弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
被告人を懲役11年に処する。
未決勾留日数中240日を刑に算入する。
押収してある鉈1本,サバイバルナイフ2本,スタンガン1台,警棒1本
を没収する。
理由
(犯罪事実)
第1被告人は,Aから債務の返済を強く迫られる等して対応に苦慮していたと
ころ,同人から宗教団体の教祖であるBのもとには多額の現金等が置かれて
いると聞き,これらを奪い取ってAに渡すことで自己の窮状を乗り切ろうと
考えるようになった。そこで,あらかじめ下見をした上,平成17年9月7
日,Bの自宅でもある大阪府吹田市ab丁目c番d号所在のCに赴いたが,
できることなら手荒な方法によらず密かに盗み出したいと思っていたので,
玄関のインターホンを何度も押す等して中の様子をさぐってみたが,応答が
なかったため,留守ではないかと思ったものの,家人に発見される等した場
合には無理にでも現金を奪おうと考え,あらかじめ準備した凶器等を携行の
上,同日午後1時20分ごろ,1階玄関横の腰高窓の施錠を外してC内に侵
入し,1階で現金のありかを捜していたところ,2階から下りてきたD(当
時38歳)に発見されたため,同女に対し,いきなり,その頭部を砂を詰め
た靴下で何度も殴打し,その後も,警棒等で頭部,顔面等を何度も殴打し,
さらには,スタンガンを押し当て,配線バンドで手足を緊縛する等の暴行を
,,(),加え一方C2階居室で病気療養中であったB当時60歳に対しても
警棒等で頭部等を殴打し,スタンガンを押し当て,配線バンドで手を緊縛す
る等の暴行を加え,同人らが反抗できないようにした上「金どこや「も,」
っとあるやろ」と迫るなどして,B所有の現金合計125万4000円を奪
い取るとともに,これら一連の暴行により,Dに対し,加療3か月以上を要
する頭部裂創,顔面骨骨折,左肩甲骨骨折,眼球打撲,腹部火傷等の,Bに
対し,加療3か月以上を要する脳震盪,顔面骨骨折,頭部・顔面挫創等の各
傷害を負わせた。
第2被告人は,業務その他正当な理由による場合でないのに,前記日時場所に
おいて,鉈1本(刃体の長さ約31センチメートル,折りたたみ式サバイ)
バルナイフ1本(刃体の長さ約10.7センチメートル)及びサバイバルナ
イフ1本(刃体の長さ約19センチメートル)を携帯した。
(争点に対する判断)
弁護人は「被告人は,Aに脅迫されてやむを得ず,本件犯行に及んだもので,
緊急避難が成立し,期待可能性もなかった」旨主張し,被告人もこれに沿う供述
をする。
そこで,以下,前掲各証拠に基づきこれらの点の検討を加える。
1(1)本件は,平成18年4月11日判決を予定していたところ,その約1週
間前の同月3日,弁護人から「被告人がAに脅迫されて本件犯行に及んだこ
」。,,とが判明した旨の理由により弁論再開請求があったそこで当裁判所が
弁論を再開したところ,同公判で,被告人が前記のような供述をするに至っ
たものである。
(2)ところで,被告人が,弁論再開前に述べていた本件犯行に至る経緯・動
機等の概略は以下のとおりである。
被告人は,平成6年ごろ,中古車販売店の経営を始めたが,放火被害に
遭う等の不運もあって同店の経営に失敗し,平成15年1月ごろ,同店を廃
業したが,その際,数千万円の負債を抱えていた。その後,債権者の一人か
らAを紹介され,同人に債務の一部を肩代わりしてもらい,さらには「儲,
けさしたる」などと言われたこともあって,同人に従っていさえすれば,前
記負債を完済することも可能ではないかと考え,同人が経営するEの事務所
に出入りするようになった。ところが,同人からは小遣い程度の金しかもら
えず,他に確実な収入もなかったことから前記負債の返済を滞らせていたと
,,。,ころ多数の債権者から頻繁に督促の電話を受けるようになったしかし
被告人は,それでもなお,生活に余裕がなかったため,知人以外への返済は
行わずにいたところ,平成17年7月ごろから,一部債権者から脅迫的な電
話が頻繁にかかるようになった。そのようなおり,元妻のもとに泥棒が入る
という事態も重なり,これについても前記電話をかけてきた者の仕業ではな
