弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人A、同Bをそれぞれ懲役三年に処する。
     被告人Aに対し、原審における未決勾留日数中一〇〇日を右刑に算入す
る。
         理    由
 本件各控訴の趣意は、弁護人服部恭敬作成の控訴趣意書に記載のとおり(ただ
し、第二項を除く)であるので、これを引用する。
 法令適用の誤りの控訴趣意について。
 所論は、原判示第一の(二)の殺人未遂、傷害と原判示第一の(一)の兇器準備
集合とは牽連犯であるにもかかわらず、併合罪として処断している原判決には法令
の適用の誤りがある、というのである。
 <要旨>よつて検討するに、原判決の認定したところによると、本件は被告人両名
がC組組長Cらと共にDD組事務所に殴り込みをかけ、同組長その他の者を
殺傷するに至ることをも辞さない意図で、昭和四二年九月二四日午後一一時過ご
ろ、奈良市a町b番地cアパート内のEの居室に集合し、Eもそれに加わり、その
後間もなくF、G、Hも加つて集合し、その際被告人Aは実弾付の拳銃一丁を、被
告人B、Gは短刀二本を準備し、(原判示第一の(一))、ついで被告人両名は右
Cと共謀のうえ、右D組組長及び同組員らを殺傷するに至ることを敢て辞さない意
図のもとに翌九月二五日午前零時頃被告人Aが右拳銃を、被告人Bが短刀一本(刃
体の長さ約二七センチメートル)を携帯して、奈良市d町e番地所在のD組事務所
に至り、同事務所表においてIに対し、被告人Aは未必の殺意をもつて拳銃を一発
発射したが命中せず、被告人Bが未必の殺意をもつてIの左横腹を突いたが軽傷を
与えるにとどまつて死亡させるに到らす。被告人Bはさらに同事務所表正面出入口
ドァ付近に出てきたJの顔面を所携の短刀の鞘で殴りつけて傷害を与えた(原判示
第一の(二))、という兇器準備集合と殺人未遂、傷害の事案であつて、原判決が
右兇器準備集合と殺人未遂、傷害を併合罪として処断していることは所論のとおり
である。そして、右事実によると、被告人らの右兇器準備集合は右殺人未遂、傷害
を目的とする準備行為であり、右殺人未遂、傷害は兇器準備集合において準備した
兇器を使用して行なつた右兇器準備集合の目的を実現した結果であり、前者が発展
して後者にいたつたもので、かような関係にある兇器準備集合と殺人未遂、傷害と
は、一般社会生活上手段結果の関係にあるものと認められるのみでなく、被告人ら
の主観においては勿論のこと、本件の具体的事情を客観的にみても、手段結果の関
係にあるものと認められる。そうすると、本件兇器準備集合と殺人未遂傷害とは通
常手段結果の関係にあり、刑法五四条一項後段の牽連犯であると解するのが相当で
ある。これと異り両者を併合罪とした処断して原判決には法令の適用を誤つた違法
があるけれども、原判決は被告人両名について、右兇器準備集合、殺人未遂、傷
害、及び原判示第一の(三)、(四)の銃砲刀剣類所持等取締法違反の各罪に関し
殺人未遂罪について有期懲役刑を、その他の罪についてそれぞれ懲役刑を選択し、
刑法一四条の制限内において再犯加重、併合加重をして長期二〇年の範囲内におい
て被告人らを処断しているのであるから、兇器準備集合と殺人未遂、傷害を牽連犯
として処断する場合とその処断刑において異るところはなく、結局判決に影響を及
ぼすものではない。論旨は理由がない。
 事実誤認の控訴趣意について。
 所論は、原判決は原判示第一の(二)において、被告人両名のIに対する行為に
ついて殺意を認定しているが、被告人Aは威かくのため拳銃を一回発射したにすぎ
ず、被告人BはIの優勢な兇器による攻撃を防ぐため短刀を振つたのが同人の左側
腹部にあたつて傷を負わせたにすぎず、いずれも殺意はなく、原判決には重大な事
実の誤認がある、というのである。
 よつて検討するに、原判決挙示の証拠によると原判示第一の(二)におけるIに
対する被告人両名の加害行為についてそれぞれ未必の殺意があつたことを十分認め
ることができる。すなわち右証拠によると被告人両名は九月二四日午後一一時すぎ
頃、Cと共にお好み焼屋「K」を出た後、道すがら同人からD組組長D襲撃を命ぜ
られるや直ちにD殺害を決意し、cアパートにD組事務所へ殴り込んでD組組長や
同組員を殺傷する目的で集合し、これにひきつづいて被告人Aは拳銃を携え、被告
人Bは刃体の長さ約二七センチメートル短刀を携えて、同じく短刀を携えたGと共
に、D組事務所へ行つたこと、同事務所表において、すでに被告人らの襲撃を予期
して待機していたIがドアをあけて日本刀を振りかざして向つてきたので、被告人
Aは約二メートルの至近距離からIの方に拳銃の銃口を向けて一発発射し、これに
