例2(甲第5号証)の実施例中、ゴム状重合体としてEPDM
を用いた実施例(実施例9、15、17、18、22~24)のいずれにおいても
補強充填剤は使用されていないから、上記の組合せによって本願発明の構成を得る
ことはできない。
 3 取消事由3(顕著な効果の看過)
   本願発明は、甲第7、第9及び第10号証の各宣誓供述書に示す試験結果並
びに甲第8号証の宣誓供述書に示す本願発明の実施による商業的成功から明らかな
ように、顕著な作用効果を奏するものであるところ、審決はこれを看過するもので
ある。
 (1) 甲第7号証の宣誓供述書は、本願発明の実施品である実施例Aと引用例4
の表2記載の「本発明例3」に準拠した比較例1とを種々の実験により対比した結
果を報告したものである。これによれば、本願発明の実施品は比較例よりも、耐磨
耗性、屈曲疲れ抵抗性及び引裂き抵抗性において、はるかに優れた顕著な作用効果
を示している。
 (2) 甲第9号証の宣誓供述書は、本願発明を実施した実施例Bと、ゴムの材料
をEPDMから、それぞれNR、NBR、HNBRに替えた比較例2~4につい
て、各種特性についての試験を行ったものである。これによれば、本願発明の実施
例Bが、NR、NBR、HNBRを用いた比較例に比べて、従来から備えていた耐
酸素性及び耐オゾン性において優れた耐性を維持しつつ、かつ、高温及び低温のい
ずれの条件の動的適用においても、耐磨耗性、屈曲疲れ抵抗性、引裂き抵抗性を高
め、すべての特性においてバランス良く優れた性能を示している。
 (3) 甲第10号証の宣誓供述書は、本願発明の組成に従った実施例Bと、その
組成から補強充填剤を除いた比較例5を材料としたベルトにつき、ベルト試験を行
った結果を比較したものである。これによると、実施例Bの組成物から形成された
ベルトが破損するまでの時間は比較例5と比べて10倍以上であるとの優れた結果
が得られた。
 (4) 甲第8号証の宣誓供述書にあるとおり、原告は、本願発明の実施により未
曽有の商業的成功を収めており、これは本願発明の顕著な効果を十分裏付けるもの
である。
第4 被告の反論
   審決の認定判断は正当であり、原告主張の取消事由は理由がない。
 1 取消事由1(相違点の看過)について
 (1) 相違点1について
    本願発明は、特許請求の範囲においてV-ベルトの硬化方法を特定するも
のではなく、2段階の加硫方法の採否いかんにかかわらず本願発明に該当するので
あるから、相違点1についての原告の主張に理由はない。
 (2) 相違点2について
    審決は、引用例4にはエラストマー100重量部当たり約25~約250
重量部の補強充填剤を含む点についての記載がないと相違点を認定しており(審決
書13頁3行目~8行目)、相違点2を看過するものではない。
 (3) 相違点3について
    引用例4(甲第6号証)には、その特許請求の範囲に記載された「硫黄加
硫可能なゴム」について、「硫黄加硫可能なゴムとは、例えば天然ゴム(NR)、
アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SB
R)、エチレンプロピレンジエン共重合体(EPDM)およびエチレン性不飽和ニ
トリル-共役ジエン系共重合体からなる水素化ゴム等である」(段落【001
8】)と記載され、さらに、「(実施例2)表2に示すNR、NBRおよびEPD
Mをマトリックスゴムとして用いた未加硫ゴム組成物をバンバリーミキサーで混練
した後、同表記載の加硫条件下でプレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。この加硫
ゴム組成物の物性を表2に示す。なお、加硫条件やベルトの走行試験の要領は実施
例1と同様に行った。その結果、加硫ゴム組成物の諸物性およびVリブドベルトA
の走行寿命は共に本発明例の方が比較例よりも優れていた」(段落【0036】~
