弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人三浦繁樹の上告趣意のうち,憲法13条,31条,36条違反をいう点
は,死刑制度がその執行方法を含め憲法のこれらの規定に違反しないことは当裁判
所の判例(最高裁昭和22年(れ)第119号同23年3月12日大法廷判決・刑
集2巻3号191頁,最高裁昭和26年(れ)第2518号同30年4月6日大法
廷判決・刑集9巻4号663頁,最高裁昭和32年(あ)第2247号同36年7
月19日大法廷判決・刑集15巻7号1106頁)とするところであるから,理由
がなく,その余は,事実誤認,単なる法令違反,量刑不当の主張であって,刑訴法
405条の上告理由に当たらない。弁護人小川秀世の上告趣意のうち,憲法13条
違反をいう点は,死刑制度が憲法の同規定に違反しないことは上記のとおりである
から,理由がなく,その余は,判例違反をいう点を含め,実質は事実誤認,単なる
法令違反,量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
なお,所論に鑑み記録を調査しても,刑訴法411条を適用すべきものとは認め
られない。
付言すると,本件各犯行時における被告人の完全な責任能力を肯定した原判断
は,正当として是認することができる。
本件は,同じ団体に勤める既婚の女性と不貞関係にあった被告人が,(1)平成
16年9月16日,同女の直属上司と話をするうち,同人の同女に関する発言に憤
激し,ネクタイで同人の首を絞めた上,その後包丁で同人の胸部,腹部等を刺して
殺害し,死体を茶畑の隅に埋めて遺棄し,(2)平成17年9月9日,(1)の犯行の
後も不貞関係を続けていたことが被告人の妻に発覚し,不貞関係の解消を迫られる
などしたため,妻の首をネクタイで絞めて殺害し,死体を自宅浴室で電気丸のこに
より切断して損壊した上で,山中の複数の場所に死体を遺棄した事案である。
各犯行の経緯や動機に酌むべき点はない。いずれの事案においても,被告人は,
無防備な被害者の首を突然絞めて犯行を開始し,(1)の犯行においては確実に殺害
するために首を絞めた後に包丁を購入して被害者を刺して殺害し,(2)の犯行にお
いては,玄関で背後から被害者の首を絞め,そのまま居間まで引きずって行って,
首を絞め続けて殺害している。各殺害行為は,いずれも確定的殺意に基づいて,執
拗な攻撃を加えたものといえ,各殺害後も,犯行発覚を防ぐため,各死体を畑や山
中に遺棄し,とりわけ(2)の犯行においては,死体を解体した上で遺棄しており,
冷酷,残虐な犯行態様で悪質である。
落ち度のない2名の尊い生命が奪われた結果は誠に重大であり,遺族の被害感情
も極めて厳しいものがある。また,遺棄された死体が発見されて発覚した各犯行が
社会に与えた衝撃や不安も大きい。しかるに,被告人は,殺害の経緯に関して不合
理な弁解を述べるなど真摯な反省の情がうかがえない。
そうすると,被告人に前科前歴がなく,各犯行を行ったことを認め,遺族に対し
謝罪の意向を示していることなど,被告人のために酌むべき事情を十分考慮して
も,被告人の刑事責任は極めて重大であり,原判決が維持した第1審判決の死刑の
科刑は,当裁判所もこれを是認せざるを得ない。
よって,刑訴法414条,396条,181条1項ただし書により,裁判官全員
一致の意見で,主文のとおり判決する。
検察官圓山慶二公判出席
(裁判長裁判官古田佑紀裁判官竹内行夫裁判官須藤正彦裁判官
千葉勝美)

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