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平成22年1月27日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成20年(ワ)第14169号損害賠償請求事件
口頭弁論終結日平成21年11月6日
判決
宇都宮市〈以下略〉
原告サイランド香料有限会社
同訴訟代理人弁護士安原正之
同佐藤治隆
同鷹見雅和
同補佐人弁理士安島清
東京都千代田区〈以下略〉
被告上岡化学工業株式会社
同訴訟代理人弁護士椙山敬士
同堀井敬一
同市川穣
同曽根翼
同片山史英
同補佐人弁理士内山充
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
被告は,原告に対し,1億円及びこれに対する平成20年6月7日から支払
済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,発明の名称を「水系ゲル化剤および水系ゲル」とする特許権の2分
の1の共有持分を有する原告が,被告に対し,被告の販売する別紙物件目録記
載の製品(以下「被告製品」という。)が前記特許権の請求項2に係る発明の
技術的範囲に属し,前記特許権を侵害するとして,民法709条,特許法10
2条3項に基づき,実施料相当額2億円の2分の1である1億円及びこれに対
する不法行為の後の日(訴状送達の日の翌日)である平成20年6月7日から
支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案で
ある。
1争いのない事実等(争いのない事実以外は,証拠を末尾に記載する。)
()原告の特許権1
原告は,次の特許(以下「本件特許」といい,本件特許の請求項2に係る
発明を「本件発明」といい,本件特許に係る明細書を「本件明細書」とい
う。)に係る特許権の持分2分の1を有している。
特許番号第2616960号
発明の名称水系ゲル化剤および水系ゲル
出願番号特願昭63−126935
出願年月日昭和63年5月26日
登録年月日平成9年3月11日
特許請求の範囲
【請求項1】
「ゼラチンまたはコラーゲンとオレフイン−無水マレイン酸共重合体
との反応生成物からなる水系ゲル化剤。」
【請求項2】
「請求項1記載の水系ゲル化剤を含有する水系ゲル。」
()訂正請求2
原告は,本件特許に係る無効審判請求事件(無効2008−80022
5)において,平成21年1月19日,本件特許に係る発明を次のとおり訂
正する旨を求める訂正請求をした(甲14。以下,当該訂正請求に係る請求
項2の発明を「本件訂正発明」という。)。
【請求項1】
「ゼラチンとイソブチレン−無水マレイン酸共重合体との反応生成物か
らなる水系ゲル化剤。」
【請求項2】
「請求項1記載の水系ゲル化剤を含有する水系ゲル。」
原告は,請求項1の訂正理由につき,本件明細書中の実施例では,ゼラチ
ンとイソブチレン−無水マレイン酸共重合体との反応生成物についてのみ記
載しているためとしている。また,請求項1の訂正に伴い,本件明細書中の
「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」との記載部分のうちの対応部分を
「イソブチレン−無水マレイン酸共重合体」と訂正している(甲14)。
なお,イソブチレンとは,オレフインの一種である(本件明細書3欄14
∼18行)。
()被告の行為3
被告は,平成11年3月より,エステー化学株式会社(旧商号,エステー
株式会社)に,被告製品を販売している。
()平成2年法律第30号による改正前の特許法36条3項の規定4
平成2年法律第30号による改正前の特許法(以下「旧特許法」とい
う。)36条3項には,「前項第三号の発明の詳細な説明には,その発明の
属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をするこ
とができる程度に,その発明の目的,構成及び効果を記載しなければならな
い。」と規定されている。
2争点
()被告製品が本件発明の構成要件を充足するか。1
ア本件発明の「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」(訂正後の「イソ
ブチレン−無水マレイン酸共重合体」)には,そのアンモニウム塩やアル
カリ中和物(以下,単に「塩や中和物」という。)が含まれるか。
イ本件発明の「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」は,「分子量30
00∼100000のオレフイン−無水マレイン酸共重合体」を意味する
と解すべきか(訂正後の「イソブチレン−無水マレイン酸共重合体」は,
「分子量3000∼100000のイソブチレン−無水マレイン酸共重合
体」を意味すると解すべきか。)。
ウ被告製品が「反応生成物」といえるか。
()本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものか。2
ア本件発明は,新規性欠如により無効にされるべきものか(無効理由1)。
イ本件発明は,進歩性欠如により無効にされるべきものか(無効理由2−
乙1の2発明と周知技術による進歩性欠如)。
ウ本件発明は,進歩性欠如により無効にされるべきものか(無効理由3−
乙1の2発明と乙1の4発明の組合せによる進歩性欠如)。
エ本件発明は,実施可能要件(旧特許法36条3項)違反により無効にさ
れるべきものか(無効理由4−実施例が実施不能であること)。
オ本件発明は,実施可能要件(旧特許法36条3項)違反により無効にさ
れるべきものか(無効理由5−実施例の記載から本件発明の反応生成物の
存在を確認できないこと)。
()損害の有無及び額3
第3争点に対する当事者の主張
1被告製品が本件発明の構成要件を充足するか。
(原告)
本件発明の「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」(訂正後の「イソブチ
レン−無水マレイン酸共重合体」)には,その塩や中和物が含まれるから,イ
ソブチレン−無水マレイン酸共重合体をアンモニア変性した中和物を水溶液に
溶解し,これとゼラチン水溶液とを反応させて生成した被告製品は,ゼラチン
とオレフイン−無水マレイン酸共重合体(イソブチレン−無水マレイン酸共重
合体)とを反応生成させてゲル化した水系ゲルであるから,本件発明の技術的
範囲に属する。なお,本件発明の「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」が
分子量3000∼100000のものに限定されるとの被告の主張は,理由が
ない。
()「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」(「イソブチレン−無水マレ1
イン酸共重合体」)には,その塩や中和物が含まれること。
オレフイン−無水マレイン酸共重合体アンモニウム塩やアルカリ中和物
(特に水酸化アンモニウムによる中和物)は,次に述べるとおり,「オレフ
イン−無水マレイン酸共重合体」として取り扱われており,前記塩や中和物
は,オレフイン−無水マレイン酸共重合体に含まれる。
被告が平成14年6月以前に日油株式会社から購入していた「KM−10
0−1」は,株式会社クラレが製造,販売するオレフインの一種のイソブチ