ひるまず切りこんできたIの腹をめがけて被告人Bが左に体を開きながら右短刀で
一回突き、これを見て被告人Aは威かくすべくD組事務所の方へ向つてさらに拳銃
を一発発射したこと、被告人の発射した拳銃弾はいづれも同事務所の表入口から屋
内に飛んで、一発はカソウター上の飾り柱上部に当りその内部に落下し、一発はカ
ウンター下にあつた運動靴を貫通して床下に落下していること、当時同事務所内に
はD組組長の他に数名の組員が居て、右拳銃弾がこれらの者に命中するおそれもあ
つたこと、Iは被告人Bの右短刀に刺されて加療約一週間を要する左側腹部刺創の
傷害を受けたこと、が認められる。右の事実関係によると被告人両名は元来殺傷を
予期して殴りこみをかけ且つ至近距離から人体に向つて拳銃を発射し、また刃体の
長さ約二七センチメートルの十分致命傷を与えるに足る短刀をもつて特に危険な腹
部めがけて突き刺しており、被告人両名ともに特にIの生命に危険を及ぼさないよ
うに配慮したような形跡は全くなく、これら兇器の種類、攻撃に際しての位置関
係、傷害の部位にてらすと、すくなくとも被告人らはIに対し、未必の殺意をもつ
て拳銃を発射し、短刀で突いたものと認められる。所論は被告人Aについては威か
くの為の発砲であり、至近距離での発射であるのに命中していないのはその殺意の
ない証左であるとし、また被告人BについてはIの左側腹部に軽傷を負わせたにと
どまり、而も直ちに逃げ出したことが殺意のない証左であると主張するけれども、
被告人Aは原審第七回公判において、右拳銃を発射するに際してどこをめがけて撃
つたかわからないが、Iに当らない様に配慮した事はなくIに当つて死んでもかま
わないという気持はあつたと供述して未必の殺意があつたことを認めており、同人
の供述からみるも単に威かくのために発射したものとは認められず、同人の発射し
た弾が命中しなかつたのは手許が狂つたためであると考えるのが相当である。ま
た、Iの短刀による受傷は軽傷ではあるけれども被告人BがIの攻撃を避ける為に
とつさに左に体を開いたため体型がくずれたまま突き刺した為致命傷を与えること
ができなかつたに過ぎないものと解せられ、被告人Bが逃走したのは、被告人Aが
第二発目を発射した為Iらが事務所内に逃げ込み表戸を内から閉めたがなおも被告
人A、同B、G、は、表戸に近寄つて内部の様子をうかがつたところDが内部で猟
銃で狙い撃ちにせよと怒鳴つているのを聞いて恐怖を感じて逃げ出したのであつ
て、Iに対しなおも攻撃を続行できるのに敢て中止して逃走したようなことはな
く、同人に対し一突きしたにとどまるからといつて殺意がなかつたものということ
はできない。
 また所論はJに対して殺意を否定しておきながらIに対して殺意を認定している
のは矛盾すると主張するけれども、原判示のとおり被告人BはJの顔面を短刀の鞘
で一回殴打して静養一週間を要する左顔面打撲擦過傷を負わせたにとどまるのであ
つて、兇器の種類、傷害の部位、程度及びこれから推測される打撃の強さからみる
とJに対し殺意があつたものとは認め難く、Iに対する攻撃とは質を異にするから
Iに対しては殺意を認め、Jに対しては単に傷害にとどまるものとする原判決の判
断には矛盾があるものとは認められない。被告人A、同BのIに対する攻撃につい
て未必の殺意を認定した原判決の判断は相当であり所論のような事実誤認はない。
論旨は理由がない。
 量刑不当の各訴趣意について
 所論は原刑決の量刑不当をいうので、所論にそつて記録を精査するに、本件は、
L組糸C組若衆頭をつとめる被告人Bが、保釈中にかねて右Cと親交のあつたD組
へ小遺銭の無心に行つたがD組長の妻から素気なく断られたことに立腹して土足で
同事務所座敷に上りこんでD組の対面を傷つけた事に端を発し、同組とD組との間
に紛争が生じたが両組長の話合で一応解決し、その話合いの際に右Cの申入れた金
銭の無心に対しD組長がそのうちの一部を直ちに手渡し残りを翌日銭湯で手渡すと
いうことになつたが、被告人B、及び同人から右土足事件について相談を受けて腐
心していたC組代貸をつとめる被告人Aの両名は喫茶店「M」で右Cから右の次第
を聞くや、D組長から騙し討ちにされるおそれがあるとして銭湯で会うことを制止
し、同人もこれを真に受け、D組長と銭湯で会うのを取り止めるのみならず、D組
長や同組員と組をあげて抗争し同組事務所に殴りこみをかけて同組長らを殺傷しよ
うと決意するに至り、附近のお好み焼屋「K」からD組事務所のD組長にその旨の
電話をし、帰る道すがら被告人両名らにその旨を命令し、この命令を受けた被告人
両名ほか五名は前記のとおり奈良市a町b番地cアパート内のE方に兇器を準備し
て順次集合し、次でD組事務所を襲撃して前記のとおり殺人未遂、傷害の行為に及
