弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
原決定を破棄し,第1審の裁判長がした訴状一部却下命令を取り消す。
         理    由
 抗告代理人濱秀和ほかの抗告理由について
 1 記録によれば,本件の経緯は次のとおりである。
 (1) 抗告人は,その所有に係る原決定別紙物件目録記載の物件番号1から同2
1までの21の建物(長野県南佐久郡a村大字b字c所在のゴルフ場に併設された
一つのリゾートホテルを構成する宿泊施設,事務所,倉庫,店舗,寄宿舎等の建物。
以下「本件各建物」という。)について,a村固定資産評価審査委員会に対し,平
成15年度の固定資産課税台帳に登録された価格につき経年の減点補正がされただ
けで需給事情による減点補正がされていない点に不服があるとして,審査の申出を
したが,これを棄却する旨の決定(以下「本件決定」という。)を受けた。そこで
,抗告人は,同委員会を被告として,本件決定のうち抗告人が本件各建物の適正な
時価と主張する価格を超える部分の取消しを求める訴訟(以下「本件訴訟」という。)
を提起した。
 (2) 抗告人は,本件訴訟に係る請求は1個であるとし,本件各建物ごとに訴え
で主張する利益の額を計算し,これを合算した金額(889万7800円)を訴訟
の目的の価額とした上で,これを基に算出した4万6000円が負担すべき手数料
の額であるとして,同額の収入印紙をはって訴状(以下「本件訴状」という。)を
提出した。
 (3) これに対し,第1審の裁判長は,本件訴訟に係る請求は21個であり,互
いに行政事件訴訟法13条にいう関連請求に当たらないことを前提に,本件各建物
ごとに訴訟の目的の価額を算定し,これに基づいてそれぞれ手数料の額を算出すべ
きであり,これによれば納められるべき手数料の合計額は8万3000円であると
した上で,抗告人が収入印紙をはって納めた手数料4万6000円は原決定別紙物
件目録記載の物件番号1から同4までの各建物に係る手数料に充てられるけれども
,同5以下の各建物については差額の3万7000円の手数料が不足しているとし
て,抗告人に対し,14日以内にこれを追納することを命ずる補正命令を発した。
 (4) しかし,抗告人は,上記手数料を納付しなかった。そこで,第1審の裁判
長は,本件訴状の一部(本件各建物のうち原決定別紙物件目録記載の物件番号5以
下の各建物に係る訴状)を却下した。
 (5) そこで,これに不服の抗告人が抗告をした。
 2 原審は,次のとおり判示して,抗告人の抗告を棄却した。
 (1) 市町村長は,個々の土地,家屋等の固定資産ごとにその価格を決定し,個
々の固定資産ごとに作成される固定資産課税台帳にこれを登録する。固定資産税の
納税者は,固定資産課税台帳に登録された価格(以下「登録価格」という。)につ
いて不服のある固定資産を選んで審査の申出をすることができるのであり,固定資
産評価審査委員会の審査の決定は,固定資産課税台帳に登録された固定資産ごとに
されなければならない。本件において,抗告人は,21の建物について審査の申出
をし,これを棄却した決定の取消しを求めているのであるから,1通の訴状で21
の審査決定について取消しを求めているものと解さざるを得ない。
 (2) 固定資産の評価については,個々の固定資産ごとにその具体的状況に従い
個別に判断されるべきものであるから,一つの固定資産についての固定資産評価審
査委員会の決定の取消訴訟と他の固定資産についての同委員会の決定の取消訴訟と
が行政事件訴訟法13条にいう関連請求に当たらないことは明らかである。
 (3) 以上によれば,本件訴状に係る手数料は合計8万3000円となるところ
,抗告人は手数料を4万6000円しか納付しなかったのであるから,第1審の裁
判長としては,不足額3万7000円の納付を命じ,その納付がない場合に,各請
求につき手数料の不足があるとして本件訴状の全部を却下すべきであるとも考えら
れるが,本件の第1審の裁判長のように,訴えを分離した上で不足額を生ずる訴え
について納付を命じ,その納付がなかったとして,納付を命じた部分に係る訴状の
みを却下したからといって,これを違法とすべき理由はない。
 3 しかしながら,原審の判断のうち上記2の(1)は是認することができるが,
同(2)及び(3)は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 (1) 固定資産評価に関する地方税法の規定をみると,市町村長は,個々の土地
,家屋等の固定資産ごとにその価格を決定し,個々の固定資産ごとに作成される固
定資産課税台帳にこれを登録すべきものとされており(同法381条,410条1
項,411条1項参照),固定資産評価審査委員会は,個々の固定資産ごとに登録
価格に関する審査の申出を受けて審査し,決定をするものとされている(同法43
2条1項,433条1項)。そうすると,【要旨】固定資産評価額に関する固定資
産評価審査委員会の審査決定は,個々の固定資産ごとにされるものであり,1通の
審査決定書において同一人の所有に係る複数の固定資産の登録価格について決定を
している場合でも,審査決定は,当該固定資産の数だけあるものというべきである。
したがって,本件決定の個数は21である。
 以上と同旨の原審の前記2の(1)の判断は,正当として是認することができる。
この点に関する論旨は採用することができない。
 (2) 本件は,同一人の所有に係る,同一の敷地にあって一つのリゾートホテル
を構成している本件各建物について,同一年度の登録価格につき,需給事情による
減点補正がされていないのは違法であるとして,本件決定のうち抗告人が本件各建
物の適正な時価と主張する価格を超える部分の取消しを求める訴訟である。これに
よれば,本件訴訟に係る各請求の基礎となる社会的事実は一体としてとらえられる
べきものであって密接に関連しており,争点も同一であるから,【要旨】上記各請
求は,互いに行政事件訴訟法13条6号所定の関連請求に当たるものと解するのが
相当である。したがって,上記各請求に係る訴えは,同法16条1項により,これ
らを併合して提起することができるものというべきである。このように解すること
が,審理の重複や裁判の矛盾抵触を避け,当事者の訴訟提起・追行上の負担を軽減
するとともに,訴訟の迅速な解決にも役立つものというべきである。そうすると,
本件訴訟について納付されるべき手数料の額は4万6000円であって,抗告人が
納付した手数料の額に不足はない。
 論旨は,以上と同旨をいうものとして,理由がある。
 4 以上によれば,前記3の(2)に判示したところと異なる見解に立って,本件
訴状の一部を却下すべきものとした原審の前記判断には,裁判に影響を及ぼすこと
が明らかな法令の違反がある。したがって,原決定を破棄し,第1審の裁判長がし
た訴状一部却下命令を取り消すこととする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 上田豊三 裁判官 金谷利廣 裁判官 濱田邦夫 裁判官 藤田
宙靖)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