弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人金子新一の上告趣旨は末尾添附別紙記載のとおりであるが、
 (一)所論Aの供述は誘導訊問による任意性を欠くものとはいえない。この点に
関する原判示は正当である。それ故右供述が任意性を欠くものであることを前提と
する論旨は総て理由がない。(二)知情の点は第一審判決挙示の証拠で認めること
が出来るのであつて、事実誤認とは認められない。(三)所論指印の鑑定について
の原判旨は正当である(原判示の様に第一審は改竄されて居る状況を一つの証拠と
して居るのであつて、右状況は所論鑑定の如何によつて変わるものではないから、
鑑定を却下したことは右採証には何等影響のないことである)。(四)所論引用の
大法廷判例は被害始末書の作成者を証人として申請したのに対し、それを却下しな
がら右始末書を証拠に採つた場合に関する判例である。つまり始末書の作成者に対
する被告人の反対訊問権を奪つた場合に関するものであつて本件に適切でない。(
五)憲法にいう「公平な裁判所」の意義については当裁判所大法廷小法廷に繰返し
判例があり、本件の裁判所がそれに当らないこと右各判例に照し明である。その他
論旨は刑訴第四〇五条所定の上告理由に該らないし、同法第四一一条を適用すべき
理由も見当らない。
 よつて刑訴第四〇八条に従つて裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和二九年五月二五日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

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