弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
         理    由
 本件控訴の趣意は、弁護人早川庄一が差し出した控訴趣意書に記載してあるとお
りであるから、これを引用し、これに対して当裁判所は、次のように判断する。
 所論は、法令適用の誤りの主張であつて、要するに、(一)被告人は、廃タイヤ
の再生利用の目的のために原判示第一の廃タイヤの収集・運搬の所為に及んだもの
であるから、右所為は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下、廃棄物処理法
という)一四条但書に該当し、許可を要しない、(二)仮に右所為が右但書に該当
せず、同条本文に違反するものとしても、再生利用の目的でなされたものであつ
て、社会的に相当な所為であるから、右所為は実質的に違法性を欠く、(三)原判
示第二の農地を右廃タイヤの保管場所に転用した所為は、形式的に農地法四条に違
反するものとしても、右廃タイヤは再生利用に供せられるべきものであるから、実
質的には違法性を欠く、以上の次第であるから、被告人は右いずれの所為について
も無罪といわなければならないが、これと反対の見解にたつて被告人を有罪と認定
処断した原判決は、法令適用の誤りを犯したものとして破棄を免れない、というの
である。
 そこで、記録並びに原審及び当審取調べの各証拠により、所論の当否を検討する
に、本件の事実関係は原判決の認定判示するとおり、被告人は、(一)法定の除外
事由がないのに、原判示都県及び市の各知事及び市長の許可を受けないで、業とし
て、昭和五一年一月ころから同五二年六月一〇日ころまでの間、合計三八六回にわ
たり、産業廃棄物である廃プラスチツクである廃タイヤ合計約一五四〇トン(約一
五万四〇〇〇本)を収集・運搬し、(二)かねて妻A、実弟B、義兄Cから管理を
一任されていた右三名ら所有にかかる原判示群馬県a村所在の各農地を右廃タイヤ
の置場所に転用しようと考え、法定の除外事由がなく、かつ群馬県知事の許可を受
けないで、(1)同五二年二月ころから同年三月ころまでの間、右A所有にかかる
原判示の田一筆四七六平方メートルに廃タイヤ約二万五〇〇〇本を野積みにし、
(2)同年三月ころから同年五月ころまでの間、右B所有にかかる原判示の畑及び
田合計四筆、面積合計二二二一平方メートル、並びに右C所有にかかる原判示の田
合計二筆、面積合計一二五六平方メートルに、廃タイヤ合計約二万五〇〇〇本を野
積みにし、もつて右各農地をいずれも農地以外のものに転用した、というものであ
る(なお、原判決二枚目表終りから三行目に「昭和五四年」とあるのは、「昭和五
二年」の、同裏四行目に「畑五六五平方」とあるのは「畑九六五平方」の、同三枚
目表終りから二行目に「同年一〇月二一日付)」とあるのは「同年一〇月二一日付
《本文二枚つづり》)」の、同裏一行目に「D」とあるのは「D」の、同四行目に
「E」とあるのは「E」の、同四枚目裏終りから四行目に「と題する書面」とある
のは「と題する書面(被告人の検察官に対する昭和五三年八月二八日付供述調書に
添付)」の、同五枚目表七行目に二〇月二一日付)」とあるのは「一〇月二一日付
《本文五枚つづり》)」の、同六枚目表終りから二行目に「判示第一の」とあるの
は「判示第二の」の、同九枚目番号2に「F」とあるのは「F」の、同一一枚目表
番号21に「至〃一二二六」とあるのは「至五二、二、一六」の各誤記と認められ
る)。
 <要旨>ところで、(一)廃棄物処理法一四条但書に許可を要しない場合として、
「もつぱら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの収集、運搬又は処分」を
行う場合とあるのは、その物の性質上もつぱら再生利用される産業廃棄物のみを取
扱う場合という意味であつて、それに当らない産業廃棄物を再生利用の目的で取扱
う場合というのではないことは、文理上明らかであるところ、関係証拠によれば、
被告人が収集・運搬した本件廃タイヤは、タイヤ販売会社等が顧客に新しいタイヤ
を販売する際に引取り、あるいは自動車解体業者から集めるなどした廃タイヤであ
つて、通常は、再生利用されることが少ないため、タイヤ販売業者等から、専門の
廃棄物処理業者に対し廃棄物として有料で処理の委託がなされているものであるこ
とが明らかである(なお、被告人も廃棄物処理の専門業者と同様に収集先から料金
を徴して収集していたものである)。してみれば、本件廃タイヤは物の性質上もつ
ぱら再生利用される産業廃棄物とは到底いい難いから、本件は前記法条但書には該
当しないものといわなければならない。したがつて、所論(一)は失当である。
(二)廃棄物処理法一四条に違反し無許可で廃タイヤを収集運搬した被告人の所為
は、たとえ所論のごとく再生利用の目的でなされたものとしても、そのゆえに社会
的に相当な行為であつて違法性を欠くものということはできない。しかも、関係証
拠によれば、被告人は、廃タイヤの再生利用として案出した畦畔ブロツクの製造に
ついては、製造過程において悪臭を放つなど新たな公害を生ずるなどのため、初め
の段階で計画を放棄するに至り、農業暖房用燃料については、専用のストーブを試
作し、改良を加え、実験的に使用するなど、被告人なりに工夫努力を重ねたもの
の、これとても、しよせん実験的段階にとどまるものであつて、収集・運搬した大
量の廃タイヤの大半は現在に至るまでそのまま放置されていることが明らかであ
り、これから推してみても、結局、被告人は、相当の収入を伴うこともあつて、通
常は再生利用できない廃タイヤを、確たるあてもなく、ただ再生利用の希望的観測
を抱いて、無許可で大量に収集・運搬したものといわざるを得ないから、所論のご
とく被告人の右所為を社会的に相当な行為であるということは到底できない。した
がつて、所論(二)は失当である。(三)農地法四条に違反し、法定の除外事由が
なく、かつ無許可で、原判示各農地を前記廃タイヤの置場に転用した被告人の所為
は、たとえ、右廃タイヤが所論のごとく再生利用の目的に供せられるべきものであ
つたとしても、そのことのゆえに違法性を欠くものということはできない。のみな
らず、右廃タイヤの性質、これを収集した被告人の動機が、いずれも、前記(二)
に認定したようなものであつてみれば、なおのこと所論は失当である。したがつ
て、所論(三)は採用できない。
 なお、所論中、廃棄物処理法違反について被告人には違法性の認識がなかつたと
主張して、原判決の事実認定を論難する部分があるが、原判決挙示の櫻田公磨の検
察官及び司法警察員に対する各供述調書並びに被告人の検察官(昭和五三年八月二
八日付)及び司法警察員(同年八月一二日付)に対する各供述調書によると、被告
人は廃タイヤを収集・運搬するには法律上県知事等の許可が必要であることを本件
犯行当時知つていたことが明らかであるから、右主張は失当である。
 論旨は理由がない。
 よつて、刑訴法三九六条により本件控訴を棄却することとし、主文のとおり判決
する。
 (裁判長裁判官 向井哲次郎 裁判官 山木寛 裁判官 荒木勝己)

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