【0038】)との記載にあるように、「硫黄加硫可能なゴム」としてEPDMを
用いたゴム組成物からVリブドベルトを形成した実施例が具体的に記載されている
から、相違点3は相違点とはならない。
 (4) 相違点4について
    引用例4(甲第6号証)には、硫黄加硫可能なゴムの1例としてEPDM
が挙げられていることは上記のとおりであり、さらに、「この不飽和カルボン酸金
属塩の含有量を水素化ゴム;100重量部に対して10~100重量部に設定した
のは、10重量部未満および100重量部を超えると期待するほどの効果を得るこ
とができなくなるからである」(段落【0020】)と記載されているところから
すれば、硫黄加硫可能なゴムとしてEPDMを採用し、不飽和カルボン酸金属塩の
含有量が「10~100重量部」の範囲内であれば効果を期待できることが確認さ
れていると理解することができる。ゴムの材料としてEPDMを使用した実施例に
おいて不飽和カルボン酸金属塩の含有量を「33重量部」としたのは、上記の「1
0~100重量部」の範囲において効果が得られることを実証する1例にすぎな
い。そして、引用例4に示されている「10~100重量部」との不飽和カルボン
酸金属塩の含有量は、本願発明の構成である「1~20重量部」と重複するのであ
るから、相違点4は相違点とはならない。
 2 取消事由2(相違点についての判断の誤り)について
 (1) 原告は、引用例2と引用例4では、両者に記載されたEPDMを用いた実
施例におけるα-β-不飽和有機酸の添加量が異なることを理由に、これらに記載
の発明を組み合わせることは困難である旨主張する。
    しかし、カーボンブラック等の補強充填剤については、引用例2(甲第5
号証)に、これを各種のエラストマー組成物に共通して使用することが従来技術と
して記載されている(3頁左下欄1行目~4頁右上欄5行目)ように、EPDMと
いう特定のエラストマーにおいて特定量の不飽和カルボン酸金属塩を含有する高分
子組成物に特有の強化剤ではないから、引用例2に記載されたカーボンブラック等
の強化剤の使用量に関する一般的な知見を刊行物4に記載された発明に適用するこ
とは、当業者が容易に想到し得たというべきである。
 (2) 次に、原告は、引用例2の実施例中、ゴム状重合体としてEPDMを用い
た実施例では補強充填剤を使用していないから、引用例4記載の発明に引用例2記
載の発明を組み合わせて本件発明を想到することはできない旨主張する。しかし、
引用例2(甲第5号証)の特許請求の範囲の請求項13が請求項1を引用している
以上、請求項1に記載された「エチレン/プロピレン/ジエンターポリマー」すな
わちEPDMを含有する高分子組成物に、請求項13に記載された「5~60重量
部の強化剤または充てん剤を含有する」という構成を付加されたものが、引用例2
には開示されているというべきである。
 3 取消事由3(顕著な効果の看過)について
   原告の主張する甲第7、第9及び第10号証の各宣誓供述書は、以下のとお
り、本願発明の顕著な効果を示すものとはいえず、また、原告の主張する商業的成
功のような経済上の現象も本願発明の効果を裏付けるものではない。
 (1) 甲第7号証の宣誓供述書において、実施例Aは本願発明の実施態様である
とされているが、本件明細書にはこれに相当する実施例は記載されていない上、比
較例1についても、引用例4記載の発明では用いられていないMBT、TMTM、
酸化亜鉛及びステアリン酸から成る硬化促進剤を、合計量でEPDM100重量部
当たり8重量部もの多量を添加するものであるから、甲第7号証は、本願発明と引
用例4記載の発明の効果を公正に比較したものとはいえない。また、主原料である
EPDM自体が全く異なる実施例Aと比較例1を比較しても、その効果の差が、本
願発明と引用例4記載の発明との構成上の差によるものか、主原料の差によるもの
