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平成12年(ワ)第18167号 商標権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結の日 平成13年5月11日
  判      決
     原      告       A
   原      告        株式会社マサトモ
    原告ら訴訟代理人弁護士    米 田 宏 己
     同              西   信 子
     同                山 崎 邦 夫
     同                石 川 直 基
     原告ら補佐人弁理士        小 谷 悦 司
     同                川 瀬 幹 夫
     被     告       株式会社フェイクデリック
     訴訟代理人弁護士       佐々木 和 郎
    補佐人弁理士           菊 池 敏 夫
       主      文
     1 原告らの請求をいずれも棄却する。
     2 訴訟費用は,原告らの負担とする。
      事実及び理由
第1 請求
 1(1) 被告は,別紙被告標章目録(1)記載の標章(以下「被告標章(1)」とい
う。)を付したジャケット,ジーパン,Tシャツ,ストール,その他の被服類,か
ばん類,ベルトその他の洋品類,ピアスその他の身飾品等を販売し,販売のために
展示し,及び,その包装紙,広告,パンフレット,タッグ等に被告標章(1)を使用し
てはならない。
  (2) 被告は,その本店,支店,営業所及び倉庫に存する被告標章(1)を付した
ジャケット,ジーパン,Tシャツ,ストール,その他の被服類,かばん類,ベルト
その他の洋品類,ピアスその他の身飾品等を廃棄せよ。
  (3) 被告は,東京都渋谷区道玄坂2丁目29番1号所在のデパート「渋谷10
9」に開設している服飾店に設置の被告標章(1)を表示した看板類を撤去せよ。
  (4) 被告は,東京都渋谷区道玄坂2丁目29番1号所在のデパート「渋谷10
9」5階に開設している服飾店の被告標章(1)の店名「moussy」の使用を中止
せよ。
 2 被告は,別紙被告標章目録(2)記載の標章(以下「被告標章(2)」という。)
を宣伝広告のため雑誌,新聞等の刊行物に使用してはならない。
 3(1) 被告は,被告標章(1)を「マウジー」と称呼してはならない。
  (2) 被告は,被告標章(1)を雑誌,新聞等の刊行物に「マウジー」と記載させ
てはならない。
 4 被告は,原告株式会社マサトモに対し,金800万円及びこれに対する平成
12年9月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要等
1 争いのない事実等
  (1) 当事者
   ア 原告Aは,ファッションデザイナーであり,原告株式会社マサトモ(以
下「原告マサトモ」という。)は,原告Aが代表取締役を務める紳士服等の企画,
デザイン,製造販売並びに商標権の使用許諾等を業とする株式会社である。
   イ 被告は,平成12年3月に設立された,アパレル商品の企画,製造販売
等を業とする株式会社である。
  (2) 原告らが有する商標権
    原告Aは,別紙商標権目録(1)記載の商標権を有している(以下「本件商標
権(1)」といい,その登録商標を「原告商標(1)」という。)。また,原告マサトモ
は,同目録(2),(3)記載の各商標権を有している(以下「本件商標権(2)」,「本件
商標権(3)」といい,その各登録商標をそれぞれ「原告商標(2)」,「原告商標(3)」
という。原告商標(1)ないし(3)をまとめて「原告ら各商標」という。)。
  (3) 被告による標章の使用
   ア 被告は,平成12年4月下旬ころより,東京都渋谷区道玄坂2丁目29