レンと無水マレイン酸との共重合体(商品名:「イソバン」)であり,その
うちの「イソバン−110」というタイプの商品の水溶液である。そして,
被告は,平成14年6月以降,株式会社クラレから「イソバン−110」を
購入して,使用している。つまり,被告は,平成14年6月の前後を通じて,
「イソバン−110」の水溶液を使用し続けている。
そして,「イソバン−110」は,イソブチレン−無水マレイン酸共重合
体(スタンダードタイプイソバン)をアンモニア変性し,水に溶けやすくし
たものであって,「スタンダードタイプイソバンと同じ特徴をもっており,
かつ容易に水に溶かすことが可能である。」というものである。つまり,
「イソバン−110」は,「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」である
イソバンを,水に溶けやすくするため,又は取扱いを容易にするため,アン
モニアによって中和反応させたものにすぎない。この点,オレフイン−無水
マレイン酸共重合体をアンモニア等によって中和した中和反応物を,オレフ
イン−無水マレイン酸共重合体の一種として取り扱うことは,高分子化学工
業の分野では一般的である(甲12,13)。
被告は,被告の使用した物質が「イソブチレン−マレアミド酸アンモニウ
ム共重合体」(イソバン−110)であると主張するが,それは,当該物質
を購入したことを意味するだけで,それを水溶液にしてゼラチン水溶液と反
応させているのであるから,ゼラチンとの反応前にイソブチレン−無水マレ
イン酸共重合体の調整を行っていることにほかならない。
そして,複数の物質を使用して化学反応を起こさせる場合に,元の原料を
それぞれ水溶液として混合するというのは,極めて一般的,慣用的手段であ
り,ゼラチンとオレフイン−無水マレイン酸共重合体とを反応させるために
は,双方を水溶液とした上で混合するのが通常である。本件明細書に,「ゼ
ラチンまたはコラーゲンとオレフイン−無水マレイン酸共重合体の反応方法
としては,それぞれの水溶液をあらかじめ調製したのち両者を混合するのが
均一なゲルを得やすく,好ましい方法である。また,反応時のpHは5∼9,
好ましくはpH6∼8にするとよい結果が得られる。」(3欄26∼31
行)とあるとおり,それぞれを水溶液にし,かつ,中性(pH7付近)にし
た状態で混合し,反応させることが前提とされているのである。しかも,イ
ソバンのカタログ(乙2)にも記載されているが,オレフイン−無水マレイ
ン酸共重合体を水溶性とするために,これを水酸化ナトリウムやアンモニア
(水酸化アンモニウム)等によって中和した中和反応物とすることも,周知,
慣用技術にすぎない。その際,オレフイン−無水マレイン酸共重合体を直接
アルカリ水溶液に入れると反応が急激に起きるので,取扱いを容易にするた
めに,オレフイン−無水マレイン酸共重合体を,あらかじめアンモニア変性
させたものが製品化されているのである。
したがって,イソバン−110を水に溶解させてオレフイン−無水マレイ
ン酸共重合体のアンモニウム塩水溶液を得ることは,オレフイン−無水マレ
イン酸共重合体とゼラチン水溶液とを反応させるための一般的,慣用的手段
を採用したにすぎず,本件発明は,「オレフイン−無水マレイン酸共重合
体」につき,その塩を除外しておらず,むしろそれを前提としているから,
被告の使用した物質であるオレフイン−無水マレイン酸共重合体のアンモニ
ウム塩である「イソブチレン−マレアミド酸アンモニウム共重合体」も,本
件発明の「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」に含まれる。
()「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」は,「分子量3000∼102
0000のオレフイン−無水マレイン酸共重合体」に限られないこと。
被告は,本件明細書の記載により,「オレフイン−無水マレイン酸共重合
体」は「分子量3000∼100000のオレフイン−無水マレイン酸共重
合体」という意味を有すると主張し,被告の使用する「イソバン−110」
は,重量平均分子量が160000∼170000なので,本件発明の技術
的範囲に属しないと主張する。
しかしながら,本件発明の詳細な説明中で使用している「分子量」とは
「数平均分子量」であるのに対し(5欄50行,8欄28行),「イソバン
−110」のそれは「重量平均分子量」であって,単純な比較は不可能であ
る。数平均分子量は,単純な分子本当たりの分子量の平均であり,重量平1
均分子量は,高分子量のものを重視するようにした平均分子量ということで
あり,同じ物質でも,一般に重量分子量の方が大きな数値になるのは当然で
あって,被告は,それをあえて無視した主張を行っており不当である。
なお,本件発明の「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」という記載は
明確であり,被告の主張するような不明確さは全く存在しないし,請求項で
は「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」の分子量に関する数値限定すら
していないのであるから,被告の主張は,失当である。
()被告製品が反応生成物であること。3
原告の実験結果(甲19)によれば,イソバン水溶液とゼラチン水溶液と
を混合・撹拌したところ,混合の直後からゲル状に固化するまでの間(約1
時間),0.5℃程度の温度上昇が確認された。室温を30℃に設定したも
のの若干低下傾向にあった状況における,0.5℃の温度上昇であるから,
実験的に極めて有意な温度上昇であるといえ,化学反応が生じていることは
明らかである。本件発明の化学変化は,燃焼などのような爆発的な変化とは
全く異なり,極めて穏やかな反応なのである。なお,この実験は,温度計測
の都合上,断熱環境下で行っていないが,それにも関わらず有意な温度上昇
が見られたのであって,温度変化の傾向を確認するという実験の目的からは,
何ら問題はない。
被告は,被告製品が反応生成物でないと主張し,実験報告書(乙5)を提
出するが,当該実験報告書は,重要部分をマスクしたもので,追試すら不可
能な報告書であって,実験結果としての価値は全くない。さらに,当該実験
は,イソバン液及びゼラチン液を恒温水槽中で混合しており,わざわざ各溶
液よりも十分に熱容量の大きな温度一定環境中で行ったものであって,仮に
溶液中で熱の発生・吸収が行われたとしても,外部環境との間で熱のやりと
りが十分に行われるため,50℃の一定に保たれることは当然である。同実
験は,微少な温度変化を計測できるとは思えず,あえて温度が一定になる結
果を得ることを目的として行ったとしか考えられない。通常,このような実
験は,外部環境と断熱した上で行われるべきものであり,実験方法としても
誤ったものといわざるを得ない。
(被告)
被告製品は,「ゼラチンとオレフイン−無水マレイン酸共重合体とを反応
生成させてゲル化した水系ゲル」ではなく,「ゼラチン水溶液とイソブ
チレン−マレアミド酸アンモニウム共重合体(イソブチレン−ジカルボン酸誘
導体の共重合体)の水溶液を混合してゲル化した水系ゲル」であり,本件発明の
「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」,「反応生成物」という構成を欠く