か明らかでない。
 (2) 甲第9号証の宣誓供述書は、ゴムの材料としてEPDMを使用した場合に
得られる効果を示そうとするものであるが、EPDMを動的適用に供すること自体
が引用例4によって本願発明の優先権主張日当時に公知である以上、その試験結果
は、公知の事実を追認したにすぎないものというべきである。
 (3) 甲第10号証の宣誓供述書は、補強剤を配合したことによる効果を示そう
とするものであるが、カーボンブラック等の補強剤の配合によりゴム材料のモジュ
ラス、反発弾性、耐磨耗性、引裂き抵抗等の物性が向上することは当業者間に周知
であり、その試験結果は、この周知事実から予測される範囲を超えるものではな
い。
第5 当裁判所の判断
 1 取消事由1(相違点の看過)について
 (1) 相違点1について
    原告は、相違点1として、引用例4記載の発明は2段階の加硫方法を必須
の構成要件としているのに対して、本願発明はこの方法を必須の構成要件としない
点を挙げる。しかし、引用例4(甲第6号証)の「(実施例1)下記の表1に示す
H-NBR組成物をバンバリーミキサーにて混練した後、同表記載の加硫条件下で
プレス加硫し、加硫ゴムシートを得た。・・・図1に示すように、上記加硫ゴム組
成物をリブゴム層5に用いたVリブドベルトAを作製した。・・・このVリブドベ
ルトAの走行試験の結果を表1に示す。・・・その結果、加硫ゴム組成物の諸物性
およびVリブドベルトAの走行寿命は共に本件発明例の方が比較例よりも優れてい
た」(段落【0030】~【0035】)、「上記各実施例では、Vリブドベルト
を例に挙げたが、これに限らず、他の伝動ベルトや運搬ベルトであってもよ
く・・・その他の工業用品、工業部品等にも適用できるものである」(段落【00
39】)との記載によれば、引用例4には、特許請求の範囲に記載された製造方法
を適用して得た加硫ゴム組成物をVリブドベルトという物に適用した実施例につい
て具体的に記載されていることが明らかであり、当業者が引用例4記載の発明をV
リブドベルトという物に係る発明としても把握することは十分可能というべきであ
る。そして、物の発明として、本願発明と引用例4記載の発明を対比した場合に、
本願発明が2段階加硫の方法によって得られた加硫ゴム組成物を用いることを除外
するものと認めるべき根拠を見いだせないから、相違点1を本願発明と引用例4記
載の発明との相違点と認めることはできない。
 (2) 相違点2について
    原告は、相違点2として、引用例4記載の発明は補強充填剤の添加を必須
の構成要件としていないのに対し、本願発明はこれを必須の構成要件としている点
を挙げるが、審決は、両者の相違点として、「引用例4には本願請求項1に係る発
明(注、本願発明)の構成要件である、『(c)エラストマー100重量部当たり約
25~約250重量部の補強充填剤』を含む点について記載されていない点で両発
明の間には一応の相違が認められる」(審決書13頁5行目~8行目)と認定して
おり、原告の主張する相違点2の趣旨はこの認定に係る相違点に含まれているとい
うべきであるから、審決が相違点2を看過したということはできない。
 (3) 相違点3について
    原告は、相違点3として、ゴムの材料に関し、引用例4記載の発明ではH
-NBR、NR、NBRをEPDMと全く同列に扱っているのに対し、本願発明で
はEPDM等のエチレン-アルファ-オレフィンエラストマーに限定している点を
挙げる。しかし、引用例4記載の発明において、ゴムの材料としてEPDMを明示
していることは原告も自認するところであり、かつ、EPDMが本願発明にいうエ
チレン-アルファ-オレフィンエラストマーに包含されることが明らかである以
上、相違点3を本願発明と引用例4記載の発明との相違点ということはできないと
いうべきである。
 (4) 相違点4について