番1号所在のデパート「渋谷109」に開設している服飾店「moussy」にお
いて,被告標章(1)を,ジャケット,ジーパン,Tシャツ,ストール,その他の被服
類,かばん類,ベルトその他の洋品類,ピアスその他の身飾品等に付して販売して
いる。
   イ また,被告は,上記「渋谷109」内の5階店頭入口に被告標章(1)記載
の店頭看板を,同1階に被告標章(1)記載の店舗案内板を掲げ,かつ包装紙,広告,
パンフレット,タッグ,レシート等にも被告標章(1)を付して使用している。
(4) 被告は,今後,被告標章(2)を使用する意思がある。
 2 事案の概要
   本件は,原告らが,被告に対し,「原告ら各商標と被告標章(1)は類似してい
るから,被告標章(1)の使用行為は,原告らの商標権を侵害する。」,「別紙原告ら
商品等表示目録記載の各表示(以下「本件商品等表示(1)」等といい,これらをまと
めて「本件商品等表示」という。)は,原告らの商品等表示として周知,かつ,著
名であるところ,被告各標章は,本件商品等表示と類似しており,その使用は原告
らの商品又は営業と誤認混同を生じさせる(不正競争防止法2条1項1号,2号違
反)」と主張して,商標権及び不正競争防止法3条に基づいて,被告標章(1)の使用
差止め及び被告標章(1)が付された商品の廃棄を求めるとともに,不正競争防止法3
条に基づいて,被告標章(2)の使用差止め及び被告標章(1)を「マウジー」と称呼す
ることの差止めを求め,さらに,原告マサトモにつき不正競争防止法4条及び民法
709条に基づいて被告標章(1)の使用を理由とする損害賠償を求めている事案であ
る。
 3 本件の争点
  (1) 商標権に基づく請求について
    原告ら各商標と被告標章(1)とは類似するかどうか
  (2) 不正競争防止法違反に基づく請求について
   ア 本件商品等表示の周知性,著名性の有無
   イ 本件商品等表示と被告各標章とは類似するかどうか,被告各標章の使用
は原告らの商品又は営業と誤認混同を生じさせるかどうか
  (3) 原告マサトモが被った損害額等
第3 争点に関する当事者の主張
 1 争点(1)について
 【原告らの主張】
   原告ら各商標の称呼は,「マージ」であるところ,被告標章(1)からは,「マ
ウジー」という称呼が生じるから,原告ら各商標と被告標章(1)は称呼上類似してい
る。すなわち,両者は,称呼上第2音目の「ウ」と「ー(長音)」並びに第4音目
「ー(長音)」の有無に相違があるが,前者の「ウ」と「ー(長音)」の相違音に
ついては,第2音「ウ(u)」の音は,前音「マ(ma)」の母音と二重母音を形
成する関係上,前音の母音「a」に吸収され,「ウ(u)」は,微弱な音となるた
め,一連に称呼した場合には相紛れるおそれがある。また,後者の「ー(長音)」
の有無の相違音については,後尾音における長音は前者「ジ(ji)」の母音の余
韻として残るにすぎず,明確には聴音され難いものであって,このような長音の有
無の差異が,両称呼の全体に及ぼす影響は極めて小さい。したがって,「マウジ
ー」と「マージ」を一連に称呼した場合,両者は全体として語感,語調が極めて近
似している。さらに,後述のとおり,原告Aは世界的に有名なデザイナーであり,
原告ら各商標も,「マージ」という称呼のもとに周知著名なものである。これらの
ことからすると,原告ら各商標と被告標章(1)は,類似しているというべきである。
 【被告の主張】
(1)被告標章(1)について「マウジー」の称呼が生じることは認める。
  (2) 原告ら各商標と被告各標章とは,称呼,外観,観念のいずれの点において
も類似しているとはいえない。
 2 争点(2)について
 【原告らの主張】
  (1) 本件商品等表示の周知性及び著名性
    原告Aは,昭和61年にデザイナーとしてデビューして以来,デザイナー
及びファッション業界において,「マージ」と愛称される世界的に有名なデザイナ
ーである。原告Aは,自らデザインした商品を被服,メガネ,かばん,ベルト,ネ