点において,本件発明の構成を充足しない。また,本件発明の「オレフイン−
無水マレイン酸共重合体」は,その分子量が3000∼100000の数値の
ものと解すべきところ,被告製品は,その範囲に入らない点においても,本件
発明の構成を充足しない。
()「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」(「イソブチレン−無水マレ1
イン酸共重合体」)には,その塩や中和物が含まれないこと。
「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」と「オレフイン−無水マレイン
酸共重合体のアンモニウム塩」が同じものと取り扱われていることはなく,
後者が前者に含まれるものでもない。したがって,「イソバン−110」が
「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」に含まれるとする原告の主張は,
誤りである。
被告が使用していた物質は,「イソブチレン−マレアミド酸アンモニウム
共重合体」であり,これは,「イソブチレン−無水マレイン酸共重合体」に
含有されている無水マレイン酸基の全部をアンモニアにより変性し,無水マ
レイン酸環を開環しながら,ジカルボン酸基の一方を第1級アミドにして,
他方をアンモニウム塩に変化させた物質である。すなわち,「イソブチレン
−マレアミド酸アンモニウム共重合体」は,無水マレイン酸基を,マレイン
酸第1級アミド−アンモニウム塩に変性した共重合体であり,無水マレイン
酸環の構造を有しない,水溶性の物質である。これに対し,「イソブチレン
−無水マレイン酸共重合体」は,無水マレイン酸環の構造を有し,水に溶け
ない性質を持つ。
このように,両物質は,主要な性質を大きく異にする全く異なる物質であ
り,「イソブチレン−マレアミド酸アンモニウム共重合体」が「イソブチレ
ン−無水マレイン酸共重合体」に含まれるものではない。
また,「イソバン−110」が,「イソブチレン−無水マレイン酸共重合
体」を変性させた水溶性物質であるとしても,このように変性して水溶性物
質とする方法が,本件特許出願当時に一般的,慣用的であったといえないし,
本件特許の特許請求の範囲が,「イソブチレン−マレアミド酸アンモニウム
共重合体」にまで広がることにもならない。
仮に,ゼラチンと混合して水系ゲルを生成するために,イソブチレン−無
水マレイン酸共重合体を水溶性物質へ変性させた物質の水溶液が必要である
としても,そのことをもって,イソブチレン−マレアミド酸アンモニウム共
重合体とゼラチンによる水系ゲルが,本件特許の特許請求の範囲に含まれる
ことにはならない。なぜなら,本件明細書3欄14行目以降における「オレ
フイン−無水マレイン酸共重合体」の説明において,「アンモニウム塩」と
いう記載が全くないからである。また,イソブチレン−無水マレイン酸共重
合体を水溶性物質に変性させる方法には多種多様なものがあり,そこで生成
される水溶性物質も多種多様なものが存在することから,変性されて生成さ
れた水溶性物質のすべてが特許請求の範囲に含まれると解すると,「水溶性
への変性」という名を借りて,それらすべての水溶性物質が特許請求の範囲
に含まれてしまうことになる。その結果として,変性されて生成された水溶
性物質のすべてが,変性前の物質であるイソブチレン−無水マレイン酸共重
合体に含まれることになるが,そのような論理は,特許請求の範囲の解釈と
してあり得ない。
原告の主張するように,本件発明を実施するに当たり,「イソブチレン−
無水マレイン酸共重合体」の水溶性物質として,アンモニア変性させた「イ
ソブチレン−マレアミド酸アンモニウム共重合体」が必要であるならば,請
求項に「イソブチレン−マレアミド酸アンモニウム共重合体」と記載すれば
よかったのであり,あえてそれとは全く異なる物質である「オレフイン−無
水マレイン酸共重合体」(訂正後の「イソブチレン−無水マレイン酸共重合
体」)を記載したことからすれば,これをアンモニア変性させた「イソブチ
レン−マレアミド酸アンモニウム共重合体」は,特許請求の範囲に含まれな
いと解するのが,素直な解釈である。
原告は,「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」が「その塩」を除外し
ていないとして,本件明細書3欄26∼31行を引用するが,ここには中和
を行う旨の語句はなく,「その塩」を前提とした記載があるとはいえない。
むしろ,当該記載は,pH5の酸性でもよい結果が得られるとしか読みよう
がない。除外していなければすべて含まれるという原告の主張からすれば,
「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」の定義から外れる物質であっても,
関連物質であればすべて特許請求の範囲に含まれることになり,発明の技術
的範囲が全く確定しなくなってしまう。
()「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」は,「分子量3000∼102
0000のオレフイン−無水マレイン酸共重合体」を意味すること。
請求項1では,「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」のうち,いかな
る物質を使用するのか全く明らかにされていないため,その技術的範囲が不
明確となっている。そこで,本件明細書の記載を参酌すると,〔課題を解決
するための手段〕に「オレフイン−無水マレイン酸共重合体としては…分子
量としては3,000∼100,000のものが使用できる。」との記載が
ある(なお,実施例では,8000と13000のものしか開示されていな
い。)。したがって,本件明細書の記載を考慮して特許請求の範囲に記載さ
れた用語の意味を解釈すると,「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」は,
「分子量3000∼100000のオレフイン−無水マレイン酸共重合体」
という意味を有するというべきである。
そして,被告の使用する「イソバン−110」の重量平均分子量は,16
0000∼170000であるから,被告製品は,本件発明の「オレフイン
−無水マレイン酸共重合体」という要件を充足しない。
()被告製品が反応生成物でないこと。3
本件発明の「反応生成物」とは,化学反応によって生成された物を意味す
る。そのため,「反応生成物」に該当するためには,化学反応が起こってい
なければならない。化学反応は,反応熱の出入りの点から発熱反応又は吸熱
反応に分けられるが,いずれにせよ,必ず熱の出入りを伴うものであるから,
ある物質を混合した際に温度変化が測定されない場合,それは化学反応が起
こっていないことを意味する。
被告が,被告製品に使用しているゼラチンとイソバンの各水溶液を製造時
の組成,温度条件で混合した際の反応熱を測定したところ,イソバン水溶液
をゼラチン水溶液に添加した時点から30分後まで液温は一定しており(5
0.25±0.13℃),発熱反応に伴う温度上昇又は吸熱反応に伴う温度
降下は,いずれも観察されなかった(乙5)。この事実からすれば,被告製
品は,混合による分子の凝集によってゲル状態となっているのであって,化
