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平成26年8月28日判決言渡
平成26年(ネ)第10044号不正競争行為差止等請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所平成25年(ワ)第127号)
口頭弁論終結日平成26年7月10日
判決
控訴人株式会社ピュアルネッサンス
訴訟代理人弁護士柿平宏明
被控訴人Y
訴訟代理人弁護士岸本有巨
主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1控訴人
原判決を取り消す。
被控訴人は,教育サロンの経営,新規提携サロンの開拓及び指導教育,化
粧品等の販売事業に関し,別紙営業秘密目録記載の営業秘密を使用し,又は
開示してはならない。
被控訴人は,控訴人に対し,被控訴人の保有する別紙物件目録記載の物件
を廃棄せよ。
被控訴人は,控訴人に対し,1136万1000円及びこれに対する平成
25年2月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
仮執行宣言
2被控訴人
主文同旨
第2事案の概要
1本件は,美容サロンの経営,化粧品の販売等を業とする控訴人が,控訴人の
取締役の地位にあった被控訴人に対し,控訴人が被控訴人に開示した別紙営業
秘密目録記載の営業秘密(以下「本件営業秘密」という。)を被控訴人が不正
の利益を得る目的又は控訴人に損害を加える目的で使用し,又は開示するおそ
れがあると主張して,不正競争防止法2条1項7号,3条に基づき本件営業秘
密の使用又は開示の差止め及び物件の廃棄を求めるとともに,被控訴人が本件
営業秘密を持ち出した行為は控訴人と被控訴人の間の秘密保持契約にも違反
し,これにより控訴人は損害を被ったと主張して,同法4条又は債務不履行に
基づき1136万1000円の損害賠償及びこれに対する訴状送達の日の翌日
である平成25年2月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅
延損害金の支払を求めた事案である。
原審は,控訴人の請求をいずれも棄却したため,控訴人が,前記第1の1の
裁判を求めて控訴した。
2前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり原判決を補正
するほかは,原判決「事実及び理由」の第2の1ないし3記載のとおりである
から,これを引用する。
原判決4頁15行目から同頁16行目の「現に保有しているというべきで
ある。」の次に,次のとおり加える。
「時間的余裕がない状況下ではなおさらのこと,ありとあらゆる証拠を持ち
出そうと考えるのが自然である。」
同5頁20行目の冒頭に,次のとおり加える。
「被控訴人が計画的に別件訴訟の提起に至ったことからすると,被控訴人
が,取得した情報,特に個人情報を使用して,控訴人と同様のいわゆるネ
ットワークビジネスを経営し,又は同ビジネスに従事する可能性は十分に
存在する。」
同6頁9行目から10行目の「改修措置を講ずることを余儀なくされ
た。」の次に,次のとおり加える。
「控訴人がシステム改修のための見積書(甲5)を取得したのは,別件訴訟
の終了後のことではあるが,同見積書の作成者に見積りを依頼したのは別
件訴訟開始後である。控訴人は,被控訴人がしたような情報の無断持ち出
しを追及することができる電子メールを含む情報のアーカイブ化等のシス
テム構築の検討を依頼し,その結果,提案書(甲19)により,ファイル
サーバーの導入を提案されたものである。同提案書によれば,」
同6頁17行目の末尾に,次のとおり加える。
「控訴人は,被控訴人がしたような情報の無断持ち出しを追及することがで
きる電子メールを含む情報のアーカイブ化等のシステム構築の検討を依頼
し,その結果,提案書(甲19)により,ファイルサーバーの導入を提案
されたと主張するが,上記提案書には,そのような記載はなく,むしろ,
控訴人主張のシステム改修の目的がファイル情報の共有化・同期化による
運用の効率化にあることが,その内容から明らかである。したがって,被
控訴人の行為と控訴人主張の損害との間に相当因果関係はない。」
第3当裁判所の判断
当裁判所も,控訴人の請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由
は,次のとおり原判決を補正するほかは,原判決「事実及び理由」の第3の1
ないし4記載のとおりであるから,これを引用する。
1原判決の補正
原判決9頁16行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。
「控訴人は,時間的余裕がない状況下ではなおさらのこと,ありとあらゆ
る証拠を持ち出そうと考えるのが自然であると主張する。しかし,被控訴
人は退職後に控訴人の業務と同種の業務に携わる意思を有しておらず,実
際にも,退職後,控訴人の業務と同種の業務には従事していないのである
から,被控訴人があえて退職後に必要としない控訴人の業務に係る情報ま
で持ち出そうと考えるのは,むしろ不自然であり,控訴人の上記主張を採
用することはできない。」
同9頁25行目「したがって,」の次に,「被控訴人が本件営業秘密を持
ち出したとの」を加える。
同10頁23行目冒頭に,次のとおり加える。
「控訴人は,被控訴人が計画的に別件訴訟の提起に至ったことからすると,
被控訴人が,取得した情報,特に個人情報を使用して,控訴人と同様のい
わゆるネットワークビジネスを経営し,又は同ビジネスに従事する可能性
は十分に存在すると主張する。しかし,」
同11頁2行目末尾に,次のとおり加える。
「そして,他に,被控訴人が控訴人の業務と同様の業務に従事する可能性を
裏付ける具体的な事実を認めるに足りる証拠もない以上,単にそのような
可能性が抽象的に存在するというだけでは,不正競争防止法3条1項にい
う「営業上の利益を・・・侵害されるおそれ」があるということはできな
い。」
同12頁1行目の「2年余り経過した後であることからすると,」を,次
のとおり改める。
「2年余り経過した後であること(なお,控訴人は,システム改修のための
見積りを依頼したのは別件訴訟開始後であると主張するが,その依頼に対
して提出された提案書(甲19)の内容に照らしても,その作成に多くの
時間を要するとは考え難いことからすると,見積りの依頼時期も,被控訴
人によるデータの持ち出しの事実を知った時期から相当期間を経過した後
のことと認められる。),また,上記提案書の内容も,ファイル情報の共
有化・同期化による運用の効率化を目指す一般的なものと認められること
からすると,」
2結論
よって,控訴人の請求をいずれも棄却した原判決は相当であり,本件控訴は
理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官石井忠雄
裁判官西理香
裁判官田中正哉

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