クタイ,喫煙具,時計,風呂敷,インテリアアイテム等の各種メーカーに実施許諾
する際に,本件商品等表示を使用許諾し,これらを付することを義務づけてきた。
その結果,本件商品等表示は,「マージ」という称呼のもとに,原告Aのデザイナ
ーズブランドとして,周知著名なものとなっており,原告らの商品表示,営業表示
として,周知著名である。
  (2) 本件商品等表示と被告各標章の類否及び誤認混同のおそれ
   ア 本件商品等表示の略称,通称は,いずれも「マージ」であるところ,被
告各標章は,いずれも「マウジー」と称呼するから,本件商品等表示と被告各標章
は,称呼の点において類似している。
被告各標章は,強いインパクトを植え付けるという意味で,本物を知っ
てもらいたいというブランドコンセプトであるところ,原告A自身もブランド立ち
上げ当時から物作りの基本を「本物」指向と定義付けて,その思想を表明してお
り,両者は,商品コンセプトにおいて同一である。
   イ 取引者,需要者は,異なる時,異なる場所においては,本件商品等表示
と被告各標章を全体的に類似のものとして受け取り,被告商品を原告Aがデザイン
した商品又は原告らと何らかの関係がある商品として取り扱い,購入する危険が極
めて高い。このように,被告各標章の使用は原告らの商品又は営業と誤認混同を生
じさせる。被告は,このような誤認を意図して被告標章(1)を「マウジー」と称呼さ
せ,かつ,活字にさせている。
 【被告の主張】
  (1) 本件商品等表示が,原告らの商品表示,営業表示として,周知著名である
ということはない。
  (2) 本件商品等表示と被告標章は,称呼,外観,観念のいずれの点においても
類似しているとはいえず,また,被告各標章の使用によって,原告らの商品又は営
業と誤認混同が生じることはない。
 3 争点(3)について
 【原告マサトモの主張】
原告マサトモが被った損害は,以下のとおりである。
  (1) 使用料相当損害金            450万円
  (2) 調査費用              50万円
  (3) 弁護士費用            300万円
 【原告らの主張】
原告らは,混同惹起行為の停止又は予防として,被告標章(1)を「マウジー」
と称呼することの差止めを求めることができる。
 【被告の主張】
   原告マサトモの主張はすべて争う。
 なお,原告らは,被告標章(1)を「マウジー」と称呼してはならない旨主張す
るが,称呼が音声であり,不正競争防止法にいう商品等表示ではないうえ,音声
は,瞬時に消えるものであり,いつ,どこで,誰が「マウジー」と称呼したかを誰
がどのようにして差し止めるのかを特定できないから,原告らの上記主張は失当で
ある。
第4 当裁判所の判断
 1(1) 原告ら各商標,本件商品等表示及び被告各標章について
    上記争いのない事実並びに証拠(甲1の1ないし3,甲3,甲4の1,甲
16,18,19,27,29,35)及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が
認められる。
   ア 原告ら各商標
    原告商標(1)は,大文字からなる「MA」と「JI」をハイフンで結合し
た「MA-JI」の欧文字を横書きし,その上部にほぼ同じ大きさの「マージ」の
片仮名文字を横書きして構成された商標であり,「マージ」の称呼を生じる。
    原告商標(2)(3)は,いずれも,大文字からなる「MA」と「JI」をハ
イフンで結合した「MA-JI」の欧文字を横書きし,その下部に欧文字よりも小
さな「マージ」の片仮名文字を横書きして構成された商標であって,「マージ」の
称呼を生じる。
  イ 本件商品等表示
  (ア) 本件商品等表示(1)と原告商標(1),本件商品等表示(2)と原告商
標(2)(3)は,それぞれ同一である。
  (イ) 本件商品等表示(3)は,大文字からなる「MA」と「JI」をハイフ