学反応は全く起こっていないと考えるほかない。
したがって,被告製品は,「ゼラチン水溶液とイソブチレン−マレアミド
酸アンモニウム共重合体の水溶液を混合してゲル化した水系ゲル」であるか
ら,「反応生成物」には当たらず,本件発明の構成要件の「反応生成物」を
充足しない。
原告の実験結果(甲19)は,溶液の温度が被告の実験結果(乙5)と異
なること,実験に当たっての温度管理が杜撰であること,水溶液の温度測定
点が統一されていないことなどから,正確性を欠くものであり,その内容は
信用できるものではない。
2本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものか。
()無効理由1(新規性欠如)1
(被告)
特開昭57−122795号公報(以下「乙1の1公報」という。)の特
許請求の範囲18の実施例である例3(以下「実施例3」という。)には,
ゼラチンとエチレン無水マレイン酸共重合体との反応生成物を含むゲル状の
コンシステンシーを有する溶液(水系ゲル)の発明(以下「乙1の1発明」
という。)が開示されており,これは,本件発明である「ゼラチンとオレフ
イン−無水マレイン酸共重合体との反応生成物である水系ゲル化剤を含有す
る水系ゲル」と同一である。
(原告)
本件発明は,ゲル化剤及び水系ゲルであるのに対して,乙1の1発明は,
酵素に関する発明である点で相違する。また,被告は,ゼラチンとエチレン
−無水マレイン酸とが反応すると主張するが,乙1の1公報にはそのような
記載は存在しないし,実施例3において得られたものがゲル状のコンシステ
ンシーを有しているものの,それは,あくまで溶液であり,本件発明のよう
な均一のゲルを形成しているものではない。
()無効理由2(乙1の2発明と周知技術による進歩性欠如)2
(被告)
特開昭57−14353号公報(以下「乙1の2公報」という。)には,
ゲル状芳香剤組成物として,カラギーナンとイソブチレン−無水マレイン酸
共重合体との反応生成物からなる水系ゲル化剤及びこの水系ゲル化剤を含有
する水系ゲルの発明(以下「乙1の2発明」という。)が開示されており,
乙1の2発明と本件発明とは,カラギーナンかゼラチンかという点において
のみ相違し,その余の点は一致する。
そして,本件明細書の〔従来の技術〕(1欄11,12行)では,カラギ
ーナンとゼラチンとを均等物として論じており,特開昭60−9456号公
報(乙1の5),特開昭60−43366号公報(乙1の6),特開昭60
−76336号公報(乙1の7),特開昭60−137289号公報(乙1
の8),特開昭60−160840号公報(乙1の9),特開昭61−13
2145号公報(乙1の10),特開昭62−232335号公報(乙1の
11)によれば,本件特許出願当時,ゼラチンとカラギーナンが水系ゲル化
剤として均等の作用効果を発揮することは周知であるといえるから,乙1の
2発明のカラギーナンをゼラチンに置換して本件発明に想到することは,当
業者にとって容易である。
(原告)
ゼラチンは,タンパク系(アミノ基)であるのに対し,カラギーナンは,
糖系(水酸基)であって,両者は全く異なるものであり,均等物ではない。
そして,この相違により,イソブチレン−無水マレイン酸共重合体との反応
性も相違する。すなわち,本件特許の反応生成物は,ゼラチンのアミノ基と
イソブチレン−無水マレイン酸との反応であるため,生成物の構造は,アミ
ド結合で架橋した天然高分子と合成高分子との反応生成物である。これに対
し,カラギーナンにはアミノ基がなく,本件特許のような反応は起こらない。
乙1の5ないし11は,食用ゲル化剤として周知のゼラチンとカラギーナ
ンを,ゲル化剤としての性質をそのまま利用するときには,いずれを用いて
もよいことを示すものにすぎず,ゼラチンとカラギーナンとが他の物質との
反応性において均等であることを何ら示すものではないから,これらにゼラ
チンとカラギーナンが併記されていることをもって,両者を均等物とするの
は誤りである。
()無効理由3(乙1の2発明と乙1の4発明の組合せによる進歩性欠如)3
(被告)
乙1の2発明と本件発明とは,カラギーナンかゼラチンかという点におい
て相違し,その余の点は一致する。そして,特開昭63−58149号公報
(以下「乙1の4公報」という。)には,請求項3に,ゼラチン系と無水マ
レイン酸系の混合物からなるゲル化剤の発明(以下「乙1の4発明」とい
う。)が開示されている。そして,乙1の4公報に記載された無水マレイン
酸系高分子は,乙1の2発明のイソブチレン−無水マレイン酸共重合体の上
位概念の物質であり,乙1の2発明と乙1の4発明とは,いずれも同一のゲ
ル化剤分野の技術であるから,乙1の4発明を乙1の2発明に適用して,カ
ラギーナンをゼラチンに置換して本件発明に想到することは,当業者にとっ
て容易である。
(原告)
本件発明のイソブチレン−無水マレイン酸共重合体は,それ自体はゲル化
剤ではなく,これを架橋して初めてゲル化剤となるものである。これに対し,
乙1の4公報に記載された無水マレイン酸系高分子は,吸水性高分子の例と
して挙げられており,イソブチレン−無水マレイン酸共重合体と無水マレイ
ン酸系高分子とは全く別物と見るべきものである。また,乙1の2公報は,
芳香剤の発明に関するものであるのに対し,乙1の4公報は,バイオセンサ
の発明に関するものであり,両者は,全く異なる技術分野であって,技術課
題も目的も全く異なる。乙1の2発明のカラギーナンを乙1の4発明のゼラ
チンに置換して芳香剤用ゲル化剤とすることができるという被告の主張は,
論理の飛躍がある。
()無効理由4(実施可能要件違反(実施例が実施不能であること))4
(被告)
本件明細書に開示された実施例1ないし4及び実施例6には,水系ゲルの
製造方法が記載されている。これらの実施例では,「ゼラチン水溶液」と
「香料を含む水溶液」を混合攪拌して,水系ゲルを得ている。「香料を含む
水溶液」には,香料(又はペット忌避剤),界面活性剤,イソブチレン−無
水マレイン酸共重合体,エタノール等が含有されている。
ところが,被告従業員作成の実験報告書(乙1の14)によれば,いずれ
の実施例においても,ゼラチン水溶液の調製は可能であるが,実施例のとお
り「香料を含む水溶液」の調製を行っても,共重合体粉末が固体として懸濁
する白色懸濁液を形成するのみで,イソブチレン−無水マレイン酸共重合体
が溶解しない。
当該実験では,「香料を含む水溶液」の香料等が揮発しない範囲の限界の
温度である60℃まで水溶液の温度を上昇して攪拌しても,粉体状のイソブ
チレン−無水マレイン酸共重合体は溶解しない。すなわち,本件明細書の実
施例の「香料等を含む水溶液」を調製できず,その結果,本件明細書の実施
例に開示されている水系ゲルを得ることができなかった。
また,この粉末を含有する「香料を含む水溶液」に,ゼラチン水溶液を混
合しても,粉末は,懸濁状態に分散しても消失することはなく,水系ゲルも
生成しない。この混合物をろ過洗浄すると,イソブチレン−無水マレイン酸
共重合体の粉末が95%以上回収されたという事実は,ゼラチンと粉体状の
イソブチレン−無水マレイン酸共重合体の反応が起こらなかったことを示す。
5%の減少は,実験誤差の範囲内である。例えば,実施例1の追試実験(追
試1−1)では,使用したイソブチレン−無水マレイン酸共重合体粉末1.
