弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人山田半蔵の上告趣意第一点について。
 自白以外の証拠によつて、犯罪が現実に行われた客観的事実が裏書され、自白の
架空なものでないことがたしかめられるかぎり、犯人が被告人であることの証拠が
自白のみであつても、憲法三八条三項に違反しないことは、当裁判所大法廷の判例
とするところである(昭和二三年(れ)一三八二号同二四年一一月二日大法廷判決、
判例集三巻一一号一六九一頁参照)。従つて所論は採用できない。
 同第二点について。
 所論は、大審院判例違反を主張するけれども、その実質は、証拠の取捨、判断乃
至事実の認定における経験則違背の主張にほかならないから、刑訴四〇五条の上告
理由にあたらない。なお、記録を詳細に調べても、所論のような経験則違背がある
とはいえない。
 同第三点について。
 所論は、大審院判例違反を主張するけれども、その実質は、虚無の証拠を事実認
定の資料とした違法があるとの主張に帰するから、刑訴四〇五条の上告理由にあた
らない。そして、所論証人の供述中には、本件犯罪事実認定の資料として意味をも
つ部分があり、所論のように虚無の証拠とはいえない。
 同第四点について。
 所論は、大審院判例違反を主張するけれども、その実質は、単なる刑訴法違反、
採証法則違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。なお、所論
証人Aの公判廷における供述は、その一部(即ち被告人に朝会つたこと、そのとき
事件の話を聞いたかも知れないが、はつきり記憶がないという意味をのべ、聞かな
かつたと断定はできない、と供述している部分)を採証しているものと見ることが
できるから、何等所論のような違法も矛盾もあるものとはいえない。
 同第五点について。
 所論は、大審院判例違反を主張するけれども、その実質は、採証法則違反の主張
に帰し、刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。そして、所論供述調書中の記載も、
第一審判決の挙示する被告人の他の供述調書中の記載と綜合すれば、本件犯行認定
の証拠として有意味(即ち当時被告人が経済的に困つていたという事情の一部の証
拠となる)である。
 その他本件につき記録を精査しても、刑訴四一一条を適用すべき事由を認めるこ
とはできない。
 よつて、刑訴四一四条、三九六条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとお
り判決する。公判出席検察官 熊沢孝平
  昭和二七年一二月一九日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎

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