ンで結合した「MA-JI」の欧文字から構成されているものであって,「マー
ジ」の称呼を生じる。
  (ウ) 本件商品等表示(4)は,大文字からなる「MA」と「JI」をハイフ
ンで結合した「MA-JI」の欧文字を横書きし,その下部に上部欧文字よりも小
さく「M」「A」「S」「A」「T」「O」「M」「O」の各欧文字を横書きして
構成されたものであって,上部からは,「マージ」,下部からは「まさとも」の称
呼がそれぞれ生じる。
   (エ) 「MA-JI」及び「マージ」は,原告Aの通称に由来する。
  ウ 被告各標章
  (ア) 被告標章(1)は,小文字からなる「m」「o」「u」「s」「s」
「y」の欧文字を横書きして構成されたものであって,「マウジー」の称呼を生じ
る。
  (イ) 被告標章(2)は,片仮名で「マウジー」と表記されているものであっ
て,「マウジー」の称呼を生じる。
   (ウ) 被告は,被告各標章を,「強いインパクトを植え付ける」という意
味で用いている。
  (2) 本件商品等表示の周知性及び著名性について
   ア 上記争いのない事実並びに証拠(甲13の1ないし29,甲32,3
6,47,甲50の1ないし10,甲58,甲66の1,甲71の1)及び弁論の
全趣旨によると,原告Aは,昭和61年にファッションデザイナーとしてデビュー
し,その際本件商品等表示(4)を商品に付して,自己のブランド名として使用したこ
と,原告Aは,昭和63年に本件商品等表示(3)に係る表示を使用した商品を発表し
たこと,平成元年7月,原告Aは,渋谷区神南に「MA-JIショップ」を出店し
たこと,平成2年5月16日発行の読売新聞夕刊に,原告Aを紹介する記事が掲載
されていること,原告Aは,平成3年上期から東京ファッションデザイナー協議会
の正会員となったこと,平成4年9月に,原告Aがデザインした商品を製造販売す
る原告マサトモが設立されたこと,原告Aは,平成5年までに,自らデザインした
商品を,被服,ハンカチ,風呂敷等のメーカーに実施許諾し,本件商品等表
示(3)(4)の使用を許諾したこと,原告A及び本件商品等表示(3)(4)を使用した商品
は,平成5年までの間に,各種ファッション雑誌等において数多く紹介されたこ
と,平成5年までの間に,東京の他,大阪,名古屋,高松,沖縄に「MA-JI 
SHOP」を出店したこと,以上の事実が認められ,これらの事実からすると,本
件商品等表示(3)(4)は,少なくとも原告マサトモが設立された後である平成5年こ
ろには,原告Aがデザインした商品又は原告マサトモの商品若しくは営業を表示す
るものとして,需要者の間に広く認識されていたものと認められる。そして,証拠
(甲13の30ないし48,甲16ないし25,甲26の1ないし3,甲27ない
し29,甲30の1,2,甲31の1,2,甲33ないし35,甲37の1ないし
3,甲38の1,2,甲39ないし41,47,58,甲66の3ないし9,甲6
7の1ないし6,甲68の1ないし19,甲69の1ないし5,甲70の1ないし
11,甲71の2ないし9,甲72の1ないし11,甲73,甲74の1,5,
7,甲75の1,2,甲78,80,83,甲85の1ないし7)及び弁論の全趣
旨によると,原告Aは,平成6年以降の時期において,自らデザインした商品を,
被服,メガネ,かばん,ベルト,ネクタイ,喫煙具,時計,インテリアアイテム等
の各種メーカーに実施許諾したが,その際には,本件商品等表示(3)(4)の使用を許
諾し,商品,広告等にこれらの表示が使用されてきたこと,原告A及び本件商品等
表示(3)(4)を使用した商品は,平成6年以降においても,各種ファッション雑誌等
において数多く紹介されたこと,以上の事実が認められる。したがって,本件商品
等表示(3)(4)は,平成6年以降現在に至るまで,原告Aがデザインする商品又は原
告マサトモの商品若しくは営業を表示するものとして,需要者の間に広く認識され