60gに対して,回収した粉末は1.56gである。この実験では,回収し
た粉末について,イソブチレン−無水マレイン酸共重合体であることを赤外
分析により確認していないが,赤外分析により確認しなくても,ゼラチンと
固体ポリマーが反応していないことは明白である。
仮に,ゼラチン水溶液中の溶解ゼラチンと固体粉末が反応した場合を想定
すると,反応生成物が水に溶解しない場合には,固体表面にゼラチンとの反
応生成物が析出されるため,回収粉末の重量は,仕込粉末の重量よりも増加
し,逆に,反応生成物が水に溶解する場合には,ゼラチンと反応した固体粉
末が表面から水に溶出するため,固体粉末は減少して最終的には消失するこ
とになる。
反応生成物は,水に溶解するか溶解しないかの二つに一つである。しかる
に,実験報告書では,仕込粉末と回収粉末との重量に変化はない。回収粉末
の重量が仕込粉末の重量とほぼ同一であることにより,実施例1の条件では,
反応生成物が生成されていないことが確認できる。他の実施例の追試実験の
結果も,実施例1と同一である。
このように,実施例のとおり行っても,「香料を含む水溶液」又は「シト
ロネラ油を含む水溶液」の調製において,イソブチレン−無水マレイン酸共
重合体が溶解しない事実及び該固液混合液体をゼラチン水溶液と混合しても
透明水系ゲルが得られなかった事実から,本件明細書には,本件特許の請求
項1の「水系ゲル化剤」及び請求項2「請求項1記載の水系ゲル化剤を含有
する水系ゲル」の製造方法が開示されていないことになる。
また,前記実験報告書の結果より,実施例1の条件では,反応生成物が生
成されないことが明白となっている。すなわち,実施例1には,本件特許の
請求項1及び請求項2の発明を実現できない製造方法が記載されていて,当
業者が容易に特許発明を実施できるように記載されていない。実施例5は,
実施例1で得られた透明水系ゲルの試験を実施しているが,この試験で実施
例1の透明水系ゲル芳香剤の試験結果が出ていることは,実施例1の条件で
粉末が溶解せず,透明水系ゲルが得られなかったことと矛盾する。この矛盾
は,実施例1のイソブチレン−無水マレイン酸共重合体の水溶液調製におい
て,記載されていない何らかの手段を講じていることによるものと考えざる
を得ない。
(原告)
本件特許の請求項1に係る発明のように,複数の物質を使用して化学反応
を起こさせる場合に,元の原料をそれぞれ水溶液として混合するのは,極め
て一般的,慣用的手段であるから,ゼラチンとイソブチレン−無水マレイン
酸共重合体とを反応させる場合も,双方を水溶液とした上で結合するのが通
常である。
この点,本件明細書の〔課題を解決するための手段〕の欄(3欄26∼3
1行)の記載は,ゼラチンとイソブチレン−無水マレイン酸共重合体を,そ
れぞれを水溶液にして反応させることを前提としている。
また,イソブチレン−無水マレイン酸共重合体を水溶性とするために,そ
れを水酸化ナトリウムなどの塩類によって中和した中和反応物とすることも
慣用的な技術である。例えば,特開昭56−36504号公報(甲17)の
2頁の右下欄には,α−オレフインと無水マレイン酸により生成した共重合
体をアルカリ性物質と反応させて得られる反応生成物が,水に溶解すること
が記載されている。また,特開昭61−47795号公報(甲18)の3頁
の左下欄には,α−オレフイン−無水マレイン酸共重合体が,塩基性化合物
を反応させることによって水溶性の共重合体塩とされることが記載されてい
る。
原告は,イソブチレン−無水マレイン酸共重合体の塩である「イソバン−
110」とゼラチンとを容器に入れ,均一透明になるまで撹拌した後,常温
で静置したものがゲル状に固まりゲル化剤となることを確認している。
また,実施例1は,分子量55000∼100000のゼラチン4.5g
と砂糖0.5gに,pH7.0の水75gを加え,60∼70℃に加温して
均一に溶解した水溶液に,香料を含む実施例1記載の組成の水溶液を加えて,
均一透明になるまで撹拌することを記載している。そして,本件明細書の
〔課題を解決するための手段〕の欄(3欄26∼31行)の記載から見て,
実施例1におけるイソブチレン−無水マレイン酸共重合体は,水に溶けるも
のであり,もともと酸性のイソブチレン−無水マレイン酸共重合体が塩類に
よって中和されたものであることがわかる。しかも,イソブチレン−無水マ
レイン酸共重合体などのオレフイン−無水マレイン酸共重合体を,水酸化ナ
トリウム等の塩によって中和した中和反応物をオレフイン−無水マレイン酸
共重合体の一種として取り扱うことは,高分子化学工業においては極めて常
識的なことである。
したがって,本件明細書の各実施例におけるイソブチレン−無水マレイン
酸共重合体が,イソブチレン−無水マレイン酸共重合体の中和物を表してい
ることは,本件明細書全体の記載から明らかであり,そのイソブチレン−無
水マレイン酸共重合の中和物を利用すれば,各実施例は実施できる。
なお,被告は,追試実験において本件発明が実施できず,本件明細書の実
施例1には,本件特許の請求項1及び請求項2の発明を実現できない製造方
法が記載されており,当業者が容易に特許発明を実施できるように記載され
ていないと主張するが,本件明細書の〔課題を解決するための手段〕の欄
(3欄26∼31行)の記載や,前述の当業者において一般的,慣用的,常
識的とされる手段を,あえて無視した実験を行った結果によるものにすぎな
い。
()無効理由5(実施可能要件違反(実施例の記載から本件発明の反応生成5
物の存在を確認できないこと))
(被告)
本件明細書の実施例の記載内容からは,本件特許の請求項1の反応生成物
の存在を確認できない。すなわち,本件明細書は,ゼラチンとオレフイン−
無水マレイン酸共重合体の間の反応の可能性があることによって,反応生成
物が存在しているというものにほかならず,実施例の裏付けがないので,実
施例の記載から,反応生成物の存在を確認できない。
本件明細書の実施例1ないし4には,オレフイン−無水マレイン酸共重合
体として,イソブチレン−無水マレイン酸共重合体を採用した場合の態様が
開示されている。例えば,実施例1では,ゼラチン4.5gと砂糖0.5g
を水75gに加え,60∼70℃に加温して,均一に溶解して,80gの第
1水溶液を調製している。次に,香料6.0g,ノニル系非イオン性界面活
性剤4.0g,イソブチレン−無水マレイン酸共重合体0.8g,エタノー
ル2.0g,プロピレングリコール0.2g,水7.0gからなる20gの
第2水溶液を調製している。そして,40℃に冷却した第1水溶液と,第2
水溶液を加えて,均一透明になるまで攪拌した後,容器に入れて,25℃で
1時間静置して,水系ゲルを製造している。
化学物質の化学的構造が唯一の特許有効性の根拠となる場合は,この物質
の化学的構造が実施例で開示されていることが要請される。本件の場合には,
実施例で得られたゲル化剤が,ゼラチンとオレフイン−無水マレイン酸共重
合体の反応生成物の構造を有することが開示されなければならない。通常,
化学反応物質は,反応生成物の化学構造,元素分析,融点,赤外スペクトル
等の組成分析データ及び物性測定データによる特定が行われるべきである。
本件では,反応によって新たに生成した化学結合(ペプチド結合など)の存
在を示す反応前と反応後の分析データ等の間接的に反応の発生を証明するデ
ータの提出すらもされていない。