いかと考え,このまま債務を放置していたのでは,自分あるいは別れた妻子
の身に,どのような危害が及ぶかもしれないと危機感を募らせ,何としてで
も大金を手に入れ,前記負債を清算しなければならないなどと考えるように
なった。そして,同年8月10日ごろ,Aが,腹心のFすら信用していない
と知り,このままAに頼っていても到底大金など手に入れられるはずがない
と分かった。そのような中,同月28日ごろ,Fに会った際に,被害者Bの
,,,もとには常時5000万ないし1億円程度の現金が置かれていると聞き
これら現金を手に入れたいと考えるようになった。そこで,被告人は,同年
9月1日ごろ,Fから,被害者Bが居住しているCの所在を聞き出し,さら
に,Cの見取り図も入手した上,翌2日ごろ,下見のため大阪府吹田市を訪
れたが,その際には,Cを見つけ出すことができなかった。そこで,同月4
日ごろ,再度,同市を訪れ,ようやくCを捜し出して,防犯カメラ等が設置
されていないことなどを確認の上,本件犯行に及んだ。
(3)一方,被告人は,弁論再開後の公判では「Aに借金の肩代わりをして,
,。もらうなどしたため同人に対し500万円程度の債務を負うことになった
その返済に努力していたが,平成17年4月ごろから,同人の督促が厳しく
なり,深夜・早朝を問わず督促の電話がかかったり,事務所に呼び出される
ようになった。そして,同年7月ごろから,直接あるいは電話で『あんま,
り行儀の悪いことをしとったら,子供と一緒に琵琶湖に沈めるぞ』などと脅
されるようになったしかもそのころ携帯電話に正体不明の人間から早。,,『
う借金を返せ。夜道に気をつけろ』などという脅しの電話が入ったり,元妻
の住むアパートに泥棒が入る等したこともあり,本気で脅しているのだと感
じて危機感を強めるようになった。そして,同年8月半ばごろ,Aに事務所
まで呼び出され『被害者Bのところの金庫には,1億円ほどの現金と,有,
価証券とか,大金庫のかぎが入っているので,これらを取ってこい。被害者
B方には,昼間は人がおれへんからガラスを割って入ればいい。入り方も,
見取り図も,ちゃんと教えてやる』などと言われた上『入らへんのやった,
ら,親も子供もまとめて殺すぞ』と怒鳴られた。その後,さらに,Aから電
,,『』話で脅されたこともあり子供のことなどを考えてAに電話でやります
旨返答したところ,しばらくして,Aから電話で『Fに見取り図を渡してあ
るから取りに来い』との指示を受け,同月末ごろ,Aの事務所まで赴き,F
からCの見取り図を受け取りさらにその所在地を聞いたAからは9,,,。『
』,,月になるまでにやれと言われていたがCの場所等も分からなかったため
先ず現場を見ようなどと考え,下見等するうち,本件犯行当日に実行するこ
とになった。これまで,本当のことを話せなかったのは,Aに対する恐怖心
があったからである。しかし,G等の自分を応援してくれる人が現れたこと
や,Aの影響力が低下して,子供に対する危険も少し下がったと感じたこと
から現時点でこのような話をすることになった旨述べている以下再,,」(「
開後の供述」という。。)
2検察官は【①被告人が本当にAを恐れていたのであれば,逮捕当初「Aが,
けん銃を持っている」などと口走ることは考えられない。また,その後「A,
から被害者B方に金があると聞いた」などといえるはずもない。むしろ,早い
段階で,Aに指示されていた事実を警察に申告し,同人を検挙するよう求める
はずである。②また,被害者Dは「被告人から『金出したら何もせえへん』,
といわれた」旨供述し,現に,被告人は,書類等には目もくれず,現金のみを
強奪しており,被告人がAに指示を受けたと述べる内容と,実際の言動との間
に矛盾がある。③被告人が,このような供述をはじめたのは,Gから「Aが裏
で糸を引いていたのではないかと」と問う手紙を受けた後のことであり,同供
述を始めた時期も不自然で,Gの話に合わせて,先のような弁解を思いついた
と考えるほかない。したがって,再開後の供述は到底信用できない】旨主張す
る。
(1)しかし,検察官が主張する前記の各点を考慮しても,再開後の供述が単
