弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人Aの弁護人村本一男の上告趣意第一点について。
 所論は、憲法違反とはいつているが、その実質は単なる省令適用の誤りを主張す
るに過ぎないものであるから、明らかに刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そし
て、昭和二〇年厚生省令四四号は、麻薬中その製剤が最も容易で且つ人体に及ぼす
害毒が極めて激烈である塩酸ヂアセチルモルヒネ及びその一切の製剤だけを限つて、
その所有、使用、破棄、販売、購人、贈与、受贈分配又は輸送を禁止し且つこれが
届出、没収等を定めた特別の規定であり、また、同二一年同省令二五号は、同令二
条所定の麻薬一般について、その製剤、小分、販売、授与、又は使用(麻薬を配伍
した処方箋の交付を含む)に関する取締について定めた一般規定であるから、前者
は後者の特別法たる性格を有するものと解するを相当とする。従つて、後者の麻薬
中には塩酸ヂアセチルモルヒネを包含し且つ後者の麻薬の小分、販売、授与又は使
用に関する取締規定は前者の規定する塩酸ヂアセチルモルヒネの使用、販売等の禁
止後に制定されたものではあるが、前者は後者により改廃されたものではなく、両
者とも一般法、特別法として併存するものと見るべきである。されば、両者とも麻
薬取締法六五条の規定によつて同時に廃止されたのである。しかも、同法七四条の
規定によりその廃止前にした行為に対する罰則の適用については両者ともその廃止
後もなお併立してその効力を有するものである。それ故、第一審判決が本件塩酸ヂ
アセチルモルヒネの販売行為に対し前示省令四四号一条、四条だけを適用したのは
正当であつて、所論の法令違反も認められないから、刑訴四一一条を適用すべきも
のとも思われない。
 同第二点、第三点について。
 論旨第二点は、事実認定に関する単なる訴訟法違反又は事実誤認の主張であり、
同第三点は、量刑不当の主張に帰するから、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当
らないし、また、同四一一条を適用すべきものとも認められない。
 被告人Bの弁護人角恒三、岡佐野正秋の上告趣意並びに同被告人本人の上告趣意
について、
 弁護人の上告趣意は、量刑不当の主張に帰し、また、被告人本人の上告趣意は証
拠の取捨判断又は事実認定の非難に帰する。さればいずれも明らかに刑訴四〇五条
の上告理由に当らないし、また、記録を精査しても同四一一条を適用すべきものと
は認められない。
 よつて、同四一四条、三八六条一項三号に従い、裁判官全員一致の意見で主文の
とおり決定する。
  昭和二六年一二月二〇日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    岩   松   三   郎

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