化学反応による反応生成物の生成は,あくまでも,実施例によって何らか
の手段で確認されなければならない。本件明細書の実施例では,イソブチレ
ン−無水マレイン酸共重合体がゼラチンと接触する前に,過剰のアルコール
等の反応性成分と接触している。イソブチレン−無水マレイン酸共重合体と
ゼラチンとの反応を阻害する可能性のあるエタノール等の成分が,実施例の
共重合体水溶液内には存在する。このような阻害条件下の混合では,当該反
応生成物の存在を,何らかの手段で明確に実証しない限り,反応生成物の存
在を立証できていないことは明らかである。
本件明細書には,イソブチレン−無水マレイン酸共重合体とゼラチンの反
応生成物の存在の根拠を示す記載はなく,実施例2ないし4及び実施例6の
開示内容も実施例1と同様の状況にあり,これらの実施例の記載からは,反
応生成物の存在を確認できない。反応生成物の存在が確認できないことは,
本件特許の請求項1及び請求項2の発明が実施例で実証されていないことを
示している。
(原告)
本件明細書の各実施例では,本件特許の請求項1の水系ゲル化剤を分離し
て特定していない。しかしながら,明細書において,必ずしも実際に起こる
反応やその反応によって得られた物を具体的に特定する必要はないから,明
細書の実施例中に発明の物質を分離して特定していないからといって,その
発明が無効であるということはできない。
本件明細書の各実施例では,ゼラチンを含む水溶液と,イソブチレン−無
水マレイン酸共重合体を含む水溶液とを混ぜ合わせている。そして,各実施
例で得られた水系ゲルは,温度が0∼70℃の範囲で安定するという,極め
て特異で顕著な効果を示している(実施例5の説明及び表1)。このような
高温での安定性は,通常の水系ゲルでは考えられず,これが反応生成物の存
在の証拠である。
被告は,イソブチレン−無水マレイン酸共重合体とゼラチンとの反応を阻
害する可能性のあるエタノール等の成分が実施例の共重合体水溶液内には存
在すると主張する。しかしながら,本件明細書の〔課題を解決するための手
段〕の欄には,「ゼラチンまたはコラーゲンとオレフイン−無水マレイン酸
共重合体の反応方法としては,それぞれの水溶液をあらかじめ調整したのち
両者を混合するのが均一なゲルを得やすく,好ましい方法である。また,反
応時のpHは5∼9,好ましくはpH6∼8にするとよい結果が得られる。
この水系ゲルとして,香料,フエロモン,忌避剤等の揮発成分を閉じこめた
ゲルを製造する場合,揮発成分の中にカルボン酸無水物基と反応する水酸基
等を含むことが多いので,ゼラチンまたはコラーゲン,揮発成分,必要によ
り可溶化剤または乳化剤,ゲル強化剤等からなる水溶液を調整しておき,こ
れにオレフイン−無水マレイン酸共重合体を含有する水溶液を加えると良
い。」(3欄26∼38行)との記載がある。このように,発明者は,オレ
フイン−無水マレイン酸共重合体(イソブチレン−無水マレイン酸共重合
体)とゼラチンとの反応を阻害する可能性も十分認識しており,本件明細書
の実施例において,イソブチレン−無水マレイン酸共重合体がゼラチンと接
触する前に,エタノール等を含む溶液に入れられたとしても,イソブチレン
−無水マレイン酸共重合体とゼラチンとの反応を不可能とするものでないこ
とは,その記載からも明らかである。
また,酸無水物とアミンとの反応は極めて速く進行し,酸無水物とアルコ
ールとの反応は遅いということも常識であり,その点からも,エタノールが
ゼラチンとイソブチレン−無水マレイン酸共重合体との反応を阻害する大き
な要因となるとは考えられない。
以上の理由により,たとえ本件明細書の各実施例に,本件特許の請求項1
の水系ゲル化剤が分離して特定されていなくとも,各実施例中には,請求項
1の水系ゲル化剤が含まれているとみるのが自然である。
3損害の有無及び額
(原告)
被告は,エステー化学株式会社(旧商号,エステー株式会社)に対し,平成
12年6月から平成20年5月26日までの間に,少なくとも1億個の被告製
品を販売しており,その販売価格は,少なくとも1個100円を下らない。そ
して,本件発明に係る水系ゲルは芳香剤の主成分であるから,本件発明を実施
許諾した場合の実施料相当額は,販売価格の2%を下回ることはなく,本件特
許の原告の持分は2分の1であるから,被告が原告に支払うべき実施料相当の
損害金(特許法102条3項)は,1億円(1億個×100円×2%×1/
2)である。
(被告)
否認ないし争う。
第4当裁判所の判断
1争点()ア(本件発明の「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」(訂正後1
の「イソブチレン−無水マレイン酸共重合体」))には,その塩や中和物が含
まれるか)について
原告は,本件発明の「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」(訂正後の
「イソブチレン−無水マレイン酸共重合体」)には,その塩や中和物も含まれ,
「イソブチレン−無水マレイン酸共重合体」のアンモニウム塩である「イソバ
ン−110」を使用した被告製品は,本件発明の前記構成を充足すると主張す
る。他方,被告は,本件発明の「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」(訂
正後の「イソブチレン−無水マレイン酸共重合体」)には,その塩や中和物が
含まれず,「イソブチレン−無水マレイン酸共重合体」をアンモニア変性させ
た「イソバン−110」や「イソブチレン−マレアミド酸アンモニウム共重合
体」が「イソブチレン−無水マレイン酸共重合体」に含まれると解することは
できないから,被告製品は,本件発明の前記構成を充足しないと主張する。
そこで,本件発明の特許請求の範囲の「オレフイン−無水マレイン酸共重合
体」(訂正後の「イソブチレン−無水マレイン酸共重合体」)に,その塩や中
和物が含まれるか否かについて,以下検討する。
なお,原告は,前記第2の1()のとおり,本件特許に係る無効審判請求事2
件において,本件発明を本件訂正発明に訂正する旨の訂正請求をしており,本
件発明と本件訂正発明とは,「ゼラチンまたはコラーゲン」か「ゼラチン」か,
「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」か「イソブチレン−無水マレイン酸
共重合体」かという点で相違するが,「ゼラチンまたはコラーゲン」は「ゼラ
チン」を含むものであり,「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」は「イソ
ブチレン−無水マレイン酸共重合体」を含むものであり(当事者間に争いがな
い。),原告も,特許請求の範囲を減縮するものとして訂正請求をしている
(甲14)。
そして,争点()アにおいては,「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」1
ないし「イソブチレン−無水マレイン酸共重合体」に,その塩や中和物を含む
と解釈することができるか否かが争点となっており,イソブチレン以外のオレ
フインと無水マレイン酸との共重合体の構成要件充足性が争点となっているも
のでないから,以下においては,本件発明の特許請求の範囲の「オレフイン−
無水マレイン酸共重合体」に,その塩や中和物が含まれるか否かと併せて,訂