ていると認められる。もっとも,本件商品等表示(3)(4)が原告A又は原告マサトモ
の商品表示又は営業表示として著名であるとまで認めるに足りる証拠はない。
   イ 証拠(甲45の1ないし368)によると,本件商品等表示(1)(2)が原
告Aのデザインした商品であることを表示するものとして広く認識されている旨記
載した書面が存在するが,これらは,あらかじめ印刷した文書に署名を得たもので
あって,原告らが,本件商品等表示(1)(2)を,商品,広告等において,商品又は営
業を表示するものとして,使用していることを認めるに足りる証拠はないことから
すると,これらの表示が需要者の間に広く認識されているとまで認めることはでき
ないし,まして著名であるとは認められない。
 2 原告ら各商標及び本件商品等表示と被告各標章の類否について
  (1) 原告商標(1)ないし(3)と被告標章(1)との類否
  ア 前記認定のとおり,原告商標(1)は,「マージ」の称呼が生じるのに対し
て,被告標章(1)は,「マウジー」の称呼が生じるところ,両者の称呼は,2音目と
4音目が異なり,全体としての語感及び語調も異なるものと認められる。両者の称
呼が類似する旨の原告らの主張は採用できない。また,原告商標(1)が片仮名と欧文
字の上下2段書きであり,大文字からなる「MA」と「JI」をハイフンで結合し
た「MA-JI」の欧文字と,その上部にほぼ同じ大きさの「マージ」の片仮名文
字で構成されているのに対し,被告標章(1)は小文字の「m」「o」「u」「s」
「s」「y」からなる欧文字で構成されていることからすると,両者の外観は全く
異なる。さらに,原告商標(1),被告標章(1)それぞれの由来等は,前記認定のとお
りであるが,これらが,一般に特定の観念を生じるとは認められない。そうする
と,原告商標(1)と被告標章(1)が類似するとは認められない。
  イ 前記認定のとおり,原告商標(2),同(3)は,「マージ」の称呼が生じる
のに対して,被告標章(1)は,「マウジー」の称呼が生じるところ,両者の称呼は,
上記認定のとおり,異なるものと認められる。また,原告商標(2),(3)は,大文字
からなる「MA」と「JI」をハイフンで結合した「MA-JI」の欧文字と,そ
の下部に欧文字よりも小さな「マージ」の片仮名文字を,ともに横書きして構成さ
れたものであって,被告標章(1)とはその外観が全く異なる。したがって,原告商
標(2),同(3)と被告標章(1)が類似するとは認められない。
 (2) 本件商品等表示(3),同(4)と被告各標章との類否
  ア 前記認定のとおり,本件商品等表示(3)は,「マージ」の称呼が生じるの
に対し,被告標章(1)は,「マウジー」の称呼が生じるところ,両者の称呼は,上記
認定のとおり,異なるものと認められる。また,本件商品等表示(3)は,大文字から
なる「MA」と「JI」をハイフンで結合した「MA-JI」の欧文字から構成さ
れているのに対し,被告標章(1)は,小文字からなる「m」「o」「u」「s」
「s」「y」の欧文字を横書きして構成されていることからすると,両者の外観は
全く異なる。
    前記認定のとおり,本件商品等表示(3)は,「マージ」の称呼が生じるの
に対し,被告標章(2)は,「マウジー」の称呼が生じるところ,両者の称呼は,上記
認定のとおり,異なるものと認められる。また,被告標章(2)は,片仮名で「マウジ
ー」と表記されているものであるから,本件商品等表示(3)とは,その外観が全く異
なる。
    したがって,本件商品等表示(3)と被告各標章が類似するとは認められな
い。
  イ 前記認定のとおり,本件商品等表示(4)は,「マージ」「まさとも」の称
呼が生じるのに対し,被告標章(1)は,「マウジー」の称呼が生じるところ,両者の
称呼は,上記認定したところからすると,異なるものと認められる。また,本件商
品等表示(4)は,大文字からなる「MA」と「JI」をハイフンで結合した「MA-
