弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 弁護人高畑二郎の上告趣意第一点について。
 本件においてA丸が舞鶴港から福井県三国港に向け出航する予定であつたことは
所論のとおりであるが被告人等は右三国港から朝鮮向けの密航船があること及び同
船に連絡する船が舞鶴港から出航することを聞知し此の機会を利用して朝鮮えの物
品の密輸出を企て判示物件をA丸に積込んだものであり原判決挙示の証拠によれば
その頃密航船が航行していたことも窺知することができるのであるから被告人等の
所為をもつて不能犯ということはできない、論旨は採用できない。
 同第二点について。
 しかし原判決は本件をもつて密航詐欺とみなかつたことは原判決の全趣旨から自
から明かであり詐欺の点について特に判断を示す必要はないから論旨は理由がない。
 同第三点及び第四点について。
 しかし原判示によると被告人等は密輸出の目的をもつて福井県三国港発の朝鮮行
の貨物船に乗船するため同港向け出航予定のA丸に舞鶴市大森海岸伊佐津川口で判
示物件を積込んだというのであるから被告人等の所為は原判示の諸法令にいわゆる
「輸出ヲ図リタル者」及び「輸出しようとした者」に該当するものであることは明
白であり、所論は独自の見解に過ぎないから論旨はいずれも理由がない。
 同第五点について。
 原判決の証拠説示を検討するに被告人Bの犯罪事実は同被告人の判示の如き原審
公判廷の供述、第一審第一回公判廷の供述記載、司法警察官の聴取書中の供述記載
の外「船籍不明貨物船について」と題する書面及び司法警察官Cの押収調書により、
被告人Dの犯罪事実は同被告人の判示の如き原審公判廷の供述、第一審第一回公判
廷の供述記載、司法警察官の第一回訊問調書中の供述記載の外「船籍不明貨物船に
ついて」と題する書面及び司法警察官Cの押収調書により各別に認定したものであ
り右書面及び押収調書は被告人両名に共通にこれを利用する趣旨であることは明白
である、そして原審第一回公判調書によると右原判決挙示の証拠は適法に証拠調が
なされていることが明らかであるから原判決には所論の如き違法なく論旨は理由が
ない。
 同六点について。
 しかし原判決挙示の証拠を綜合すれば原判示の事実を認定できるのであるから所
論は原審の専権に属する証拠の判断、事実の認定を非難するに帰し上告適法の理由
とならない。
 よつて、刑訴施行法二条、旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判決する。
 右は全裁判官一致の意見である。
 検察官長部謹吾関与
  昭和二五年一一月一〇日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

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