    原告は、相違点4として、引用例4記載の発明において、EPDM100
重量部当たりのα-β-不飽和有機酸金属塩の含有量は33重量部であるのに対
し、本願発明における同含有量は1~20重量部である点を挙げる。
    しかし、引用例4(甲第6号証)の「硫黄加硫可能なゴムとは、例えば天
然ゴム(NR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレンブタジエ
ンゴム(SBR)、エチレンプロピレンジエン共重合体(EPDM)およびエチレ
ン性不飽和ニトリル-共役ジエン系共重合体からなる水素化ゴム等である」(段落
【0018】)、「不飽和カルボン酸金属塩はカルボキシル基を有する不飽和カル
ボン酸と金属とがイオン結合したものであり、例えばアクリル酸亜鉛やメタクリル
酸亜鉛等が好ましい。この不飽和カルボン酸金属塩の含有量を水素化ゴム(注、
「硫黄加硫可能なゴム」の誤記と認める。);100重量部に対して10~100
重量部に設定したのは、10重量部未満および100重量部を超えると期待するほ
どの効果を得ることができなくなるからである」(段落【0020】)、「請求項
1、2に係る本発明方法によれば、硫黄加硫可能なゴム;100重量部、不飽和カ
ルボン酸金属塩;10~100重量部・・・を含有する未加硫ゴム組成物を、ま
ず、有機過酸化物の分解が起こらない低温域で加熱反応して加硫した後・・・二段
階連続加硫により、強度特性、高弾性および耐屈曲疲労性に優れた加硫ゴム組成物
を得ることができる」(段落【0040】)との記載からすれば、引用例4には、
EPDMをゴムの材料として用いることを前提に、EPDM100重量部当たりα
-β-不飽和有機酸金属塩であるアクリル酸亜鉛又はメタクリル酸亜鉛「10~1
00重量部」を配合する発明が開示されているというべきである。そして、当該構
成が、エチレン-アルファ-オレフィンエラストマー100重量部当たりα-β-
不飽和有機酸金属塩「1~20重量部」を配合する本願発明の構成と重複すること
は明らかである。
    原告の主張は、引用例4の実施例として具体的に明示された限度でしか当
該発明は開示されていないとの前提に立つものと解されるが、引用例4の上記の記
載に照らしても、そのような限定をすべき根拠は見いだせないというべきである。
 2 取消事由2(相違点についての判断の誤り)について
 (1) 原告は、引用例2記載の発明はα-β-不飽和有機酸の金属塩であるジメ
タクリル酸亜鉛約50~約80重量部を含有するのが好適な高分子組成物に補強充
填剤5~60重量部が添加されているものであるのに対し、引用例4記載の発明は
EPDM100重量部当たりα-β-不飽和有機酸の金属塩であるメタクリル酸亜
鉛を33重量部含有するするものであるから、これらを組み合わせて本願発明の補
強充填剤の添加量に関する構成を想到することは困難である旨主張する。
    しかし、まず、引用例2(甲第5号証)のジメタクリル酸亜鉛の含有量に
ついての記載を見るに、特許請求の範囲において「該ゴム状重合体100重量部当
り25~85重量部の3.7~5.4㎡/gまたはそれ以上の表面積を有するジメタ
クリル酸亜鉛」と規定され、発明の詳細な説明においても「用いるジメタクリル酸
亜鉛の量はゴム状重合体100重量部当り約25~約85重量部の範囲であること
ができ、好適な量はゴム状重合体100重量部当り約50~約80重量部である」
(6頁右上欄17行目~左下欄1行目)と記載されているのであるから、仮に、引
用例4においてメタクリル酸亜鉛を33重量部配合した実施例に着目したとして
も、引用例2、4記載の各発明の組合せが阻害されるようなα-β-不飽和有機酸
金属塩の含有量の相違はないというべきである。
    のみならず、引用例2(甲第5号証)は、エラストマー組成物の種類に応
じ、カーボンブラックを含む各種補強充填剤を各種の量で配合する先行技術を示し