なる弁解に過ぎず信用できないとして直ちに,これを排斥することまではで
きないものと考える。
その理由は以下のとおりである。すなわち,①Aの説明とは異なり,金庫
の中には現金等がなかったばかりか,Cには被害者両名が在宅しており,そ
の結果,本件犯行が実質的に失敗に終わったのだから,被告人が,Aにはめ
られたと考え,怒りの気持ちが先行して,逮捕当初「Aがけん銃を持ってい
る」などと口走ったとしても不自然とはいえない。また,被害者Bとの接点
があり,同人の事情を知っていたのはAであり,このことはいずれ捜査側に
も分かることだから,同人を介して被害者のことを知った旨認めることが不
自然だともいえない。また,いずれにせよ,本件犯行を実行したのは,被告
人であり,通常,自らの責任は免れようがないのだから,脅される等の事情
がある場合には,後難を恐れて,あえて,背後関係等について述べないとい
うことも十分に考えられるところである。②さらに,本件犯行当時,被告人
は,女性や病人である被害者両名に対し,異常といえるほどの激しい暴行に
及ぶなど,相当な興奮状態にあったものと認められる。このような状態にあ
った被告人が,その場の勢い等からAの指示内容と異なった言動をとったか
らといって,それを不自然と断ずることまではできない。③加えて,Gの手
紙が契機となり,真実を語ることもありえないことではない。
以上のとおり,検察官が主張するところから,被告人の再開後の供述が不
自然で信用できないと断ずることまではできない。
(2)そもそも,被告人が債務の返済に困って追いつめられた状況にあったと
はいえ,被害者B方に巨額の現金が常に置いてあると聞いたからといって,
これまで特に犯罪傾向のなかった者が,同人方の詳しい状況等も分からない
,,。まま直ちにこれを奪うことを思いつくというのはいささか唐突にすぎる
被害者Bの事情に通じていたのはAであり,被告人が,Aの従業員であるF
から,Cの見取り図を入手するとともに,その住所を聞き出している点等に
,。照らすとAが本件犯行に何らかの形で関与している可能性を否定できない
また,Aが被告人の負債を肩代わりした経過も不自然であって,債務の存在
,,。,を理由に被告人を支配し便利に使おうとする意図がうかがえるさらに
被告人は,弁論再開前から,本件犯行に至った理由について,債権者から脅
迫され,元妻や子供に危害が及ぶことを危惧して本件犯行に及んだ旨供述し
ている。これらの点からすると,被告人が脅迫を受けたと述べていた債権者
こそがAであって,同人から,脅迫される等して債務の返済を強く迫られ,
被告人が対応に苦慮していたと考えるのが自然である。加えて,被告人の再
開後の供述を排斥するだけの証拠もないのである。
(3)そうすると,被告人の再開後の供述を虚偽と決めつけ,信用できないと
いい切ることはできない。
3そこで,被告人の再開後の供述を前提に,緊急避難が成立し,あるいは期待
可能性がなかったといえるかについて検討を加える。
被告人がAから受けたと述べる脅迫は,本件犯行に及ばなければ「被告人あ
るいは子供などを殺す」と怒鳴りつけられる等したというものである。被告人
が,Aから厳しく債務の返済を迫られる中,このような脅迫を受けたことで,
。,,相当強い危機感や恐怖心を抱いたことは理解できるしかしこれらの脅迫は
あくまでも口頭でのもので,自己もしくは子供などが直接的にAの実力支配下
に置かれる等したわけではない。しかも,被告人が実行を決意した後は,決行
の具体的時期・方法等は,すべて被告人に委ねられていたばかりか「全部取,
ってきたときには,借金のことは考えてやる」とも言われていたというのであ
る。そうすると,前記脅迫の程度は,被告人の意思決定の自由を奪うほどに強
いものとはいえず,被告人がその気になれば,脅迫を受けていることを警察に
被害申告し,その援助を求める等,他の手段を選択することも十分に可能であ
ったものと認められる。被告人は,脅迫を受けていたとはいえ,それが切迫し
たものではなく,他に取り得る手段もあったのに,Aに借金を立て替えてもら
