弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決を取消す。
     控訴人が、山口県熊毛郡a村大字b字c第d番地山林及び同大字字e第
f番畑所在の被控訴人所有の石灰製造用窯三個並びに右地上及び同大字字g第h番
地のi畑所在の被控訴人所有の附属建物につき賃貸人を被控訴人賃借人を控訴人期
限を昭和三十六年十月末日までとする賃借権を有することを確認する。
     訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
         事    実
 控訴代理人は主文同旨の判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
 当事者双方の主張は、控訴代理人において、「訴外a村は昭和十八年三月三十一
日控訴人を本件物件の賃借人に指定し、控訴人においてこれを受諾したので、本件
物件につき控訴人と被控訴人との間に賃貸借契約が成立した。また、a村が昭和十
六年十一月三十日被控訴人との間に第三者のためにする契約をなしたとき、すでに
双方の間においてその第三者とは控訴人であることが特定せられていたものであ
る。」と述べ、被控訴代理人において、「控訴人の右主張事実を否認する。」と述
べた外、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。
 証拠として、
 控訴代理人は甲第一号証を提出し、原審証人A、B、当審証人C、Dの各証言、
原審及び当審における控訴会社代表者E本人訊問の結果を援用し、乙各号証の成立
を認め乙第二号証を利益に援用した。
 被控訴代理人は、乙第一、第二、第三号証、第四号証の一から五まで、第五、第
六、第七号証を提出し、原審証人F、G、当番証人H、I、J、Kの各証言、原審
及び当審における被控訴人本人訊間の結果を援用し、甲第一号証の成立を認めた。
         理    由
 主文第二項記載の本件物件が被控訴人の所有に属することは当事者に争がない。
 控訴人は先ず、被控訴人は昭和十六年十一月三十円訴外a村に対し本件物件を期
限昭和三十六年十月末日まで、賃料年四百五十五円の約で同村又は同村の指定する
者に賃貸することを約し、同村は右約定に基き昭和十八年三月三十一日控訴人を本
件物件の賃借人に指定し、控訴人においてこれを承諾したので、本件物件につき直
接控訴人と被控訴人との間に賃貸借契約が成立した旨主張し、成立に争のない乙第
二号証によれば、昭和十六年十一月三十日a村と被控訴人との間に右の如き約定の
成立したことを認め得るけれども、右約定に基き同村が控訴人を本件物件の賃借人
に指定し直接控訴人と被控訴人との間に賃貸借の成立したことについては、原審証
人兼安鱗太郎、A、当審証人Dの各証言並びに原審及び当審における控訴会社代表
者本人訊問の結果中控訴人の右主張事実に符合する部分は成立に争のない乙第五号
証当審証人C、I、Hの証言に照し、容易に信用し難く、他にこれを認めるに足る
証拠な存在しない。
 控訴人は次に、a村は昭和十六年十一月三十日被控訴人との間に本件物件につき
第三者のためにする賃貸借契約をなし、控訴人はその第三者として昭和十八年三月
三十一日頃被控訴人に対し受益の意思表示をしたから控訴人被控訴人間に賃貸借か
成立した旨主張するけれども、右主張事実を認めるに足る何等の証拠も存在しな
い。
 成立に争のない乙第二、第五号証、原審証人F、G、当審証人J、Iの各証言並
びに原審及び当審における被控訴人本人訊問の結果を綜合すれば、被控訴人は昭和
十六年十一月三十日a村に対し本件物件及びその敷地たる被控訴人所有の山口県熊
毛郡a村大字b字c第d番地山林及び同大字字e第f番畑のうち同村所有地よりの
石灰石の採掘、搬出並びに石灰製造に必要な部分の土地を期限昭和三十六年十月末
日、賃料は本件物件につき一ケ年金三百五円、右土地につき一ケ年金百五十円合計
金四百五十五円、毎年七月末日支払の約で賃貸し、同村は被控訴人の承諾の下に昭
和十八年三月三十一日控訴人に対し本件物件及び右土地を前同一条件で転貸したこ
とを認めることができる。
 ところで、控訴人は被控訴人か昭和二十三年二月五日控訴人に対し直接本件物件
を賃貸するに至つた旨主張するので、この点について判断する。
 成立に争のない甲第一号証、乙第四号証の一から五まで、乙第七号証、原審証人
A、B、F、当審証人Dの各証言、原審及び当審における控訴会社代表者本人訊問
の結果並びに弁論の全趣旨を綜合すれば、控訴人は本件物件所在地附近にあるa村
所有地に存在する石灰石を同村より買受け、これを採取し、或は石灰を製造するた