た(3頁左下欄4行目~4頁右上欄5行目)上、「本組成物は場合によってはゴム
組成物に普通に使用される他の通常の添加物を含むことができる。かかる添加物に
は強化剤並びに充てん剤、例えばカーボン・ブラツク、粘土、シリカ及び炭酸カル
シウム、プロセスオイル及びエクステンダー油、酸化防止剤、ワツクス、可塑剤な
どが含まれ得る。かかる強化剤及び充てん剤を本組成物に含めることを望む場合、
一般にこれらのものはゴム状重合体100重量部当り約5~約60重量部の量で用
いることができる」(6頁右下欄4行目~13行目)と記載しており、引用例4
(甲第6号証)においても、「この未加硫ゴム組成物には上記各成分と共にカーボ
ンブラック、シリカ等の補強剤・・・等の種々の薬剤を必要に応じて適宜添加され
る」(段落【0025】)と記載があるのであるから、引用例4記載の発明に引用
例2記載の発明の補強充填剤の添加量に係る構成を適用することは、当業者におい
て何ら困難を伴うものではないというべきである。
 (2) 次に、原告は、引用例2のゴム状重合体としてEPDMを用いた実施例に
おいて補強充填剤は使用されていないから、これを引用例4記載の発明と組み合わ
せても本件発明の構成を得ることはできない旨主張するが、引用例2(甲第5号
証)の特許請求の範囲において、請求項1には「天然ゴム・・・エチレン/プロピ
レン/ジエンターポリマー(注、EPDM)・・・及びその配合物からなる群から
選ばれるゴム状重合体・・・を含有する加硫可能な高分子組成物」と、請求項13
には「5~60重量部の強化剤または充てん剤を含有する、特許請求の範囲第1項
記載の組成物」と、請求項14には「該強化剤がカーボン・ブラックである、特許
請求の範囲13項記載の組成物」と、それぞれ記載されているのであるから、引用
例2において、ゴム状重合体としてEPDMを使用し、かつ、補強充填剤として5
~60重量部のカーボンブラックを添加した発明が開示されていることは明らかで
あって、原告の上記主張は前提を欠くというべきである。
 3 取消事由3(顕著な効果の看過)について
   原告は、甲第7、第9及び第10号証の各宣誓供述書に示す試験結果並びに
甲第8号証の宣誓供述書に示す商業的成功の事実は、本願発明の顕著な効果を裏付
けるものである旨主張するので、以下順次検討する。
 (1) 甲第7号証の宣誓供述書について
    甲第7号証の宣誓供述書の試験は、「実施例Aは、本願発明の実施態様で
ある。比較例1は、引例4の表2の実施例3を複製することを意図したものであ
る」(訳文2頁本文1行目~2行目)、「比較試験及び観察から導かれた結論 本
願発明により製造した実施例Aの試験片及びマルチVリブ付きベルトの性能は、引
例4に相当する比較例1の性能をはるかに凌ぐことが示された。表3に示された比
較ベルト試験の結果は、特に、引例4に記載のものと比較して、優秀でかつ予測不
可能な本願発明の利点を説明するものであると信じている。実施例Aのベルトは、
比較例1のベルトと比較して非常に優れたピリング抵抗性、耐磨耗性及び屈曲疲れ
抵抗性を示した。本願発明の実施例Aのベルトの性能が、比較列1のベルトの性能
を上回る程度は著しいものであると考えられる。実際の各試験で、実施例Aのベル
トは、比較例1のベルトの数倍の能力を示した。大抵のケースにおいて、比較例1
のベルトの破損は、迅速かつ劇的なものであった」(訳文14頁13行目~22行
目)との記載にあるように、本願発明及び引用例4記載の発明の各実施品を意図し
た実施例A及び比較例1につき、それぞれのピリング抵抗性、耐磨耗性及び屈曲疲
れ抵抗性を比較し、前者の優れた性能をいうものと解される。
    しかし、本願発明と引用例4記載の発明との相違点は、審決の認定する
「エチレン-アルファ-オレフィンエラストマー100重量部当たり約25~約2
50重量部の補強充填剤を含む」点にとどまり、それ以外の相違点を認め得ないこ