う等世話になっていた負い目もあって対応に苦慮したあげく,最終的には,A
から「全部取ってきたときには,借金のことは考えてやる」旨言われていたこ
とから,本件犯行に及び,それを成功させることによって全負債の清算ができ
ると期待し,本件犯行に及ぶことを選択したものと認められる(弁論再開前の
被告人の供述にもあるように,被告人がAに従っていたのは,同人への負い目
のみならず,金儲けの口の紹介を受けて負債を整理できるとの思いがあったも
のと認められる。。)
,「」,そうすると緊急避難の要件である現在の危難を避けるため行ったとも
「やむを得ずした行為」ともいえないので,緊急避難や過剰避難に当たらない
し,期待可能性がなかったともいえない。
したがって,弁護人の主張には理由がない。
(法令の適用)
罰条
第1住居侵入の点刑法130条前段
D及びBに対する強盗傷人の点
いずれも刑法240条前段
第2包括して銃砲刀剣類所持等取締法32条4号,2
2条
科刑上一罪の処理
第1住居侵入と各強盗傷人について,刑法54条1項
後段,10条(1罪として刑及び犯情の最も重い
Dに対する強盗傷人罪の刑で処断)
(なお,加えられた暴行及び負傷の程度を比較し
てDに対する強盗傷人罪がBに対するそれよりも
犯情が重いと判断した)。
刑種の選択
第1有期懲役刑を選択
第2懲役刑を選択
併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(重い第1
の罪の刑に同法47条ただし書の制限内で法定の
加重)
未決勾留日数の算入刑法21条
没収刑法19条1項1号(鉈,サバイバルナイフ2本
の関係でのみ,2号,2項本文)
訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の事情)
1本件は,被告人が,白昼,住宅街にある寺院兼居宅に押し入り,被害者両名
に激しい暴行を加えて,それぞれ加療3か月以上を要する重傷を負わせた上,
現金約125万円を強奪し,その際に3本の刃物を携帯したという住居侵入,
強盗傷人,銃砲刀剣類所持等取締法違反の事案である。
2被告人は,Aから債務の返済等を強く迫られ,その対応に苦慮したあげく,
本件各犯行に及んだものと認められるところ,その苦悩や恐怖心自体は理解で
きないものではない。しかし,脅迫を受けていることを警察に申告して援助を
求める等,他に取るべき手段があったのに,結局のところ,これまで世話にな
ってきたAへの負い目や,自己の債務処理等を優先させて,被害者Bのもとに
ある多額の現金を奪うなどすることにより,窮状からの脱出を図ろうとしたも
のである。このような犯行動機は,余りに身勝手で,酌むべき点に乏しい。
被告人は,事前に本件犯行現場の図面を入手するとともに,下見をしてCに
防犯カメラ等が設けられていないことを確認した上,多数の凶器を持って犯行
現場に赴くなど,周到かつ計画的に本件犯行に及んでいる。なお,被告人は,
凶器を持ってCに入ったものの,同時点では,中に人がいないと思っており,
侵入時には強盗の意思がなかったかのように公判で供述する。しかし,凶器の
一部を腰ベルトに装着したり,手につかんだりした状態で持ち歩き,被害女性
Dに発見されるや,直ちにこれを使用している点などからみると,家人に発見
される等した場合には,これらを使用し無理にでも現金を奪おうとの意思を有
していたものと認められ,侵入当初から,少なくとも未必的には強盗の意思を
有していたものと認められる。
また,本件犯行の態様は,被害女性Dに発見されるや,いきなり砂を詰めた
靴下で,その頭部を何度も殴って転倒させ,それでもなお同女が2階で療養中
の被害者Bの身を気遣い「逃げて」などと声を上げたことから,同女を黙らせ
ようと,顔面や頭部を執拗に殴りつけ,続いて,2階にいた被害者Bに対して
も,同人が病人で強く抵抗できないこと等が分かりながら,同人を押さえ付け
て,手拳で顔面を殴打し,頭部を警棒で殴り,顔面にスタンガンを押し当てる
等の暴行を振るい,その際,同人への暴行をやめさせようと必死の思いで2階
,,に上がってきた前記被害女性Dに対しても手拳や警棒で頭部・顔面を殴打し