正後の特許請求の範囲の「イソブチレン−無水マレイン酸共重合体」に,その
塩や中和物を含まれるかについても,検討することとする。
()イソブチレン−無水マレイン酸共重合体とそのアンモニウム塩は,化学1
構造,性質を異にする別異の化学物質であること。
アイソブチレン−無水マレイン酸共重合体の化学構造式は,次のとおりで
あり,株式会社クラレのスタンダードタイプの「イソバン」は,イソブチ
レン−無水マレイン酸共重合体であると認められる(乙2)。
イ「イソバン−110」は,イソブチレン−無水マレイン酸共重合体であ
るスタンダードタイプの「イソバン」をアンモニア変性させたもの(塩)
であるところ,イソブチレン−無水マレイン酸共重合体のアンモニウム塩
は,イソブチレン−無水マレイン酸共重合体と異なり,水に溶けやすい性
質を有しており,その化学構造式は,次のとおりであると認められる(乙
2)。なお,下記化学構造式中のlは,0ではない。
ウこのように,イソブチレン−無水マレイン酸共重合体は,無水マレイン
酸環が全く開環しておらず,その開環により生ずるイソブチレン−無水マ
レイン酸共重合体のアンモニウム塩とは,化学構造を異にするだけでなく,
水溶性の点においても,その性質を異にする別異の物質である。
したがって,本件発明の特許請求の範囲の「オレフイン−無水マレイン
酸共重合体」(訂正後の「イソブチレン−無水マレイン酸共重合体」)と
の用語の一般的な意義から,直ちに,化学構造を異にするだけでなく,水
溶性においてもその性質を異にする別異の化学物質である「そのアンモニ
ウム塩」が含まれると解することはできない。
そこで,次に,本件明細書中の「オレフイン−無水マレイン酸共重合
体」,「イソブチレン−無水マレイン酸共重合体」についての記載を検討
する。
()本件明細書には,当業者が,「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」,2
「イソブチレン−無水マレイン酸共重合体」に,その塩や中和物が含まれる
と解釈できるような記載がないこと。
ア本件明細書の発明の詳細な説明には,「オレフイン−無水マレイン酸共
重合体」,「イソブチレン−無水マレイン酸共重合体」について,次の記
載がある。
「〔課題を解決するための手段〕
本発明者らは鋭意検討した結果、ゼラチンまたはコラーゲンとオレフイ
ン−無水マレイン酸共重合体との反応生成物が適用範囲の広い水系ゲル化
剤であることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明はゼラチンまたはコラーゲンのオレフイン−無水マレ
イン酸共重合体との反応生成物からなる水系ゲル化剤およびそれを含有す
る水系ゲルである。
本発明に使用するゼラチンまたはコラーゲンは少なくとも1個の遊離の
アミノ基を持つていればよく、分子量としては5,000∼200,00
0が好ましく、とくにゲルに透明性が要求される場合には分子量50,0
00∼100,000が好ましい。
オレフイン−無水マレイン酸共重合体としては、エチレン、プロピレン、
ブチレン、イソブチレン、イソプレン、ジイソブチレン、ドデセン、テト
ラデセン、ヘキサデセン、オクタデセン、スチレン、メチルスチレン等の
炭素数2∼24のオレフインと無水マレイン酸との共重合体があり、分子
量としては3,000∼100,000のものが使用できる。ゼラチンま
たはコラーゲンとオレフイン−無水マレイ酸共重合体の使用比率は、ゼラ
チンまたはコラーゲンの遊離アミノ基の数により一概に特定はできないが、
透明ゲルを形成するにはゼラチンまたはコラーゲン100重量部に対して
オレフイン−無水マレイン酸共重合体10∼40重量部で反応させるのが
適当である。
ゼラチンまたはコラーゲンとオレフイン−無水マレイン酸共重合体の反
応方法としては、それぞれの水溶液をあらかじめ調製したのち両者を混合
するのが均一なゲルを得やすく、好ましい方法である。また、反応時のp
Hは5∼9、好ましくはpH6∼8にするとよい結果が得られる。
この水系ゲルとして、香料、フエロモン、忌避剤等の揮発成分を閉じこ
めたゲルを製造する場合、揮発成分の中にカルボン酸無水物基と反応する
水酸基等を含むことが多いので、ゼラチンまたはコラーゲン、揮発成分、
必要により可溶化剤または乳化剤、ゲル強化剤等からなる水溶液を調製し
ておき、これにオレフイン−無水マレイン酸共重合体を含有する水溶液を
加えると良い。」(3欄1∼38行)
「〔発明の効果〕
本発明はゼラチンまたはコラーゲンとオレフイン−無水マレイン酸共重
合体との反応生成物を水系ゲル化剤とするように構成したことにより、広
い温度範囲で安定であるとともに、適用範囲の広い水系ゲルを得ることが
できる。」(4欄46行∼5欄1行)
実施例には,数平均分子量が8000と13000の「イソブチレン−
無水マレイン酸共重合体」が記載されている。
イこのように,本件明細書には,「オレフイン−無水マレイン酸共重合
体」,「イソブチレン−無水マレイン酸共重合体」に,「イソブチレン−
マレアミド酸アンモニウム共重合体」などの「イソブチレン−無水マレイ
ン酸共重合体」の塩や中和物を含むような記載は全くなく,当業者が,実
施例の記載を見ても,実施例に記載された「イソブチレン−無水マレイン
酸共重合体」が,「イソブチレン−マレアミド酸アンモニウム共重合体」
のアンモニウム塩を含むと解釈することは困難であって,本件発明の特許
請求の範囲の「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」(訂正後の「イソ
ブチレン−無水マレイン酸共重合体」)が,その塩や中和物を含むものと
解することはできない。
そして,前記第2の1()のとおり,原告は,請求項1の訂正に伴い,2
本件明細書の中の「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」との記載部分
のうちの対応部分を,「イソブチレン−無水マレイン酸共重合体」と訂正
しているが,「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」は,「イソブチレ
ン−無水マレイン酸共重合体」を含むものであり,原告自身,この請求項
1の訂正は,特許請求の範囲の減縮するものとしているのであるから(甲
14),この訂正請求による特許請求の範囲,明細書の記載の訂正がされ
るか否かにより,「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」又は「イソブ
チレン−無水マレイン酸共重合体」に,その塩や中和物が含まれないとい
う上記解釈が左右されるものではない。
ウこの点,原告は,本件明細書3欄26∼31行の記載が,ゼラチンとオ
レフイン−無水マレイン酸共重合体のそれぞれを水溶液にして,しかも,
中性にした状態で混合して反応させることを前提としており,オレフイン
−無水マレイン酸共重合体又はイソブチレン−無水マレイン酸共重合体を
水溶液とするために,それを中和物とすることは慣用的な技術にすぎない
から,本件発明の「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」又は本件訂正
発明の「イソブチレン−無水マレイン酸共重合体」は,その塩を除外して
おらず,むしろこれを含むことを前提としており,「イソブチレンーマレ