とは前示のとおりであるから、本願発明の進歩性を基礎付ける顕著な効果として
は、少なくとも、当該相違点に係る構成から生ずる効果を示す必要があるにもかか
わらず、上記の試験結果は、表1に示された実施例Aと比較例1との成分配合から
明らかなように、カーボンブラックの配合の有無ばかりでなく、ジメタクリル酸亜
鉛その他の成分の配合をも異にする試験例を用いて、その結果を対比するものであ
るから、これが上記相違点に係る構成に由来するものであるかどうかを明らかにす
るものではないといわざるを得ない。したがって、甲第7号証の宣誓供述書は、本
願発明の顕著な効果を示すものとして採用することはできない。
 (2) 甲第9号証の宣誓供述書について
    甲第9号証の宣誓供述書の試験は、「表Aに記載の実施例Bは、クレーム
に記載の本発明の実施態様である。・・・比較組成物は、引例4に開示されたエチ
レン-α-オレフィンエラストマー以外の各ポリマー、即ち、天然ゴム(“N
R”);アクリロニトリルブタジエンゴム(“NBR”);及び水素化NBR
(“HNBR”)を用いて配合した。比較例2~4のケースでは、使用したポリマ
ーは、NR、NBR及びHNBRのそれぞれであったが、引例4の教示とは異な
り、それぞれのケースで、比較組成物には、本発明の実施例Bで使用したように、
特定のタイプ及び量の強化充填剤(即ち60phrのカーボンブラック);α-β
-不飽和有機酸の金属塩(即ち15phrのZDMA);及びフリーラジカル誘導
硬化剤(即ち5phrの特定のペルオキシド硬化剤)を含ませた」(訳文1頁末行
~2頁12行目)、「概要 表Bの結果-試験片を用いた試験 比較例2(NR)
は、加熱老化した屈曲疲れ抵抗性及び引裂き抵抗性に表されたような老化/高温抵
抗性が劣ること、及び本発明の実施例Bと比較して著しく劣るオゾン抵抗性を示し
た。比較例3(NBR)は、加熱老化した屈曲疲れ抵抗性に表されたような不適切
な老化/高温抵抗性;実施例Bの組成物と比較して著しく劣る低温抵抗性及び著し
く劣るオゾン抵抗性を示した。比較例4(HNBR)は、加熱老化した屈曲疲れ抵
抗性に表されたような不適切な老化/高温抵抗性;実施例Bの組成物と比較して著
しく劣る低温性能及びオゾン抵抗性を示した」(訳文9頁12行目~22行目)と
の記載にあるように、本願発明の実施品を意図した実施例Bと、ゴムとしてEPD
M以外の材料を用いた点でのみその組成を異にする比較例とに基づいて、屈曲疲れ
抵抗性、引裂き抵抗性等の諸性能を比較し、前者の効果の優位性をいうものと解さ
れる。
    しかし、引用例4が加硫可能なゴムとしてEPDMを明示しており、原告
の主張に係る相違点3が本願発明と引用例4記載の発明との相違点と認められない
ことは前示のとおりであるから、加硫可能なゴムの材料としてEPDMを用いるか
どうかの差異に由来する効果が、引用例4記載の発明との比較における本願発明の
効果ということはできない。したがって、甲第9号証の宣誓供述書に基づく原告の
主張は理由がない。
 (3) 甲第10号証の宣誓供述書について
    甲第10号証の宣誓供述書の試験は、「表Aに記載の実施例Bは、クレー
ムに記載の本発明の実施態様である。・・・表Aに記載の比較例5のケースでは、
本願発明の実施例Bで用いたのと同一のタイプ及び量のポリマー(即ち、EPD
M)、α-β-不飽和有機酸の金属塩(即ち15phrのZDMA);及びフリー
ラジカル誘導硬化剤(即ち5phrの特定のペルオキシド硬化剤)を用いた。しか
しながら、比較例5の組成物については、別途、強化充填剤を用いなかった」(訳
文1頁末行~2頁8行目)、「行った試験及びその結果・・・上記表Aに示したよ
うに、比較例5は、表Aの実施例Bにおいて例証されるような本願発明の組成物と
は、別途、強化充填剤を用いなかったという点でのみ異なる。実施例Bの組成物