スタンガンを押し当てる等したという,執拗で悪質極まりないものである。こ
れら暴行がいかに激しく容赦ないものであったかは,被害女性Dの顔が腫れ上
,,がって容貌が変わり被害者両名がいずれも骨折等の重傷を負っていることや
使用された警棒が折れ曲がっていること,被告人が小指を骨折していること等
から明らかである。そして,このような激しい暴行を振るわれた被害者両名が
筆舌に尽くしがたい肉体的苦痛と恐怖を味わったことは容易に推察できる。し
かも,被告人は,このように激しい暴行を振るわれ,抵抗できない状態の被害
者Bから,判示金額を奪い取った後も,なおも現金等を奪おうとして,被害者
両名の手足を配線バンドで縛り付ける等した上,金庫及び鍵のありかを教える
よう迫るなどしている。このような一連の犯行態様は,余りにも無慈悲かつ残
忍なもので,厳しく非難されなければならない。
,,本件犯行により奪われた現金は125万円余と多額である上被害者両名は
既述のとおりの執拗で激しい暴行を受けて,いずれも加療3か月以上を要する
。,,重傷を負っている被害女性Dは約4か月を経過した時点でも顔面の麻痺や
当時の凄惨な現場の状況を思い出して過呼吸に陥る等して苦しんでおり,同女
が受けた精神的・肉体的苦痛がいかに大きなものかを物語っている。一方,被
害者Bは,本件犯行の十数日後,直腸ガンによる呼吸不全により死亡したもの
である。なるほど,本件犯行は,同人の死亡と直接結びつくものではないが,
病床にある者に激しい暴行に及べば,その容体を悪化させて深刻な事態を招き
かねないことは誰しも容易に予想できることなのに,このような配慮もなく既
述のとおりの激しい暴行に及んだことは強い非難を免れない。病床で,このよ
うな暴行を受け,ほどなく死亡するに至った被害者Bの無念の思いには察する
に余りあるものがある。また,被害女性Dや被害者Bの弟が,本件犯行のため
被害者Bの死期が早まったと考え,厳しい処罰感情を抱くことにも無理からぬ
ところがある。
加えて,被告人は,被害女性Dからの110番通報を受けて電話をかけ直し
てきた警察官に対し,被害者Bを名乗り,現場に臨場する必要がない旨告げる
等,冷静に対応しており,既述の冷酷で余りにも激しい暴行態様とともに被害
女性Dの恐怖心を一層高めている。
,,既述のとおり被告人の再開後の供述が信用できないとまではいえない以上
Aの脅迫が契機となって本件犯行に及んだとの前提で被告人の量刑を行う必要
がある。しかし,被告人は,前記のとおり,他の選択肢もあったのに,Aへの
負い目や,自己の債務処理を優先させたいとの気持ちなどから,最終的に,本
件犯行に及ぶことを決意したものと認められる。したがって,前記のような事
情があるからといって,この点をさほど有利に考慮することはできない。そも
そも,本件の量刑を決する上で,最も重視されるべきは,本件犯行態様の残忍
さと,もたらされた被害の重大さである。これらの責めは,本件犯行を実行し
た被告人が負うべきもので,先のような事情があったからといって,これらの
点に大きな影響を与えるものではない。
そして,本件のような悪質極まりない犯行については,一般予防の観点も軽
視できないことを併せ考えると,被告人の刑事責任は極めて重い。
3しかし,他方,被告人が本件犯行に至った経過については既述のとおり同情
の余地もある上,被告人は,本件犯行に及んだことを反省し,後悔する様子も
うかがわれること,前科・前歴がなく,被害女性Dに見舞金の支払いを申し出
たものの受け入れられなかったため7万円の贖罪寄付をする等,せめてもの誠
意を示そうと努力していること,さらには,強奪された現金が全額還付されて
いること,被告人の妻が社会復帰後の監督を誓っていること等の,被告人のた
め酌むべき事情も存在する。
4そうすると,これら諸般の事情を総合考慮した上,主文掲記の刑に処するの
が相当である。
(求刑懲役15年)
平成18年7月20日
大阪地方裁判所第2刑事部
裁判長裁判官和田真
裁判官水野将徳
裁判官山中耕一

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