JI」の欧文字と,その下部に上部欧文字よりも小さく「M」「A」「S」「A」
「T」「O」「M」「O」の各欧文字を横書きして構成されているのに対し,被告
標章(1)は,小文字からなる「m」「o」「u」「s」「s」「y」の欧文字を横書
きして構成されているから,両者の外観は全く異なる。
    前記認定のとおり,本件商品等表示(4)は,「マージ」「まさとも」の称
呼が生じるのに対し,被告標章(2)は,「マウジー」の称呼が生じるところ,両者の
称呼は,上記認定のとおり,異なるものと認められる。また,被告標章(2)は,片仮
名で「マウジー」と表記されているものであるから,本件商品等表示(4)とは,その
外観が全く異なる。
    したがって,本件商品等表示(4)と被告各標章が類似するとは認められな
い。
ウ なお,原告が主張するように,本件商品等表示(3),同(4)の略称,通称
が「マージ」であるとしても,上記のとおり「マージ」と「マウジー」は称呼にお
いて異なるものであるし,外観の違いも無視することはできないから,上記認定の
とおり本件商品等表示(3),同(4)と被告各標章が類似するとは認められない。
 (3) 次に,本件商品等表示(1),同(2)と被告各標章との類否についても,念の
ため判断する。
  ア 本件商品等表示(1)と原告商標(1),本件商品等表示(2)と原告商標(2)(3)
は,それぞれ同一であるから,本件商品等表示(1),同(2)と被告標章(1)との類否に
ついては,上記(1)で述べたところがそのまま当てはまる。
  イ 前記認定のとおり,本件商品等表示(1),同(2)は,「マージ」の称呼が
生じるのに対し,被告標章(2)は,「マウジー」の称呼が生じるところ,両者の称呼
は,上記認定のとおり,異なるものと認められる。また,本件商品等表示(1)は,片
仮名と欧文字の上下2段書きであり,大文字からなる「MA」と「JI」をハイフ
ンで結合した「MA-JI」の欧文字と,その上部にほぼ同じ大きさの「マージ」
の片仮名文字で構成されているのに対し,被告標章(2)は,片仮名で「マウジー」と
表記されているものであって,片仮名の「マ」と「ジ」については共通するもの
の,他に共通点はないから,外観についても,両者は異なる。さらに,本件商品等
表示(2)は,大文字からなる「MA」と「JI」をハイフンで結合した「MA-J
I」の欧文字と,その下部に欧文字よりも小さな「マージ」の片仮名文字を,とも
に横書きして構成されたものであるのに対し,被告標章(2)は,片仮名で「マウジ
ー」と表記されているものであって,片仮名の「マ」と「ジ」については共通する
ものの,他に共通点はないから,外観についても,両者は異なる。したがって,本
件商品等表示(1),同(2)と被告各標章が類似するとは認められない。
 (4) 前記1(2)認定のとおり,本件商品等表示(3)(4)は,原告Aがデザインす
る商品又は原告マサトモの商品若しくは営業を表示するものとして,需要者の間に
広く認識されていると認められるが,そのことを考慮しても,上記(1)ないし(3)認
定のとおり,原告ら各商標及び本件商品等表示と被告各標章が類似していない以
上,これらが類似していると認めることはできないものというべきである。
 3 以上のとおり,本件商品等表示(1)(2)が周知,著名であるとは認められず,
また,原告ら各商標及び本件商品等表示と被告各標章が類似していない以上,原告
らの本訴請求は,いずれも理由がない。
   よって,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第47部
  裁判長裁判官森     義  之
  裁判官内  藤  裕  之
  裁判官上  田  洋  幸
別紙 商標権目録
  (1)(2)(3)
別紙 原告ら商品等表示目録
別紙 被告標章目録

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