めに、同村か被控訴人より賃借していた本件物件及ひ前記土地を前示認定の通り昭
和十八年三月三十一日転借し同村に対し一ケ年金四百五十五円宛の転借料を支払
い、同村はこれを賃料として被控訴人に対し支払つて来たこと、被控訴人はかつて
控訴会社の社員でその取締役をしていた著てあるが、終戦後物価か著しく騰貴し本
件物件及び前記土地に対する一ケ年合計金四百五十五円の賃料か甚だしく低廉に失
するようにはつたので、昭和二十三年二月五日頃直接控訴会社の当時の代表取締役
Eに対し賃料の値上げを請求し、同人もその値上けに同意し、交渉の末昭和二十二
年度分より暫定的に賃料を十倍とすることに合意が成立し、一ケ年金四千五百五十
円の割合による賃料を控訴人より直接被控訴人に対し支払うことになり、ここに控
訴人と被控訴人との間に本件物件及び右土地につき賃料を当分の間一ケ年金四千五
百五十円とする外その他の条件は前同様の賃貸借が成立するに至つたこと、その際
右E及び被控訴人は、右賃料につき地代家賃統制令の適用の有無が判明せず、右賃
料の値上げが統制令違反となることをおそれる一方、また右賃料の値上けがa村の
知るところとなれば、同村より控訴人に対し前示石灰石の代金の値上げを要求せら
れるおそれもあつたので、右賃料値上げ及び新賃貸借の事実をa村に対して内密と
し、右金四千五百五十円の賃料は双方合意の上賃料補助金名義を以て支払うことと
定めたこと、そこで控訴人は被控訴人に対し本件物件及び土地に対する賃料として
補助金名義を以て昭和二十二年度分より昭和二十六年度分まで一ケ年金四千五百五
十円の割合の金員を支払うと共に、勝間付に対しては一ケ年金四百五十五円の割合
の前示転借料を引き続き支払い、a村は右金四百五十五円を被控訴人に対し本件物
件及び土地に対する賃料として支払つて来た事実を認めることができ、原審証人G
の証言並びに原審及び当審における被控訴人本人訊問の結果中、右<要旨>認定に反
する部分は信用できない。そして賃借権は債権であるから、右のように控訴人がす
でに転借権を有する本件物件及び土地につき新たに賃借権を取得することは
法律上も素より可能なことである。
 成立に争のない乙第一、第六号証、当審証人Jの一証言によれば、昭和二十六年
一月三十一日新鉱業法が施行せられ、石灰石は同法にいわゆる鉱物とされ国有とな
つたので、被控訴人は前示被控訴人とa村との間の本件物件及び土地の賃貸借は、
同村所有の石灰石を売却しその財源を助ける目的を契約の要素とし且つその有効要
件としていたのであるから、新鉱業法の施行により同村が石灰石を売却できなくな
つた以上右賃貸借は当然消滅したものとなし、a村を被告として前示賃貸借終了確
認の訴を徳山簡易裁判所に提起したところ、同村において被控訴人の右主張を認め
たので、昭和二十七年五月十四日被控訴人勝訴の判決の言渡があり、右判決は同年
六月二十一日確定したことを認めることができる。従つて、被控訴人とa村との間
の前示賃貸借か終了した結果、a村と控訴人との間の前示転貸借も消滅に帰したこ
とは明らかである。しかしながら、前記認定の通り、控訴人は右転貸借とは別に昭
和二十三年二月五日頃被控訴人より直接本件物件及び土地を賃借したのであるか
ら、前者の転貸借の消滅により、後者の賃貸借契約が当然消滅すべきいわれはな
い。
 また、当審における証人Dの証言及び控訴会社代表者本人訊問の結果並びに弁論
び全趣旨によれば、控訴人はa村所有地より石灰石を採掘し石灰を製造する目的で
被控訴人より本件物件及び土地を前記のように直接賃借したものであるが、新鉱業
法施行後も引続き右土地より石灰石を採掘し、現在は右土地の鉱区に石灰石の採掘
権を取得して石灰石の採掘及び石灰の製造に従事していること並びに控訴人は本件
訴訟の繋属後新たに石灰製造用竈を建造し、昭和二十九年以降は本件物件中石灰製
造用竃三個を使用していないけれども、その他の本件物件は引続き前記目的のため
に使用していることを認め得るから、控訴人と被控訴人との間の前記賃貸借契約が
目的の消滅により終了したものといえないことは明らかである。しからば、控訴人
が被控訴人所有の本件物件につき昭和三十六年十月末日を期限とする賃借権を有す
ることは明白であり、被控訴人においてその存在を争う以上、右賃借権の確認を求
める控訴人の本訴請求は正当として認容すべきものである。右と異り控訴人の請求
を棄却した原判決は失当であるから、民事訴訟法第三百八十六条、第九十六条、第
八十九条を適用して、主文の通り判決する。
 (裁判長裁判官 植山日二 裁判官 佐伯欽治 裁判官 松本冬樹)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