アミド酸アンモニウム共重合体」もこれに含まれると主張する。
しかしながら,前記()のとおり,イソブチレン−無水マレイン酸共重1
合体と,これをアンモニア変性させた「イソブチレン−マレアミド酸アン
モニウム共重合体」などの「イソブチレン−無水マレイン酸共重合体」の
アンモニウム塩とは,その化学構造や性質を異にする別異の物質であるか
ら,直ちに,後者が前者に含まれると解釈することはできない。
また,本件明細書は,前記アのとおり,ゼラチンとオレフイン−無水マ
レイン酸共重合体の反応方法として,それぞれの水溶液をあらかじめ調製
した後,両者を混合することが,均一なゲルを得やすく好ましい方法とし
て推奨するものにすぎず,そのような反応方法が推奨されているからとい
って,当初の成分である「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」にその
塩や中和物が含まれるものと解することはできない。
しかも,原告の指摘する本件明細書3欄26∼31行には,オレフイン
−無水マレイン酸共重合体を中和するという記載は一切なく,かえって,
本件明細書3欄29,30行の「反応時のpHは5∼9」との記載からは,
pH5の酸性でもよい結果が得られるとも理解し得るのであって,この記
載のみから,本件明細書の「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」ある
いは「イソブチレン−無水マレイン酸共重合体」が,その塩を含むことを
前提としているとか,アルカリにより中和された中和反応物を含むことを
示していると解釈することも困難である。
したがって,原告の前記主張は,採用することができない。
エまた,原告は,オレフイン−無水マレイン酸共重合体をアンモニア等に
よって中和した中和反応物を,オレフイン−無水マレイン酸共重合体の一
種として取り扱うことが高分子化学工業の分野では一般的であると主張し,
特開2000−8011号公報(甲12),特開2002−212487
号公報(甲13)を提出する。
しかしながら,特開2000−8011号公報は,平成10年6月19
日の出願に係るものであり,特開2002−212487号公報は,平成
13年1月12日の出願に係るものであって,いずれも本件特許の出願時
より10年以上も後の出願に係るものであるから,本件特許の出願当時の
一般的,慣用的な知見を示すものといえず,他に,本件特許の出願当時,
オレフイン−無水マレイン酸共重合体をアンモニア等によって中和した中
和反応物を,オレフイン−無水マレイン酸共重合体として取り扱うことが
高分子化学工業の分野において一般的であったと認めるに足りる証拠はな
い。
なお,原告は,前記各公報のほか,特開昭56−36504号公報(甲
17),特開昭61−47795号公報(甲18)からすれば,イソブチ
レン−無水マレイン酸共重合体の水溶液を形成するために,アルカリ性物
質と中和反応させることは周知であり,イソブチレン−無水マレイン酸共
重合体は,水やアルカリ水溶液に溶解して使用されることが大前提で,し
かも,アンモニウム変性させることも周知,慣用技術であったと主張する。
この点について,特開昭56−36504号公報(甲17)には,「無
水マレイン酸共重合体とアルカリ性物質との反応物を部分的に架橋しうる
化合物であって」(同公報3頁左下欄8行ないし10行)と記載されてい
るとおり,無水マレイン酸共重合体とアルカリ性物質との反応物(中和
物)を,「無水マレイン酸共重合体」と表現することなく,「無水マレイ
ン酸共重合体」と,その中和物である「アルカリ性物質との反応物」とを
明確に区別して表現している。また,特開昭61−47795号公報(甲
18)には,特許請求の範囲に「α−オレフイン−無水マレイン酸共重合
体のアルカリ金属塩,アルカリ土類金属塩またはアンモニウム塩」(同公
報1頁左下欄6行ないし9行)と記載されているとおり,「オレフイン−
無水マレイン酸共重合体」と,その塩である「アルカリ金属塩」「アルカ
リ土類金属塩」又は「アンモニウム塩」とは明確に区別して記載されてい
る。
これらの各公報の記載からすれば,「イソブチレン−無水マレイン酸共
重合体」又は「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」との表現には,ア
ンモニウム塩やアルカリ中和物が含まれないとするのが,当業者の技術常
識であったというべきである。
そして,前記認定のとおり,本件明細書を見ても,「オレフイン−無水
マレイン酸共重合体」,「イソブチレン−無水マレイン酸共重合体」に,
その塩や中和物を含むような記載は全くない。
そうすると,仮に,イソブチレン−無水マレイン酸共重合体の水溶液を
形成するために,アンモニア変性させてイソブチレン−マレアミド酸アン
モニウム共重合体とすることが周知,慣用技術であったとしても,本件明
細書に,ゼラチンとの反応方法として,「オレフイン−無水マレイン酸共
重合体」の水溶液をあらかじめ調整することが記載されていることから,
本件発明の「イソブチレン−無水マレイン酸共重合体」に,これをアンモ
ニア変性させた「イソブチレン−マレアミド酸アンモニウム共重合体」が
含まれると解釈することは,困難というべきであり,まして,「イソブチ
レン−無水マレイン酸共重合体」とは化学構造を異にする塩や中和物であ
る水溶性物質がおよそすべて含まれると解釈することは,更に困難という
べきである。
したがって,原告の前記主張は,いずれも採用することができない。
()小括3
以上によれば,本件発明の特許請求の範囲の「オレフイン−無水マレイン
酸共重合体」(訂正後の「イソブチレン−無水マレイン酸共重合体」)には,
「イソブチレン−マレアミド酸アンモニウム共重合体」などの「イソブチレ
ン−無水マレイン酸共重合体」のアンモニウム塩や中和物を含むと解するこ
とはできないから,「イソブチレン−無水マレイン酸共重合体」をアンモニ
ウム変性させて生成された「イソバン−110」を使用したとされる被告製
品が,本件発明の「オレフイン−無水マレイン酸共重合体」(訂正後の「イ
ソブチレン−無水マレイン酸共重合体」)という構成を充足するとは認める
ことができない。
よって,争点()アについての原告の主張は,理由がない。1
2以上によれば,被告製品は,本件発明の「オレフイン−無水マレイン酸共重
合体」(訂正後の「イソブチレン−無水マレイン酸共重合体」)との構成を充
足しないから,本件発明又は本件訂正発明の技術的範囲に属するものではない
と認められる。
したがって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は理由が
ない。
第5結論
以上の次第で,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主
文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官清水節
裁判官坂本三郎
裁判官岩崎慎
別紙
物件目録
1製品名ゲルタイプ芳香剤
2納入先エステー化学株式会社(旧商号:エステー株式会社)
3最終商品名「トイレの消臭ポット」
「お部屋の消臭ポット」
「クルマの消臭ポット」

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