は、15phrのZDMA及び60phrの強化充填剤(即ち、カーボンブラッ
ク)を含む一方、比較例5は、15phrのジメタクリル酸亜鉛(即ち、ZDM
A)を含むが、強化充填剤は含まない。今回の比較において使用した荷重能力試験
下での実施例Bのベルトと比較例5のベルトの性能の違いは著しく;実施例Bのベ
ルトは、この試験下で、比較例5のベルトより、10倍を越える時間耐えた」(訳
文3頁15行目~末行)との記載にあるように、本願発明の構成に則して補強充填
剤としてカーボンブラックを配合した実施例Bと、カーボンブラックを配合しない
点でのみ組成を異にする比較例5とを対比して、前者の耐荷重能力の優れた結果を
いうものと解される。
    そうすると、この試験は、本願発明と引用例4記載の発明との相違点であ
る補強充填剤の有無及び添加量に着目して、当該相違点に基づく効果を立証しよう
とするものということはできる。
    しかし、昭和49年10月15日ラバーダイジェスト社発行の「便覧ゴ
ム・プラスチック配合薬品〔改訂版〕」(乙第2号証)には、「ゴムに配合して、
加硫物の硬さ、引張り強さ、モジュラス、反ぱつ弾性、耐摩耗性、引裂き抵抗など
の物性を向上させる配合剤を補強剤と呼んでいる。周知のように、カーボンブラッ
クの補強効果はきわめて大きいが、そのほか亜鉛華、炭酸マグネシウム、けい酸お
よびけい酸化合物、表面処理した炭酸カルシウム、ある種のクレーなどの無機物
質、さらにハイスチレン樹脂、フェノール樹脂、クマロン樹脂などの有機物質も補
強性を有する。とくに最近、純ゴム配合では物性の劣る合成ゴムの消費が増大し、
その白色・淡色配合物の補強剤として無機および有機化合物の果たす役割はきわめ
て大きい」(213頁2行目~8行目)との記載があり、これによれば、ゴムにカ
ーボンブラック等の補強充填剤を配合すると、引張り強さ、耐摩耗性及び引裂き抵
抗などの物性を向上させることは、本願発明の出願当時、周知事項であったという
べきである。そして、これらの物性の向上が、上記試験の耐荷重能力の向上にも関
与するものであることは容易に予測できるものであるから、上記の試験結果は、
「周知のように、カーボンブラックの補強効果はきわめて大きい」とされる上記の
周知事項から予測し得る範囲のものというべきであり、甲第10号証の宣誓供述書
に基づく原告の主張は理由がない。
 (4) 甲第8号証の宣誓供述書について
    原告は、甲第8号証の宣誓供述書に基づき、本願発明の実施による商業的
成功について主張するが、商業的成功は、製品の経済性、社会的経済的なニーズ、
販売方法、営業能力等当該製品の構成に基づく要因以外の事項により大きな影響を
受けるものであり、しかも、当該製品自体としても、製品化に伴って付加される、
本願発明の特徴とする構成以外の構成によっても影響を受けるものであることは明
らかであるから、商業的成功のみをもって、本願発明の顕著な作用効果を推認する
ことはできない。
 4 上記の認定判断のとおり、本願発明(注、請求項1に係る発明)に関する原
告主張の審決取消事由はいずれも理由がないから、請求項2~6に係る発明につい
て判断するまでもなく、原告の請求は理由がない。
 5 以上のとおり、原告主張の審決取消事由は理由がなく、他に審決を取り消す
べき瑕疵は見当たらない。
   よって、原告の請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担並
びに上告及び上告受理申立てのための付加期間の指定につき行政事件訴訟法7条、
民事訴訟法61条、96条2項を適用して、主文のとおり判決する。
     東京高等裁判所第13民事部
         裁判長裁判官 篠原勝美
    裁判官 石原直樹
    裁判官 宮坂昌利

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