んだという事案であつて、暴力団による計画的組織的犯行であるうえ、兇器準備集
合においては被告人Bは短刀を、被告人AもHを介して短刀を準備していること、
殺人未遂においては、被告人Aは拳銃を発射し、被告人Bも短刀でIの左側腹部を
突き傷害を与えており、ともに殺人未遂の実行着であること、本件の遠因は被告人
Bが土足でD組事務所座敷にふみこんでD組の体面を汚したという行為にあつて、
さらにD、C両組長の話合いによつて一応事態の解決をみたにもかかわらず、被告
人両名の右Cに対する無思慮な進言が事態を悪化させたことによること、等本件犯
行の動機、態様にてらすと犯罪の情状は重く、さらに被告人Aは昭和三九年一〇月
二一日奈良地方裁判所で傷害により懲役六月二年間執行猶予に(後に執行猶予は取
り消されて服役)、昭和四〇年一二月二〇日同裁判所で恐喝暴行で懲役一年二月に
処せられた前科があること、また被告人Bは昭和四〇年五月二四日同裁判所で贓物
牙保、傷害等で懲役一年以上一年六月以下及び罰金一万二千円に処せられた前科が
ある外、恐喝、同未遂傷害被告事件で奈良地方裁判所で審理中保釈されて本件を敢
行したものであること、をいずれも合せ考えると被告人らの刑責は重大であるとい
わなければならない。しかしながら、本件の原因は右のように被告人らが作りだし
たものであるとはいえ、当審における鑑定の結果によれば、Cは当時精神分裂病等
によつて心神喪失の状況にあつたものと認められ、このような状況にあつたCが被
告人らの軽率な言辞を真に受けて、D組長との約束を取消すばかりでなく、進んで
D組事務所を襲撃して殺傷行為に及ぶという精神分裂病による思考障害の結果とし
かいいようのない異常な思考をするに至り、被告人らにこれを命じたことに最大の
原因があり、組員たる被告人らとしては、当時Cが精神分裂病に罹患していたこと
は知る由もなく、ひたすら組長の命令に従わざるを得ない立場において本件を行つ
たものであり、又本件殺人未遂等の犯行の態様も相手方の優勢なる反撃にあつてむ
しろ守勢に立たされ、力及ばないとみるやいとも簡単に現場から逃走しており、発
生した結果もおおむね軽微な傷害にとどまるといつてもよいことを考慮すると、被
告人両名をそれぞれ懲役四年に処した原判決の量刑はやや重すぎるものと認めら
れ、破棄を免れない。論旨は理由がある。
 よつて、刑事訴訴法三九七条一項三八一条により原判決を破棄し、同法四〇〇条
但書によりさらに自判し、罪となるべき事実、証拠の標目、累犯前科、確定裁判は
いずれも原判決挙示のとおり(ただし相被告人Gに関する部分を除く)である。
 (法令の適用)
 被告人両名の原判示第一の所為中、(一)の兇器準備集合の点は刑法二〇八条ノ
二、一項、罰金等臨時措置法三条一項に、同(二)のうちIに対する殺人未遂の点
は刑法六〇条二〇三条一九九条に、Jに対する傷害の点は同法六〇条二〇四条罰金
等臨時措置法三条一項に各該当するが、右兇器準備集合と殺人未遂及び傷害とはそ
れぞれ順次手段結果の関係にあるから刑法五四条一項後段一〇条によりそれぞれ重
い殺人未遂罪の刑に従い、被告人Aの原判示第一の(三)の所為は銃砲刀剣類所持
等取締法三条三一条の二、一号に、被告人Bの原判示第一の(四)の所為は銃砲刀
剣類所持等取締法三条三一条の三、一号は各該当するので、各所定刑中、原判示第
一の(三)、(四)の各罪については懲役刑を、原判示第一の(二)の罪について
は有期懲役刑を選択し、被告人らの右各罪は前示各前科(被告人Bについては原判
決の「累犯に係る前科および確定裁判」の二の(1))にかかる罪と再犯の関係に
あるので刑法五六条一項、五七条によりそれぞれその刑に再犯加重をし(原判示第
一の(二)の罪については同法一四条の制限に従う)、被告人Bの右各罪は原判決
の「累犯に係る前科および確定裁判」の(二)の(2)の確定裁判を経た罪と同法
四五条後段の併合罪であるから同法五〇条により未だ裁判を経ていない本件各罪に
つきさらに処断すべく、以上被告人らの各罪はそれぞれ同法四五条前段の併合罪で
あるから同法四七条本文(被告人Bについてはさらに同条但書)一〇条により、そ
れぞれ最も重い殺人未遂罪の刑に同法一四条の制限内で法定の加重をし、その刑期
の範囲内で、被告人両名をそれぞれ懲役三年に処し、被告人Aに対し、同法二一条
により原審における未決勾留日数中一〇〇日を右刑に算入することとする。
 よつて、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 田中勇雄 裁判官 尾鼻輝次 裁判官 小河厳)

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